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一年生・二学期
『十二○記』みたいなものかしらね
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9月1日 純情高校 晴れ
今日から、二学期が始まったわ。何だか、すでに三年間のイベントをこなしたくらい濃厚な展開だったわね?ここからは、本当に巻きで行くとしましょう。
さて、授業が終わって一人で下校しようと思っていた所よ。あまねと、一緒に帰らないのかって?このゲーム、下校イベントはキャラクター毎にランダムで発生する仕様なのよ…。こちらから誘えないのが、本当にもどかしい。まぁ他の女との下校イベントが発生しない分、あまねと帰る確率は結構高めかしらね。その点では、現状大きな不満はないわ…。
靴箱を開けると、何やら一通の手紙がアタシの靴の上に鎮座なさっていた。これは、恋文…?元のゲームには、無かったイベントね。あれだけ好感度を下げまくったと言うのに、未だに好意を向ける女子が存在するものかしら。そう思って、封を開けると…。
『進藤まひろ様
長年のしがらみに終止符を打つべく、この書をしたためました。
屋上にて、雌雄を決したくお待ち申し上げています。
ご覚悟の程、宜しくお願い致します』
これは、果し状!今の時代に、存在するのね!まぁこのゲームの発売当時は「平成」なんだけど、それでも決闘罪は適用された事でしょう。ってか「長年」って、アタシ入学してから半年も経ってないけど…?
まぁ、いいわ。色んな意味で、気になってきた。引き返して、屋上に赴く事としたわ。ふふっ。ここに来ると、如月桃を投げ飛ばして捨てた事がまるで昨日のように思い出されるわね。屋上には、一人の女学生が待ち構えていたわ。
彼女は、本来の攻略対象の一人である水無月杏子さん…。よくある、文系眼鏡を想像して頂ければいいわ。クラスが違うので、この周回では初対面と言う事になるわね。ツンデレキャラである彼女は元々の好感度が最低なので、敢えてこちらからアプローチする事は避けていたのよ。
「水無月さん、どうしたの?こんな所に呼び出したりして…。夕方からアルバイトなので、手短にしてもらえると助かるな」
「悪かったわね。それでは、単刀直入に。ズバリあなた…クラスメートの友崎あまねに気があるわね!?」
おぉっとー!?これは言葉通り、直球で来たわね…。まさか、あまねへの好意に気づかれていただなんて…!ってか、割と周りにバレバレだったかしらね。アタシ、あまり隠す気も無かったから。気づいていないのは、当のあまねだけだったりして…。
回答をどうするか一瞬迷ったけれど、変に隠していても仕方がないわね。ここは、正直に自分の気持ちを答える事にした。首を縦に振ると、彼女は何やら目に妙な光を灯しながら答えた。
「やっぱり!私のクラスでも、噂になっていたの。私、そう言うのすっごい好き…。ねぇ、よかったらお友達にならない?そして、あなた達の仲を応援させて欲しいの。文芸部で、あなた達をモチーフにした作品を発表しようと思って…」
あぁっと、これは…。あの水無月さんが、腐女子化しているー!?元々のゲームでは、むしろそう言うの嫌いそうだったのにね。本当、何もかもが新しいわ…。これも、迷う事なく首を縦に振ったわ。
そして、こちらの方は少し迷ったのだけれど…。アタシがこの世界にやって来た異分子であると言う事を、正直に伝えたわ。この世界は、元々男性向けの恋愛ゲームである事。彼女は当然ながら受け入れ難かったようだが、最終的にはアタシの言う事を信じてくれた。
