『Nightm@re』という異世界に召喚された学生達が学校間大戦とLevel上げで学校を発展させていく冒険譚。

なすか地上絵

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第一章★

017:地下施設と学校間代表「ホトケ」②

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 ホトケはニシノの後方から動かない。
 まだ、戦闘の意思はないようで、俺達を後方からジーっと観察している。

「やるしかないのか…… 」

 俺は草薙刀を鞘から抜く。
 刀を構えようとする。

「――! 」

 あれ?身体が回復したように思えていたのに力が入らない。何故なんだ?

「おい! 真! どうしたんだよ」

 俺はまだ殆ど戦ってもいないし疲労があるのは変だ。やばい。息苦しい……。地面に膝をつき、苦しそうに呼吸をする俺を藤吉が心配する。

「なんでそんなことに?体力ならさっきまで回復してたのに? 」

 ナルは不思議そうにそして心配しながら俺を見る。俺達を観察していたホトケは笑っていた。

「そこの刀の君は【存在力】をかなり消耗しているようだな」

 存在力?
 どこかで聞いたような見たような…

「………………」

「存在力とは基礎体力や身体能力の向上、武器から発せられる不思議な力を使う時に必要なものだよ。そこの君はそれをかなり消耗している」

「どういうこと?その存在力をもし失うとどうなるの? 」

「簡単なことだよ。…存在感を全く無くした人間は存在している…または生きていると言えるかな? 」

 俺は草薙刀の力を使いすぎたのか?
 それとも使い方が良くなかったのか?

 そんなに力を使った覚えがイマイチない。初めの時なんでただ狼狽していただけだ。

「その存在力とやら回復できるのか? 」

 藤吉がホトケに聞くと意外にも教えてくれる。相当の余裕がある。

「ふむ、基本は1日すれば回復はするな。でも一旦全てを失えば死ぬ。ようするに戦死した人達と同じ運命になる」

 存在力について理解をする。このナイトメアでは存在力が相当重要だってことだ。

 だけど俺って結構、存在力が高かったと思うけど一気に消費しちゃったのか?……まさかさっきのあれだけで??この刀って一体何なんだよ。俺は草薙刀から得体の知れないような恐ろしさを感じていた。

