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6章 ドラマ撮影編

『生徒会長は告らせたい』の放送 2

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「面白かったー!」
「そうだな。カメラワークや演出など、文句なしの出来だったぞ。さすが森野監督だ」

 1時間の視聴を終えた俺たちは感想を言い合う。

「見て!SNSも大盛り上がりだよ!」
「どれどれ……ってこりゃすごいな」

 俺は寧々に見せられたスマホを覗き込む。

〈『生徒会長は告らせたい』めっちゃ面白かった!〉
〈来週の放送が楽しみすぎるっ!〉
〈私、漫画を読んだことなかったから買ってみようかなー!〉
〈原作ファンの俺、ドラマ化に対して消極的だったが、この出来なら許す!〉
〈さすが夏目レン。6年のブランクなんて感じさせないほどの演技だ〉
〈真奈美ちゃんと香帆ちゃんめっちゃ可愛くね!?俺、ファンになったわ!〉

 等々、SNS上では絶賛のコメントが多数見られた。
 そんな中、俺のスマホが震え、“ピロンっ!”と鳴る。

「お、桃ちゃんと美奈、浜崎さんも観てくれたのか」

 俺はすぐにスマホを開きメッセージを確認すると、桃ちゃんと美奈、浜崎さんからメッセージが届いており、放送されたドラマの感想が記されていた。

「ホントだ!3人ともリアルタイムで視聴したんだね!」

 俺のスマホを覗き込んだ寧々も3人からのメッセージを観て笑みを浮かべる。
 ちなみに寧々と浜崎さんは直接会ってないが俺が浜崎さんのことを話しているため、どんな女の子かは理解している。

 俺たちが3人のメッセージを確認していると、俺のスマホが再び“ピロンっ!”と鳴り、桃ちゃんと美奈、浜崎さんから追加でメッセージが届いた。

『ドラマ撮影中にヒロイン役の女優と距離が縮まり結ばれる話を度々聞きますが、夏目様は本作が復帰作となります。なので恋愛面に時間を割かず、ドラマ撮影に集中した方がいいと思います。私との約束ですよ?』
『リン様っ!愛甲さんと立花さんとはプライベートで会わない方がいいですよ!私みたいにスキャンダルに繋がりますので!いいですか!絶対ですよ!』
『撮影終わりに愛甲さんや立花さんと出かける際はウチを呼んでください!2人きりで出かけるとなれば熱愛報道という形でスキャンダルに繋がりますから!なので出かける時はぜーったい、ウチを呼んでくださいね!』

 1話を観て何を思ったのか、何故か注意喚起のメッセージが来ていた。

「愛されてるねぇ、お兄ちゃん」
「ニヤニヤするな」

 そんなメッセージを見て、寧々がニヤニヤし始める。

「だが3人の言う通りだ。俺は本作に全てを賭けているからな。まぁ、2人とプライベートで会うことなんてないと思うが。特に立花さんとは。俺、めっちゃ嫌われてるし」
「………はぁ。香帆ちゃんのためにツンデレヒロインが登場する漫画をお兄ちゃんに読ませようかなぁ」

 俺の返答を聞いた寧々が神妙な面持ちで何かを呟いていた。



 その日以降も大きなトラブルなくドラマ撮影が行われ、問題なく『生徒会長は告らせたい』が放送された。

 そして、あっという間に8月となった。



~蒼井アオ視点~

 俺は『生徒会長は告らせたい』の原作者、蒼井アオだ。
 約1ヶ月前、俺が描いた漫画がドラマ化され、第1話が放送された。
 現在までで4話放送されており、どの話も高視聴率を叩き出しているらしい。

 理由としてはドラマ監督がこの業界で有名な森野さんで、主演する役者は文句なしの素晴らしいキャスティングだから。
 特に小学5年生で優秀主演男優賞を受賞した夏目レンが、主人公である黒川くんを演じてくれた。
 これが高視聴率を叩き出している1番の要因だと俺は思っている。

「なぜ夏目くんが出演してくれたかは分からないが、ありがたい話だ」

 キャスティングの際、森野監督から「黒川くんの役を夏目凛くんにお願いしたい」と言われた時は無理だろうと思っていた。
 何故なら夏目くんが主演を務めると『夏目レンの復帰作』という肩書きが作品に付いてくるから。

 それだけで宣伝効果としては絶大な効果を得るため、様々な制作会社が大役を用意してオファーしていると聞いた。
 そのため無理だろうと思いつつ了承したが、蓋を開けてみれば夏目くんが黒川くんの役を務めることになった。

「まぁ、気にしても仕方ないか。それよりも反響の方がヤバい」

 俺は先ほど担当編集者から来た連絡を思い出す。

「えーっと全ての巻で売り切れが続出したため増刷中で、ドラマが放送された日は毎回の如くトレンドに作品名がランクインする。ヤバすぎない?」

 俺の原作が面白いからと自画自賛したくなるが、そこまで天狗になれない。
 この人気は夏目くんをはじめ、演じてくれた役者や制作スタッフたちが優秀だったから。

「俺の希望を聞き原作通りにドラマを作ってくれたおかげで原作ファンから叩かれることも少ない。それどころか絶賛してる人までいるくらいだ」

 俺は森野監督へドラマ化するにあたり色々と注文を出した。
 その一つに『原作を壊さず、原作ファンも楽しめるドラマ』という難しい注文を行った。
 中には原作者の希望を無視してドラマを作る監督が居ると聞いて『無視されるかも』と思ったが、森野監督は私の注文通りのことをやってくれた。
 それだけで頭が上がらない。

「ホント恵まれた人選だったな」

 そんなことを思いつつ俺は筆をとる。

「さて、もうひと頑張りするか」

 俺は描いていた途中の原稿と向き合い、執筆作業を再開した。
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