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別パターン オススメ
一話
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元賢者様の異世界日記
私は英雄だった。人助けを生業として、冒険者ギルドに入り、名を広め、いつしか魔法賢者と呼ばれるようになり、勇者パーティーに加わり、仲間と共に魔王を倒す。そこまでは何もかもが順調な人生で………油断をしていたんだと思う。
「ーーー!!!」
「ふぇっ?」
クエストで薬草採取をしているとき、不意に仲間に名前を叫ばれて振り返る………私の記憶はそこでおしまい。普段から身に付けている結界を施した守りのブレスネットがあるからと慢心していたのだ。なんとも間抜けな最後だったと思う。
私はかちゃりかちゃりと視線を感じながら慎重に積み木を組み立てていく。一緒にいた仲間たちはどうなったのか、なんてことよりも今は目の前の事に忙しかった。
「ーーー………っおおおおおぉぉぉ~~~!!!」
最後を積み上げると拍手を貰う。積み上げすぎた積み木が私ともう一人に挟まれ、壁のように列なっていた。
「ねぇね、すごいね!」
クリームパンのように膨らんだ小さな手で一生懸命叩くのは、最近三歳になったばかりの可愛い弟の祐司(ゆうじ)だ。私は頬を緩ませて「ありがとう」と祐司を抱き上げた。
賢者と呼ばれ、魔王を倒したのはもう過去の話。今の私は日本の中でも田舎に住む一般家庭に生まれた娘、松元結菜(まつもとゆうな)小学一年生。ただし、普通ではない。
「結菜ちゃん、祐司くん、ご飯だよ~」
母が夕食を知らせる。
「わーい!ごはんだ~!!」
祐司は私の腕の中から飛び出す。私は間一髪で散らかっていた積み木を念力で弾き飛ばした。この程度ならば式を組む必要もない。不自然にならないようある程度もとに戻してほっと肩を下ろした。
そう、私は異世界で持っていた能力を全て持ったままそのままこの世界に生まれてきた異人、いや魔法賢者だ。
「結菜ちゃ~ん?」
「はーい、今行きます」
どうやら私は異世界で人生をやり直しているらしい。
異世界……地球に来てから六年余りが経った。外はミンミンつくつくぼうしと蝉が鳴き、服が汗でジメジメとしてうっとしい日、私は夏休みという避暑期間に入ることになる。
地球は赤道に近づくほど気温が暑くなる構造らしく、日本のなかでも南に位置するこの県は夏が暑くて堪らない。こういう日は森に入って木陰で涼むのがむこうでの日常だったが、ここでは違う。
私はリビングの隅でフローリングに座り込み首を大きく上に傾けていた。目線の先には白い箱、エアコンがある。地球は魔法がない代わりに科学が発展した世界で、エアコンもその一つだ。マナではなく、電気という熱や風に変換できる力を使い、生活を便利にしているらしい。これもテレビという全く別の場所が映るという電気を使う硝子板から知ったことだ。
「あら、今度はエアコンに夢中なの?結菜ちゃん」
そう言って茶化してくるのは麦茶を持った母だ。プラスチックの二つある片方のコップを渡されて「水分補給してね」と言われる。私は言われるままにコップの中身を飲み干した。冷たくて美味しい。
「ママ、エアコンはどうやって冷たい風を出しているの?」
私の突然の質問に母は困ったように眉を八の字にした。
「う~ん……そうね……、ママ、分かんないから携帯さんに聞いても良い?」
母はエプロンのポケットからスマホを取り出す。早く答えを知りたい私は躊躇うことなく「うん、いいよ」と返事をした。
ピンポーン。
「お届けものでーす」
「あ、はーい!結菜ちゃん、ちょっと待っててくれる?」
母は荷物を受け取りに玄関へ向かっていく。私はその背中を尻目にスマホへと視線を移した。ふむふむ、液体を蒸発させて気体にし、空気を冷却する。つまりは液を空気にすると冷えるということか……うーむ、わからない。でも、確かに氷を水に入れると水は冷たくなり、氷は水になる。道理は成り立っている気がした。
『ゆうな、なに見てる?』
『なに見てる?』
「面白いことですよ。この世界の科学とやらはなかなか興味深い」
窓をすり抜けて現れたのは小さい小人が柔らかな光を放っているという不思議な生物たちだ。それらは前世では精霊、日本ではつくもがみと呼ばれる森羅万象のものから生まれる自由を具現化したような自由人で、うちのように山に住んでいるとよく会う。菓子が好物でなにかをお願いするときは菓子を対価に要求する、というところまで前世と変わらぬ見慣れた生物だ。この子たちはこの家に憑いているつくもがみらしく、ツインテールの双子のような見た目をしている。
