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第二章★
046:由川とデスメタルの思い出。
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■都内某所
(草壁 真司)
「いやー……ビルまで溶かすとは……凄い鎌ですね」
金星は自分の身長の3倍はありそうで所々、髑髏が彫り込まれている鎌を持ち上げテンション高めに話す。
「えへん。僕ちんはロリッ子ではあるけど実は力持ちなんだ~。舐めてると火傷しちゃうよぉー」
金星がにっこり笑いながら無邪気に迫ってくる。殺意がある点から可愛らしいとはほど遠い。むしろ怖いです。それにしても……まずい。飛び上がる力はもうない。能力を使う存在力ももうほとんどない。あまり存在力を使わない武器に変えないといけませんね。
ランスを右手から消し、また右手が発光する。ニシノの手裏剣が姿を現す。そして手裏剣で応戦する。
「わっ!? 危ないじゃないのぉー」
ロリ女は一旦引き距離を取る。
さて…どう戦う…
やはり三人はきつい。早々にケリをつけておくべきでした。水星、木星は金星の後方のビルの外壁に背をもたれさせ休んでいる。あの二人はもう戦闘はきつそうですが、金星はまだまだ元気一杯、殺意満載。
「うふふん。そろそろ存在力も尽きてきたんじゃないのぉー?優男さん? 」
「まだですよ」
金星は鎌を振り上げ、今度は金色の肉体強化もしながら迫ってくる。数多の手裏剣に少し存在力を乗せて向かわせるが金星のミニマムボディが難なく弾いてしまう。手裏剣がまったく効いていない。
「…!! 」
こうなったら切り札を使うしかないですかね…。
私には実は切り札がある。大凶校戦でも使わずにいた切り札。
それを使おうか悩み始めていた時だった。後方から"何か"が金星に向かって飛んでいく。
「…弓……弓矢!?由川のか?? 」
「そうですの!」
由川だった。振り返ると、キリッと姿勢良く立ち、弓矢を私の背後で構えている。
「大丈夫ですの?」
「由川。これは助っ人に来てくれたんですか?」
「ええ、もちろんですわ!仲間を死なせるわけないじゃないですか。お力になりますわ。水星、木星、金星を倒せばいいんですね?」
「そうです。水星、木星はもう戦闘不能ですが金星はあの通りピンピンしてます。鎌は危険ですから注意してください」
「分かりましたわ。では副会長は休んでてください。あの程度ならすぐに終わりますわ」
いつになく自信のある由川さん。
とてもありがたく今の私には女神にすら見えます。
丁寧な物腰や仕種などからどこかの金持ちのお嬢さんみたいな人。実際に金持ちらしい。良くティーセットを生徒会室に持ち込んでいる。生徒会ではお茶係を勤めている。そして最近もだが胸の成長も著しい。
由川の右手が青白く発光する。
武器の矢が数本召喚される。
由川は弓矢を何本も放つ。
避けるのに必死な金星は防戦一方になる。
「くっ、僕ちんピンチっ! 」
金星は私達から距離を取り、後退する。助っ人が来ることまで予想していなかったらしい。しかし、易々と逃がすような生徒会はいない。
由川の弓矢が青白く発光し同時に音声が流れた。
━━━━━━━━━━━
※技発動!
