俺の武術は異世界でも最強だと証明してやる!

ぽりまー

文字の大きさ
13 / 58
回復術士を仲間にしよう

13話

しおりを挟む
 フェイロンは武道でいう型の動作を始めた。詩音はこの行動に強烈な予感を感じ取った。
「縮地ッ!!」
詩音は一瞬で相手との距離を詰め、フェイロンの方を阻止せんとばかりに攻め立てる。右、左、膝、蹴りを高速で繰り出す。対するフェイロンは躱す、受ける、殴られるを繰り返しながら、型を進めていく。そしてついにその時が来た。
「詠唱が終わりました。あなたもこれで終わりです! アネモイ・リリーフ」
街の上空が黒雲に覆われ、風が吹き雨が降り始め、次第に強くなっていった。
「これ、台風か?」
「まもなくここに嵐が起こります。それもこの街をすべて吹き飛ばしてしまうほどのね。これで街ごとあなたを消して差し上げますよ。さあ、どうします! あなたならこれをどう切り抜けますか!」
「街が無くなるレベルの台風か。早く何とかしちまわないとやべぇ。これが通用するか、一か八かやるしかねえ!」
詩音は技を打つ体制に入る。
「コォアアアアアアア」
大きく呼吸をし、腰を低く落とす。両腕を胸の前で交差させ、気をためる。
「島原流、気錬点掌波きれんてんしょうは
気錬掌波を一点集中させ伸ばした両腕から放つ。そして光線が飛び出し、黒雲に向かい射出される。その後に上空で衝撃波による爆風が起こり、黒雲は四散していった。
「ハァ……ハァ……いけたか……」
「な……私のアネモイ・リリーフがいとも簡単に……」
「別に簡単じゃなかったぜ。完成する前だったからだ。それより、お前がでかい魔法を出したんだ。こっちもお返しと行こうか!」
詩音はまたも縮地で間合いに入る。そして連続で技を打ち出す。
「島原流、旋風」
まずは回し蹴りの三連発。フェイロンは2撃目までは受けきるが、最後はまともにくらってしまう。フェイロンの体制が崩れたところへ追撃を放つ。
「島原流、閃拳」
フェイロンの腹部に光速の拳を打ち込む。そして、腹を抱え、悶絶しているフェイロンの顎を蹴り上げ宙に浮かす。着地したところで技を打ち込む。
「島原流、炎鉈」
炎に包まれた足でかかと落としを決める。着地したフェイロンはこれを反射的に受け止める。しかしあまりの威力に腕ごと叩きつけられそうになった為、のけぞるようにして受流す。
「それを待ってたぜ」
詩音はフェイロンの左太ももに飛び乗り、回転する。
「島原流、独楽こま
回転の遠心力を使い、フェイロンの側頭に後ろ回し蹴りを叩きこむ。回転の速さ、そして足に集中させた気により威力が増し、フェイロンの頭蓋骨を砕いた。
「ゴハッ…………」
フェイロンはもう立つことができなかった。
「これだけくらってまだ生きてるとは、流石だぜ」
「もう、立つどころか指を動かすこともかないません。こうして話しているのがやっとです。詩音、あなたは本当に強い。私の完敗です。ですが、とても楽しかった」
「ああ、俺もお前みたいな強い敵とやれて幸福だ」
「そう言っていただけると幸いです…………そろそろ辛くなってきました。詩音、あなたが楽にしてくれませんか?」
「ああ、わかった。じゃあな」
そう言うと詩音は手刀でフェイロンの頸椎を折った。