「信じられない。この世界が、ゲームだったなんて…。だけど、私にも思い当たるフシは多々あるわ。その、異世界転生…?とかって言葉が、聞き慣れないけど。まぁ、『十二○記』みたいなものかしらね。いいわ、あなたの言葉を信じましょう。まひろ君、でいい?これからも、よろしくね」
「あぁ。俺の方こそ、これからもよろしく!」
そうして、二人で熱い握手を交わした。そう言えば、アタシの口調…。彼女の前だけでは元に戻そうかと迷ったけれど、まぁいいわ。このまま、男子高校生口調で。すっかりこの話し方にも慣れてきたし、元の口調は水無月さんと被るものね…。
ってか、このように「友人キャラ」として接する水無月さんもなかなか良いものね。元々キレイな顔立ちをしているけど、笑った表情がとっても可愛い…。本来の攻略対象の中では、結構お気に入りだったしね。
そして、こんな風に男性同士の恋愛について話せるってのも良いなぁ。ひとしきり、あまねの魅力について語り合ったわ。アタシ、学生時代から興味がなくは無かったけれど…。勉強一辺倒で、話せるような友達もいなかったしね。また昔のゲームのマイナーキャラなので、社会人になっても語る機会がありませんでした…。
「ところで、今の所『元のゲーム』とは色々違っているようだけど…。親友キャラであるあまね君は、本来攻略する事は出来ないのでしょう?どうするの?『プログラム』的に、どうしても結ばれない運命であったら…」
そのように、彼女が問うて来た。当然の疑問よね。その問題は、アタシもこの世界に来てすぐ思い至った。だけど、大丈夫。そんな事もあろうかと、現実世界にいた時からずっと用意していた物があるのよ。それは…。
「任意コードを、実行するよ!」
「…失礼、もう一度。何ですって?」
「だから、任意コードを使うよ」
任意コード。それは、プログラムの脆弱性を突いて文字通りに任意のコードを実行させる手段である。プログラム言語を少々かじったアタシは、あまねと結ばれる最終手段としてこれを保存していたのよ。最近では任意コードを実行したRTAやTASの動画も多いから、ご興味あれば覗いておかれる事をお薦めするわ。
「そう…なの?よく分かったわ。未だに、よく分かんないけど。構わないけど、あまりこの世界の本質を破壊するような変更は避けてよね。私、元々ゲームのキャラだからなのか、『バグ』を本能的に避ける傾向にあるの…」
これも、彼女の言った通りね。言われずとも、これはあまねと結ばれる方法が無いと判明した時の最終手段としたい。そして、何となくだけど…。任意コード実行に頼れるのは、ゲーム中でただ一回限りと言う確信がある。
今日から、二学期が始まったわ。何だか、すでに三年間のイベントをこなしたくらい濃厚な展開だったわね?ここからは、本当に巻きで行くとしましょう。
さて、授業が終わって一人で下校しようと思っていた所よ。あまねと、一緒に帰らないのかって?このゲーム、下校イベントはキャラクター毎にランダムで発生する仕様なのよ…。こちらから誘えないのが、本当にもどかしい。まぁ他の女との下校イベントが発生しない分、あまねと帰る確率は結構高めかしらね。その点では、現状大きな不満はないわ…。
靴箱を開けると、何やら一通の手紙がアタシの靴の上に鎮座なさっていた。これは、恋文…?元のゲームには、無かったイベントね。あれだけ好感度を下げまくったと言うのに、未だに好意を向ける女子が存在するものかしら。そう思って、封を開けると…。
『進藤まひろ様
長年のしがらみに終止符を打つべく、この書をしたためました。
屋上にて、雌雄を決したくお待ち申し上げています。
ご覚悟の程、宜しくお願い致します』
これは、果し状!今の時代に、存在するのね!まぁこのゲームの発売当時は「平成」なんだけど、それでも決闘罪は適用された事でしょう。ってか「長年」って、アタシ入学してから半年も経ってないけど…?