つくもがみは植物以外のものには憑きにくい。しかし、形、名前がそのまま、物が長い年月や思い出を過ごすとつくもがみが憑く。この家は私たちが住む前に大叔父が住んでいたのををリフォームしたものなのでつくもがみはそのままなのだ。
『ゆうなはべんきょうねっしん』
『おもしろいこと大好き』
「そうですか?これくらい普通だと思いますが……そうですね、勉強すればいろいろなこの世界のことを知れますから。いつか、世界旅行なんか、してみたいものです」
前世とは違い、国の数、広さも段違いなこの世界のことをもっと知りたいという思いは前々からのものだ。
「せかいろこー、ゆーじもついてく!」と私の言葉に便乗して祐司は楽しそうに言う。
『ふーん、そっか~』
『ゆうなはべんきょうして旅行行く~』
くるくると私の周りを飛ぶ二人に祐司が手を伸ばして喜んでいる。私はその手を引き戻した。
『ゆうなはしんぱいしょう。ゆうなの弟ならぜったいきずつけたりしないのに』
『ゆうなの弟、ワタシたち大かんげい』
「………」
私は笑顔を崩さず、二人見つめた。二人は互いに顔を見合わせて『しかたない、じゃあねゆうなの弟』『ばいばーい』と言って気配を消す。
「あ、きらきあさん、きえちゃった………」
(ーーー''結菜の弟''、ねぇ)
私は残念がる祐司の頭を静かに撫でた。
私は隣の森まで遊びに来ていた。家のすぐそばにある小さな森で周辺に住んでいる子供たちの秘密基地でもあったりする。そのためいらなくなった物が散乱しており、机やいす、使うことはできないがテレビなんかもあった。木々や竹が自由に延びる中に不自然に空間が空いており、そこに物が置かれている状態である。
『おはようゆうな!あれ、今日は早いね?』
森に住まうつくもがみたちはそれぞれ思い思いの挨拶をしてくれる。全体的に緑や茶色が多い。
「そうなんですよね~……。今朝は父親と早起き勝負をしまして……ふぁ~」
大きくあくびをしてバスタオルを敷いてソファーへと座り込む。ぼふんと勢いよくいくと灰が舞って咳き込む羽目になり、つくもがみたちは爆笑して風で吹き飛ばしてくれた。
「けほっけほっ、ああ……嫌な目にあいました」
今度はそっと、ソファーに倒れる。目を閉じれば木陰で程よい気温にうとうとと眠気が誘われた。
『ゆうな、おねむみたいね』
『そうみたい。そっとしておこう』
『そうしよう』
私ははっと目を覚ます。
「今何時だぁぁぁ!!!」
穴ぼこソファーから飛び起きると同時にこのソファーに憑いているつくもがみはニコニコと近寄ってきて『おひる前くらいだねぇ』とのんびりと言う。
今日は父が仕事なので野球観戦に邪魔されることなく、テレビを見ることができる日なのだ。絶対に昼までには帰りたい。
昼までに余裕を持って起こしてくれとでも頼めば良かったと反省しながら脱げた靴を直していると、つくもがみたちが騒ぎ出した。
『たいへん、なんか来る!』
『たいへん、ゆうなねわれてる!』
『にげろぉ!』
「えっ?えっ!?」
つくもがみたちはチリヂリに散っていき、呆気にとられた私は一人ぽつんと残された。
「私のことは!?」
叫びも虚しく、そこへ巨大な魔力が飛んでくる。ばぁしぃーんっ!!!と盛大な爆発音と、またもや砂ぼこりが立ち咳き込んでしまう。
「けほっけほっ!『ヒッグ・エッド・コレクト・プールビス』!!!」
私はたまらず魔法で砂を一ヶ所に集める。周りを見渡すともう言い訳ができないほど吹き飛び、草がなく地面は丸裸にされた状態になっていた。その爆発の元凶はパチパチと手を叩き「流石」と偉そうに言っている。
「俺が認めただけあるな、見事な術だ」
「言いたいことはそれだけですか?」
悪びれることなく鼻に付く喋り方で見下してくるコイツは、安倍晴明の生まれ変わりだとかいう陰陽術という名の奇妙な術を使う男、安倍弘明。純日本人のなのに生まれつきの白銀の頭髪、赤目であるが肌は白くなく、アルビノではないらしい。
私はもう慣れたと言わんばかりの手付きで散らかった家具や、飛ばされて無くなってしまった草木を生やす。ご覧の通り、コイツがここを吹き飛ばしたのは今回が初めてではない。ある日突然飼い猫の福を撫でているところへ飛び込んで来て、今日で四度目。三日に一回の確率で定期的に来るのが腹立たしい。
「そこまで怒ることもないだろう?貴様にとってはこの程度、手を洗うのとなんら大差ないだろうが」
「ブッ飛ばされたいのですか?きっとそうなんでしょう?待っててください、今すぐ一発右ストレートでかましますから」
