俺の武術は異世界でも最強だと証明してやる!

ぽりまー

文字の大きさ
39 / 58
跡継ぎ選別

39話

しおりを挟む
 ガウェインはクレアの目、呼吸、気迫から十分に本気で殺しに来るだろうと感じ取った。しかし、それでも今回は殺すことがルール違反である為、そこまでしないだろうという余裕があった。

「島原流剣術、彼岸花」

 そうつぶやくと、クレアは一歩踏み出した。

 クレアが視界から消えた。しかし、ガウェインは感じ取った。右側面下方に居る。刃が首に向かって上がって来つつあることを。

 ガウェインは驚異的な反応でクレアの刀を剣で受ける。首まで10センチ離れていない至近距離まで刀が到達していた。

 そのままクレアを払いのけ、後方へ下がる。ガウェインはこの攻撃で確信した。ルールなど関係なしに、本気で殺しに来ていることを。

「お前、殺害は即失格だということを忘れているわけではあるまいな」
「もちろん知っている。だが、島原流禁断の技、裏の型を使わなくては勝利は難しいと判断した」

 島原流、裏の型とはなにか。今までの島原流剣術は武士やその他門下生が身に付けられるように作られた護身や相手の制圧、そして殺害まで幅広い目的の技であった。しかし裏の型は、人を斬り殺すことのみを考え、最大限効率化された技である。これは剣術に限らず、本来の徒手術や、その他派生の武術においても存在する、人体を壊す事のみに特化した殺人拳である。

 ガウェインは剣を正面に構える。

「お前がその気なら俺も本気で行こう。そういえばこの選別ではまだ見せたことが無かったな。俺の聖剣開放を」

 正面に構えた剣を高く掲げ、詠唱する。

「我が魂は正義の光に満ち、我が勇気は輝きを絶やさず。故に我が剣は太陽を宿す。顕現せよ、ガラティーン!!!」

 ガウェインの剣が変形する。そして、刀身が太陽の様な眩しく熱い光に包まれた。

「我が太陽の剣、ガラティーンでお前を灰も残さず焼き尽くす」

 ガウェインが剣を振る。すると灼熱の斬撃がクレアへ飛んで行った。

 クレアはそれを避けながらガウェインを中心とした円を回るルートを走る。その間、クレアは考えた。まずアの斬撃やガウェインを取り巻く灼熱のせいでうまく接近することが難しいだろうということ、そしてガウェインの剣は斬られるのは当然として、剣で受けることもができないだろうということを。しかし、近づかなけれな攻撃は当たらない。

「なら、あれを使うか」

 クレアは走るのを止め、ガウェインの方へ向く。そして姿勢を低くし、力強く後方の足で踏み出した。

 クレアは地面をほぼ滑空しながら進み、高速でガウェインとの距離を詰める。そして今クレアが走る道は、ガウェインの斬撃と灼熱の間にできた針穴よりも細く、一瞬しかない隙の一本道だ。

 周りの灼熱は、高速移動しているクレアにすらも髪や服の端を焦がす。だが止まらない。みるみる距離を詰め、ついに間合いに入った。

「島原流裏の型、香子突ききょうすづき

 ガウェインが反応するもすでに遅く、クレアの刀が鳩尾を貫いた。

 周りの灼熱が収まる。そしてあまりの出来事に会場は沈黙した。ガウェインの吐血の音が遠くからでも鮮明に聞こえた。

 次第に状況を理解した観客たちはクレアの勝利を確信した。しかし、ガウェインのガラティーンの光はまだ死んでいなかった。

「ッアァ……ハァ……ハァ……ハァ……く、クレア。見事な攻撃だったぞ……だが今のお前は俺のガラティーンから確実に逃げられない状況にいる……!!」

 ガウェインは剣を振り上げる。最後の一撃だという様に、今日最高の光を放つ。

「これで……終わりだッ!!! ガラティ―――ン!!!!!」

 勢いよく剣が振り下ろされる。剣は超高温の熱とプラズマ、を帯び、まるで巨大なビームソードだった。

 クレアは刀をひねり横に振る。刀はガウェインの腹を切り裂きながら体の外へ出る。そして自由になった刀を切り上げ、振り下ろされるガウェインの腕を斬り飛ばした。

 手のついた剣が宙を舞い、遠くで落ちた。ガウェインは完全に気を失っている。しかし全く倒れることは無かった。

「し、勝者クレア!!! は、速くガウェイン様に回復魔法を!!!!」

 観客はただ黙ってこの結果を見ていた。壮絶な戦いに言葉を失ったからだ。クレアも勝利の喜びを表さず。ただ運ばれていくガウェインを心の中で称えていた。



 ガウェインが搬送され、クレアも客席へ帰ろうとした時、一人の男が会場へ現れた。

「この選別について一つ提案がある」
「あ、アーサー様!!!?」

 アーサーはクレアを指さし、言う。

「この選別は我とクレアの試合をもって頭首を決めたい」

 アーサーの発言に他の兄妹たちが反論する。

「どういうことだ!!」
「先ほどの試合を見て思った。この選別の結果は、我かクレアのどちらかとなるだろう。であれば我とクレアの試合1試合のみ行えば済むであろう」
「な、なんだと!? じゃあ他の試合はどうなる!?」
「その他の試合をする意味はもはや無くなった。それとも先ほどの試合を見てもまだクレアに勝利する自信がある者がいるのか?」

 兄妹たちは痛いところを突かれ、黙ってしまった。

「ふん……さて、観客の皆様や父上ももうわかっただろうが、ガウェインが敗北した今、アーサーかクレアの候補に絞れたと思う。だからこの一騎打ちをもって選別を終わらせたい。よろしいな?」
「クレアが受け入れるのであれば許可しよう。公平に行かねばならんからな」

 クレアは固い覚悟をもって答えた。

「私は構わない。始めよう」



 




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

身寄りのない少女を引き取ったら有能すぎて困る(困らない)

長根 志遥
ファンタジー
命令を受けて自らを暗殺に来た、身寄りのない不思議な少女エミリスを引き取ることにした伯爵家四男のアティアス。 彼女は彼と旅に出るため魔法の練習を始めると、才能を一気に開花させる。 他人と違う容姿と、底なしの胃袋、そして絶大な魔力。メイドだった彼女は家事も万能。 超有能物件に見えて、実は時々へっぽこな彼女は、様々な事件に巻き込まれつつも彼の役に立とうと奮闘する。 そして、伯爵家領地を巡る争いの果てに、彼女は自分が何者なのかを知る――。 ◆ 「……って、そんなに堅苦しく書いても誰も読んでくれませんよ? アティアス様ー」 「あらすじってそういうもんだろ?」 「ダメです! ここはもっとシンプルに書かないと本編を読んでくれません!」 「じゃあ、エミーならどんな感じで書くんだ?」 「……そうですねぇ。これはアティアス様が私とイチャイチャしながら、事件を強引に力で解決していくってお話ですよ、みなさん」 「ストレートすぎだろ、それ……」 「分かりやすくていいじゃないですかー。不幸な生い立ちの私が幸せになるところを、是非是非読んでみてくださいね(はーと)」 ◆HOTランキング最高2位、お気に入り1400↑ ありがとうございます!

処理中です...