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第二章★
049:天王星の登場。
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■星華高校_校舎内
(大和 真)
俺と恭二と沙也加の三人は星華高校の校舎を走り回っていた。
追手もいるから、沙也加が後方に向けてグラビディガンを放つ。
重力球は追手に直撃し、何かに押し潰されるように廊下にひれ伏す。
「恭二! どこへ向かってるんだ?」
「いや、どこに向かっているとかはない! 」
「どういうことなの恭二ー? 」
俺と沙也加が恭二に聞くと恭二は答える。
「どこに敵中枢がいるか分からないからとにかく走り回る。そうすりゃ、敵中枢もいずれは出てくるだろう」
だいぶ脳筋な作戦ではあるが確かに一理ある。生徒も殆どが立心館に攻め込んでいっているからここはかなり手薄な印象。それにこれだけ暴れてれば嫌でも目立つ。案外向こうからやってくるのでは。
俺達は走り続けた。立心館高校の仲間達も頑張っているんだ。俺らも頑張らないと。
俺達は数分走り回るが、不意に恭二は立ち止まり、辺りを見回す。
「どうしたの恭二?」
「ここは理科室だな」
俺が聞くと恭二が何故か理科室に入ろうとする。
「どうしたのー恭二?理科室になんか何故――」
何か気配がしたんだと恭二がつぶやく。恭二は躊躇わずに理科室の扉をこじ開け中に入る。
理科室にはビーカーやフラスコ等が辺りに散乱していた。
「…!! 」
「おお、ようこそ!侵入者たちよ。よくここが分かったね。オレは天王星です」
理科室内には敵が教師用の椅子に座り、待ち構えていた。
恭二は鉄球ブレスレットに力を入れながら言う。
「存在力をあえて練り込み、俺に気づかさせたな? 」
「ああ、そうですよ。まったくハデに暴れてくれますね」
え?俺はまったく気づかなかったんだけど。
天王星は椅子に座りながら、わりと余裕の表情だった。
「幹部レベルのくせに予想以上に早いお出ましだな? 」
「いや、既に水星、金星、土星、木星が殺られているんでもうオレ達が出るしかないんですよね」
確かに仲間の戦局や結果などがオレらのMSPではわかるようになっている。生徒の生き残りの数では遥かに負けているが主力だけを見れば立心館の方が優勢と言えるだろう。
天王星は立ち上がり戦闘態勢を取る。
俺達三人も武器を構える。
「―――!!!!」
恭二は鎖付き、鉄球を天王星に向けて投げる。
「行くぞ真! 沙也加! 」
沙也加も既にグラビティガンを発砲していた。鉄球と重力球が同時に天王星に襲い掛かる。
恭二の鉄球と沙也加の重力球を難なく天王星は避けていた。
鉄球は辺りの実験用机を破壊する。
こんな障害物がある場所じゃ俺の草薙刀の力は少し使いずらいなと思ったがまあ何とかしよう。
俺は草薙刀を抜刀し、構え、存在力を練る。
「オレもそろそろ武器を出しますか」
天王星は両手を発光させると日本刀が二本、青白い光と共に姿を現す。
「オレの武器の名前は“神威刀”。Aランク武器なんで気を付けないと即死しますよー」
天王星の神威刀から音声が流れた。
━━━━━━━━━━━
※技発動!
――――――――
★音速術 起♪
━━━━━━━━━━━
天王星の身体に存在力が練り込まれているのが分かる。
「恭二!下がって!」
俺は瞬時に草薙刀の能力を発動させた。
存在力を解放し、草薙刀からも機械の音声が流れる。
━━━━━━━━━━━
※技発動!