私がぶんぶんと腕を回し、肩をならしていると安倍弘明は焦ったように手を振った。
「まてまてっ!今日はきさ……お前に用事があって来たのだ!」
弘明の必死さに私も肩を下ろし、息をつく。「それで、どんな用事なんですか?」と私が面倒くさげに聞くと、うって変わって意気揚々と語りだした。
「ッン!では。……京洛より災い有り。大事なものを失くすだろう。臆することなく周囲と信頼関係を結ぶのが良いであろう。ーーーどうだ?これが昨日の晩に星読みで出てな、急遽予定を変えてここに来たんだ」
「………あー、そうですか」
(帰っていいかな………)
私の体は自然と弘明の陰陽術自慢話を無視して家へと歩き出していた。
今日は出校日。夏休み最後だからと気合いをいれた私はいつもより早めの時間帯に起き、祐司の寝顔を覗きに行った。三才の弟は私の隣の部屋ではなく、母の部屋で寝ているのでリビングルームへ向かった。
「あれ、いない……?」
しかし、そこに母と裕司の姿はなく、もぬけの殻であった。
『クスクス、ゆうなの弟はいないよ?おかあさんもおとうさんも』
ふわりとツインテールのつくみがみが現れて告げる。もう一人も嘲笑うようににやけながらこちらを見てきた。
『そうそう、いない、いないしちゃったもん』
「………」
ドクリと、心臓が鈍く動く音がする。いつぶりだろうか、この感覚は。私は無意識に反応した魔力を制御できず、つくもがみの片方の首を握り潰す。つくもがみは苦しそうにもがいて涙ぐんでいる。
「何処にーーー……っ」
『「……京洛より災い有り。大事なものを失くすだろう。臆することなく周囲と信頼関係を結ぶのが良いであろう。」』
不意に弘明の言葉を思い出す。私はそこでぱっと手を離した。片方はげほげほとむせかえりながら息を吸った。
「……違いますね。あなたたちではない」
私は殺気に当てられて震えたまま動かなくなったつくもがみたちに「ごめん」とだけ言って、周囲に感知魔法を使った。引っ掛かった魔力を追いかけるように転移魔法を構成していく。
『……ほんとはね、ダメって言うつもりだったんだ。ぼくたち、ゆうなのこと好きなんだよ。でも、だからね、しっとしちゃったんだ。また家族って名前のものにぼくたちの大切なもの、取られるんだと思って……うっ、ひぐっ、うえぇぇぇん、ごめんなさいぃぃぃ』
双子の無事な片方は泣きながら謝罪する。そういえば、前にここに住んでいた大叔父は大叔母が死んでからは他県に住む長男一家に引き取られていったと聞いたことがある。それのことを言っているのであれば、もしかしたら大叔父は私と同じ魔力持ち、もしくは見えている人だったのかもしれない。
「……はぁ、まあ過ぎたものは仕方ありませんか。『エレーミニム』」
ほぅと倒れたままのつくもがみの周りに光が宿る。優しく、暖かい光が首の赤いアザを溶かしていった。
「次は無いですよ。全く、そういうことは先に相談しておくものでしょうが。いいんですよ、不安に思うなら言ってしまって。少なくとも私はそちらの方が有り難いですから」
双子は起き上がって涙を拭った。そうこうしている間に転移魔法の解析が終了したようだった。「『パッセン・ティブルス』」と唱え、術を完成させると空間に穴が開き、向こう側見えるようになる。そのゲートに足を入れるというところで双子が口を開く。
『……封印の巫女、ゆうなはちゃんといい子に育ったよ。ばくたちの役目もこれでおわりなの』
最後にかけられた言葉は結菜の耳に届くことなく、闇へと消えていった。
ゲートの行く先は古風に整えられた町の裏路地だった。全ての建物が木造で、街灯や道路も特別な造りをしている。私は特別な雰囲気の場所に楽しくなる反面、漂う魔力や念に警戒心を強めた。
どこもかしこも結界まみれ、封印されているものが一ヶ所に集まりすぎている。それに悪いものも多い。今も地面からはぽこぽこと見慣れぬ強い力を持った生命体たちが出てきてはこちらの様子を伺っていた。
「こ、こんにちは………?」
あまりに沢山の視線に見つめられ、思わず挨拶をしてしまうと突然ぐわっと牙を剥き出し、襲いかかってきた。
「ギシャーーーーッ!!!」
「のわぁぁぁぁぁあ!!!」
私は目玉しかない丸い球体が集団で襲いかかってくるという恐怖に、人目も気にせず走り抜けた。人混みにぶつかっても謝る暇もないほど早足で町中を抜けると、人の少ない開けた場所に出ることができた。
「シューーー……」
相も変わらず丸いなにかが追ってきているが、先程よりも数が増えているのは気のせいだと思いたい。
「おやおや、雑魚相手に随分苦戦しているな」
「……弘明」
