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第ニ章
12.
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甲高い金属音が雨音の中に響き渡った。ヴィルマが横からふいに現れた剣と持ち主の男に剣を突きつけた。鮮やかで強烈な一打にみえた。だが男は上手く弾きかえし怯む事なく剣を振う。
戦いの決着は思ったより早かった。
ヴィルマが剣を落とし膝を地面につける。その頭の側面を相手の足先が蹴り倒した。
「ヴィルマ!」
私は踏み荒されて泥水が溜まっている地面に倒れ込むヴィルマに駆け寄った。
こんなに早く、簡単に彼女が負けるなんて……。
息は荒く額からは血が流れていて目は閉じられていた。私は片膝をついて倒れ込むヴィルマの背に手を当てる。そんな私の頸元に剣が伸びた。
「立て」
男は私に立つように指示する。そしてすぐ近くにいたヴィルマが乗ってきた馬に騎乗するよう命令した。
「ヴィルマ……」
私は不安と迷いで彼女を見る。ヴィルマはなんとか立ちあがろうとしていたが、また膝をついた。
「いいから乗れ」
剣はつきつけられたままだ。躊躇したが馬に跨った。男は馬を抑えていたが私が騎乗するとすぐ後ろに跨る。
全身に反射的に悪寒が走る。だが、唇をかんで我慢する。
男は手綱を握る。
「ヴィルマ!」
何とか立ち上がった彼女があっという間に後方に見えなくなった。
「私をどうするつもりですか」
「……」
私の問いに男は無言だった。
「私が何者か知っていての暴挙ですか」
改めて問う。
「言うことさえ聞いてくだされば無体な事はしない。姫君」
やはり、わかっているらしい。そして物言いが硬くはあったが冷静で丁寧で暴力的な要素はなかった。驚く。本当に何者?
聞いたところで答えてくれそうにないな。それもだけどヴィルマは大丈夫かしら。立ち上がってはいたけれど。ああ、なんて事。ここでヴィルマを失ったら……。
私は後ろを振り返りたくなった。が、男はカルと違って支えてくれるわけではなく、……むしろそれはよかったのだが……、自分でバランスをとる必要があり振り向く余裕はなかった。そもそも今更姿が確認できるわけではないのはわかっているし。
でも、ああ……。
「あの女騎士の事なら心配ない」
ふいに男が言った。
「え?」
「頭への衝撃で一時的にああなっただけだ。たいした外傷は与えていない。時間がたてば歩ける」
「……え?」
私は男の言葉に素直に喜びが湧いた反面、どこまで信じればいいのか、混乱した。
確かにヴィルマは大きな怪我は負ってないようにみえた。そういえば。でも、なぜ? あの状態なら命を取る事は考えてみれば容易なのに放置した。それに、そうよ、ヴィルマから武器を取り上げてもいない。
「何故?」
「まだ使える可能性がある。それだけだ」
男の声は落ち着いている。
「私をどうするつもりですか」
再び聞く。
「ある人物の元に連れて行く。……王の元に」
思った通りの答えだった。
雨が手先を濡らし続ける。そして体温を奪い心を冷やしていくのは雨だけではなかった。
馬は歩き続ける。
戦いの決着は思ったより早かった。
ヴィルマが剣を落とし膝を地面につける。その頭の側面を相手の足先が蹴り倒した。
「ヴィルマ!」
私は踏み荒されて泥水が溜まっている地面に倒れ込むヴィルマに駆け寄った。
こんなに早く、簡単に彼女が負けるなんて……。
息は荒く額からは血が流れていて目は閉じられていた。私は片膝をついて倒れ込むヴィルマの背に手を当てる。そんな私の頸元に剣が伸びた。
「立て」
男は私に立つように指示する。そしてすぐ近くにいたヴィルマが乗ってきた馬に騎乗するよう命令した。
「ヴィルマ……」
私は不安と迷いで彼女を見る。ヴィルマはなんとか立ちあがろうとしていたが、また膝をついた。
「いいから乗れ」
剣はつきつけられたままだ。躊躇したが馬に跨った。男は馬を抑えていたが私が騎乗するとすぐ後ろに跨る。
全身に反射的に悪寒が走る。だが、唇をかんで我慢する。
男は手綱を握る。
「ヴィルマ!」
何とか立ち上がった彼女があっという間に後方に見えなくなった。
「私をどうするつもりですか」
「……」
私の問いに男は無言だった。
「私が何者か知っていての暴挙ですか」
改めて問う。
「言うことさえ聞いてくだされば無体な事はしない。姫君」
やはり、わかっているらしい。そして物言いが硬くはあったが冷静で丁寧で暴力的な要素はなかった。驚く。本当に何者?
聞いたところで答えてくれそうにないな。それもだけどヴィルマは大丈夫かしら。立ち上がってはいたけれど。ああ、なんて事。ここでヴィルマを失ったら……。
私は後ろを振り返りたくなった。が、男はカルと違って支えてくれるわけではなく、……むしろそれはよかったのだが……、自分でバランスをとる必要があり振り向く余裕はなかった。そもそも今更姿が確認できるわけではないのはわかっているし。
でも、ああ……。
「あの女騎士の事なら心配ない」
ふいに男が言った。
「え?」
「頭への衝撃で一時的にああなっただけだ。たいした外傷は与えていない。時間がたてば歩ける」
「……え?」
私は男の言葉に素直に喜びが湧いた反面、どこまで信じればいいのか、混乱した。
確かにヴィルマは大きな怪我は負ってないようにみえた。そういえば。でも、なぜ? あの状態なら命を取る事は考えてみれば容易なのに放置した。それに、そうよ、ヴィルマから武器を取り上げてもいない。
「何故?」
「まだ使える可能性がある。それだけだ」
男の声は落ち着いている。
「私をどうするつもりですか」
再び聞く。
「ある人物の元に連れて行く。……王の元に」
思った通りの答えだった。
雨が手先を濡らし続ける。そして体温を奪い心を冷やしていくのは雨だけではなかった。
馬は歩き続ける。
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