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オルガド一家
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床に手を付き項垂れたままの4人に、どうしたものかとサロメを見る。
すると、にっこりとしたそれはもう強制的な、「うまくやれ」という言葉がにじみ出ているような笑顔を向けていた。
丸投げかい! と突っ込みたくなるのをぐっとこらえて、丸まっている4つの背中を眺めた。
「あの、皆様、本当に覚えてなくってすみません。皆様にはご迷惑とご心配をおかけしてしまって申し訳ない限りです」
「ご迷惑とご心配……」
そう言ってゆらりと立上ったマルグリットさんは涙をぐっと堪えるようにしてベッドに腰掛け、僕をじっと見てくる。
「サロメに聞いた時は信じられなかったし、信じたくはなかったけれど、どうやら本当みたいね」
僕の肩に手をかけ抱き寄せると、もう一方の手で頭を撫でた。
「大丈夫よ、どんなになってもエマはエマだもの」
優しい母性笑みがぐさっと胸に突き刺さる。
……、本当に申し訳ない、どんなになってもエマじゃないエマなんです。
マルグリットさんの言葉に、フィリップさんも立ち上がり、うんうんと首を縦に振った。
「そうだな、エマはエマだ」
「うん、どんなになっても僕たちは家族だからね」
……、すんません!
どんなになってもエマはエマじゃないし、超絶赤の他人なんです!
叫びたい、叫んで今すぐ土下座したい。すごい、ナチュラルにグサグサくる。
いや、もう、罪悪感しか無いんですけど。
これは計画を変更してバラしちまおうぜ! というつもりで、ちらっとサロメを見れば、ものすごい目つきでこちらを見ていた。
僕は目で必死に訴える。
(サロメ! もうバラしましょう)
僕の訴えが届いたのか、サロメがニッコリ微笑んだ。分かってくれた……と思った瞬間だった。
喉の空気がヒュッとなるような、ものすごい眼力が僕を襲う。
(駄・目・で・す!)
強く、ものすごく強くそう語っている、うん、分かった、もう言わない。
鼻の奥がツンとするような、泣きそうになる諦めの中、僕の瞳に写ったのは、親指を立ててスパッと綺麗に首元を真横に切り裂いたサロメだった。
そうか、喋ったら殺されちゃうのかぁ~と遠い目をしながら、とりあえずキラキラと色んな意味で輝いている家族に微笑みを向ける。
「何もおぼえていないのに、そんなふうに言っていただいて嬉しいです」
「覚えていることは何もないの?」
「はい、まるで覚えていません。ですので、サロメと話しましたが色々勉強しようと思います」
「まるで……、か」
僕の言葉を聞いたフィリップさんは少々考え込んで、控えているサロメの方を見た。
「サロメ」
「はい」
「本当に何もかもなのか? 習慣的なことも全て?」
「全てでございます。ご家族様のこともでございますが、国についても、魔力や魔法についても。つまり赤子同然という言葉まんまの状態です。先程絵姿と地図にてご家族のお名前や姿、そして国についてはお話させていただきましたが、それ以外は全くと言っていいほど分かっておられません」
「なるほど。ではあのことも?」
「はい」
あのこと? なんか嫌な言い回しだなと思っていると、マルグリットさんの方に回している手の力が強くなって、ふと顔を見た。
すると、にっこりとしたそれはもう強制的な、「うまくやれ」という言葉がにじみ出ているような笑顔を向けていた。
丸投げかい! と突っ込みたくなるのをぐっとこらえて、丸まっている4つの背中を眺めた。
「あの、皆様、本当に覚えてなくってすみません。皆様にはご迷惑とご心配をおかけしてしまって申し訳ない限りです」
「ご迷惑とご心配……」
そう言ってゆらりと立上ったマルグリットさんは涙をぐっと堪えるようにしてベッドに腰掛け、僕をじっと見てくる。
「サロメに聞いた時は信じられなかったし、信じたくはなかったけれど、どうやら本当みたいね」
僕の肩に手をかけ抱き寄せると、もう一方の手で頭を撫でた。
「大丈夫よ、どんなになってもエマはエマだもの」
優しい母性笑みがぐさっと胸に突き刺さる。
……、本当に申し訳ない、どんなになってもエマじゃないエマなんです。
マルグリットさんの言葉に、フィリップさんも立ち上がり、うんうんと首を縦に振った。
「そうだな、エマはエマだ」
「うん、どんなになっても僕たちは家族だからね」
……、すんません!
どんなになってもエマはエマじゃないし、超絶赤の他人なんです!
叫びたい、叫んで今すぐ土下座したい。すごい、ナチュラルにグサグサくる。
いや、もう、罪悪感しか無いんですけど。
これは計画を変更してバラしちまおうぜ! というつもりで、ちらっとサロメを見れば、ものすごい目つきでこちらを見ていた。
僕は目で必死に訴える。
(サロメ! もうバラしましょう)
僕の訴えが届いたのか、サロメがニッコリ微笑んだ。分かってくれた……と思った瞬間だった。
喉の空気がヒュッとなるような、ものすごい眼力が僕を襲う。
(駄・目・で・す!)
強く、ものすごく強くそう語っている、うん、分かった、もう言わない。
鼻の奥がツンとするような、泣きそうになる諦めの中、僕の瞳に写ったのは、親指を立ててスパッと綺麗に首元を真横に切り裂いたサロメだった。
そうか、喋ったら殺されちゃうのかぁ~と遠い目をしながら、とりあえずキラキラと色んな意味で輝いている家族に微笑みを向ける。
「何もおぼえていないのに、そんなふうに言っていただいて嬉しいです」
「覚えていることは何もないの?」
「はい、まるで覚えていません。ですので、サロメと話しましたが色々勉強しようと思います」
「まるで……、か」
僕の言葉を聞いたフィリップさんは少々考え込んで、控えているサロメの方を見た。
「サロメ」
「はい」
「本当に何もかもなのか? 習慣的なことも全て?」
「全てでございます。ご家族様のこともでございますが、国についても、魔力や魔法についても。つまり赤子同然という言葉まんまの状態です。先程絵姿と地図にてご家族のお名前や姿、そして国についてはお話させていただきましたが、それ以外は全くと言っていいほど分かっておられません」
「なるほど。ではあのことも?」
「はい」
あのこと? なんか嫌な言い回しだなと思っていると、マルグリットさんの方に回している手の力が強くなって、ふと顔を見た。
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