突然現れた陰陽師弘明が星印を結び黒い奴らを拘束し、浄化していく。呪文を言い終え、手に持つお払い棒を一振りすると一斉に浄化された。土地が暖かな気配を取り戻す。私はぼんやりとそのようすを眺めてふうと息をつく弘明に向き直った。
「いいんですか、あの子達は貴方の味方でしょう?」
私の言葉に弘明はきょとんとした後、ニヤリと嗤う。
「なんだ、気づいていたのか。開口一番に言えば良いのに、野暮ったいな」
辺りに黒い靄がかかり、ピリピリと電流が走っている。いつの間にか人間は誰一人と居なくなっていた。じめじめとした魔力が辺りに満ちている。
「悪趣味なのはどちらですか。私の可愛い弟を拐うなんて、立派な幼児誘拐犯ですよ、安倍弘明」
言いたい放題捲し立てると私は亜空間から杖を取り出した。詠唱と共に杖の先に光が集まっていく。光の弾は弘明に向かって飛び、爆発した。
「『インパルーサ』」
私の十八番魔法爆撃インパルーサが弘明に炸裂するが、煙が消えてもその肉体には傷一つも見当たらなかった。光の反射で弘明を覆う薄い円形の膜がきらりと光る。臀部には長い毛の生えた尾が生え、先程より随分と禍々しくなったように感じる。
「生憎だが人間の作った法など関係はない。私は安倍の小僧ではなく、葛の葉なのだから」
「葛の葉?それはあなたの名前ですか?」
「そうだ。私は葛の葉。安倍一族にとりつき数百年、失われた妖力も漸くここまで戻ってきたのだ。お前を喰らえば更なる力を得ることも出来ようぞ、はっはっはっ!」
葛の葉の高笑いに空気が重く震える。高まった妖力が刃となり、顔を庇った私の腕に切り込みを与え、鮮血が流れ落ちる。私は痛み顔を歪ませて、手で傷口を押さえ込んだ。
「『インパルーーー』」
「おや、いいのかい?私を攻撃すれば小僧がどうなるやもしれんぞ」
「!!」
卑怯な手を使う………そう思ってもどうにもならないのは承知していたが、どうにも思わずにはいられなかった。
「それではどうすればいいのです?」
「なーに、簡単なことよ。お前を私に喰わせてくれればよい」
「………」
葛の葉はふふふと嗤う。その表情からはとても返してくれそうには見えない。私はぎりりと固く葛の葉に見えないように拳を握りしめた。
「………わかりまーーー」
「駄目だっ!!!」
渋々了承しようとした私にまったの一言がかかる。先ほどまでの妖気は薄れ、葛の葉……いや、弘明の表情が伺えた。
「頷いてはならない!!こいつの言うことは全くの嘘だ、本当はお前ともども弟も喰らおうとしている!!」
「っ、小生意気きなガキが。大人しくしていれば良いものをっ!!!」
どうやら弘明は完全に呑み込まれているわけではないらしい。ならば、私にも勝機はある。
「弘明さん、そのまま葛の葉を捕まえていてくれますか?出来れば十数秒位」
弘明が「ああ」と頼もしく返事をしてくれたので、杖を高々と掲げ、躊躇なく式を組み込んでいく。葛の葉の周囲に塔のように魔方陣が立ち並び、それを支え繋げるように光の線がはしった。
「や、止めろ!やめろやめろやめろやめろやめろーーーっ!!!」
「『ヘイゲッジ・ストゥエーリアム・アン・ファイゲッズ・エスト・アスティーリアーム』!!!」
ぱちんと光が弾けると、弘明の肉体から女狐が引き剥がされる。人としての形を保ちながらも、その肌は毛に覆われ、おそらく艶やかだったのであろう白い毛並みは力に充てられて縮れてしまっている。
「あああああぁぁぁ!!!力がっ、どんどん小僧に戻っていってしまうっ!!!人間の小娘風情がっ、小賢しいまねをっっ………!!!」
ぎぃぎぃと甲高いが枯れている耳障りな声で叫ぶ葛の葉を余所に、私は魂が抜け倒れた弘明に駆け寄った。そしてすぐさま結界を張る。
「ーーーおい、俺のことは良い。守りの結界くらいならば自分で張れる。………お前の弟は俺の屋敷にいる。屋敷には式神がいるから安心して戦うといい」
葛の葉が離れたばかりで体調が安定しないだろう弘明は虚勢を張る。その意地にただ「ありがとう」と言って私は笑った。
季節外れの葛の乗った風がひゅぅと吹く。葛の葉は先程の様子とうって変わって、静かにそれを眺めていた。その表情はとても穏やかとは言えない。
「ぁ………、あぁ………」
嗄れてしまった声で微かに呟く。迎えが来てしまった、と。それを聞き取った私はなんのことだと思っていると突然、地面に黒い穴が開いた。葛の葉はそれに無理やり吸い込まれるように落ちていく。
「葛の葉っ!!!」
私は思わず葛の葉の手を掴んでいた。力強く握ったせいで葛の葉の鋭い爪が手のひらに食い込み、血が流れる。
「結菜、やめろ!それは冥界からの迎えだ。そいつは地獄で裁かれるんだよ」
やけに落ち着いている弘明に「どうして?」と振り向きもせず問いかける。
