21 / 21
エーミール・クロフトの日記
泣いた赤鬼
しおりを挟む
○月□日 曇り
今日は少し予定を変えて、「泣いた赤鬼」の青鬼くんと会ってきたよ。何故かと言うと、まあそろそろ節分も近い事だしな。渋谷に美味しいモツ鍋屋があると言うので、二人で食らってきた!味噌よりもさっぱりとした醤油ダシが、僕は好きだな。
自然と話は、恋の話へ…。って、こればっかやな!?教科書の連中ってこんな奴ばっかなのか、僕の交友関係だと自然にこうなるのか?
幼なじみの赤鬼くんにぞっこんで、常日頃アピっているけど…。って、はいはいその下りはもう聞いたよ。まあ、そうは言っても「公式が最大手」と呼ばれるBL作品の登場人物だからな。逆に、そうでなければどうしようかと思っていた。
青鬼くんがこうまで秋波を送っていると言うのに、当の赤鬼くんはどこ吹く風で人間と仲良くしたがっているのだってさ。家の前に、「心のやさしい鬼のうちです。どなたでもおいでください。おいしいお菓子がございます。お茶も沸かしてございます」と書かれた立て札を置いて…。
って、いやいや逆に怪しいわ!新手のボッタクリでもあるまいし、信用して入ったらケツの毛まで抜かれそうじゃない!?実際に人間たちも、疑って誰一人遊びに来なかったんだってさ。そうだろうそうだろう。僕が人間でも…って、元々人間だけど…とても入れないわ。口座の暗証番号とか、盗み見られそう。
赤鬼は非常に悲しみ、しまいには腹を立ててせっかくの立て札を引っこ抜いてしまい…。って、そういう所だよそういう所。僕が言うのも何だが、君には辛抱と言う名の二文字が存在しないのか。おおかた人間たちにも、こいつを怒らせたら自分の首根っこが引っこ抜かれると思われたのだろう。
しかしまあ、青鬼くんの切なる想いを応援せぬ訳にはいかないな。これまた、及ばずながら知恵をお貸しする事となったよ。
名付けて、「敵の敵は味方」作戦。青鬼くんが人間の村へ出かけて、大暴れする。そこへ赤鬼が出てきて、彼をこらしめる。そうすれば人間たちにも、赤鬼がやさしい鬼だと分かるって寸法さ。どのくらいの暴れ方か?まあ、人死には出ない程度に願いたい。
ガチの乱闘になってもいけないので、赤鬼くんにもあらかじめ作戦は伝えておいたよ。村人たちに八百長と知れぬ程度に、始めは強く当たって後は流れでどうにかしたまえ!
作戦は成功し、赤鬼は人間と仲良くする事が出来た。村人たちは、赤鬼の家に遊びに来るようになった。ただ…赤鬼には、ひとつ気にかかる事があった。あれ以来、親友の青鬼が一度も遊びに来ないようになったのだ。赤鬼が近況報告も兼ねて青鬼の家を訪ねると、そこには一通の置き手紙が…。
「赤鬼くん、人間たちと仲良くして楽しく暮らして下さい。このままぼくと付き合っていると、君まで悪い鬼だと思われるかも知れません。ぼくは、旅に出るけれど…」
おや…。この辺り、打ち合わせと違う。台本では、赤鬼にたっぷりと恩を着せて関係を迫る予定であったのに。自分よりも、相手の幸せを願う…。これも一つの、愛の形であるのだろうか。赤鬼はそれを読んで、涙を流すこと二度や三度ではなかった。
…僕はそれを見て、慰めの言葉の一つでもかけてから退散するべきであったのだろうけど。何だろう、感情が昂ぶって奮い立って…。ルール違反と知ってはいるけど、つい作品の内容に干渉せざるを得なくなった。
「赤鬼くん。君は本当に、これでいいのかい。君が欲しかった幸せと言うのは、これかい?村人たちと仲良くする、それが本当に大切な事かい?どうでもいい奴ら百人より、死んでも守るべきたった一人との友情を選びたまえ!まだ間に合うよ。泣くだけだったら、赤子にでも出来る。さっさと、青鬼くんを探しに行くのだ…!」
我ながら恥ずかしいが、語りに語ってしまった。だけど赤鬼くんは、泣くのをやめて吹っ切れたような顔で立ち上がりどこかへ進んで行った…!
そうかそうか。君がそうまで決意したなら、きっと青鬼くんとはまた巡り会えるさ。どうぞ、いついつまでもお幸せに…!なあに。僕もきっと、「彼」のためならば他の全てを捨てる事が出来るだろうから。
後は願うばかりだ。これから繰り広げられる、青×赤の愛の世界を…!
