髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部

文字の大きさ
23 / 169
2章 芸能界復帰編

天才、夏目凛との出会い 2

しおりを挟む
~愛甲真奈美視点~

 あれから数日が経過し、凛くんとの交流が増えた。

「へー。真奈美は小1の頃から子役として頑張ってるのか」
「うん!凛くんもそうでしょ!?」
「そうだな。俺も小1の頃からだ。まぁ、俺の場合、活動を休止して祖母のところで演技や歌の練習をする期間があったから、真奈美よりも活動期間は少ないけどな」

 そんな他愛もない話をするほど仲が良くなった私だが、演技の方は全く上手くいかなかった。

(うぅ~、監督から修正ばかりだよぉ……)

 撮影中、私は何度も監督から修正を言い渡され、不甲斐ない演技ばかりを繰り返していた。
 それに対して、凛くんが修正をお願いされることはほとんどない。
 これだけで私は凛くんとの実力差を痛感する。
 そのため、お母さんからの対応は冷たかった。

「真奈美、今日も監督からの修正が多かったわね。練習が足りないんじゃないの?今日は私の合格が出るまでご飯抜きよ」
「……うん、部屋で練習してくるよ」

 そんな感じで、お母さんから厳しい演技指導を受ける日々が続いた。



 『マルモのおきてだよ』の撮影が全て終了し、クランクアップを迎えた。
 お母さんの厳しい練習のおかげか、徐々に監督からの修正は少なくなり、最終的には自分が納得する演技ができた。
 しかし、私以上に凛くんの演技が素晴らしかったため、監督やスタッフは私のことを褒めず、凛くんばかりを褒めていた。
 そして『マルモのおきてだよ』を視聴した視聴者も凛くんの演技を絶賛した。

 そのため…

「真奈美。夏目くんができるのだから、これくらいの演技はできないとダメよ。同じ小学5年生なのだから」
「……うん、頑張るよ」

 事あるごとに凛くんと比べられるようになった。



 そんな日々を過ごす中、私と凛くんが歌った『マルマルモリモリ』が大ヒットした。
 理由は凛くんの歌声が素晴らしいから。

「真奈美。夏目くんの歌唱力に負けてるわ。今日も凛くんばかり褒められてたじゃない。これから歌番組に出演する機会が増えるのだから、歌のレッスンも増やすわよ」
「……うん。ありがとう、お母さん」

 『マルモのおきてだよ』の撮影が終わっても、お母さんからの態度は変わらなかった。



 そんなある日のこと。
 私は凛くんを誰もいない部屋に呼び出し、あることを告げた。

「私ね、芸能活動を辞めようと思うんだ」
「……え?」

 私の言葉に凛くんが目を見開いて驚く。

「私、凛くんみたいな才能がないみたいなんだ。どれだけ頑張っても凛くんみたいに褒められない。お母さんだって、私の不甲斐ない演技や歌に呆れてるからね」

 不甲斐ない自分を暴露しているため涙が出そうになるが、グッと堪えて話し続ける。

「凛くんばかり応援されて、お母さんにも見放されてる。そんな私を応援してくれる人なんて誰もいない。誰も私の演技や歌を見てくれないんだ。だから私は芸能界を辞めるよ」

 私は凛くんに自分の意思を伝える。

「そのことは真奈美のお母さんに伝えたのか?」
「ううん、まだ伝えてないよ」

 何故かは分からないが、何故か1番最初に凛くんへ話したいと思った。

「そうか。ならまだ芸能界を辞めたわけじゃないんだな」
「そうだけど……私はもう辞めるよ?」

 私は凛くんの発言に首を傾げる。
 そんな私に凛くんは口を開く。

「いくつか真奈美に言いたいことがある」

 そう前置きして凛くんは話し始める。

「まず俺に才能はないぞ」
「ううん、凛くんは才能の塊だよ。だって、努力なんかしなくても周囲の人たちから褒められるんだから」

 私は凛くんが努力してるところを見たことがない。
 だから私が家でお母さんに怒られながら練習している間、好きなことをして過ごしているはず。
 そう思うと凛くんが羨ましく思う。
 すると、「はぁ」というため息が聞こえてくる。

「俺が努力してないだと?そんなわけないだろ」

 そして呆れながら私に言う。

「俺が昔、活動を休止して祖母の家に行ったことを話しただろ?」
「うん。確か、そこで演技と歌の特訓をしたんだよね?」
「あぁ。そこで俺はお婆ちゃんから自衛隊の訓練なんじゃないかと勘違いするほどの特訓を受けた。それこそ、寝る間も惜しんで頑張ったぞ」
「………そうなの?」
「あぁ。この話は誰にもしてないが、俺のお婆ちゃんって有名な女優なんだ。全国民が知ってるくらいの」
「えっ!そうなの!?」

 それは初耳だ。
 それと同時に納得してしまう。
 あの演技力はお婆ちゃん仕込みなんだということを。

「そして歌に関しては、俺の母さんが教えてくれた。だから、俺は努力せず才能だけで活動してきたわけじゃないんだ」
「そ、そうなんだ……」

 どれだけ頑張ったかは分からないけど、凛くんが私以上に頑張ってることは理解できた。

「それともう一つ、真奈美に言いたいことがある」
「……?なにかな?」

 私は凛くんの言葉に見当がつかず、首をかしげる。

「真奈美のことを誰も見てないと思ってるなら大間違いだ。俺ばかり応援されてると言うのも間違ってる。だって真奈美のことを見てる人はいるからな」
「っ!嘘だよ!私は凛くんの影に隠れて誰も見てないよ!」

 私はつい声を荒げてしまう。
 みんなから応援される凛くんに言われ、腹が立ってしまったから。

「いいや、見てる人はいるぞ。少なくとも1人はな」
「だれ!その1人って!」
「俺だ」
「っ!」

 凛くんが堂々と言う。

「真奈美の演技や歌を誰が1番近くで見てきたと思ってる。真奈美が日を重ねるごとに上達しているのは隣で見続けた俺は気づいてるぞ」
「凛くん……」

 その言葉に心が温まる。

「きっと、家で頑張ったんだろうなと毎日のように思った。そして、真奈美に負けてられないって毎日のように思わされた。だからさ、真奈美。誰も見てないとか言うなよ」
「うぅ……」

 私は凛くんの言葉に涙が溢れてくる。

(私なんか誰も見てないと思ってた。でも、凛くんは私を見てくれた。どんな時も見てくれてたんだ……)

「うぇ!ま、真奈美!?な、何で泣いてるんだ!?」

 私の涙を見て、凛くんがあたふたする。

「ぐずん……な、なんでも……ないよ……」

 私は凛くんに心配をかけないよう、涙を引っ込めようとするが、全然引っ込まない。
 それどころか、どんどん溢れてくる。

「ご、ごめんね。な、涙が勝手に……っ!」

 私が凛くんに涙の理由を説明している時、凛くんが“ガバっ!”と、私の身体を抱きしめる。

「り、凛くん!?」
「だ、抱きしめると泣いてる女の子は絶対に泣き止むって寧々が言ってたからな。だからその……気の済むまで泣いて良いぞ。今まで真奈美は頑張ってきたんだから」
「うぅ……うわぁぁぁんっ!」

 私より少し背の大きい凛くんに抱きしめられた私は、凛くんに頭を撫でてもらいながら泣き続けた。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

髪を切った俺が芸能界デビューした結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 妹の策略で『読者モデル』の表紙を飾った主人公が、昔諦めた夢を叶えるため、髪を切って芸能界で頑張るお話。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...