「妖怪にもルールはある。魂を喰らう行為は御法度なんだよ」
葛の葉は白狐の怪だった。ある日、罠に引っ掛かった葛の葉は狩人たちに追いかけられ、そこをたまたま通りかかった人間の男に助けられる。人間の男は怪我をおっていまい、助けられて恩を感じていた葛の葉は人間に化け、葛と名乗り男を介抱する。そして二人は恋に落ちていくのである。妖怪と人間が契るのは禁忌だったが、葛の葉と男は山奥でひっそりと暮らし、やがて男の子にも恵まれたが、ついに男に葛の葉の本当の姿を見られてしまい、泣く泣く離ればなれになった。
弘明が語り終わると私は顔をしかめた。
「よくまあこの状況でそんな長々と語ってくれましたね!」
「まあ、待て。まだなぜ葛の葉が人間の魂を喰らったのかという続きが………」
「そんなのどうでもいいんですよっ!!!それよりこの状況、どうにかしてくださいよっ!!!」
私は怒鳴るように叫んだ。魔法を使って身体を強化しても冥土のお出迎えだとかいう連中の力の方が強くて、私も胸の辺りまで落ちかけていた。
「………もう離せ、小娘。お前も落ちるぞ?」
葛の葉の諦めたような口調がねっとりと頭に残る。私は血が上ったまま、その残滓を振り払らうように言った。
「嫌です!因縁だか魂を喰っただかなんだか知りませんが、それは私には関係ありませんしっ!第一、生を諦めるだなんて温いことで償われる罪も嫌だしっ!関係ないところで償われてもなんにも解決しないんですよっ!!!」
訳もわからず、怒りのまま思ったことを全て葛の葉にぶちまけた。叫んだせいか力が入り、更に爪が食い込む。手のひらから流れ出た血は、とうとう葛の葉の顔にぴしゃりとかかった。葛の葉の病的に白い顔に赤い線がはいる。
「なぜだ……、なぜ助ける……?人間は愚かだ、私のようなものを助けなくてもなにも変わりはしない」
葛の葉の涙は頬を伝って無限に続く穴で行く宛もなく落ちていく。それでも葛の葉の瞳からは耐えることなく涙が続いていた。弘明ははっとしたように恐る恐る葛の葉を握る私の手を掴む。そして私を見て頷いた。
「変わりますよ。少なくとも私は貴女がいなくなれば明日が寂しくなりますから」
「そうだな。少なくとも俺は今までの苦悩をぶつける相手がいなくなって途方に暮れてしまう」
葛の葉の止まらない涙は遂にピシャリと音を絶てて弾けた。
音と共に世界が揺れる。いや、止まったのだろうか。風は吹き止み、力は抜け、血は逆流し、傷口は塞がった。突然の出来事に唖然としている中、光と共に半裸の厳つい男が現れる。燃え盛るような髪に着物を着崩した、炎を思わせる男は宙に浮いたままゆっくりと口を開いた。
「その者を助けたいのか?」
威厳のある重い声に私は不思議とこれが神であると思った。
「助けます」
「そうか。では何を対価にする?」
「対価ですか?」
「そうだ。この者の失態を拭うにはお前が対価を支払わなければいけない」
「………では、私の持てる力を全部あげます」
「ほぉ、いいのか?それはおまえだけの特別なものだろう?」
「いいですよ。もとよりこちらでは過ぎたものですし。あ、でも葛の葉さんと、話せなくなるのかな……?まあ、なんとかなると信じて、オッケーです!」
「はっはっはっ、元気だな。良いだろう、そなたの願いを受け入れよう」
私の意識はそこでプツリと切れてしまった。
澄みわたる空、陽気に晴れる太陽。そして……
「ゆきだぁぁぁ~!!!」
祐司は窓に顔をくっ付けて嬉しそうにはしゃぐ。今年初めての雪だ。今日も弟が可愛い。
「結構積もったね。これは雪合戦をしなければ」
そこへ朝食を持った父が現れる。
「おっ、いいな雪合戦。パパは強いぞ~!」
「その勝負、承けてたつよパパ」
「ぼくはゆきだるまつくぅの!」
「よーし。じゃあこれ食べたら皆で足跡を付けに行こうか!」
父の掛け声に祐司は急いで席へついた。私も自分の椅子に座ろうかというところで足元へふわりと白い毛並みが通りかかる。
「アキ!おはよう、昨日はよく眠れた?」
夏のある日からペットとして家で飼われている狐、アキはなにを隠そう葛の葉である。あの日以来、怪の声や姿が見えなくなった私に葛の葉はずっと側にいてくれるのだ。
「アキもおそとでゆきあそびしよう!ゆうじ、おっきいゆきだうまつくるね!」
私の膝に乗ったアキに祐司が頭を撫でると嬉しそうに尻尾を振った。
「ああ、楽しみにしていよう」
「………え?」
「む?どうした結菜」
驚き固まる私に更なる追い討ちをかけるように、ツインテールの双子が姿を現す。
「ゆうな、どうした?」
「ゆうな、もしかして見えてる?」
「えええぇぇぇぇっ!!!」
