『Nightm@re』という異世界に召喚された学生達が学校間大戦とLevel上げで学校を発展させていく冒険譚。

なすか地上絵

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第二章★

032:スキと鋤。

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――朝9時
■生徒会室
 (大和 真)

 朝9時になると徐々に皆が生徒会室に集まりだす。

「真君。来て」

 そして何故か俺は会長に呼び出されていた。この人に呼び出されると怒られてる気分になるのは俺だけじゃないはずだ。

「何のようですか会長? 」

 ここは会議室。
 会長は相変わらずの鉄面皮。

「あなたにはこれからお使いがあるのよ。ほら」

 会長はメモ用紙を渡し指を差す。

「ペットボトルと……ドライアイスetc……。あとは……生活必需品か」

「そうよ。あなたと沙也加さんと恭二君の三人で行ってきなさい」

「えっ、私? 」

 沙也加は上杉さんと草野さんの見ているモニターの観察をやめ、こっちにくる。恭二も作業をやめ、俺達の元にやってくる。

「おつかいか?俺もか? 」

「そうよ。あなた達いつも一緒だし良いでしょ。お願いね」

 会長の言葉は有無を言わさないといった感じだった。本当に怖いのが用件以外あの人はなにも言わないのだ。未だ、雑談をしているのを見たことがない。

 まあ断る理由もないしと俺ら三人は会議室を出て行く。立心館高校の校門から出て学校の敷地の外に出る。もちろん学校の外には相変わらず人影がなく寂しい。

 商店街に向かいながら俺達三人は話していた。

「この三人で行動するのが久しぶりに感じるね恭二」

「そうか?たった数日だぞ」

 俺達は前にも来た商店街を歩く。

「…………」

 俺は沙也加がやけに落ち着きがないのかソワソワしている。それが気になっていた。対照的に恭二は落ち着いていて黙々と歩く。

「沙也加、落ち着きがないけどどうしたの? 」

「えっ? 私? 別に普通だよー」

 沙也加は言い張るがいまいち釈然としない。

「恭二も沙也加が落ち着きがないと思うよね? 」

「確かにな。便所か? 」

「レディーに普通そんなこと聞かないよー。別に何でもないよ!大丈夫!」

 よく分からないからとりあえず気にしないことにした。

「この商店街は確か食料を取りに来た際に来たよな」

「ああ、やっぱりゴーストタウンなのは変わらないね」

 俺らは商店街の一角の無人のスーパーを見つける。恭二が率先してスーパーの中に入り、俺と沙也加は続く。恭二は二階に、俺と沙也加は一階を回ることにした。恭二はどうやら二階に欲しいものがあるらしい。俺と沙也加は一階のドリンクのコーナーに向かう。

「ペットボトルって何でも良いよね? 」

「ああ、多分な。どうせなら好きなやつを選ぼうよ」

 沙也加が横でペットボトルを選んでいた。俺は辺りを見回す。

 スーパー内は暗く、一部商品が散乱している。前に他校の生徒が来ていたのかもしれない。

――トンッ

 ボーと店内を見回していると不意に背中に何かが当たる感触がする。

「……どうしたの沙也加? 」

 沙也加が俺の背中を突っついていたのだ。

 さっきから感じていた沙也加に対する違和感が頭に過る。

「ねえ、沙也……」

「真。私ね……お願いがあるの」

 沙也加は俺の言葉を遮るように大きな声で言う。

「お願い? 」

「そう……お願いなの」

 沙也加は下を見て俯きながら喋り始めた。

「……私ね。不安なのよ。いつ真や恭二が死んじゃうか……分からないから」

「どうしたのいきなり?俺は生きるよ。死ぬ気はないよ」

「……でもこれからのことなんて分からない。……だから今のうちにしておきたいことがあるの」

「しておきたいこ……っ」

 俺は言葉の続きを言えなかった。
 沙也加が俺の唇を塞いでいたからだ。

 沙也加と俺の唇が重なり合う。俺は目の前に起こっていることが信じられなかった。沙也加は外国人みたいに挨拶でキスをするタイプなのか?しばらくして、沙也加は自分から離れる。

「……ありがと」

「う、うん……」

 俺は赤面しながらひたすらあうあうしていた。

 暗いスーパーの店内になんとも言えない沈黙が続く。沙也加も顔を赤くしたまま喋らないし。

「ねぇ……沙也加? どうして……」

「……べ、別にしたかったからだ……もん」

「いや、でも……」

「……お、応援よ!頑張れ……って意味なの」

 沙也加は俺の持つカートを持ち、小走りで先に進んでしまう。

 一人残された俺は呆然とその後ろ姿を見つめていた。小さく『すき……だから……』と呟いていた気がした。空耳かもしれないけど、沙也加の考えていることがますます分からなくなった。『スキ』って『スキ』か?農作業の道具を言ってるのだろうか。もうわけわからん。

 俺はしばらく上の空だった。
 いつも明るくて元気で可愛くて、でも最近はBL小説にはまっていたりとギャップが面白くて、居心地がよくて…でも、今までは意識したことなんてなかったのに、何故かこの時、凄く女の子らしくてドキドキしていた。
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