まぁ、いいわ。色んな意味で、気になってきた。引き返して、屋上に赴く事としたわ。ふふっ。ここに来ると、如月桃を投げ飛ばして捨てた事がまるで昨日のように思い出されるわね。屋上には、一人の女学生が待ち構えていたわ。
彼女は、本来の攻略対象の一人である水無月杏子さん…。よくある、文系眼鏡を想像して頂ければいいわ。クラスが違うので、この周回では初対面と言う事になるわね。ツンデレキャラである彼女は元々の好感度が最低なので、敢えてこちらからアプローチする事は避けていたのよ。
「水無月さん、どうしたの?こんな所に呼び出したりして…。夕方からアルバイトなので、手短にしてもらえると助かるな」
「悪かったわね。それでは、単刀直入に。ズバリあなた…クラスメートの友崎あまねに気があるわね!?」
おぉっとー!?これは言葉通り、直球で来たわね…。まさか、あまねへの好意に気づかれていただなんて…!ってか、割と周りにバレバレだったかしらね。アタシ、あまり隠す気も無かったから。気づいていないのは、当のあまねだけだったりして…。
回答をどうするか一瞬迷ったけれど、変に隠していても仕方がないわね。ここは、正直に自分の気持ちを答える事にした。首を縦に振ると、彼女は何やら目に妙な光を灯しながら答えた。
「やっぱり!私のクラスでも、噂になっていたの。私、そう言うのすっごい好き…。ねぇ、よかったらお友達にならない?そして、あなた達の仲を応援させて欲しいの。文芸部で、あなた達をモチーフにした作品を発表しようと思って…」
あぁっと、これは…。あの水無月さんが、腐女子化しているー!?元々のゲームでは、むしろそう言うの嫌いそうだったのにね。本当、何もかもが新しいわ…。これも、迷う事なく首を縦に振ったわ。
そして、こちらの方は少し迷ったのだけれど…。アタシがこの世界にやって来た異分子であると言う事を、正直に伝えたわ。この世界は、元々男性向けの恋愛ゲームである事。彼女は当然ながら受け入れ難かったようだが、最終的にはアタシの言う事を信じてくれた。
「信じられない。この世界が、ゲームだったなんて…。だけど、私にも思い当たるフシは多々あるわ。その、異世界転生…?とかって言葉が、聞き慣れないけど。まぁ、『十二○記』みたいなものかしらね。いいわ、あなたの言葉を信じましょう。まひろ君、でいい?これからも、よろしくね」
「あぁ。俺の方こそ、これからもよろしく!」
そうして、二人で熱い握手を交わした。そう言えば、アタシの口調…。彼女の前だけでは元に戻そうかと迷ったけれど、まぁいいわ。このまま、男子高校生口調で。すっかりこの話し方にも慣れてきたし、元の口調は水無月さんと被るものね…。
ってか、このように「友人キャラ」として接する水無月さんもなかなか良いものね。元々キレイな顔立ちをしているけど、笑った表情がとっても可愛い…。本来の攻略対象の中では、結構お気に入りだったしね。
そして、こんな風に男性同士の恋愛について話せるってのも良いなぁ。ひとしきり、あまねの魅力について語り合ったわ。アタシ、学生時代から興味がなくは無かったけれど…。勉強一辺倒で、話せるような友達もいなかったしね。また昔のゲームのマイナーキャラなので、社会人になっても語る機会がありませんでした…。
「ところで、今の所『元のゲーム』とは色々違っているようだけど…。親友キャラであるあまね君は、本来攻略する事は出来ないのでしょう?どうするの?『プログラム』的に、どうしても結ばれない運命であったら…」
そのように、彼女が問うて来た。当然の疑問よね。その問題は、アタシもこの世界に来てすぐ思い至った。だけど、大丈夫。そんな事もあろうかと、現実世界にいた時からずっと用意していた物があるのよ。それは…。
「任意コードを、実行するよ!」
「…失礼、もう一度。何ですって?」
「だから、任意コードを使うよ」
任意コード。それは、プログラムの脆弱性を突いて文字通りに任意のコードを実行させる手段である。プログラム言語を少々かじったアタシは、あまねと結ばれる最終手段としてこれを保存していたのよ。最近では任意コードを実行したRTAやTASの動画も多いから、ご興味あれば覗いておかれる事をお薦めするわ。
「そう…なの?よく分かったわ。未だに、よく分かんないけど。構わないけど、あまりこの世界の本質を破壊するような変更は避けてよね。私、元々ゲームのキャラだからなのか、『バグ』を本能的に避ける傾向にあるの…」
これも、彼女の言った通りね。言われずとも、これはあまねと結ばれる方法が無いと判明した時の最終手段としたい。そして、何となくだけど…。任意コード実行に頼れるのは、ゲーム中でただ一回限りと言う確信がある。
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