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跡継ぎ選別
38話
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会場がどよめく中、次の試合相手が発表された。
「第六試合、ガウェイン対クレア!」
この発表が更に観客をどよめかせた。
「いよいよか……」
「ああ。ここはなんとしても勝たねばならないな」
「頑張ってくださいね!」
「行ってくる」
クレアが会場に向かう中、先に会場に降りたガウェインが詩音を見ていた。なにか気になることがあるという顔だった。
会場に両者が降り立った。そのとき、ガウェインはクレアに突拍子もなく質問をした。
「お前の仲間である黒髪の男がいるだろう」
「詩音のことか。それがどうした」
「奴は何者だ?」
クレアは何の脈絡もない質問に警戒する。
「どういう意味だ」
「どうもこうもそのままだ。いや、俺の主が兄弟を探していてな。その黒髪と青い瞳が主とそっくりなのだ」
「理由は承知した。だがその質問の力になれるか分からんな。なにせ、私自身詩音のことを精々遠い国から来たとしか知らぬからな」
「そうだったか。まあいい。であれば直接本人に聞くとしよう。お前を負かしてからな」
「悪いが兄上、私は今までのような私ではないぞ。甘く見てるのなら一瞬で終らせてやる」
クレアのその発言に対しガウェインはなんの感情の起伏もせず、淡々と返した。
「分かっているとも。俺はそのうえでお前が俺に勝てないと言っているんだ」
「そんなのやってみなければ分からないだろうが!!!!」
クレアが飛び掛かるのと試合開始の合図は同時だった。
クレアが感情的になって切りかかる。これをガウェインは剣で吹っ飛ばす。
「感情に流されるとは、まだまだ未熟だな」
「問題ない、落ち着いた。では、参る」
もう一度攻撃に入る。今度は落ち着きを取り戻し全く隙が無い。対するガウェインも魔法剣技で対抗する。
クレアは強く踏み込んで斬り上げる。それに対抗して、ガウェインはクレアの刀と直交するように斬り下ろす。
だが、やはりガウェインは今までとは格が違った。剣が衝突した瞬間、クレアは圧倒的なパワーで押しつぶされる。そのまま押し斬られまいと耐えるのが精一杯だ。
「早くも勝負あったか」
「ぬかせ。この程度何でもないわッ!!」
クレアはガウェインの下腹部に蹴りを食らわせる。そして出来た少しの隙で抜け出し、少し距離を取って落ち着いた。
その後、クレアは納刀し、島原流瞬の構えを取る。ガウェインが剣を構えようとするその瞬間を狙って踏み込む。
まだしっかりと剣を握れていない為、ガウェインはこの瞬のスピードに付いて来れないだろうという計算の元での攻撃だった。しかし、クレアの攻撃は空を切った。なんとあの一瞬で判断し、ガウェインは後方へ体を倒し、寸でのところで躱したのだ。
普通、人の反応速度は0.2から0.5秒といわれている。対する島原流瞬の速度は1.5メートル手前から踏み込んで間合いで抜刀、そして斬りつけまでを0.1秒以下で行う。
つまり、まず普通の状態であっても人は到底反応不可能であり、不意を突いた攻撃ならなおの事不可能である。
ならばガウェインのあの反応速度はどう説明がつくだろう。天性の才能だろうか。それとも歴戦の経験からくる勘が当たったのか。
これのどちらかと聞かれれば、それは両方である。
まず、ガウェインはもともと目が良かった。遠くがよく見えるというものではなく、つまるところ動体視力が相当よかった。40センチの距離から放たれた矢を見切り掴むことができるという話もあるほどだ。
更にガウェインはクレアの構えから何か技、それも速度に長けたものが来るだろうと経験と本能ですぐに直感した。そして周りの一切を感じなくなるほどまでに集中、いわゆるゾーンに突入し、見切ったのだ。
クレアは状況が飲み込めなかった。最速であり必殺剣であって、深傷とはいかなくとも一撃は与えられると確信していただけに、完璧に躱されるなど思いもよらなかったのだ。
今度はガウェインが仕掛ける。今度は逆に、呆けていたクレアが一歩出遅れる。猛烈なラッシュがクレアを襲う。一撃一撃が速く、重い。なんの工夫もない攻撃だが、それだけに単純な力の差を思い知らされる。
クレアは島原流流葉を使った。ガウェインの力が強いだけに、技の威力も相当なものだ。ガウェインは剣を振り下ろしたとたんにクレアに回転させられる。本来ならばここから地面に叩きつけるのがこの技の流れだが、ガウェインは圧倒的な体幹で姿勢をコントロールする。結局クレアの技はラッシュから抜け出すだけにとどまった。
「その技は前の試合で見たな。なるほど、相手の力を利用する技があると聞くが、まさか刀でやるとは。なかなか面白い技を使うじゃないか。だが、面白いだけ。特段目を見張るようなものでは無い」
「兄上は島原流を舐めている。いいだろう。では見せてやる。島原流剣術の裏を」