 戦いを終えた4人は合流した。
「ルナ! 詩音! 無事だったか!」
「ええ、私は大丈夫です。クレアさんたちも大丈夫そうですね。詩音さんは……大けがじゃないですか!!」
ルナは切り傷まみれの詩音をみて絶叫した。
「いやただの切り傷だし」
「だとしても数が多すぎます! 相当激しい戦いをされていたんですね」
「まあな。相手は魔王軍幹部だったみたいだし」
「それはなんともう……すごいな。そうだ、クリスタ、詩音にも回復魔法をかけてやってくれないか。この重症でも治せるだろう?」
「ええ、お安い御用です。ですがまずはここに戦いに巻き込まれ負傷した人たちを集めましょうか」
「先に詩音を回復してからでいいのではないか?」
「一度にまとめた方が効率もいいですし。詩音さん、それまで待てますよね?」
「えっと」
クリスタは声に凄みを出して言う。
「待てますよね?」
「うっす」
「ではクレアさん。けが人を探しに行きましょうか。ルナさんは詩音さんと待っていてください」
そう言うと二人は行ってしまった。
「やっぱやばいかなあの人」
「そ、そうですね……術士としては優秀そうですけど、性格が凄そうです……」
「だよなあ。あれって結構ドSなとこあるぞ絶対」
「そうかもしれないですね……」
「まあでも、俺はあいつにパーティーに入ってほしいな」
「そうなんですか?」
「ああ。クリスタのやつ、ああは言ってるが怪我をした人たちを助けようとしてるし、それにクレアの鎧がへこんでいたが本人は怪我が無かった。あれはクレア自身が丈夫ってのもあるかもしれないが、クリスタが回復魔法をかけてくれたんだろう。だから根はやさしいやつだと思うな」
「確かにそうですね。クリスタさん、了承してくれるといいですね」
ルナと詩音が話していると、クレアたちがけが人を連れて戻ってきた。
「おーい! 連れてきたぞ!!」
けが人は重症が10人程度で、あの戦いにしては少なかった。
「おい、俺たち怪我してんだぞ。その場で治してくればよかったのに……」
市民たちは少し不満なようだった。
「一度にやれば効率がいいんです。みなさん、そこに集まってください。詩音さんも」
「おお」
クリスタは詠唱を開始する。
「ゴッド・ブレス」
すると、全員の怪我が一瞬で完治した。
「おお、すげぇ」
詩音は驚きの声を漏らす。
「クリスタさん、上級回復魔法まで使えるんですね」
「さ、これで治療は終わりましたよ」
「ありがとな。クリスタ。それと、戦いも終わったんだ、返事を聞こうか」
「パーティーの件ですか。あなた方面白いですし、お供したいのは山々なのですが、まだ術士の免許を取っていないので……」
「その件は大丈夫だぞ」
学校側から一人の老人が歩いてきた。白髪に長いひげを生やしており、神父のような服を着こなす老父だ。
「校長先生」
「まずは皆さんにお礼を言いたい。急な魔王軍幹部の襲撃に際し、よくぞこの街を守ってくれた。校長兼市長としてとても感謝している」
「当然のことをしたまでだ」
「いえいえ、とんでもないです」
「いやぁ、照れますなぁ」
三者三様の反応を返す。
「いや、あなたたちの健闘のおかげだ。あとで礼はしっかりとさせてほしい。それと」
校長はクリスタの方を見る。
「クリスタよ、お前はこの戦いに巻き込まれながらも仲間を支援し、そして上級魔法、ゴッド・ブレスでけが人を治したその功績から判断し、お前に回復術士の最高位、一級術士の免許を与えよう」
「本当ですか!?」
「ああ、だからその3人の仲間に加わり、活躍して参れ!!」
「はい! ありがとうございます!」
「良かったな、クリスタ。というわけでよろしくな」
詩音は握手をしようと手を伸ばす。
「はい、こちらこそ」
クリスタは詩音の手を握り返した。
「しかし疲れたな。詩音、今日はどこかに泊まって、明日帰らないか?」
「今日といわず何日か滞在しよう。いくつか建物壊れてるけど出店はやってるかもだし。俺、まだここの食べ物全部制覇してねぇもん」
「いい案だ。ではそうするか」
「はい!」
「美味しいお店、紹介しましょうか?」
「マジか! よーし、明日は食べまくるぞ!!」
「「「おー!」」」
その後4人はパルスの街を満喫し、数日後に王都へ帰るのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

身寄りのない少女を引き取ったら有能すぎて困る(困らない)

長根 志遥
ファンタジー
命令を受けて自らを暗殺に来た、身寄りのない不思議な少女エミリスを引き取ることにした伯爵家四男のアティアス。 彼女は彼と旅に出るため魔法の練習を始めると、才能を一気に開花させる。 他人と違う容姿と、底なしの胃袋、そして絶大な魔力。メイドだった彼女は家事も万能。 超有能物件に見えて、実は時々へっぽこな彼女は、様々な事件に巻き込まれつつも彼の役に立とうと奮闘する。 そして、伯爵家領地を巡る争いの果てに、彼女は自分が何者なのかを知る――。 ◆ 「……って、そんなに堅苦しく書いても誰も読んでくれませんよ? アティアス様ー」 「あらすじってそういうもんだろ?」 「ダメです! ここはもっとシンプルに書かないと本編を読んでくれません!」 「じゃあ、エミーならどんな感じで書くんだ?」 「……そうですねぇ。これはアティアス様が私とイチャイチャしながら、事件を強引に力で解決していくってお話ですよ、みなさん」 「ストレートすぎだろ、それ……」 「分かりやすくていいじゃないですかー。不幸な生い立ちの私が幸せになるところを、是非是非読んでみてくださいね(はーと)」 ◆HOTランキング最高2位、お気に入り1400↑ ありがとうございます!

処理中です...