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第二章★
048:アリスの壮絶な過去①
しおりを挟む――開戦から2時間半
■立心館_校庭
(上杉 昇)
腹部からは血が止めどなく溢れて止まらない。
校庭には砂塵が吹き荒れている。生き残りの一般生徒が何人かがまだ戦闘を繰り広げていて、喧噪や銃声が憩える。無残にも横たわる生徒の死体達は白い煙を出しながら次第に消えていく。
戦闘はかなり長期戦になってきていた。アリスは隣で俺の傷口を心配しオロオロしている。俺は相当の深手を負っていて、アリスも相当消耗している。
この傷。どうしたものか。
敵の火星と土星はどこか余裕が出てきている。だが、警戒は緩めていない。
「いい感じに重症じゃん?土星やるね~」
「傷は深いな」
火星と土星の技は非常に強力だ。今、【天上の業火】…とか音声が流れていたかな。辺り一面が火の海になっている。さらには土星の強力な技【武装LAND】が絶望的な強さだ。校庭全体が敵のテリトリーになっていて迂闊に近づけない。
俺は自分の傷の深さと残りの存在力を確認する。
そしてアリスに聞く。
「アリス。まだお前はいけるか?」
「ああ、行けるぜ。もうね何がなんでもあいつらの頭に風穴を開けてやるんだ」
「まだ元気そうで良かった。アリス、お前は遠距離タイプだから遠くから援護してくれ」
「はっ?何言ってんだ。おめーその深手じゃろくに動けないだろ?」
「お前は女の子だぞ!危ないだろうが!!」
「今のお前よりは戦えらあ!!」
アリスは全く言うことを聞いてくれない。彼女なりの気遣いなのだろうけど。仕方ない。引き続き応戦するか。そろそろ強力な技を使うか…。
「気が変わった。悪いな上杉」
「…っ!! 」
俺の首から衝撃が走る。アリスが俺に手刀を食らわせたようで俺の意識が薄れていく。地面が目の前に近付いてくる。目の前が真っ暗になりそして意識が完全になくなった。
◇◇◇◇◇◇
「悪いな。あんたを死なせたら植村に申し訳ないんだよ。あんたに御執心みたいだしな」
あたいは一般の生徒を前線から下げ、戦場には三人だけになる。あたいの金髪が風に靡くことであのピアスが月明かりに反射し輝いている。
「へー、君だけで良かったの? 二人で戦った方が良かったんじゃないの?」
「死亡フラグだな」
「……」
あたいは状況を整理していた。さっきの上杉が喰らった技からすると恐らく、校庭そのものが今や奴等の領域だ。さらに今は火星の技で校庭一体が火の海になっている。少し距離は取っているものの熱い。額から汗が流れる。
接近戦に持ち込んでもその前に、上杉みたくやられてしまう。かといって遠距離戦をしようにも校庭そのものが敵の武器となった今、簡単に防がれてしまって遠距離でもこのままじゃダメだ。
あたいは珍しく頭をフルに働かしていた。考えもなしに上杉を気絶させたわけじゃない。
考えているが、相手は当然待ってはくれない。
「こんなこともできるぞ」
地面が盛り上がり、徐々に形を成していく。これも武装化LANDの能力だ。
地面がとある形を形成していく。造られたのは校舎程の大きさ長さのある大剣だ。土で構成され、そこに火を纏った大剣が姿を表す。土は土星の力、火は火星の力。2つの力を上手く使った組み合わせ技だ。
「…ちっ! 」
状況はどんどん悪くなる。
そして、あたいは悩んでいた。
あたいには一つ切り札になるものがある。それを使えば確実に相手を倒せる確信を持っている。問題があるとすればそれは残りの存在力だ。これまでに何発も撃っている。存在力の使用には武器によってパターンが違う。例えば剣やナイフ等の接近戦向きの武器は技を使う際に存在力を消費する。通常に使っていれば存在力は減らない。
だけど、あたいの拳銃や沙也加の重力拳銃は弾を一発打つだけで存在力を消費してしまう。その代わり剣やナイフにある技を使用する際に消費する存在力よりは少なめだ。だが、あたいは既に存在力を半分以上も使っている。初めて使う武器だから消費量が予測できない。リスクが高すぎる。
「……どうした? 防戦一方だな」
「あはっ。早く死んじゃいなよぉー。僕らは生き残り最後は現実世界に戻るんだあー」
「何故、オメーは勝ち続ければ現実世界に戻れると思ってんだ?」
あたいは二人の攻撃を避けながら走り回る。そして火星に聞く。土でできた大剣が炎を纏い襲い掛かってくるがギリギリのところでよける。
「あはっ。だって流れ的に優勝すれば帰れそうじゃん?ファンタジーとかのサバイバル系の王道でしょ?」
「悪いがあたいはそう思わねーな」
あたいは校庭から一旦、距離を取り校舎の壁を足場にした。
「どういうことだ?」
無口であまり感情を表に出さなさそうな土星はあたいに苛立ちを向けていた。
「初めてこのナイトメアに来た時にモニターで喋ってた蛇人間みたいなのがいただろ…? 」
あたいは邪魔だったので長く伸びた金髪を一本に束ねる。
「…クチナワか。奴は俺達に戦えと言った」
「そうだ。だけど戦わせる理由を言ってないだろ」
「それがなんだと言うんだ? 」
「あたいにも分からないが、理由も教えられていない以上、戦っていれば現実世界に戻れるだなんて信じられねぇよ」
「うるさい!うるさい!うるさい!」
いきなり火星がアリスに怒鳴る。
「戦わせる理由もなく戦争をさせるわけがないじゃないか!!戦争には戦いには必ず理由がある!! 」
火星はまるで子供のように怒鳴り散らし存在力を練り始めた。
本当にそうだと思う。戦うには必ず理由があるはずなんだ。理由がなければ人々は人殺しは進んでするはずがないんだ。だからこのナイトメアの大戦の様子は時に不気味にも感じる。まるで誰かに操られてるような…そんな気がするのだ。
火星は力を練り込み始め、集中している。
さらなる大技を使う気配がする。
……こりゃ…一気にケリをつけに来る気だな。
あたいは覚悟を決める。同時にアリスの手に握る拳銃が青白く発光する。そして拳銃に新たにサイレンサーが装着されていた。
「……ハーフ女よ。もう終わりにしよう。そろそろ死んでもらおう」
土星と火星は存在力を開放し、地面が揺れ動く。
━━━━━━━━━━━
※技発動!
―――――――――
★炎卓の騎士
━━━━━━━━━━━
二人の勾玉から機械の音声が流れる。地面が一気に盛り上がり、炎を纏い土でできた騎士が何体も作られていく。
てか、あいつら技の愛称が良すぎだろ。まるでコラボ技だ。それはあいつらがおそらく共通の種類?の武器を使っているからこその成せる技なのか?支給品にはまだまだ謎が多いな。まあ、それでも関係ねえ。
すべてぶっ放してやらあ。
「あたいもそろそろ命を張らせてもらうぜ……」
あたい一つ感じていることがある。短い間付き合いではあるが、立心館の奴等が気に入っている。いや、好きなんだ。前までは人間を信じず、一人狼を気取り友達も彼氏もいなかった。でも、今は大事な仲間がいる。あたいを助けてくれた副会長や仲良くしてくれた生徒会の連中も。
アリスの頭には過去の人間を信じなくなった出来事が流れていた。
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