今世はまだまだ騒がしく過ごすことになりそうだと思う冬の始まりだった。
夜。雪が降る中、訪れた寺の屋根には一人の女が酒を楽しんでいた。
「やっと来たのね、葛の葉。待ちくたびれてもう始めちゃったわよ」
女はくるくると酒瓶を回す。顔が火照っているところを見ると、既にだいぶ飲んだらしい。
「悪いな、封印の巫女。余りの寒さに布団から動きたくなくなったんだ」
女の隣に座り込み、渡された酒をこくりと飲む。その度の強さに思わず眉を潜めた。
「強いな………、いいのか?ずっと禁酒してたのに」
「いいのよ、だってこんな祝いの日なんですもの。それにもう我慢しなくてもよくなったしね」
乳を飲む子もいなくなり二年。こんな日くらいは良いのかもしれないと思った。
「それにしても、いきなり封印を解いて、まあそこまではいつも通りだったが。あの子の子孫にとりつかせた挙げ句、娘に会って仲を深めて息子を拐えなんて言った日はお前がとうとう気でも狂ったのかと思ったよ」
ちびりと辛口な酒を飲む。本当に全てがいきなりだった。
「まあ、失礼ね。でも会って良かったでしょ?結菜に」
「………まあな。結菜はあいつと同じで紛い物の私に優しくしてくれた人間だ。息子でさえ化け物と私を罵ったのにな。それにしても結菜の力が戻っていたが、消えたんじゃなかったのか?」
「うーん、それがね。閻魔様が結菜のこと気に入っちゃったみたいで、その場にあったぶんだけしか持っていかなかったみたいなのよね………」
「………はっ?」
危うく酒を手から滑らせるところだった。それくらい衝撃的なことを封印の巫女はさらりと言ってみせる。
「なんか、可愛いから今回はちゃらにしちゃうって言ってたけど………。やっぱり私の娘と息子は世界一可愛いのよね」
うんうんとしきりに頷く巫女に葛の葉は溜め息をつくことしか出来なかった。
私は英雄だった。人助けを生業として、冒険者ギルドに入り、名を広め、いつしか魔法賢者と呼ばれるようになり、勇者パーティーに加わり、仲間と共に魔王を倒す。そこまでは何もかもが順調な人生で………油断をしていたんだと思う。
「ーーー!!!」
「ふぇっ?」
クエストで薬草採取をしているとき、不意に仲間に名前を叫ばれて振り返る………私の記憶はそこでおしまい。普段から身に付けている結界を施した守りのブレスネットがあるからと慢心していたのだ。なんとも間抜けな最後だったと思う。
私はかちゃりかちゃりと視線を感じながら慎重に積み木を組み立てていく。一緒にいた仲間たちはどうなったのか、なんてことよりも今は目の前の事に忙しかった。
「ーーー………っおおおおおぉぉぉ~~~!!!」
最後を積み上げると拍手を貰う。積み上げすぎた積み木が私ともう一人に挟まれ、壁のように列なっていた。
「ねぇね、すごいね!」
クリームパンのように膨らんだ小さな手で一生懸命叩くのは、最近三歳になったばかりの可愛い弟の祐司(ゆうじ)だ。私は頬を緩ませて「ありがとう」と祐司を抱き上げた。
賢者と呼ばれ、魔王を倒したのはもう過去の話。今の私は日本の中でも田舎に住む一般家庭に生まれた娘、松元結菜(まつもとゆうな)小学一年生。ただし、普通ではない。
「結菜ちゃん、祐司くん、ご飯だよ~」
母が夕食を知らせる。
「わーい!ごはんだ~!!」
祐司は私の腕の中から飛び出す。私は間一髪で散らかっていた積み木を念力で弾き飛ばした。この程度ならば式を組む必要もない。不自然にならないようある程度もとに戻してほっと肩を下ろした。
そう、私は異世界で持っていた能力を全て持ったままそのままこの世界に生まれてきた異人、いや魔法賢者だ。
「結菜ちゃ~ん?」
「はーい、今行きます」
どうやら私は異世界で人生をやり直しているらしい。
異世界……地球に来てから六年余りが経った。外はミンミンつくつくぼうしと蝉が鳴き、服が汗でジメジメとしてうっとしい日、私は夏休みという避暑期間に入ることになる。
地球は赤道に近づくほど気温が暑くなる構造らしく、日本のなかでも南に位置するこの県は夏が暑くて堪らない。こういう日は森に入って木陰で涼むのがむこうでの日常だったが、ここでは違う。
私はリビングの隅でフローリングに座り込み首を大きく上に傾けていた。目線の先には白い箱、エアコンがある。地球は魔法がない代わりに科学が発展した世界で、エアコンもその一つだ。マナではなく、電気という熱や風に変換できる力を使い、生活を便利にしているらしい。これもテレビという全く別の場所が映るという電気を使う硝子板から知ったことだ。
「あら、今度はエアコンに夢中なの?結菜ちゃん」
