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7章 凛くん争奪戦

選考会という名の修羅場 1

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【7章開始】

 社長から話を聞いた数日後。
 『日本の果てまでイッテ来い』の撮影を行うため、テレビ局に来ていた。

「今日は来ていただきありがとうございます。私、夏目さんが出演される『夏目凛の初めてのおつかい』のプロデューサーを務めます川端由紀と申します」

 そう言って綺麗な女性が名刺を見せる。
 黒髪を肩甲骨の辺りまで伸ばし、キリッとした表情が特徴的で、30歳半ばらしいが20代後半くらいと言われても納得できるくらい綺麗な女性だ。

(30歳半ばでプロデューサーになるくらい凄い方だ。見た目通りしっかりした方なんだろう)

 そんな感想を抱きながら俺も挨拶をする。

「初めまして、夏目凛です。今回はオファーしていただきありがとうございます」
「いえ、こちらこそ引き受けていただきありがとうございます。もうすでに候補者の5人は控え室にいらっしゃいますので」

 今回は選考会と番組内容の説明だけなので特に着替える必要もない。
 そのため、俺はすぐにみんなのいる控え室に川端さんと向かう。
 ちなみに矢上さんは俺をテレビ局に送り届けた後、事務所に戻ったため、この場にはいない。

「川端さんは5人と挨拶をされたんですか?」
「はい。皆さんと個別に挨拶をしました。皆さん、この番組に全てを賭けてるらしいですね」
「全てを賭けてるって大袈裟ですね。まぁ、それだけ気合いが入ってるってことですか」
「いえ、文字通り全てを賭けてるらしいです。とある目標を叶えるために」
「………そ、そこまで気合いが入ってるんですね」
「はい。個別に意気込みを聞いてみたところ皆さんそのようなことを言っておりました。さすが夏目さんです。Vi⚪︎i国宝級イケメンランキングで他の追随を許さないほどの圧倒的な大差で1位を取っただけありますね」
「あ、ありがとうございます?」

 なぜか褒められたため、戸惑いながらも感謝を述べる。
 Vi⚪︎i国宝級イケメンランキングとは上半期の投票が5月中旬から6月中旬まで行われ、7月下旬に結果が出た。
 その結果、2位と大差をつけて俺が1位に選ばれた。
 ちなみに国宝級イケメンランキングで1位を2回獲得すれば殿堂入りできるらしいので下半期も1位を取れば殿堂入りとなる。

(全てを賭けるほど叶えたい目標ってなんだろ?すごく気になるから後でみんなに聞いてみよ)

 そんなことを思いながら歩いていると、皆んながいる控え室に到着する。

「あ、内山社長から聞いてるとは思いますが、5人目の候補者は浜崎涼菜さんとなりました」
「社長からは聞いております。俺の希望を叶えていただきありがとうございます」
「いえ、夏目さんの言う通り、彼女はこれから有名になると思いましたので」

 俺は社長から5人目について希望を聞かれた時、浜崎さんを推薦した。
 理由としては俺の知ってる女性が浜崎さんしか居なかったことと、有名女優になるという目標を掲げる浜崎さんのお手伝いができればと思ったから。
 余計なお世話かと思ったが快く引き受けてくれたようだ。

「では入りますよ」

 そう言って“コンコン”とノックをした川端さんがドアを開け、部屋に入る。

 俺は川端さんに続き部屋に踏み入ると…

「リン様のお相手は雨宮さんでは力不足です!」
「うんうん!小鳥遊さんの言う通りだよ!このメンバーの中で1番最初に凛くんと出会ったからといって凛くんを独占していいことにはならないからね!」
「そうよ!9年前に出会ったからなんだっていうのよ!」
「初めて出会った時期というのはとても大事なことです。それに私はこのメンバーの中で1番の歳上です。少しは歳上を敬った方がいいと思いますよ?」
「それを言うならこの中で1番歳下であるウチが夏目さんと出演すべきだと思います。皆さんより若いウチの方が夏目さんも喜びますので。皆さんより若いウチの方が」
「2回も言わなくていいわよ!」

 等々、部屋に入った瞬間、5人がテーブルを挟んで睨み合ってた。

「えぇ……何でケンカしてんの……」
「………」

 その光景を見て、俺と川端さんがドン引きしている。

「……候補者の方々は喧嘩するほど仲が良いということですね」
「絶対違うと思います」

 今にも暴力沙汰が起こりそうな雰囲気を感じるので、それはポジティブに捉えすぎだと思う。
 そんな会話をボソボソとしていると「あ、凛くん!おはよー!」と真奈美が俺たちの存在に気づいた。
 その瞬間、ピリピリした空気が一瞬でなくなり、各々が笑顔で挨拶してくれた。

「皆んなおはよ。それで、何でみんなはテーブルを囲んで睨み合ってたんだ?」
「えっ!え、えーっと……り、凛くんは気にしなくていいよ!」
「……?そうか。何か困ったことがあれば遠慮なく言ってくれよ」
「うんっ!」

(きっと男の俺には言いにくいことなんだろうが……もしこれ以上みんなの関係が悪化するようなら全力で寧々に頼ろう)

 そう思った。
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