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第一章
2.
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黒尽くめの男が私を降ろした。
天幕の中には、植物の模様が織られた毛足の長い美しい絨毯がひかれていて、足裏の柔らかさにほっとする。
「俺は何にもしてないぞ。勝手にこうなったんだ」
黒男が言う。
私は途端に恥ずかしくなった。この、顔がはっきりわからないとはいえ、明らかに美しい姿形をした王の前であまりに自分はみすぼらしかった。
「お恥ずかしく存じます、陛下。橋を渡るのに……」
私が言い訳を終える前に、王は側まで来ると自分の艶やかな光沢の青いマントを脱ぎ、私の肩にかけた。マントの重さと共に、ふわりとした甘やかな香りと温かさに包まれた。
胸が思いもよらない高まりを見せ、悟られなかったか、一瞬心配になる。
「我が国へようこそ、美しい花嫁殿。つらい道行を謝ります。別天幕に着替えが用意してあります。温かい食事も用意させていますので、このような野の中ですが、一晩ゆっくりお休み下さい」
落ち着いていて柔らかな声だった。そして予想以上に丁寧な物言いであった。張り詰めていた緊張感と警戒心が緩む。
やっぱりさっきの吊り橋は我が兄王の発案に違いないわ。
が、そんな気持ちにすぐに水がさされた。
「その前に話す事を話しとけよ」
黒男が言う。さっきから傍若無人な物言いといい、何なのだ、この男。
ヴィデル王は軽くため息をついた。
「……そうですね。そうすべきでしょうね。先に少し話に付き合って頂けますか?」
そう私に笑いかけたと思われる声で話す王の表情は、仮面に阻まれ見えない。
天幕の中には、植物の模様が織られた毛足の長い美しい絨毯がひかれていて、足裏の柔らかさにほっとする。
「俺は何にもしてないぞ。勝手にこうなったんだ」
黒男が言う。
私は途端に恥ずかしくなった。この、顔がはっきりわからないとはいえ、明らかに美しい姿形をした王の前であまりに自分はみすぼらしかった。
「お恥ずかしく存じます、陛下。橋を渡るのに……」
私が言い訳を終える前に、王は側まで来ると自分の艶やかな光沢の青いマントを脱ぎ、私の肩にかけた。マントの重さと共に、ふわりとした甘やかな香りと温かさに包まれた。
胸が思いもよらない高まりを見せ、悟られなかったか、一瞬心配になる。
「我が国へようこそ、美しい花嫁殿。つらい道行を謝ります。別天幕に着替えが用意してあります。温かい食事も用意させていますので、このような野の中ですが、一晩ゆっくりお休み下さい」
落ち着いていて柔らかな声だった。そして予想以上に丁寧な物言いであった。張り詰めていた緊張感と警戒心が緩む。
やっぱりさっきの吊り橋は我が兄王の発案に違いないわ。
が、そんな気持ちにすぐに水がさされた。
「その前に話す事を話しとけよ」
黒男が言う。さっきから傍若無人な物言いといい、何なのだ、この男。
ヴィデル王は軽くため息をついた。
「……そうですね。そうすべきでしょうね。先に少し話に付き合って頂けますか?」
そう私に笑いかけたと思われる声で話す王の表情は、仮面に阻まれ見えない。
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