俺の武術は異世界でも最強だと証明してやる!

ぽりまー

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激闘! アーレス祭

19話

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 観客の数は、流行り病対策の為に間隔をあけ、入場制限を設けられていたため例年よりも少なかったが、それでも満席の時と大差ないほどの盛り上がりを見せていた。今回は例年よりも実力ぞろいであり、特に二回戦は予選で注目を集めていた二人の試合だからだ。そして詩音とオーベロンの二人が入場すると、最高潮の盛り上がりを見せた。
「さあ選手が入場してきたぞ! アーレス祭第二回戦は二人とも予選、本戦、第一回戦共に圧倒的な実力差を見せてきた今回の大本命とも言える試合だ! 両者ポジションに着いた! まもなく第二回戦が開幕する!」
詩音はウォームアップをしながらオーベロンに話しかける。
「お前はここまで上がってくると思ってたぜ」
「ボクは正直驚いてるよ。でもこれで詩音とできるんだね」
「ああ。それと、いまこの街に流行り病があるのは知ってるか?」
「ああ知ってるよ」
「実はそれが病じゃなくて呪いだったんだよな」
オーベロンは微かに動揺した様な仕草をした。
「それがどうしたっていうんだい?」
「で、仲間にいろいろ調べて貰ったんだが、オーベロン、お前の仕業らしいな」
オーベロンは、すべて知ってしまった詩音を馬鹿だとでも言う様に冷笑した。
「詩音、君は知っちゃいけないことを知ってしまった。君の仲間もか。どうせこの余興を楽しんだ後でこの街を潰すつもりだったし」
オーベロンの柔らかい雰囲気が一変し、まるで悪魔と対面しているかのような感覚が詩音を襲った。
「改めて自己紹介するよ。ボクは魔王軍幹部の蟲王ちゅうおうオーベロン。この街に災厄をもたらしに来たんだ。この街は人間にとってとても大事な街でしょ? だからこの街を滅ぼすからその前に呪いの実験をしてたってわけ」
「人を実験に使ったってことか」
「許せないかな? まあ、ばれてしまった事は仕方ないし。予定を早めてもうこの街を滅ぼすことにしたよ。そら!」
オーベロンは両手を振り上げると、空から大量の蟲が沸き、街の方へ飛んで行った。
「この子たちは人の肉が大好きなんだ。ボクの言ってる意味、分かるよね?」
観客席にも蟲が押し寄せ、客を襲おうとする。ニコラスはアナウンスを使い懸命に避難指示を出していた。
「さあ、どうする? 早くあれを何とかした方がいいんじゃない? 何とかできるなら、ね」
オーベロンは詩音を馬鹿にしたように笑う。
「右京ー!」
観客席の方から男の叫び声がした。
「右京! この蟲どもはこのルキウスとお前の仲間で対処しよう! お前はオーベロンを倒せ!」
ルキウスとルナたちが客席の方へ出てきていた。
「詩音さん! 街の方も私たちで何とかします!」
「なに、任せておけ! 詩音もそっちは任せたぞ!」
「お仲間はそういってるけど、君はどうするの?」
「あいつらがああいってるんだ。俺は信用するよ」
「互いに信頼し合ってるんだ。そういうの気色悪いよ」
「それだけじゃない。あっちを任せられて、そしてお前を任されてることに感謝してるよ」
詩音は嬉しそうに笑い、言葉を続ける。
「こんな状況でも、お前としあえる、やらせてくれることに!」
「あはははは! 君らしいや! それ。いいよ、約束したもんね。相手してあげる。でも、今度は試合じゃない、ほんとに殺しちゃうから」
オーベロンはそういうと詩音に向かい突撃した。

 観客席の方の蟲はルキウスとクレアに任せ、ルナとクリスタは街の方へ向かっていった。街は蟲が大量発生しており、人を襲っている。街は大混乱に陥っていた。
「相当発生してますね。クリスタさんはけが人の回復を。私は虫たちを駆除します」
「解かりましたわ」
クリスタは蟲に食われた人たちを回復し始めた。
「魔法は派手なものだけではありません。むしろ精密な魔力操作ができてこそ、本物の魔法使いと呼べるのです!!」
ルナは火属性魔法の詠唱を開始した。
「カウントレス・フレイム!」
詠唱後、無数の火が出現し、虫を一匹一匹燃やした。
「大きな火を使うと家ごと燃やしてしまうかもしれませんからね。人にもそこまで影響が出ませんし。だからこそこのカウントレスフレイムが活躍するのです!」
「とてもうれしそうですね……」
ルナは楽しそうにカウントレスフレイムを唱え続ける。
「魔法使いのみなさんは総じてカウントレスフレイムは使えないというんです。確かに一つ一つの火は小さく攻撃能力は低いですが、それは使い方がなってないだけなのです! いい使い方、そしてレベルの高い魔法の調節能力をもってすれば! たとえこのようなマイナー魔法でも大活躍できるのです!」
「本当に魔法がお好きなのですね」
「さあ、どんどん行きますよ! クリスタさんも、回復どんどんやっちゃってください!」
「はいはい……」
街の虫たちはみるみる駆除されていった。

 闘技場ではオーベロンと詩音の戦闘が始まっていた。オーベロンは初撃で貫手を繰り出す。詩音は貫手が脇を掠めながらも前に出て、右でオーベロンの顔面を叩く。オーベロンは吹き飛ぶも、回転しながら蹴りを放つ。詩音はそれを左腕で受けた。
「まずは俺が一発だな」
「まあ、前の奴らよりはやるみたいだね。でも、次はそうはいかないよ」
オーベロンは更に攻撃を仕掛ける。先ほどの攻撃は全く本気でなかったかのように、この技は速く重かった。オーベロンの繰り出した前蹴りが詩音の腹部を蹴り抜く。詩音は痛みでうずくまる……と見せかけ、一回転し浴びせ蹴りを放つ。しかし、オーベロンに軽く躱されてしまった。
「次はボクが一発だね。でも、反撃してくるとは思わなかったな」
「めちゃくちゃ重い蹴り持ってるじゃないか。やっぱり魔王軍幹部は面白れぇ」
「やっぱり魔王軍幹部は面白い、か。まるで過去に魔王軍幹部と戦ってるみたいな口ぶりだね」
「ああ、パルスでフェイロンと戦ったな。あいつは風魔法を巧みに使う良い戦士だった」
「ああ、フェイロンをやったのは君だったんだね。まあボクはフェイロンと仲が言い訳ではないから何とも思わないけど。でも君が強いってこと、分かったから。ボクは本気で殺しに行くからね」
オーベロンは蟲を体に纏わせる。すると体がみるみる変形、巨大化していく。そして詩音の二倍はあろうかという大きさまでになった。
「これで君も終わりだよ。もう命乞いしても容赦しないから」
「巨大化は力もウェイトも強くなって一見圧倒できるように思えるけど、格闘はそんな甘いもんじゃないぜ」
詩音は構え方を変えた。右足を引き下半身は変わらない姿勢をとる。しかし、上半身は相手に向け、両手を開いて前に構える。打撃を加えることを目的としたものではなく、投げ技、合気、そしてその後の寝技につなげるための構えだ。
「俺の国には自分よりでかい相手をぶっ倒す為に編み出されたやわらっていう技がいくつもあるんだ。お前がどれだけでかくなっても俺が地面に叩きつけまくってやる」
「柔、ねぇ。どんなものか分からないけど、なにをしてもボクには意味がないさ。まあ気が済むまでするといいよ。そして自分の無力を思い知るといい!」


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