髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部

文字の大きさ
123 / 169
6章 ドラマ撮影編

サイン会 2

しおりを挟む
 サイン会当日となる。
 今回、某デパート内にある書店を貸切って行うこととなっており、俺は矢上さんと寧々の3人で向かった。

「おぉー!サイン会って感じだね!」

 寧々がデパート内に飾られた『夏目凛 サイン会!!』と書かれた垂れ幕をみて、感嘆の声を上げる。

「今日はデパートで働く職員がフル出勤してるらしいですよ。サイン会のサポートに加え、サイン会に訪れた方々がデパート内で買い物することを想定して」
「確かに相乗効果としては期待できますね」

 今回、当選した方たちは時間が決められており、「10時~11時まで」等、人数の振り分けを行っている。
 そのためサイン会までの時間を潰す人が大勢現れるはずだ。
 そんな話をしながら俺はずっと気になっていたことを問いかける。

「それで一つ聞きたいんですが……」
「なんでしょうか?」
「……なんで開店1時間前にも関わらず大勢の人が並んでるんですか?」

 俺はデパートの入り口で発生している大行列に視線を向けつつ問いかける。
 開店前ということで裏口にあった職員通用口からデパート内に入ったため、入り口前にできていた大行列に気づかなかった。

「あ、その人たちはサインを書いている凛さんを遠目から見ようとしてる人たちですね」
「つまりお兄ちゃんを生で見ようとしてる人たちだよ!」
「……な、なるほど。でも確か今回のサイン会って規制線みたいなのを敷くから当選した人以外、俺を見ることなんて無理なんじゃないですか?」
「その通りです。サイン会を行っている様子を周囲から眺める事ができるようにすれば大混乱は間違いないですから。でも……何故かたくさんの方たちが来ちゃったんですよねぇ。当選者以外の方は凛さんを見ることができないと告知したのに」
「みんな暇人かよ」

 ファンの行動力に天晴れをあげたい。

「規制線、強化しないとダメみたいですね」
「さすがお兄ちゃん!事前の準備だけじゃ物足りないみたいだね!」
「そんなんで褒められても嬉しくねぇよ」

 そんな会話をしつつ、俺たちはサイン会場へ向かった。



 サイン会場へ到着し、準備をしてくれたスタッフたちへ挨拶をしながら控え室へ到着する。

「矢上さん。ここにいるスタッフ全員が女性だったんですが男性のスタッフはいないんですか?」
「いませんね。全員が女性スタッフです」
「………」

(男手とか必要ないんだろうか)

「良かったね、お兄ちゃん!今日は一日中若い女の子に囲まれるね!」

 寧々の発言通り、サイン会のスタッフは皆若い女の子ばかり。
 スタッフの採用条件に『若い女性のみ』と書かれていたのではないかと疑いたくなるレベルだ。

「おかげで挨拶周りしただけで大変な目に遭ったけどな」

 サイン会の準備に奮闘してくれた女性スタッフたちに感謝の気持ちを込めて笑顔で「ありがとう」と伝えただけで再起不能となった女性が多発した。

「なぜ女性ばかりになったんですか?男手は必要になると思うのですが……」
「もちろん男手は必要です。なのでサイン会の会場作りはキツイ思いをしながらやり遂げたと聞きました」
「見るからに重そうなテーブルや棚がありますからね」

 これらを女性陣だけで運んだとなればかなり大変だっただろう。

「仕方ありませんよ。サイン会のスタッフを募集したら女性しか集まらなかったので。しかも募集人数の何百倍もの応募数がありましたから。まさかスタッフ決めまで抽選を行うとは思いませんでした」
「………なんかごめんなさい」

 何故か申し訳なさを感じ、矢上さんへ謝る。

「当選しなかった人たちがお兄ちゃんを一目見ようと応募したみたいだね。だからサインをお願いされても簡単に引き受けたらダメだよ?スタッフ全員に書くことになるから」
「わ、わかった」

 そんな会話をしながら開始時間が来るまでのんびり過ごした。



 開始時刻である10時前となる。
 俺は用意された椅子に座り開始時間が訪れるのを待つ。
 今回のサイン会は来場してくれた方が俺と会う前に増刷された写真集を購入し、購入したばかりの写真集へ俺が直筆でサインするという流れだ。

「午前は10時から12時まで。1時間休憩を挟み、13時から17時までサイン会を行います。予定では720名が来られます。計6時間、頑張ってください!」
「ありがとうございます」

 隣でストップウォッチを持っている矢上さんから励ましの言葉をもらい、俺は前を見る。
 そのタイミングで10時となり、ダーっと人が会場に入ってくる。

 その様子を眺めていると…

「えっ!桃ちゃんと美柑さん!?」
「おはようございます!夏目様!」
「おはー!」

 何故か先頭に桃ちゃんと妹の美柑さんがいた。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

髪を切った俺が芸能界デビューした結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 妹の策略で『読者モデル』の表紙を飾った主人公が、昔諦めた夢を叶えるため、髪を切って芸能界で頑張るお話。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...