―――――――――
★ハリケーンエアロー
━━━━━━━━━━━
「ひ、ひぃ!! 」
由川が矢を放つ。これは由川の新しい技ですね。金星は逃げようとしていて慌てていた。水星と木星は動く力もないのか逃げようとすらしない。
「木星。私達もここまでみたいね……」
「そうだな水星……。なんでかな。逃げたいのに身体が動かないんだ」
二人はボーと由川の攻撃を見つめていた。
「私ね…水泳をしたかったわ。…それでね大会で優勝するのが夢だったわ」
「ああ、俺もさ。陸上部でレギュラーを目指してたのに気が付けば戦いに飲まれ……」
「そうね……」
矢の先を中心に風が巻き起こる。風はうねりを上げ回転し、辺りのビルも巻き込みながら敵三人に迫る。まるで矢が台風の目になり辺りを破壊しながら進む。スピードは速くはないが力は圧倒的だ。ビルは粉々に破壊され、アスファルトにはヒビが入ったり土が露出していく。街灯や無人の車や植木などは消し飛んで行く。
大きな轟音がおき、砂塵が舞い上がる。
辺りは静かになる。砂塵が晴れてくると視界が見えてくる。
終わった…のでしょうか。遠くの方で白い煙が出ている。あれは金星だろうか。それとも水星か木星か。
「終わったか確認してくるですの」
由川はすっかり変わり果てたオフィス街を由川は確認しながら歩く。もし生きていたとしてもまともに動ける状態ではないだろう。そう思っていた。
だがそれは慢心だった。
「貴様ぁぁァァぁぁぁぁぁぁぁぁァぁぁっ!! 」
――!!!!!!
金星が砂塵の中からでかい鎌を振り上げ、迫ってくる。金星の身体は傷だらけで片腕がなくなっていた。突然のことだった。突然のこと過ぎて私は反応が遅れる。
「由川あぁぁァァ!!!」
由川は迫り来る金星に矢を何本も放つ。金星は矢が数本刺さる。
「ぐふっ……」
矢はまた金星の小さな身体を貫き、鮮血が飛び散るが金星は走ることを止めない。
やばい、やばい!!
焦りが起きる。由川は接近戦はできないはず。迂闊だった。
「逃げてください!!!!!!由川ぁァァ!!!!!」
私は叫ぶ。だが目の前に迫ってくる敵。由川を殺そうと鎌を振り上げている。由川は動けない。
「死ねぇぇぇぇぇぇ!! 」
金星は自分の死期を悟っているのか、さっきまでの戦いを楽しむ様子は一切ない。
なりふり構わずに由川に突っ込み、大鎌を降り下ろす。
「いやぁぁぁぁあぁあぁあ!!!!」
由川の身体に鎌は突き刺さり引き裂く。鮮血が吹き出し、コンクリートの地面を真っ赤に染めながら道路に転がった。
「――道連れだも……ん」
血塗れの由川の身体の上に金星の身体もドサッと倒れ込む。
「よ、由川……? 」
静かになったオフィス街。
私はどれぐらいそこにいたのか覚えていない。寂しい夜風だけが吹き荒れていた。
私は由川との生徒会の日々を思い出していた。いつも明るくて元気で……生徒会を盛り上げてくれていた。デスメタルをこよなく愛し、生徒会で歌うその姿にはギャップを感じざるをえないがそんな由川をありがたく思っていた。
私はちゃんと学校の授業にも出るようになり、霜月 零に生徒会に誘われ生徒会にいたがどこか人と関わるのが怖かった。ですが、由川が盛り上げてくれるので私は自然と由川とも草野とも仲良くなり生徒会がとても好きになっていった。今じゃ私の居場所なのだ。
大事な仲間。由川の言葉を思い出す。
『草壁!草壁!テンション低いですの!歌うと元気になるですの!』
『デスメタルはどこまでぶっ飛べるかが勝負ですの!さあ、草壁も一緒に良いところに行きましょう!』
『私…この生徒会が好きです。皆とずっといたいんです…』
デスメタルを歌っていた由川を思い出す。私の目からは涙が溢れ、止まらない。アスファルトを涙で湿らしていく。
「なんで……由川が……そんな……」
辺りに私の声が広がる。
由川の横には金星の死体が転がっていて何故か怒りが湧かない。
二人の死体が煙を放ち始め、消滅をしていく。
敗者は存在力をなくし、やがて消えていく。生きていた証を全て奪われて、消えていく。
いつしか、2人の存在は消えていた。
…………
……
…
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