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昼寝部

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3章 大学入学編

写真を撮った者への罰 2

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「この写真は君が撮ったんだよね?松田春美さん」

 秋本プロデューサーが松田さんに告げる。
 つり目が特徴的な美女で、のぞみ坂47で2年連続2位を獲得しただけのスタイルと容姿をしており、熱狂的なファンが多いと聞いている。

「な、何のことでしょうか?」

 秋本さんの問いかけに顔色が悪くなった松田さんが返答する。

「君が小鳥遊さんと夏目くんの写真を盗撮し、その写真を週刊⚪︎春に提出したことは分かってる。夏目くんの顔にモザイクをして一般男性という情報で提出したこともね」
「っ!」

 松田さんの顔が引き攣る。

「僕と森野監督を甘く見ていたようだね。まぁ、森野監督の協力がなければ、写真を撮った犯人が君であることに辿り着けなかったけど」

 どうしても美奈を泣かせた奴が許せなかった俺は、写真を撮った犯人を探すため、美奈とCM撮影を行った時の監督である森野監督に協力を仰いだ。
 その際、とある約束を交わしたが、無事犯人まで辿り着いたので安いものだ。

「どうやって1日で盗撮犯を調べたかは分からないけど、森野監督は芸能界で長く活躍されてるからね。不可能ではないんだ」

 俺が森野監督に犯人探しを依頼したのが熱愛報道がSNSで出回った一昨日の昼。
 それから約2日で調べ上げたので、森野監督の交友の広さに感服すると共に、森野監督から気に入られると芸能界で必ず活躍できると言われている理由も理解した。

「何か言いたいことはあるかな?」
「………しょ、証拠はあるんですか?」

 絞り出したような声で松田さんが言う。

「ふむ、確かに証拠を見せないと信じてくれないよね」

 そう言って秋本さんが頷く。

「松田さん。今、スマホを持ってるかな?」
「あ、はい」

 松田さんがポケットからハート型のキーホルダーが付いたスマホを取り出す。
 そのスマホを見た俺は“ニヤリ”と笑う。

「じゃあ、この写真を見て」

 そう言って秋本さんがスマホを取り出し、松田さんに一枚の写真を見せる。
 その写真には、俺と美奈にスマホをかざしている女性が写っており、写真を撮っている女性の顔は見えないが、スマホやハート型のキーホルダーはバッチリ写っていた。

 しかし、この写真を見せられた意味を理解できていない松田さんが、首を傾げながら聞いてくる。

「……これがどうしましたか?顔が良く見えないので証拠にはならないと思いますよ?」
「あぁ、確かに顔は見えないね。でも持ってるスマホはバッチリと写ってるよね?」
「っ!」

 松田さんが慌ててスマホを隠す。
 だが、先ほど俺と秋本さんは松田さんのスマホを見ており、スマホに付いているハート型のキーホルダーが写真に写るキーホルダーと同じであることは把握した。

「この女性と同じスマホを松田さんも持ってるよね。これが証拠なんだけど、何か言いたいことはあるかな?まぁ、他にも証拠はあるから弁明してもいいけどね」

 この写真が決定的な証拠であることと他にも証拠を持っていると聞いた松田さんが“ガクっ”と膝をつく。

「君はやり過ぎた。小鳥遊さんにライバル心を持つことは良いことだが、スキャンダルという方法で蹴落とすのは間違っている」

 両手を床につき、顔を上げない松田さん。
 そんな松田さんへ秋本さんが告げる。

「仲間を意図して蹴落とそうとした人間はのぞみ坂47に要らない。だから君にはのぞみ坂47を脱退してもらう」
「なっ!」

 突然のクビ宣言に松田さんが顔を上げて目を見開く。

「そっ、それだけは辞めてください!」
「残念だけど、これは決定事項だよ。でもアイドル活動を辞めろとは言わないから他所のところで頑張るか、ソロアイドルとして頑張りなさい。まぁ、僕や森野監督は貴方の愚かな行為を知っているから、仕事の依頼なんてしないけどね」
「っ!うわぁぁぁーっ!」

 松田さんが“ドカドカ”と床を叩きながら叫ぶ。
 のぞみ坂47のプロデューサーだけでなく他のアイドルグループとも関わりがある秋本さんと、芸能界で嫌われてはいけない森野監督から見放された。
 この業界で生き残ることは不可能に近いだろう。
 そんな松田さんに俺も告げる。

「美奈は熱愛報道が出回った時、のぞみ坂47のみんなに迷惑をかけたことを1番謝っていた。自分の熱愛報道でのぞみ坂47みんなの努力を無駄にしてしまったと」

 松田さんは未だに両手を床について項垂れている。

「俺は美奈が謝ったみんなの中に、お前が入っていることへ憤りを感じている。だが、お前が犯人であることは世間に公表しない」

 甘い事を言っているが、コイツに情が湧いて公表しないわけではない。
 写真を撮った犯人がのぞみ坂47のメンバーにいたという事実を美奈が知ったら、メンバーのことを誰も信頼できなくなるからだ。
 そのため秋本さんと話し合って公表しないことにした。

「でもな。もう一度、美奈を泣かせるようなことをしたら、次は遠慮なんてしない。分かったか?」

 俺は強い口調で告げる。

「………」

 しかし返事はなく、未だに床を見て項垂れている。

(ここまで言えば復讐するとなった時、標的を美奈ではなく俺にするだろう)

 そんなことを思いながら俺は秋本さんに一礼して部屋を出る。

「ふぅ、ようやく熱愛報道が片付いたな」

 美奈の配信は松田さんの件で忙しくて視聴できなかったが、代わりに視聴した寧々から美奈の謝罪をファンが受け入れたことを聞いた。
 その際「お兄ちゃん、美奈ちゃんのファンには気をつけた方がいいよ」と笑いながら言われたが。

「なぜ注意喚起されたかは理解できないが、これでようやく仕事に集中できそうだ」

 来週からゴールデンウィークに突入することもあり、忙しい日々を迎えることは確定している。
 そのため気合を入れたいところだが……

「なんか真奈美と桃ちゃんからのメッセージが止まらないんだよなぁ」

 俺が配信を行った日からずーっとメッセージが届いており、松田さんの件で忙しかった俺はまともに返信をしなかった。
 そのため、通知が凄いことになっている。

「知らない内に2人を怒らせたんだろうなぁ。仕方ない、真奈美から電話するか」

 そんなことを呟きながら、俺は真奈美に電話をかけた。


【3章完結】
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