蝉恋の唄

チバ県産納豆

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計画

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 うだるような暑さの中、畳の床に寝転がりやることも無く天井を見つめる。足元からは扇風機が回っている音がする。
「………………」
 そろそろ午後1時になる。
休日のお昼過ぎ、この時間になると、いつも来る。
「おぉーーーい!悟ぅーーー!」
 やっぱり来た。ガチャガチャとなにやらうるさい音を立てて、坂の上にある僕の家まで歩いてくるのが分かる。きっとこのガチャガチャ音は虫かごだろう。そんなことを考えていると、
「よ、悟!行こうぜ!!」
「おっす、隼人…玄関からこいよ」
 僕の親友、小田隼人。毎日、休日になるとわざわざ坂の上にある僕の家まで遊びに誘いに来る、たった1人の親友だ。なぜか縁側から毎回くる。午後の1時になると、必ず来る。
「下に美鈴と里奈も待ってるからさ!」
 僕の家の下に住んでる幼なじみ、深川美鈴。それと、隼人の隣の家に住む、隼人の幼なじみ、吉田里奈。
  僕らは毎日、4人で遊ぶ。今日はなにをするのか、僕は毎日が楽しくてしょうがない。
「うん、今行くよ」
「悟ぅ~!遅いよぉ!!」
 下から里奈と美鈴の声が聞こえる。
慌てて玄関の靴を取り、縁側で待ってる隼人と坂を降っていく。
僕はこんな毎日が、楽しくてしょうがない。

  虫かごをもってウキウキしていた隼人は、なにも捕まえられず、木の上で休憩をしていた。美鈴と里奈も疲れたのか、木陰の石の上で2人で座っている。僕は、隼人が休んでいる木の下に座った。
 ふと、空を見上げ、空の青を確認してから、目を瞑る。風に揺れ、カサカサと鳴る木の葉の音。それをかき消すかのように鳴く、蝉達の合唱。とても落ち着く。
  が、その落ち着いた心を乱す言葉が、僕の頭上から降ってきた。
「なぁ悟、お前ってさ?好きな子とかいないの」
「え?」
 急すぎるその質問に、驚いて目を開ける。ニヤニヤしながら隼人は僕を見つめる。
「え!い、いや!いないよ!そんなの」
「お?動揺しまくってんじゃん!」
  墓穴を掘った。確かにいる、好きな子はいる。小学校六年生でませてるかもしれないが、僕にだって好きな子は……いる。
「で、誰なんだよ」
 楽しそうに見下ろしてくる隼人、意外そうに
見つめる里奈、なぜか睨んでくる美鈴。
逃げ場を失った僕は、素直に白状した。
「ま、真冬…ちゃん……可愛いよね?」
 なぜか疑問形で答えた僕を見て、隼人は嬉しそうに笑ってから、隼人は木の上から僕の前にジャンプしてきた。そして、ニヤリと笑うと、隼人は信じられない事を言い出した。

「よし、じゃあ俺達がお前と真冬をくっつけてやる!」

  開いた口が塞がらないという現象を、初めて体験した。まず、俺達って誰だ。美鈴と里奈も巻き込むのか?そう思い、慌てて二人を見る。
あぁ……最悪だ、里奈がこれでもかというほどの
満面の笑みで親指を立てて隼人を見てる。
 美鈴は、下を向いていた。
「1週間後には付き合わせてやるぜ!」
「隼人……その自信はどこからく…」
「男みせろよ!悟!」

 僕の抗議は、里奈の声と背中への張り手で止められた。
    なんでこうなるんだ……。

  そして月曜日の朝、僕ら4人は学校の朝のホームルームで、衝撃を受けた。
担任の先生が、教卓に両手を突き、重々しく口を開いた。
「おはよう、残念なお知らせが1つある。みんな   落ち着いて聞いてくれ、冬木真冬さんは、二学期から、別の小学校に行くことになった。なんでも、遠くに引っ越してしまうそうだ。一学期も後1週間だ。思い出、作っとけよ。」

   頭が真っ白になった。昨日の話をしていた自分たちが、とてもバカバカしくさえ思えた。少しでも気をゆるめれば、泣いてしまうかもしれない、でも隼人は違った。
「聞いたか?今の……なら早く計画立てて実行しないとな、へへへ」
  隼人はどこまでも前向きだった。もしかしたら、ほんとはただの強がりだったのかもしれない、でも、隼人の真っ直ぐな目を見たら、僕は言うしか無かったのかもしれない。
「絶対、気持ちは伝えたい!」
  隼人は、昨日より嬉しそうに微笑んでくれた。



 こうして僕らの、1週間の計画が始まろうとしていた。
    
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