「ちなみに存在力は人のカリスマ度に比例しておる。例えば容姿の綺麗な女性は必然的に皆に注目されるから存在力は高いぞ」

 とにかく俺は草薙刀は使えない。使ったら存在力を使いきってしまう。

「そんな…。どうしよう」

 ナルが動揺する。それもそうだ。俺達三人でも辛いのに俺が参戦できない。
 そのため今や二人。二人でどうこうできるような相手じゃない。

「真君は戦えない。僕らが戦うよ」

 ナルは鎖がま、藤吉はボクシンググローブを構える。

「ナル! まずは遠距離から様子見だ」

「うん!」

 藤吉はボクシンググローブを装着した手でパンチを空中にする。ボクシンググローブからは衝撃波が発生し、ニシノに突っ込んでいく。

「しょぼい攻撃だなぁ!」

 ニシノは無表情に呟く。そんなニシの右手が青白く輝き、手から何かが召喚される。

 手からは円形で真ん中には穴が空いてあり、刃がついてある。一般的な形状とは少し違うがあれは手裏剣だ。

 ニシノはボクシンググローブの衝撃波を難なく避ける。そして手裏剣を二人に向けて投げる。

「うわっ! 」

 藤吉に向かってくる手裏剣を藤吉はギリギリでかわす。ナルは鎖がまでうまく落としていた。

「藤吉は援護を!僕は突っ込むから! 」

「分かった! 」

 ナルは鎖がまのカマを手に持ち屋根を走り出す。接近戦に持ち込もうとする気のようだ。

「……くっ」

 案の定、ニシノは接近戦に向いていないのだろうか、少し焦った表情になる。向かってくる手裏剣を叩き落とし、ナルは間合いに入った。

「さあ、観念し――がはっ!」

「残念だな。俺は接近戦もいけるんだぜ?」

 大量の手裏剣が屋根の下から出てきて四方八方からナルを切り裂いていく。

「がぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 」

 ナルは前のめりになりながらもまだ立ってはいた。それをニシノは思いっきり蹴り飛ばす。

「な、ナル? 」

 ナルは切り傷だらけで血だらけになっていた。

「どうしたのじゃ?その程度なら私と戦うことすらできないぞ? 」

 ホトケは余裕そうに見つめていた。

「まだ僕は死んでないぞ! 」

「お、おい? 大丈夫かよ? 」

 ナルは腹を押さえながら立ち上がりすぐに鎖鎌を投げる。鎖を引いたりしながら巧みに操り、鎖鎌は蛇のようにうねる。ニシノを上手く牽制する。

 ナルの鎖鎌の操り方は見事なものでまるで生きた蛇のようにニシノに襲いかかる。

 しかし、圧倒的Lvの差からなのか、簡単に弾き落とされてしまう。

「もう飽きた。ザコにようはない」

ーーガシィ

 ニシノはなんと襲いかかってくる鎖鎌を素手で掴んでしまう。ナルは慌てて取り返そうとするが、遅かった。

 幾つもの手裏剣が無防備なナルを切り刻む。

「……ぐっ…痛っ、この野郎!」

 ナルは空いている左手に力を込めると青白い光と共に、3本の鎖鎌が召喚される。

 同時に3本もの鎖鎌を操り、ニシノに向かう。ニシノは迫ってくる鎖鎌を後ろに飛んで避ける。

「力の差を教えてやる!!」

 さらに跳躍し、ニシノは空中で掌を青白く発光させる。

「――!! 」

 強大な手裏剣が何枚も出てくる。

「これならにどうだっ?」

 大きなうねりを上げて、藤吉とナルの二人に迫る手裏剣。轟音を響かせながら2人のいる場所に手裏剣が直撃する。

 砂塵が巻き上がる。
 地面が抉られ、地形が変わっている。

「――!?!?」

 ナルは地面に横たわりピクリとも動かない。藤吉はギリギリ避けれたので直撃はしていないものの右足からの流血が酷い。少しずれていたら足がなくなっていた…。

「やべぇ…なんなんだよあの武器…」

 藤吉が震えながら呟き、腰を抜かしていた。もうあの足じゃ動けないだろう。

「――くっ。ちっくしょう! 」

 俺はなんで戦えないんだ。
 酷く悔しかった。

 ナルは生きているのか?
 俺のせいで2人は…

「次はお前だ」

 ニシノは余裕の表情をしていて、徐々に俺に接近してくる。俺は草薙刀を強く握りしめ立ち上がる。

 このまま何もできずに3人が死ぬくらいなら……

「や、やめろよ真!お前はもう存在力がないんだろ! 」

 俺は震えが止まらない。怖い。

 俺はここに来て初めて戦いを挑まれた時、殺される怖さと実感を知った。だからこそ殺し合いはしたくないが死にたくもない。そう思った。

 だけど、殺されるぐらいなら戦ってやる。恐怖で手も足も震えているがだからといって傍観してなんかいられない。

 俺は戦う。
 皆、戦ってるんだ。俺だけが戦わないなんてそんなことできない。

 俺は地面に横たわるナルを見る。
 生きていて欲しい…。

 涙が溢れる。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。

「……安心しろ。君は一発で逝かせてやる」

 大量の手裏剣がうねりをあげて俺と藤吉に迫ってくる。

 あ"ア"あぁアああアあアあああああァアあああっツ!!!!!

 草薙刀を抜刀するが、何もできない。迫り来る巨大な手裏剣に抉られ、大きく吹き飛ばされる。地面に落下が始まり浮遊感が身体を包む。ああ、俺は死ぬんだ。こんなあっけなく。

 訳の分からない世界で訳の分からない戦いで。何もできずに…。

 薄れゆく意識。走馬灯って本当にあるんだな…。沙也加と恭二と過ごした日々が脳内を流れる。

 そんな時。
 浮遊感がなくなる。

 地面にもう落ちたのか?
 身体の感覚ももうまともじゃないのか?

「――よくぞ我慢してくれましたね」

「……!?」

 俺は誰かに支えられていた。

「……あんたは?」

 霞む目で問いかけた。
 男は答えた。

「生徒会副会長の草壁です。よく頑張ってくれました」

「ほう……。お前もかなり深手だと聞いたが、優秀な回復スキルを持つものがいるのかな」

「答える義務はないでしょう?とにかくあなたは私達が相手しましょう」

 ホトケとニシノの表情が少し強ばり、緊張が辺りに走る。

「ふん。ついに主力のお出ましか。良いねえ……ケリをつけようか」

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