エーミール・クロフトの憂鬱

エーミール・クロフトの日記

走れメロス

○月△日　晴れ

　今日は予告通り、メロスの友人セリヌンティウス君と会ってきた。銀座に美味しいジンギスカンの店があると聞いたから、二人で舌鼓を打ってきたよ。

　箸を進める事もしばし。自然と話題は、恋の話となった。我ながら、女子会の流れだと思うけどね。
　幼なじみのメロス君にぞっこんで、常日頃アピってはいるけど全く当人に通じる気配がないんだってさ！分かるわー。僕も、そう言う唐変木な幼なじみを若干一名ほど知っている。
　聞くほどに他人事とは思えないので、僕も及ばずながら知恵を差し出す事となったよ。ディオニス王と妹ちゃんにも、ここは協力してひと芝居打っていただく。
　なに、ちょっと王には人間不信になってシラクスの民を処刑しまくって頂くだけさ。メロス君は単純な正義バカだから、これを見て激怒するだろう。案の定、暗殺とか試みやがった！自分で仕掛けといてなんだけど、少しは話し合いを試みてはいかがだろう！？
　まあいい。折よく妹ちゃんは結婚するので、その結婚式を拝むために三日の猶予を申し出る。ちなみに妹ちゃんは16歳、ピチピチの幼妻だよ！
　そこで身代わりを買って出るのが、ご存知セリヌンティウス君さ！友の逆境に我こそはと駆けつけるその純情、これは心が揺らがぬ筈がないね！立ち位置も、ちょっとピーチ姫みたいだしさ！
　…ちなみに雑学トピで知ったけど、実際には走らなくても余裕で間に合う距離らしいね？あんまり簡単でも盛り上がりに欠けるため、ここは濁流やら山賊やらにご協力願おう。いい感じに、メロスの足止めをする事が出来たぞ！
　…纏っている衣服が勢いで剥ぎ取られてしまったのが、計算外と言うか計算通りのような状況だけど。シラクスの民、目に毒だよ。僕ほどでないにせよ、全裸の美少年が街中を疾走しているのだからね。王も王で、両目を手で隠して見ないようにしている…。振りをして、指の隙間からしっかりと見ている！
　そして、裸のメロスを包み込む（意味深）セリヌンティウス君。愛と感動の、グランドフィナーレだ！結婚式にいた筈の妹も何故か駆けつけて、「次のイベントはセリヌンティウス×お兄ちゃん本で～」とかぬかしているぞ。そうかそうか、君もまた腐っていたのだね。

　いやあ、なかなか上手くいったじゃないか。他ならぬ、僕のプロデュースなので当たり前の話なのだが。
　これ、同じ事を僕もやってみようかな。僕の時代に暴君はいないから、悪役は先生とかガキ大将あたりにお願いしてさあ。それで、もし彼が助けに来てくれなかったら？
　…ふふ。その時は、僕の方が激怒するかな。

　次回の予定は、未定だ！スイミーかごんぎつねか、羅生門の下人あたりと会おうかな？