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捻れた男
ケツは熱いうちに叩くのだ
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捻れた男がおりまして
捻れた小道を歩いたら
捻れた木戸のその裏で
捻れた6ペンス拾ったと
捻れたネズミを捕まえた
捻れた猫を買って帰り
捻れた小さい彼の家
捻れて仲良く暮らしたと
…他者をもって、「捻れた」と称する者の神経がよっぽど捻れていると僕は思うけどね。
みなさんこんにちは。コリン改め、メアリー・レノックスだよ。本日は、やっとの事で伯父上にご面会が叶った。ってか言い忘れていたけど、伯父はしばらく用事にて屋敷から離れていたのだよ。一時だけで、これからまたどこかに旅立っていくそうだが。旦那さまの久々のご帰宅で、屋敷は朝から浮足立っていた。
僕の方も、やっとこさ「メアリー修行」に太鼓判が押されたのだそうで。胸を張って、伯父と会う資格を得られたのだそうだね。気合いを入れた服に、気合いを入れた髪型で伯父の部屋に通された。
僕の方はと言うと、まぁわりとどうでもいい話だと思っていた。残された最後の身内ではあるが、血は繋がっていない訳だし。あぁ面倒くさい、早よ終われ。それよりこの衣装、ディコンに見せたら何て言うかなぁ…。などと、考えていた。
やっとの事で、お目通りを許された。屋敷と同じでだだっ広いが、これまた暗くて陰気な部屋だ。部屋の主人である伯父…ミスター・アーチボルト・クレイヴンも、負けずに陰気であったが。彼の境遇を考えれば、無理からぬ事かな。
背中の瘤は、それほど目立っては見えない。目立たぬよう気を使っている部分もあるのだろうが、大人になって病状が安定したとも聞く。彼の受けてきた心の傷を想像するに、手放しで喜んで見せる訳にも行かぬがね。
「…信じられぬ。そっくりだ…」
母の事を言っているのか、それとも伯母上の事か。どちらにせよ、彼女らも双子であったのだから変わらないがね。
「写真は…撮らなかったのか」
「母が、撮らせませんでしたから…」
「メドロックは、君を寄宿舎に入れるべきだと言っている…」
「寄宿舎はやめてください。この屋敷に置いて頂けるなら、何でもします」
ん?今、何でもするって言ったよね!?…って、伯父が突っ込んでくれるような人ではないから自分で突っ込むしかあるまい。英国男児としては、些かに恥ずべき所業だがね。
「ここは、寂しい所だ…」
「構いません。あの…一つ、お願いがあるのです」
「なんだ」
「地面を、少しもらえませんか?」
そう言うと、伯父は少し訝しんで言った。
「地面?何にするのだ」
「種を植えて、ものを生やして…元気に育つのを見ます」
伯父はさらに訝しんだが、特に否定する要素もないらしくやがては許可してこう言った。
「良いが、ここの土はものを育てるのに向かない…。だけど、おかげで土が大好きだった人を思い出したよ」
伯父が次に帰ってくるのは、いつになるや知れない。その晩の僕は寝付けず、ベッドで飽きもせず寝返りを繰り返していた。
すると風に乗って、はっきりと人の泣き声のような物音が聞こえた。実は、この屋敷に来た時から聞こえた気がしていたんだ。家政婦長のメドロックは、風の音だと否定していたけどね。
思い立ったが吉日、ケツは熱いうちに叩くのだ!僕はベッドから飛び出て、泣き声を探し屋敷の中をさ迷った。ヅラは…別に、いいだろう。わざわざつけるのも面倒だし、人目を避けて行動すればいいだけの事。
それにしても、部屋数が多い屋敷だ。知ってたけど。しかし、泣き声をたよりに歩き回った僕は…。とうとう、目当ての部屋に辿りたいた。
これは、子供部屋…。と言うか、どう見ても赤ちゃんの部屋だな。飾っているおもちゃの内容を見るに、男の子だと思われる。部屋の主である、赤ちゃんの姿は見当たらない。もしいたなら、たまに泣き声が聞こえる程度では済まなかったろうしね。
泣き声の出所が、見当たった。おもちゃの山の中にあった、笑い袋だ。経年劣化で、子供が泣いているような声にしか聞こえない。しかも特に刺激を与えずとも、定期的に泣き声が漏れているようだ。
意味ありげに、天井から垂れていた紐を引っ張ると…。壁の一部がめくれて、女性の写真が表れた。一瞬お母様かと思われたが、これは同じ顔をしている伯母上の生前の姿であろう。
机の上には、長年放置されたらしき封筒が一通。いけないとは思いつつ、埃を払って中の手紙を読む。差出人は、やはり伯母であるようだ。そして、その手紙の宛先は…?
