俺の武術は異世界でも最強だと証明してやる!

ぽりまー

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ルナとエスティアス村

28話

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「何を持ってきたかは知らねえが俺の装甲は誰にも破られねえ!」
「なにか策があるのですか? 詩音さん」

 詩音は鯉口を切り、柄を握って構えた。

「いくぞ」

 詩音はクラッシュに向かい走る。そして一瞬で間合いに入った。

「島原流、疾雷しつらい

 詩音は右足を踏み込み、抜刀する。刀身は加速していき抜刀しきった時点で残像すら残らぬほどの域まで達していた。

 クラッシュの装甲に刃が接触する。そして落雷の様な音を立てながら刀身が一文字を描いた。

 装甲を破ることは出来なかったが確かに斬り傷をつけていた。

「まだだぜ」

 詩音は刀を振り上げ、上段の構えをとる。

「島原流、甲裂斬こうれつざん

 荷重を上にあげ、落下の勢いを乗せて切り下した。

 ここで疾雷、甲裂斬について説明しておく。

 まず島原流疾雷。島原流の剣術最速の居合技で、一見すればただ抜刀して横に切りつけているだけだが、この技はなんといっても一太刀が速いということに尽きる。体全身を使い抜刀し、最速で振り抜く。これが達人の域になれば、風を切る音がまるで雷鳴のように轟くようになる。

 続いて甲裂斬。これは戦国時代において多く使用された技で、重心の落下による加速と自分の体重を刀に乗せ、振り下ろす技だ。その威力は絶大で、敵を甲冑ごと真っ二つにしてしまう。鉄など硬いものを切ることに長けたこの技であるが、逸話によれば一振りで山を割ったという。ちなみになぜ現代において戦国時代の島原流に関する文書が残されていないのかというと、まず島原流を使う人が少なく、無名の兵士ばかりであった為とも、秘匿の為に焼却されたともいわれている。

 詩音の甲裂斬はクラッシュを装甲ごと二つに分断し、程なくして事切れた。

「詩音くん! やったではないか!!」
「刀が刃こぼれしてるな。まだまだだなあ俺も」
「今回は回復魔法が使えたのでよかったです。ですがあなた方怪我しなさすぎで面白くありませんね」
「不謹慎だぞ……そういえばルナたちは大丈夫かな」
「すぐにルナのもとへいくぞ」

 三人はルナのもとへ向かった。



 煙が晴れると、ヒメラは次の魔法詠唱をしていた。

「次は爆発系いくよぉ。氷なんかじゃ絶対防げないからね~」
「ダークマター」
「エクスプロージョン!!!」

 ヒメラは爆裂魔法を唱えた。ルナはその爆心地を覆う様に観測不可の物質を出現させる。その物質の中で大爆発が起きたため、周りに被害が及ばなかった。

「また黒魔法。人が黒魔法を使い、それを魔王軍に向けるなんて、アンタ人も魔王軍もどっちも裏切り続けてるって自覚ある?」
「確かにあなたの言う通りかもしれません。ですがこんな私でも居てほしいって言ってくれる人がいるんです。その人たちの力になるため、禁忌だろうが何だろうが破って見せます!」
「ふーん。まあなんでもいいけどさ、次はもっとすごい魔法を出すから、黒魔法でもなんでも使って耐えてね」

 ヒメラは魔法を詠唱しだす。

「ルナ! 大丈夫か!!」

 ちょうど詩音たちが合流した。

「詩音さん! クリスタさんに父さんまで! ということは終わったんですね?」
「ああ。兄貴の方は倒したぜ」
「ハア……ハア……何とか全部処理したぞ……詩音たちじゃないか。その様子だと終わったようだな」
「クレアもだいぶやられたみたいだなぁ」
「申し訳ありませんが悠長に話している場合では無いみたいです」

 ヒメラは詠唱を終え、発動しようとしていた。

「これは私の魔法の中でも最上位だよ! 受けてみな!!」

終わりなき灼熱の地獄サンファンアンフェル!!!」

 一瞬にして周りが炎に包まれた。炎で視界が何も見えない。ルナがとっさに冷気の魔法を使った為焼け死ぬことは無かった。

 そして、炎が消えたとき、周りの景色が変わっていた。

「なんだ……これ……」

 周りは焼け野原で何もなく、所々炎が舞っている。まるで地獄のような灼熱の空間だった。

「嘘だろ……エスティアス村がこうなっちまったってことか?」

 ルナは周りを見渡し、何かに気付いた」

「いえ、これは現実世界ではありません。すべて魔法で作られた世界です。こんな魔法使える人なんていないと思ってました」
「魔法で作られた世界?」
「はい。いわゆる固有結界です。莫大な魔力で現実のあり方を変え、今のように異空間として世界を塗り替えてしまうんです。ですが魔力消費が大きくあまり長くはもちません」
「なら魔力切れまで粘ればいいってことか!」
「それまで生きてたらの話ですが。固有結界は術者が作ったものですから当然術者が有利になりますし、たいていの場合は結界内に入った時点で確実に死ぬようにできています。ですから最高峰の魔法の一つなんです」
「よく知ってんなぁ。だがどうするよ? アンタの言った通り死ぬようにできてる。ここは灼熱の世界。ルナの魔法で何とか死んでないみたいだけど、本来なら生物は生きていけないどころかすぐに炭になる温度の空間だよ。このままでもジリ貧だし、ここから更に炎や爆裂を生み出せる。もうアンタたちに勝ち目はないと思うけど?」

「ルナ、何か策はあるか?」
「あるにはありますけど、今この魔法を解いてしまうと皆さんが炭になってしまいます!」

 詩音は太ももを叩き気合を入れなおす。

「ルナが何かする間の時間耐えればいいんだよな?」
「はい。そうすれば集中して魔法を詠唱できますから。ですがそんなことできるんですか?」
「ルナ、お前は詩音を信じて集中すればいい。なに、この灼熱くらい私は耐えて見せるとも」
「詩音さんを私はしんじますよ? ルナさんは仲間を信じないんですか?」
「任せろルナ。どんな経緯があれ今は仲間だ。だから俺たちを信じて背中を預けてくれ。俺たちもルナの魔法を信じて任せてるんだからさ」
「みなさん……わかりました。絶対に死なないでくださいね!!」
「ああ!」

 そしてこの絶望的な状況の中、詩音たちの攻勢が始まった。
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