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第一章★
016:ポニテ金属女の猛攻。
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■大凶高校_体育館
(上杉 昇)
俺は足場にしていたバスケットのゴールネットから飛び上がる。そこに光の鞭が当たり、当たった部分が溶けたように滑らかに切れる。
俺は空中でマシンガンを構えてキタムラを撃とうとする。
「…!! 」
消えた?さっきまでいたゴールネットから姿は消えていた。
「遅いね。僕が本気を出せば君はイチコロさ」
不意に後ろからキタムラの声がし、振り替えると光の鞭を振り落としていた。
「ヤバいっ! 」
その時、何かが俺の前を通り、光の鞭を塞いだ。
「ちっ! 」
キタムラは俺に鞭を当てるのを失敗し、体育館の床に着地した。俺と鞭をふさいでくれた黒い影も床に着地する。
「…金属女!? 」
助けてくれた正体は体を金属に変える靴を装備している女の子だった。
「ウチの名前は植村ですよ。怪我はないですか? 」
「助かった。おかげでないぞ」
植村は安心し、俺と同じようにキタムラと対峙する。
「おい植村? 」
「ウチも戦います。一人で戦うよりもきっとうまくいきます!」
「…分かった!だがいくら鉄壁だとはいえど気を付けろよ」
俺は植村にこっそりと作戦を打ち明ける。俺一人なら無理な作戦だが、二人ならなんとかなる作戦だ。
植村の金属になる絶対防御を使い、時間を稼ぐ。そこで俺の指輪の力を使う。
俺の指輪はレベル相応の武器しか作れないのが難点だが、俺はレベルが100ちょっとはあるしある程度なら作れる。
「よし、植村! 頼む! 」
「は、はい! 」
植村は身体を金属にし、キタムラへと突っ込んでいく。
俺はその間に武器をイメージし、指輪は形状を変えていく。形状は徐々にでかい物に変えていく黒く妖しく光る。ロケットランチャーだ。
植村はキタムラの光の鞭に当たってはいるもののダメージは0で一気に懐に入り込む。
「ちっ防御だけしかできない無能めっ!」
キタムラは植村の顔面を蹴りあげるが、痛がるのはキタムラだった。それもそうだ。今の植村は金属で固いからな。
てか金属以上の強度をあきらかに持っている。金属くらいならキタムラは軽々と切断している。
植村は拳をキタムラの鳩尾に強か打ち込み、顔を殴る。
「ウチはあなたみたいな人は嫌いです!なんであなたは人を殺すことに躊躇いがないんですか? 」
植村は次々と拳を打ち込み、キタムラは後ろに吹き飛ぶ。意外にもしっかり相手にダメージを与えている。
「……あの中に……ウチの親友がいたんですよ……!? 」
植村は泣いていた。
B班の中には男も女もいた。さっき殺されてしまったB班の生徒達は武器だけを残し消えている。
戦いなんてしても悲しみしか残らない。
今の俺達に出来ることはキタムラを倒し、仇を取ることだ。
「植村! 作戦通り頼むぞ! 」
「はい! 」
植村は倒れているキタムラの後ろに回り込み羽交い締めにした。
「何をするんだ? 僕を離せ! 離せよ! 」
キタムラはかなり抵抗し、植村は苦しそうにしていた。やはり男と女だと力の差が出ていて、今にも拘束が剥がれそうだ。
その刹那、俺の真後ろから赤い謎の閃光が真横を通り抜け、さらに遠くにいるキタムラの顔面に衝突した。
「…! 」
その正体はあのボクシンググローブを装着していた藤吉だった。
「……女の子が頑張ってんのに俺だけびびっているのは情けねーよな」
藤吉のボクシンググローブは遠距離でも衝撃を与えれるみたいだ。
「――がはっ!」
キタムラはあまりの痛みに暴れるが一瞬止まる。チャンスだ。俺はすかさず準備をする。
「植村! 行くぞ! 」
「はい! 」
掛け声と同時に植村はキタムラと距離を取る。
――――――ドォォォォオォォンッツ!
ロケットランチャーからはすさまじい轟音と衝撃が走る。
キタムラに向かっていくつものミサイルが放たれ、キタムラに直撃をする。
「……がはっ! ……ぐっ!」
噴煙が巻き起こり、あまり視界がはっきりとはしないが、キタムラがゆっくりと体育館の床に倒れこむのが見えた。
しばらく沈黙し、植村が声をあげながら近づいてきた。
「やりましたよ!キタムラを倒しましたよ上杉さん!」
「なんとか…勝てたんだよな?」
「勝ちました!敵ももう動かなくなりました!」
体育館には歓喜の声が上がる。
「俺も頑張りましたよ。女の子が頑張っているんで俺もなんかしないと情けないですし」
「ははは、藤吉もありがとうな」
良かった。
幹部を倒すのはまだ俺のレベルだと厳しいと思っていたが倒せたのはでかい。
協力し合うことで力不足を補うことはできる。
俺は二人を連れて体育館を出ようとした。
「上杉さん? 今度はどこ……」
「……! ?」
植村の左腕が切断された。腕が切り離された箇所からは赤い血液がポタポタと床に落ちる。
俺の頭は真っ白になる。
「い、イヤァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁっ!!」
植村の後ろを見るとキタムラが血だらけになりながらも立ち上がっている。脇腹が真っ赤に染まっている。
そしてキタムラは光の鞭を振り落としていた。
「キタムラ、なんで……生きているんだ?」
「いや………僕はもう厳しいみたいだ…だから君らも……道連れに殺してやる」
植村からはおびただしい量の血が体育館の床に流れていた。
「だ、大丈夫か!植村!」
「……ぅ…痛い…痛いです」
俺は指輪をランスに構え、迎え撃とうとするが光の鞭が足を通過した。
「がぁぁぁぁぁあァぁぁぁァぁァぁぁぁぁぁっ!!」
や、やばいぞ。ちゃんと死んでいるかどうか確認すべきだった。
「残るは…ボクシンググローブの君だね。僕と一緒に…がふっ……死なないとね」
キタムラは血を吐きながらも、腰を抜かした藤吉に近づいていく。
まずい。
キタは光の鞭を振り上げ、藤吉に振り落とそうとする。
その刹那。
――ヒュオッ
どこからか鎖鎌が飛んでくる。鎖鎌はそのまま光の鞭を持ったキタムラの腕を引き裂く。
「おぉぉ…ォォ…」
体育館の入り口を見ると、俺達と同じ制服を着た生徒が二人いる。1人は鎖鎌を持った小動物のような可愛い容姿をしている。
もう1人は刀を持っている。
どこか頼りない雰囲気だが。
「……ぐっ…君らは誰だい?敵みたいだけど……」
「そうだね。君にとっては敵かなー」
鎖鎌を持っている男が喋る。
「僕達の学校の仲間に手を出すな」
鎖鎌の男は構えキタムラを睨みつけていた。キタムラはふっ、と笑う。
「…はぁ……だめだな…もうここまでかな…」
キタムラは小動物のような可愛らしい男を見ながら呟く。目はどこか遠くを見ているようだ。どこか悲しげだった。
「……もぅ……疲れた……」
キタムラは不意によろめき始める。
それを見た二人は唖然とする。
「……お、おい? 」
キタムラはよろめいたかと思ったその瞬間、そのまま体育館の床に倒れこんだ。奴の周りの床が鮮血で赤く染められていく。
「え……し、死んだ? 」
刀の男は呆然と立ち尽くしていた。
そしてぼんやりと奴の死体を見ていた。
刀の男にナルと呼ばれていた小動物のような可愛い顔をした男は俺らに駆け寄る。
「大丈夫ですか? 」
ナルが俺に聞いてくる。
正直、あまり大丈夫じゃないが俺は大丈夫だと言う。
「ありがとな。助かったわ」
「いえいえ」
ナルが俺達の怪我を心配している。だから俺は言う。
「心配するな。怪我人は一旦本校に戻してくれる。だから大丈夫だ。ありがとな」
「いえ、大したことはしてないです」
二人と会話をしている間に俺と植村の身体は透け始めた。
「植村は大丈夫か?死にかけてないよな?」
「な……なんとかです。でもウチはまだ男の人と手を繋いだこともないのに腕無くすのはいやですよ…」
植村は心配そうに自分と切り取られた腕を見つめていた。気持ちは分かる。ツッコミずらいが…
「大丈夫だ。回復班がなんとかしてくれる」
「……本当ですか? 」
「ああ、安心しろ」
俺は刀の男に振り返る。
「お前の名前は?」
「……大和 真です」
「そうか。後、ナル君だっけ? お前ら三人は無茶はするなよ。敵の代表やレベル100越えのリーダー格は立心館の生徒会に任せとけ」
三人は頷く。
俺は切断された足を持ち、徐々にホワイトアウトしてくる視界。俺は三人に言う。
「応援が来るまではジッとしててくれ」
三人は了解と告げる。
まあ、助っ人に生徒会も何人か来るだろう。会長は初戦なのもあってこの戦いを早く決着つけたいらしいしな。
俺は徐々にホワイトアウトしてくる視界についに身を委ねた。
治療設備が整っているのは助かるな。相坂だっけ?ずば抜けた治療能力があるらしいし。
俺と植村の意識と身体はやがて透けていき…ついに消えた。
…………
………
…
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