「親愛なるコリン・クレイヴン
私の可愛い赤ちゃん。あなたがこの手紙を読む頃には、私はこの世を去っています…」
僕の名前が、書かれていた。しかし、姓が異なる。と言う以前に、この内容…。よく状況を呑み込めないでいると、背後から女性の声がした。
「見ましたね」
家政婦、ミセス・メドロックの姿がそこにあった。
捻れた小道を歩いたら
捻れた木戸のその裏で
捻れた6ペンス拾ったと
捻れたネズミを捕まえた
捻れた猫を買って帰り
捻れた小さい彼の家
捻れて仲良く暮らしたと
…他者をもって、「捻れた」と称する者の神経がよっぽど捻れていると僕は思うけどね。
みなさんこんにちは。コリン改め、メアリー・レノックスだよ。本日は、やっとの事で伯父上にご面会が叶った。ってか言い忘れていたけど、伯父はしばらく用事にて屋敷から離れていたのだよ。一時だけで、これからまたどこかに旅立っていくそうだが。旦那さまの久々のご帰宅で、屋敷は朝から浮足立っていた。
僕の方も、やっとこさ「メアリー修行」に太鼓判が押されたのだそうで。胸を張って、伯父と会う資格を得られたのだそうだね。気合いを入れた服に、気合いを入れた髪型で伯父の部屋に通された。
僕の方はと言うと、まぁわりとどうでもいい話だと思っていた。残された最後の身内ではあるが、血は繋がっていない訳だし。あぁ面倒くさい、早よ終われ。それよりこの衣装、ディコンに見せたら何て言うかなぁ…。などと、考えていた。
やっとの事で、お目通りを許された。屋敷と同じでだだっ広いが、これまた暗くて陰気な部屋だ。部屋の主人である伯父…ミスター・アーチボルト・クレイヴンも、負けずに陰気であったが。彼の境遇を考えれば、無理からぬ事かな。
背中の瘤は、それほど目立っては見えない。目立たぬよう気を使っている部分もあるのだろうが、大人になって病状が安定したとも聞く。彼の受けてきた心の傷を想像するに、手放しで喜んで見せる訳にも行かぬがね。
「…信じられぬ。そっくりだ…」
母の事を言っているのか、それとも伯母上の事か。どちらにせよ、彼女らも双子であったのだから変わらないがね。
「写真は…撮らなかったのか」
「母が、撮らせませんでしたから…」
「メドロックは、君を寄宿舎に入れるべきだと言っている…」
「寄宿舎はやめてください。この屋敷に置いて頂けるなら、何でもします」
ん?今、何でもするって言ったよね!?…って、伯父が突っ込んでくれるような人ではないから自分で突っ込むしかあるまい。英国男児としては、些かに恥ずべき所業だがね。
「ここは、寂しい所だ…」
「構いません。あの…一つ、お願いがあるのです」
「なんだ」
「地面を、少しもらえませんか?」
そう言うと、伯父は少し訝しんで言った。
「地面?何にするのだ」
「種を植えて、ものを生やして…元気に育つのを見ます」
伯父はさらに訝しんだが、特に否定する要素もないらしくやがては許可してこう言った。
「良いが、ここの土はものを育てるのに向かない…。だけど、おかげで土が大好きだった人を思い出したよ」
伯父が次に帰ってくるのは、いつになるや知れない。その晩の僕は寝付けず、ベッドで飽きもせず寝返りを繰り返していた。
すると風に乗って、はっきりと人の泣き声のような物音が聞こえた。実は、この屋敷に来た時から聞こえた気がしていたんだ。家政婦長のメドロックは、風の音だと否定していたけどね。
思い立ったが吉日、ケツは熱いうちに叩くのだ!僕はベッドから飛び出て、泣き声を探し屋敷の中をさ迷った。ヅラは…別に、いいだろう。わざわざつけるのも面倒だし、人目を避けて行動すればいいだけの事。
それにしても、部屋数が多い屋敷だ。知ってたけど。しかし、泣き声をたよりに歩き回った僕は…。とうとう、目当ての部屋に辿りたいた。
これは、子供部屋…。と言うか、どう見ても赤ちゃんの部屋だな。飾っているおもちゃの内容を見るに、男の子だと思われる。部屋の主である、赤ちゃんの姿は見当たらない。もしいたなら、たまに泣き声が聞こえる程度では済まなかったろうしね。
泣き声の出所が、見当たった。おもちゃの山の中にあった、笑い袋だ。経年劣化で、子供が泣いているような声にしか聞こえない。しかも特に刺激を与えずとも、定期的に泣き声が漏れているようだ。
意味ありげに、天井から垂れていた紐を引っ張ると…。壁の一部がめくれて、女性の写真が表れた。一瞬お母様かと思われたが、これは同じ顔をしている伯母上の生前の姿であろう。
机の上には、長年放置されたらしき封筒が一通。いけないとは思いつつ、埃を払って中の手紙を読む。差出人は、やはり伯母であるようだ。そして、その手紙の宛先は…?
「親愛なるコリン・クレイヴン
私の可愛い赤ちゃん。あなたがこの手紙を読む頃には、私はこの世を去っています…」
僕の名前が、書かれていた。しかし、姓が異なる。と言う以前に、この内容…。よく状況を呑み込めないでいると、背後から女性の声がした。
「見ましたね」
家政婦、ミセス・メドロックの姿がそこにあった。
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