――――――――
★水神の領域
━━━━━━━━━━━
初めて俺はちゃんと技を発動させる。
ぬめぬめになっている俺の刀の刀身からは水が滝のように零れ始め一気に床に広がっていく。
「ほう…。面白い刀ですね」
俺は水で覆われた理科室を駆け出す。
天王星が動き出したのも同時だった。
「はいぃィぃいぃぃィぃぃぃぃっ!! 」
「はぁぁぁぁあぁぁぁァぁぁぁっ!! 」
天王星は異常な速さで一気に接近してくる。降り下ろしてくる刀を横に避ける。
「良い反応ですね。もう少し広くて平らな場所ならもう少し速く動けるんですが……」
「それは俺もだよ」
俺はこの刀を使いこなすために会長に鍛えてもらいようやく技を覚えることができた。存在力の使い方も。
天王星は顔を歪ませていた。
暗くてあまり見えなかった天王星の顔が今ならはっきりと見える。性別は声からも分かってたが男で髪は茶色で髪型はややオールバック。
やはり部活動人口の多い星華高校の生徒だけはあり、体つきはアスリートそのもの。この人もしかしたらかなり有名な選手かもしれない。そんなことをふと思った。
天王星はMSPを取りだし、俺と恭二と沙也加に向けた。
「皆さんの平均Lvは80くらいですかー。俺の敵じゃありませんね」
天王星はMSPをしまい、俺達に言う。
「今なら武器をオレに渡せば逃がしてあげますよ」
天王星はニッコリと笑顔を作り言う。
「どういうことだ? 」
恭二が聞くと天王星は笑顔を浮かべたまま普通に答える。
「オレは君達の命を奪う気はありません。優しさです」
営業スマイルみたいのを向けてくる。無駄に爽やかな笑顔がシャクにさわる。
「君達は武器を渡し、オレは生徒会長の霜月 零を倒します。そうすれば犠牲は少なくすみますから」
恭二にアイコンタクトを送ると恭二の考えがすぐに分かる。
「論外だ」
恭二の巨大化された鉄球が不意に現れ、天王星を吹き飛ばした。
「なっ…!? 」
横に不意に現れた鉄球を天王星はぶつかるも上手く受け流し、実験用テーブルに立つ。
「交渉決裂ですか。良いでしょう」
「沙也加!辺りに重力球を打ってくれ!」
恭二が沙也加に言い、沙也加は拳銃のハンマーを起こし、トリガーを引く。
重力球を何発も放ち、それを天王星に向けて放つ。
「そんな動きの遅い弾なら簡単に避けれますよ」
「違う沙也加!撃つのは天王星じゃなく机や棚だ!」
「なるほどね!分かったー!」
沙也加は机や棚に向けて放ち、全てがペシャンコに潰されつく。
「なるほど。結局、障害物をなくしたと? でもオレにもそれは有利ですよ? 」
確かにそうだろうけど、条件は同じ。そして俺も草薙刀の能力が使える。
「終わったよー恭二」
「ありがとな沙也加。じゃあ、ここからが本番だ」
「ふん、まあ良いでしょう」
天王星はそう呟き、神威刀を2本構え、走り出す。
俺と恭二も走り出し、沙也加は後ろから援護する形になる。
「恭二!跳べ!」
「了解!」
俺は水の上を走る。
さっきと違って障害物がない。だから一直線に敵に迫れる。
俺は加速する。高速で動き回る天王星を捉え、草薙刀を振る。
「…!!」
俺と天王星の刀がぶつかり合い、火花を散らす。
俺はさらに水の上を滑るように動き、天王星の後ろを取ろうとする。
「食らえ! おらっ! 」
天井付近まで跳んでいた恭二が天王星の真上から鉄球を降り下ろす。
「――っほう」
天王星は恭二の鉄球を軽くいなしてかわそうとする。
「逃がさないからっ! 」
沙也加が天王星の足元を狙い重力弾を撃つ。
しかし、天王星はその重力弾を神威刀で斬り落としてしまう。
「へぇ?なかなかのコンビネーションですね」
「それだけじゃない」
恭二が天王星の言葉を押し退けるように言う。
「お前を囲んだぜ」
「「「――――!! 」」」
俺と沙也加もそして天王星も周りを見る。
俺と恭二と沙也加の三人で三角形を作り、中心に天王星がいた。
「君達…悪くないですねえ。面白くなってきましたよ」
「勝つのは私達よ!あんたなんかに私達は負けないわ!」
「沙也加に同感だ。真の能力があるかぎり、あんたの超高速でも逃げれないぜ」
「逃げるですか? 何を言ってるんです? 倒す気しかありませんね」
天王星は動きだし、恭二に向かう。
「まずは司令塔の君から倒させてもらいます」
「上等だ! 」
恭二のブレスレットから何本も鎖付き鉄球が飛び出す。
…………
……
…
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