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第二章★
050:疑いの心。
しおりを挟む――開戦から3時間が経過
■大凶高校_地下施設
(霜月 零)
私と植村は大凶高校の応接間から地下施設に続く階段を下る。
階段には私達の足音が響いていた。
「やっぱり会長が向かっていたのは地下施設だったんですね」
「そうよ。気になることがあるのよ」
「海王星が言っていたことが気になってるんですか?」
私は頷く。
「私のカンが正しければ、彼らが私に見せたくなかったものはここに関係してるはず」
地下施設への扉が見えてくる。ペンキが剥がれていてやけに年季を感じる。
「海王星が隠したかったのってなんですか?」
扉の前に付き、私は小さく答えた。
「おそらくスパイね」
私は重い扉を開ける。
中に入り、周りを見回す。
目線の先には、白いシーツを被せた布団がそこらじゅうにあり、負傷者達が治療を受けていた。
植村があたりを見回しながらある人物を見つけていた。
「…! 上杉さん! 」
上杉も先程、帰還したのね。無事そうで良かったわ…。治療も終わったみたいね。
私と植村は上杉の所に向かう。
「どうやら、勝ったみたいね」
「ああ、でも勝ったのは俺じゃないぜ」
上杉が横を指すとアリスがいて、治療を受けている。
「おっ、会長じゃねーか。あと、植村か」
「アリスありがとね。あなたのおかげで星華高校をだいぶ、押してるわ」
「へっ、ちょろいぜ。パーフェクトボディ超絶美女のあたいにかかりゃこれから冥王星が来ようとイチコロよ」
「ありがとう。上杉を守ってくれて」
私はアリスにお礼の言葉を言う。アリスは急にもじもじして照れ始める。この子本当に分かりやすい。根は良い子なのよね。
アリスの隣にいる上杉さんの傍に植村は座り、話しかけていた。
アリスも治療を終えたようで、治療してくれた女の子にお礼を言っていた。
「あなたは元大凶高校の生徒ね」
会長は少しくせ毛のある髪をしたほんわかした女の子に話しかける。
「そうですよー」
「確か、回復能力を持つ人はあなたを含めて今は三人よね? 」
会長は女の子に聞く。
「はぅ、そうですよー。相坂ちゃんと私ともう一人です」
彼女の回復アイテムは確か『治癒扇子』。擦過傷等の軽症を治すのに向いている。相坂の能力は『女神の高杯』で大怪我を治すのに向いているが、存在力は大量に消費してしまう。
「草壁達は帰ってきてるかしら? 」
会長は回復組の女の子に聞く。
女の子はさらに奥の方のエリアを指さす。
「はぅ、あそこは骨折などをしている人がいます。草壁さんは骨を折ってましたので多分あそこにいますよ」
「分かったわ。ありがと。じゃあ、上杉とアリスは安静してなさい。植村は来なさい」
植村は少し、戸惑いを見せるが私ののあとにトコトコとついてくる。歩きながら私はは植村に言う。
「上杉と居たかったかしら? 」
「え? いや、でも、ふぇ!?」
「焦らなくていいわ。分かりやすいのね」
私は少し笑ってしまう。
植村は珍しいものでも見たように驚いている。確かに表情にあまり出ないけど私も人間なのよ。私はとりあえず言葉を返す。
「私はお面なんて付けてないわよ」
「え、エスパーですか? 」
植村は自分の思考を読まれたことに焦っていた。
私達は奥のエリアに到着する。すぐ奥には建設中の建物が変わらず鎮座している。あれもそろそろ完成させたいわね…。
私は辺りを見渡す。
ここにも怪我人が大勢いる。
「会長ですか……? 」
「草壁そこにいたのね」
会長は治療中の草壁に近づき様子を見る。
安堵のため息をつく。
「その様子なら大丈夫そうね。良かったわ」
「はい。私は大丈夫です。ただ、由川が……」
私はそれを知ったのはついさっき。MSPに通知が来ていたからだ。
「知ってるわ。あなたのせいじゃない。由川は本当に残念だったわ…」
「はい……」
草壁は悔しそうに唇を噛んでいる。悔しいのは私も一緒。あの子も大切な大切な仲間であり友達なのだから。
絶対に皆んなで生き残ってこの世界から出ていくって決めてたのに…。
「会長はどうされたんですか?私を心配してくれたんですか?」
「それもだし、一つ気になっていることがあるのよ。……相坂さんはどこかしら? 」
「相坂ですか? 」
「彼女がどこにいるか知らないかしら? 」
草壁がお団子頭の女子生徒を教えてくれる。お団子頭の女子生徒は怪我人の治療をしている。
「彼女なら知ってるかと…」
「ありがと」
私は植村を連れてお団子頭の女子生徒に話しかけにいく。
「あなた回復組の一人よね? 」
「あ、はい。そうよ」
お団子頭の女の子は少し、私に対しておどおどしたように返事をする。私ってそんなに怖いのかしら。
植村は私が女子生徒と話している間、草野が地下施設にも設置していたモニターを見ている。
モニターには星華高校で戦闘中の真君、恭二君、沙也加さんの三人が天王星と戦っていた。
その3人面白いでしょ。
恭二君の天才的な飲み込みの良さと三島さんの上手いサポート。そして不思議な雰囲気を持つ真君。
今の彼らなら正直、冥王星とも良い勝負はすると思う。特に真君の覚醒次第では…
でも、まだ無理はさせたくない。
だから私はそろそろ向かうことにした。
「行くわよ。植村」
「えっ? は、はい!相坂さんがどこにいるか分かりましたか? 」
「分からずじまいね」
「相坂さんを探してるのはなんでなんですか? 」
「そうね…なんとなくね…嫌な予感がするのよ」
「……海王星の言っていた件ですよね。まさか愛花ちゃんが?」
「いえ……私の思い過ごしよきっと」
ーーたぶん、そんなことはない。
「植村?まだ戦えるかしら?」
「大丈夫です!かなり回復しました!これから冥王星と海王星を倒しに行くんですか? 」
「そうよ。もう皆も消耗してるし無理はさせたくないわ。私とあなたで攻め込むつもりだけどいけるかしら?」
「は、はい……。頑張ります! 」
私は感じていた。相坂がいないのは何かが匂う。得体の知れない何かが……近づいてきているようなそんな予感。
早くこの戦いを終わらせよう。
私は存在力を練り込み、植村に言う。
「じゃあ、行くわよ。捕まりなさい」
植村は返事をし、ピタッと私にくっつく。可愛いわねこの子。あの堅物そうな上杉も好きになるわけね。
植村が聞いてくる。
「どうやって星華高校まで行くんですか? 」
「私の能力よ」
私は力を込めると同時に私と植村の身体は光に包まれ、地下施設から消えた。
…………
……
…
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