クレアは八相の構えを取る。クレアは今までしてこなかった冷酷な表情と、今から人を斬ると言わんばかりの気迫をしていた。
「第六試合、ガウェイン対クレア!」
この発表が更に観客をどよめかせた。
「いよいよか……」
「ああ。ここはなんとしても勝たねばならないな」
「頑張ってくださいね!」
「行ってくる」
クレアが会場に向かう中、先に会場に降りたガウェインが詩音を見ていた。なにか気になることがあるという顔だった。
会場に両者が降り立った。そのとき、ガウェインはクレアに突拍子もなく質問をした。
「お前の仲間である黒髪の男がいるだろう」
「詩音のことか。それがどうした」
「奴は何者だ?」
クレアは何の脈絡もない質問に警戒する。
「どういう意味だ」
「どうもこうもそのままだ。いや、俺の主が兄弟を探していてな。その黒髪と青い瞳が主とそっくりなのだ」
「理由は承知した。だがその質問の力になれるか分からんな。なにせ、私自身詩音のことを精々遠い国から来たとしか知らぬからな」
「そうだったか。まあいい。であれば直接本人に聞くとしよう。お前を負かしてからな」
「悪いが兄上、私は今までのような私ではないぞ。甘く見てるのなら一瞬で終らせてやる」
クレアのその発言に対しガウェインはなんの感情の起伏もせず、淡々と返した。
「分かっているとも。俺はそのうえでお前が俺に勝てないと言っているんだ」
「そんなのやってみなければ分からないだろうが!!!!」
クレアが飛び掛かるのと試合開始の合図は同時だった。
クレアが感情的になって切りかかる。これをガウェインは剣で吹っ飛ばす。
「感情に流されるとは、まだまだ未熟だな」
「問題ない、落ち着いた。では、参る」
もう一度攻撃に入る。今度は落ち着きを取り戻し全く隙が無い。対するガウェインも魔法剣技で対抗する。
クレアは強く踏み込んで斬り上げる。それに対抗して、ガウェインはクレアの刀と直交するように斬り下ろす。
だが、やはりガウェインは今までとは格が違った。剣が衝突した瞬間、クレアは圧倒的なパワーで押しつぶされる。そのまま押し斬られまいと耐えるのが精一杯だ。
「早くも勝負あったか」
「ぬかせ。この程度何でもないわッ!!」
クレアはガウェインの下腹部に蹴りを食らわせる。そして出来た少しの隙で抜け出し、少し距離を取って落ち着いた。
その後、クレアは納刀し、島原流瞬の構えを取る。ガウェインが剣を構えようとするその瞬間を狙って踏み込む。
まだしっかりと剣を握れていない為、ガウェインはこの瞬のスピードに付いて来れないだろうという計算の元での攻撃だった。しかし、クレアの攻撃は空を切った。なんとあの一瞬で判断し、ガウェインは後方へ体を倒し、寸でのところで躱したのだ。
普通、人の反応速度は0.2から0.5秒といわれている。対する島原流瞬の速度は1.5メートル手前から踏み込んで間合いで抜刀、そして斬りつけまでを0.1秒以下で行う。
つまり、まず普通の状態であっても人は到底反応不可能であり、不意を突いた攻撃ならなおの事不可能である。
ならばガウェインのあの反応速度はどう説明がつくだろう。天性の才能だろうか。それとも歴戦の経験からくる勘が当たったのか。
これのどちらかと聞かれれば、それは両方である。
まず、ガウェインはもともと目が良かった。遠くがよく見えるというものではなく、つまるところ動体視力が相当よかった。40センチの距離から放たれた矢を見切り掴むことができるという話もあるほどだ。
更にガウェインはクレアの構えから何か技、それも速度に長けたものが来るだろうと経験と本能ですぐに直感した。そして周りの一切を感じなくなるほどまでに集中、いわゆるゾーンに突入し、見切ったのだ。
クレアは状況が飲み込めなかった。最速であり必殺剣であって、深傷とはいかなくとも一撃は与えられると確信していただけに、完璧に躱されるなど思いもよらなかったのだ。
今度はガウェインが仕掛ける。今度は逆に、呆けていたクレアが一歩出遅れる。猛烈なラッシュがクレアを襲う。一撃一撃が速く、重い。なんの工夫もない攻撃だが、それだけに単純な力の差を思い知らされる。
クレアは島原流流葉を使った。ガウェインの力が強いだけに、技の威力も相当なものだ。ガウェインは剣を振り下ろしたとたんにクレアに回転させられる。本来ならばここから地面に叩きつけるのがこの技の流れだが、ガウェインは圧倒的な体幹で姿勢をコントロールする。結局クレアの技はラッシュから抜け出すだけにとどまった。
「その技は前の試合で見たな。なるほど、相手の力を利用する技があると聞くが、まさか刀でやるとは。なかなか面白い技を使うじゃないか。だが、面白いだけ。特段目を見張るようなものでは無い」
「兄上は島原流を舐めている。いいだろう。では見せてやる。島原流剣術の裏を」
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