あのときは泣きたかった。

さとなか達也

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エピソード71

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 「じゃあ、上川君・・。今度はスライダーの持ち方で投げてみてくれ。」
 「やはり、監督は小学生が曲がる球を投げさすことが多いのを知ってるな・・。」
 「それでフォーク系のボールをあえて投げさせないのは。」
 「配球で、変化球の割合いを投げやすいボールで返って、多投する可能性がある・・。」
 「投手の負担を考えれば、カーブかスライダー・・。」
 「しかし、上川はシュート系のピッチャーだな・・。」
 後ろで見る山口と堀・・。今日は、宿泊学習のすぐ後のため、見学のみの参加だ・・。その分、打球の軽さが年を取っていくたびに変わるそのクセが、今日は無いように思えてくるものだ・・。
 「まっせめてランニングはしておくか・・。」
 
 「あまり、一緒に練習をしてないのに・・声を見ている側からかけるのはさすがの小学生と言っても、難しんだよな・・。」
 「ああ、俺達は掛け声までの筋力トレーニングはしてないからな・・。こればかりは、練習の慣習によるものだ・・。」
 「まあ、野球ってそんなものだよ・・。今は・・。」
 
 「しかし、いい球投げるな・・。俊足だが、球速もある・・。コントロールの乱れをなくすには、やはり、投手の地盤作りからか・・・。」
 山口は言った。
 
 「ざっと見て山口の分析が当たっていれば、7か月で、公式戦登板かな・・。5年の6月、冬の手前に投げさせるのはリスクが高いし、初めての場合、硬式ボールだとそのリスクも上がる・・。」
 
 「雪が降るまでゆっくり練習を見守ろう・・。」

 「時期、彼も6年生だ・・。」
 
 「そうだな、本当に背番号を争う時には俺達は引退だ。・・進学するんだから・・。」
 「虚しいこと言うなよ。」
 「すまん・・。」
 「それにしても、曲がるな・・。」
 「個人的には練習していたんだろう・・。」
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