そう言って茶化してくるのは麦茶を持った母だ。プラスチックの二つある片方のコップを渡されて「水分補給してね」と言われる。私は言われるままにコップの中身を飲み干した。冷たくて美味しい。
「ママ、エアコンはどうやって冷たい風を出しているの?」
私の突然の質問に母は困ったように眉を八の字にした。
「う~ん……そうね……、ママ、分かんないから携帯さんに聞いても良い?」
母はエプロンのポケットからスマホを取り出す。早く答えを知りたい私は躊躇うことなく「うん、いいよ」と返事をした。
ピンポーン。
「お届けものでーす」
「あ、はーい!結菜ちゃん、ちょっと待っててくれる?」
母は荷物を受け取りに玄関へ向かっていく。私はその背中を尻目にスマホへと視線を移した。ふむふむ、液体を蒸発させて気体にし、空気を冷却する。つまりは液を空気にすると冷えるということか……うーむ、わからない。でも、確かに氷を水に入れると水は冷たくなり、氷は水になる。道理は成り立っている気がした。
『ゆうな、なに見てる?』
『なに見てる?』
「面白いことですよ。この世界の科学とやらはなかなか興味深い」
窓をすり抜けて現れたのは小さい小人が柔らかな光を放っているという不思議な生物たちだ。それらは前世では精霊、日本ではつくもがみと呼ばれる森羅万象のものから生まれる自由を具現化したような自由人で、うちのように山に住んでいるとよく会う。菓子が好物でなにかをお願いするときは菓子を対価に要求する、というところまで前世と変わらぬ見慣れた生物だ。この子たちはこの家に憑いているつくもがみらしく、ツインテールの双子のような見た目をしている。
つくもがみは植物以外のものには憑きにくい。しかし、形、名前がそのまま、物が長い年月や思い出を過ごすとつくもがみが憑く。この家は私たちが住む前に大叔父が住んでいたのををリフォームしたものなのでつくもがみはそのままなのだ。
『ゆうなはべんきょうねっしん』
『おもしろいこと大好き』
「そうですか?これくらい普通だと思いますが……そうですね、勉強すればいろいろなこの世界のことを知れますから。いつか、世界旅行なんか、してみたいものです」
前世とは違い、国の数、広さも段違いなこの世界のことをもっと知りたいという思いは前々からのものだ。
「せかいろこー、ゆーじもついてく!」と私の言葉に便乗して祐司は楽しそうに言う。
『ふーん、そっか~』
『ゆうなはべんきょうして旅行行く~』
くるくると私の周りを飛ぶ二人に祐司が手を伸ばして喜んでいる。私はその手を引き戻した。
『ゆうなはしんぱいしょう。ゆうなの弟ならぜったいきずつけたりしないのに』
『ゆうなの弟、ワタシたち大かんげい』
「………」
私は笑顔を崩さず、二人見つめた。二人は互いに顔を見合わせて『しかたない、じゃあねゆうなの弟』『ばいばーい』と言って気配を消す。
「あ、きらきあさん、きえちゃった………」
(ーーー''結菜の弟''、ねぇ)
私は残念がる祐司の頭を静かに撫でた。
私は隣の森まで遊びに来ていた。家のすぐそばにある小さな森で周辺に住んでいる子供たちの秘密基地でもあったりする。そのためいらなくなった物が散乱しており、机やいす、使うことはできないがテレビなんかもあった。木々や竹が自由に延びる中に不自然に空間が空いており、そこに物が置かれている状態である。
『おはようゆうな!あれ、今日は早いね?』
森に住まうつくもがみたちはそれぞれ思い思いの挨拶をしてくれる。全体的に緑や茶色が多い。
「そうなんですよね~……。今朝は父親と早起き勝負をしまして……ふぁ~」
大きくあくびをしてバスタオルを敷いてソファーへと座り込む。ぼふんと勢いよくいくと灰が舞って咳き込む羽目になり、つくもがみたちは爆笑して風で吹き飛ばしてくれた。
「けほっけほっ、ああ……嫌な目にあいました」
今度はそっと、ソファーに倒れる。目を閉じれば木陰で程よい気温にうとうとと眠気が誘われた。
『ゆうな、おねむみたいね』
『そうみたい。そっとしておこう』
『そうしよう』
私ははっと目を覚ます。
「今何時だぁぁぁ!!!」
穴ぼこソファーから飛び起きると同時にこのソファーに憑いているつくもがみはニコニコと近寄ってきて『おひる前くらいだねぇ』とのんびりと言う。
今日は父が仕事なので野球観戦に邪魔されることなく、テレビを見ることができる日なのだ。絶対に昼までには帰りたい。
昼までに余裕を持って起こしてくれとでも頼めば良かったと反省しながら脱げた靴を直していると、つくもがみたちが騒ぎ出した。
『たいへん、なんか来る!』
『たいへん、ゆうなねわれてる!』
『にげろぉ!』
「えっ?えっ!?」