え?カップリングとしては、赤×青であるべきだ…?そうかそうか。ならば戦争だ!
今日は少し予定を変えて、「泣いた赤鬼」の青鬼くんと会ってきたよ。何故かと言うと、まあそろそろ節分も近い事だしな。渋谷に美味しいモツ鍋屋があると言うので、二人で食らってきた!味噌よりもさっぱりとした醤油ダシが、僕は好きだな。
自然と話は、恋の話へ…。って、こればっかやな!?教科書の連中ってこんな奴ばっかなのか、僕の交友関係だと自然にこうなるのか?
幼なじみの赤鬼くんにぞっこんで、常日頃アピっているけど…。って、はいはいその下りはもう聞いたよ。まあ、そうは言っても「公式が最大手」と呼ばれるBL作品の登場人物だからな。逆に、そうでなければどうしようかと思っていた。
青鬼くんがこうまで秋波を送っていると言うのに、当の赤鬼くんはどこ吹く風で人間と仲良くしたがっているのだってさ。家の前に、「心のやさしい鬼のうちです。どなたでもおいでください。おいしいお菓子がございます。お茶も沸かしてございます」と書かれた立て札を置いて…。
って、いやいや逆に怪しいわ!新手のボッタクリでもあるまいし、信用して入ったらケツの毛まで抜かれそうじゃない!?実際に人間たちも、疑って誰一人遊びに来なかったんだってさ。そうだろうそうだろう。僕が人間でも…って、元々人間だけど…とても入れないわ。口座の暗証番号とか、盗み見られそう。
赤鬼は非常に悲しみ、しまいには腹を立ててせっかくの立て札を引っこ抜いてしまい…。って、そういう所だよそういう所。僕が言うのも何だが、君には辛抱と言う名の二文字が存在しないのか。おおかた人間たちにも、こいつを怒らせたら自分の首根っこが引っこ抜かれると思われたのだろう。
しかしまあ、青鬼くんの切なる想いを応援せぬ訳にはいかないな。これまた、及ばずながら知恵をお貸しする事となったよ。
名付けて、「敵の敵は味方」作戦。青鬼くんが人間の村へ出かけて、大暴れする。そこへ赤鬼が出てきて、彼をこらしめる。そうすれば人間たちにも、赤鬼がやさしい鬼だと分かるって寸法さ。どのくらいの暴れ方か?まあ、人死には出ない程度に願いたい。
ガチの乱闘になってもいけないので、赤鬼くんにもあらかじめ作戦は伝えておいたよ。村人たちに八百長と知れぬ程度に、始めは強く当たって後は流れでどうにかしたまえ!
作戦は成功し、赤鬼は人間と仲良くする事が出来た。村人たちは、赤鬼の家に遊びに来るようになった。ただ…赤鬼には、ひとつ気にかかる事があった。あれ以来、親友の青鬼が一度も遊びに来ないようになったのだ。赤鬼が近況報告も兼ねて青鬼の家を訪ねると、そこには一通の置き手紙が…。
「赤鬼くん、人間たちと仲良くして楽しく暮らして下さい。このままぼくと付き合っていると、君まで悪い鬼だと思われるかも知れません。ぼくは、旅に出るけれど…」
おや…。この辺り、打ち合わせと違う。台本では、赤鬼にたっぷりと恩を着せて関係を迫る予定であったのに。自分よりも、相手の幸せを願う…。これも一つの、愛の形であるのだろうか。赤鬼はそれを読んで、涙を流すこと二度や三度ではなかった。
…僕はそれを見て、慰めの言葉の一つでもかけてから退散するべきであったのだろうけど。何だろう、感情が昂ぶって奮い立って…。ルール違反と知ってはいるけど、つい作品の内容に干渉せざるを得なくなった。
「赤鬼くん。君は本当に、これでいいのかい。君が欲しかった幸せと言うのは、これかい?村人たちと仲良くする、それが本当に大切な事かい?どうでもいい奴ら百人より、死んでも守るべきたった一人との友情を選びたまえ!まだ間に合うよ。泣くだけだったら、赤子にでも出来る。さっさと、青鬼くんを探しに行くのだ…!」
我ながら恥ずかしいが、語りに語ってしまった。だけど赤鬼くんは、泣くのをやめて吹っ切れたような顔で立ち上がりどこかへ進んで行った…!
そうかそうか。君がそうまで決意したなら、きっと青鬼くんとはまた巡り会えるさ。どうぞ、いついつまでもお幸せに…!なあに。僕もきっと、「彼」のためならば他の全てを捨てる事が出来るだろうから。
後は願うばかりだ。これから繰り広げられる、青×赤の愛の世界を…!
え?カップリングとしては、赤×青であるべきだ…?そうかそうか。ならば戦争だ!
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる