『Nightm@re』という異世界に召喚された学生達が学校間大戦とLevel上げで学校を発展させていく冒険譚。

なすか地上絵

文字の大きさ
20 / 85
第一章★

017:地下施設と学校間代表「ホトケ」①

しおりを挟む


――戦闘終了後
■大凶高校_廊下
 (大和 真)


 俺達三人は廊下を歩いていた。

 一人はナル。

 もう一人は同じクラスである藤吉だ。

 俺のクラスの学級委員をやっている。野球部を彷彿させる坊主頭だが彼はサッカー部である。サッカー部なのに坊主でボクシンググローブを着けている。

 そんな三人は体育館を後にしてからだいぶ大凶高校の暗い廊下を歩きまわっていた。

 あちらこちらに武器が落ちていて沢山の生徒が死んでいっているのが分かる。死んだら武器だけを残し、消えていく。

 この廊下にはきっと何分か前までは死にかけた生徒達がいたんだろう。少し前まで普通の生活をしていたのに何故こんなことになってしまったんだろう。

「ねぇ、真君。なんか顔色が悪くない?」

「確かに。大丈夫かよ?」

 二人が心配してくる。俺はただただ気分が悪い。藤吉が俺に肩を貸してくれる。本格的にやばい。

 しかし…

 俺達は校内をさっきから歩き回っているが一向に学校代表はおろか敵にも出くわさない。あんなに敵味方合わせて人がいたのにどういうことだろう…。

 この戦いもかなり終盤なのだろうか。
 相当な犠牲者が出ているのか?

「ちょっと休もうか。立心館の応援を待とう」

 ふと、ナルが提案する。
 近くの適当な部屋に入る。

 電気のスイッチを探し、明かりをつける。

「応接間?なのか?」

 応接間みたいな場所だ。
 ソファーやテーブル、絨毯などからしてそう思われる。

 隣の部屋と繋がっているようで、だとするとここはやはり応接間なのだろう。

 きっと隣の部屋は校長室で、ここは来客の為に使っている部屋のようだ。

 仏像が何体か飾ってあるがこれは校長の趣味なのだろうか。知らないが、大凶高校って仏教系の学校なのか?

 二人は俺をソファーに座らせ、部屋を歩き回る。

 よく部屋を見回すと少し不思議な点がある。部屋の窓ガラスは全て黒い布で覆われてている。まるで外部から見られないようにしているみたいだ。

 まあ、普通に鍵が開いてたから気のせいだろうけど

「おっ、隣の部屋の鍵も空いてるじゃん」

 藤吉がためらいなく隣の部屋の扉を開ける。

「校長室覗いちゃお……――」

 藤吉が固まる。

「どうしたの?」

 ナルが藤吉の近くにより、同じく絶句している。校長先生でもいたのだろうか。

 俺も立ち上がり、二人の後ろから覗きこみ唖然とする。隣の部屋はなく、目の前には地下へと続くコンクリートの階段があった。

 奥の方は真っ暗で何も見えない。

――ヒュオオオオオ

 中からは冷たい風が吹いてきていて俺の前髪を靡かせた。

「行ってみよっか」

 もはやただの好奇心であった。
 うす暗い階段を俺達三人は恐る恐る降りる。

 MSPにあるライト機能が役に立っていた。辺りを明るく照らして確認する。

「ここ、どこに続いてんだろーな?」

「分からないけどかなり深いな」

 俺は藤吉のぼやきに答える。てか、ただの学校のはずなのになんでこんなのがあるんだろうか。

 いつの間にか天井は岩が剥き出しになっていて水が垂れて音が地下に響き渡る。
いよいよ洞穴みたいになってきている。

「不気味だね」

「そもそも、俺らは学校間大戦中なのになんで学校探検みたくなってんだ?失ったアークの秘宝でも探すみたいだぜ」

 藤吉がぶつぶつ呟いていた。
 確かにそうだが、なんかこの地下には何かがある気がする。

 階段は終わり、先には扉があった。
 ペンキが剥がれていてかなり錆び付いている。風化が酷い。

「僕が開けるよ。二人は念のため、武器を構えてて」

 ナルは扉の取っ手を掴む。
 俺は草薙刀を強く握り、藤吉はボクシンググローブを装着した。

「行くよ!」

「「――! 」

 扉の向こう側は大きな空間が広がっていた。

「まじかよ。こんなのが普通の学校にあるってあり得るのか?」

 藤吉がぼやく。

 俺達は恐る恐る中に入り、辺りを見回した。上は人口的に作られた天井が遠くまで広がっている。

「すっごい広いな」

「前方になんかない? 」

 前方には何やら大きな建物が建っている。

 なんとなくだが、俺の直観。ここは敵校の本部のような場所ではないだろうか。地下施設はかなりの広さで体育館数倍の広さはありそうだ。天井も高くとてもここが地下とは思えない。

 ちなみに地面は土でかなり凸凹している。少しぬかるんでいて歩きずらい。

 前方には建設中だがマンション?のような建物が一つ建っている。灰色のメッシュシートで覆われていて正確には分からないが6階建てくらいかな?

「これって…」

「たぶん大凶高校の本部だ」

「建設途中なのか?」

 そういえば、マニュアルにも資金を得ることで学校をカスタマイズすることが、できると書かれていた。

 資金のことはわからないが、大凶高校には初期費用がいくらかあってそれで作り始めているとかそんな所だろうか。

「ひとまずあの建設途中の建物に行ってみる?敵の親玉がいるかも知れないし 」

 ナルが提案し、俺らは建物に向かって歩き始める。しばらく歩くと徐々に建物の周りもはっきりと見えてくる。

「……誰かいる 」

 ナルが建物の入り口と思われる場所付近を指さして呟く。俺と藤吉も気づく。

――ザッ

 足音がする。
 そしてゆっくり近づいてくる。

「こんにちは。立心館高校の生徒達」

 2人いた。1人は長髪でもう1人はおかっぱ頭をしている。

「よくぞここに辿り着いたな。私はがこの学校の代表だ。」

「俺は大凶高校、最後の幹部だ」

 俺達三人のMSPが振動する。
 通知が流れる。

━━━━━━━━━━━━━━━
アラーム※
――――――――――
対戦高校の代表が接近しています★
詳細は(こちら)
━━━━━━━━━━━━━━━

 俺は詳細ボタンをタップする。
 すると相手の詳細が分かった。

━━━━━━━━━━━━━━━
詳細※
――――――――――
・ホトケ(学校代表) Lv142
・ニシノ(幹部) Lv111
━━━━━━━━━━━━━━━

 ついに敵校の学校代表にたどり着いた。目の前のホトケという人物からはこれまでとは明らかに違う異質の雰囲気を感じる。

 本当につい前まで同じ高校生だったはずなのに…。このナイトメアの世界が少しづつ俺達を含むすべての高校生を変えてきているのかもしれない。

「あなた方は偶然にも大凶高校の本部に訪れてくれた」

 ホトケが貼り付いたような笑顔を向けてくる。

「少し予想外ではあったけど、お前らをここで殺し、予定通り次にお前の学校の代表を殺しに向かうとするか」

 もしかしてもう俺達以外は立心館高校も大凶高校の生徒もほぼ倒されてしまったのか?戦況が分からない。

「戦況が気になっているのかな?」

 ホトケが俺の表情を見ながら聞いてくる。

「教えてやろう。今の戦局はこのようになっている」

  ホトケのMSPから通知が流れる。

━━━━━━━━━━━━━━━
戦況報告※
――――――――――
大凶高校《生存者101名》
/立心館高校《生存者155名》
うち大凶高校幹部《生存者3名》
/立心館高校幹部《生存者4名》
━━━━━━━━━━━━━━━

「私の方の主力はニシノを残し、それ以外の高ランク生徒は全滅。一般学生も4割くらいに減ってしまった。立心館高校は乗り込んできた主力は全員重症。残すはそちらの学校代表のみ」

「そうだ。良いことを思いついた!」

 ホトケが嬉しそうに俺達に提案をしてくる。

「お前らの命の保証しよう。大凶高校の生徒になってもらう。その代わりそちらの学校代表を倒すのを協力してもらいたい」

 ホトケはにっこり笑う。

「このまま戦えばお前ら低Lvは間違いなく私に殺される。この先のことを考えるならこの提案は悪くないと思うぞ」

 俺達に沈黙が走る。

 というか、何故こいつは俺達に提案しているのだろう。
 俺は生徒会のメンバーでもなんでもない。戦力にもならないだろう。

 おちょくっているんだ。

「よく考えてみろ。お前達が仮に勝とうと負けようと、どのみち勝った学校に吸収される。リーダーが私に変わるだけだ。そうなるとここでの死ぬのは無駄死ににはならないかな?」

 要するにだ。生徒会長を差し出せば俺達の命は保証されるみたいだ。

 悪い提案じゃない。

 だが、

「会長を売るつもりはないよ。それに俺達にそれをいったところでそう上手くことが運ぶようには思えない」

 俺は断言する。

「……なら残念。予定どおり殺す」

 今まで黙っていて動かなかったニシノが腕を上げる。ニシノが指をクイッと曲げた。

「「「――!? 」」」

 俺達三人の体は後方に吹き飛ばされる。

「ぐっ」

 地面に落ちる際、ぎりぎり受け身を取ることができた。ただ少し擦りむいたが大けがはなさそう。

 ナルも藤吉も問題なさそうだ。

「まずはオレが相手をしようじゃないか」

 そう言い、ニシノは明らかな戦意を剥き出しにする。
 俺達三人は武器を構えた。

 勝てるのだろうか。

 Lvが倍以上違う。
 3対1とはいえ、ほぼ勝てる見込みがないと思ってしまう。

 だが、なんとしても生き残りたい。
俺の腕は震えていた。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...