髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部

文字の大きさ
6 / 169
2章 芸能界復帰編

『読者モデル』の発売 2

しおりを挟む
~内山ルナ視点~

 凛くんが表紙を飾った『読者モデル』の発売日である4/1となる。
 その日の我が社は朝から大忙しだった。

「社長っ!例の『読モ』の増刷依頼が来ております!」
「こちらからも同様の要望が多数上がってます!」

 仕事開始時刻である8時半を過ぎると同時に社内の固定電話が一斉に鳴り出し、社員がその対応に追われている。

 アタシが代表取締役を務める芸能プロダクション『ソレイユ』の規模は小さい。
 所属しているアイドルやモデルの数は大手より少なく、有名なアイドルが1人いるだけで、所属しているほとんどの人が無名と言っていい状態だ。
 そのため、固定電話が鳴ることなんて少ない社内で全ての固定電話が一斉に鳴った時は、社員全員が驚いた。

「朝の段階で急上昇ワードに凛くんの名前があったから、売れ行きは良好だと思ってたが……まさかここまでとは……」

 あまりの反響に驚きつつも、好調すぎて口元は緩み切ってしまう。
 そんな中、社内で幹部の役職に就いている矢上がアタシのもとへ報告に来る。

「社長、例の『読モ』の件で、10時現在の状況を報告させていただきます。10時の段階で増刷依頼が10000件以上来ており、コンビニではもう手に入らないようです」
「くっ!もう少し多めに発行すればよかったか!」

 凛くんのカッコよさは理解しており、表紙を飾ることで売り上げ上昇につながるとは思っていたが、想像の遥か上の結果となり、手に入らなかった人がたくさんいるようだ。

 そのため、コンビニで手に入らないと分かった人たちがTSUT⚪︎YAなど10時に開店する雑誌販売店に押しかけ、謎の大行列ができているらしい。

「SNSでは『夏目凛』の名前がトレンド1位を獲得しており、盛り上がっております」
「炎上の方でな」

 凛くんが問題を起こしたわけではないが、現在は収拾がつかないくらいの大炎上だ。

「増刷依頼の電話は店舗の場所と名前、追加の発行部数の確認を徹底しろ」
「了解しました」

 アタシの指示に矢上が返事をする。

「それと一点、気になる電話もたくさんもらっております」
「ん?増刷依頼だけじゃないのか?」
「はい。増刷依頼以外に凛さんの住所や個人情報を教えてほしいという電話が多く来ております。これに関しては、すぐに切る等の対応で問題ないのですが、なぜか『夏目凛は昔、子役で活躍した夏目レンだろ?』等の電話も何件かもらってるようです」
「夏目レンだと?」
「はい。6年前まで子役として芸能界で活躍された夏目レンです」

 夏目レンは天才子役と呼ばれており、彼の代表作である『マルモのおきてだよ』は平均視聴率20%超えと、超有名ドラマにもなった。
 それに加え、『マルモのおきてだよ』で共演した愛甲真奈美あいこうまなみちゃんと歌った『マルマルモリモリ』という歌は、紅白歌合戦にも出場するほどの名曲となった。

「久しぶりに聞いたな、その名前」

 6年前までは誰もが知る天才子役だった。
 しかし、ある日を境に突然、芸能界を引退した。
 引退した理由は色々と憶測が飛び交っているが、同時期に夏目レンの母親が亡くなったことが関係していると言われている。

「で、なぜか『凛くんは夏目レンだろ?』といった電話が数件来てるんだな」
「はい。そのようなことは本人から聞いてませんので本当かは分かりません。ですが……」
「成長すれば凛くんのような顔立ちになるな」

 アタシは手に持っている『読モ』の表紙を眺めながら呟く。

「はい。私もそう思います」

 アタシの呟きに矢上が同意する。

「よし。矢上は至急、凛くんに電話して夏目レンかを確認すること。そして、現在、事務所に所属しておらずフリーの状態なら、すぐに契約して来い」
「わかりました!」

 アタシの指示を受け、矢上が動き出す。
 その様子を見て、アタシは忙しなく動いている社員に向けて言う。

「久々に忙しい時間となるが、今は我が社の稼ぎどき!キッチリ臨時ボーナスを支給するから、みんな頑張ってくれ!」
「「「はいっ!」」」

 臨時ボーナスの支給を聞いてから社員の動きが良くなる。

「それにしても凛くんに黙って表紙にしたけど大丈夫だったのだろうか。寧々さんは『サプライズだから黙ってていいですよ!』とか言ってたけど……」

 『読者モデル』の収録日、凛くんが撮影されてる中、凛くんの写真を表紙で使うことを寧々さんに伝えた。

 すると「そのことはお兄ちゃんに秘密にしてください!大丈夫です!絶対に反対はしませんから!」と言ってたので、勝手に表紙にしたことで凛くんから訴えられることはないと思う。

「まぁ、とりあえずは凛くんと契約できるか……だな。『読モ』の撮影を引き受けたことから事務所には所属してないと思うが」

 矢上から『読モ』の代役をお願いした時、「俺の事務所を通してから」等の発言はなかったらしい。
 アタシは凛くんと契約できることを祈りながら、仕事に取り掛かった。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

髪を切った俺が芸能界デビューした結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 妹の策略で『読者モデル』の表紙を飾った主人公が、昔諦めた夢を叶えるため、髪を切って芸能界で頑張るお話。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...