つくもがみたちはチリヂリに散っていき、呆気にとられた私は一人ぽつんと残された。
「私のことは!?」
叫びも虚しく、そこへ巨大な魔力が飛んでくる。ばぁしぃーんっ!!!と盛大な爆発音と、またもや砂ぼこりが立ち咳き込んでしまう。
「けほっけほっ!『ヒッグ・エッド・コレクト・プールビス』!!!」
私はたまらず魔法で砂を一ヶ所に集める。周りを見渡すともう言い訳ができないほど吹き飛び、草がなく地面は丸裸にされた状態になっていた。その爆発の元凶はパチパチと手を叩き「流石」と偉そうに言っている。
「俺が認めただけあるな、見事な術だ」
「言いたいことはそれだけですか?」
悪びれることなく鼻に付く喋り方で見下してくるコイツは、安倍晴明の生まれ変わりだとかいう陰陽術という名の奇妙な術を使う男、安倍弘明。純日本人のなのに生まれつきの白銀の頭髪、赤目であるが肌は白くなく、アルビノではないらしい。
私はもう慣れたと言わんばかりの手付きで散らかった家具や、飛ばされて無くなってしまった草木を生やす。ご覧の通り、コイツがここを吹き飛ばしたのは今回が初めてではない。ある日突然飼い猫の福を撫でているところへ飛び込んで来て、今日で四度目。三日に一回の確率で定期的に来るのが腹立たしい。
「そこまで怒ることもないだろう?貴様にとってはこの程度、手を洗うのとなんら大差ないだろうが」
「ブッ飛ばされたいのですか?きっとそうなんでしょう?待っててください、今すぐ一発右ストレートでかましますから」
私がぶんぶんと腕を回し、肩をならしていると安倍弘明は焦ったように手を振った。
「まてまてっ!今日はきさ……お前に用事があって来たのだ!」
弘明の必死さに私も肩を下ろし、息をつく。「それで、どんな用事なんですか?」と私が面倒くさげに聞くと、うって変わって意気揚々と語りだした。
「ッン!では。……京洛より災い有り。大事なものを失くすだろう。臆することなく周囲と信頼関係を結ぶのが良いであろう。ーーーどうだ?これが昨日の晩に星読みで出てな、急遽予定を変えてここに来たんだ」
「………あー、そうですか」
(帰っていいかな………)
私の体は自然と弘明の陰陽術自慢話を無視して家へと歩き出していた。
今日は出校日。夏休み最後だからと気合いをいれた私はいつもより早めの時間帯に起き、祐司の寝顔を覗きに行った。三才の弟は私の隣の部屋ではなく、母の部屋で寝ているのでリビングルームへ向かった。
「あれ、いない……?」
しかし、そこに母と裕司の姿はなく、もぬけの殻であった。
『クスクス、ゆうなの弟はいないよ?おかあさんもおとうさんも』
ふわりとツインテールのつくみがみが現れて告げる。もう一人も嘲笑うようににやけながらこちらを見てきた。
『そうそう、いない、いないしちゃったもん』
「………」
ドクリと、心臓が鈍く動く音がする。いつぶりだろうか、この感覚は。私は無意識に反応した魔力を制御できず、つくもがみの片方の首を握り潰す。つくもがみは苦しそうにもがいて涙ぐんでいる。
「何処にーーー……っ」
『「……京洛より災い有り。大事なものを失くすだろう。臆することなく周囲と信頼関係を結ぶのが良いであろう。」』
不意に弘明の言葉を思い出す。私はそこでぱっと手を離した。片方はげほげほとむせかえりながら息を吸った。
「……違いますね。あなたたちではない」
私は殺気に当てられて震えたまま動かなくなったつくもがみたちに「ごめん」とだけ言って、周囲に感知魔法を使った。引っ掛かった魔力を追いかけるように転移魔法を構成していく。
『……ほんとはね、ダメって言うつもりだったんだ。ぼくたち、ゆうなのこと好きなんだよ。でも、だからね、しっとしちゃったんだ。また家族って名前のものにぼくたちの大切なもの、取られるんだと思って……うっ、ひぐっ、うえぇぇぇん、ごめんなさいぃぃぃ』
双子の無事な片方は泣きながら謝罪する。そういえば、前にここに住んでいた大叔父は大叔母が死んでからは他県に住む長男一家に引き取られていったと聞いたことがある。それのことを言っているのであれば、もしかしたら大叔父は私と同じ魔力持ち、もしくは見えている人だったのかもしれない。
「……はぁ、まあ過ぎたものは仕方ありませんか。『エレーミニム』」
ほぅと倒れたままのつくもがみの周りに光が宿る。優しく、暖かい光が首の赤いアザを溶かしていった。
「次は無いですよ。全く、そういうことは先に相談しておくものでしょうが。いいんですよ、不安に思うなら言ってしまって。少なくとも私はそちらの方が有り難いですから」
双子は起き上がって涙を拭った。そうこうしている間に転移魔法の解析が終了したようだった。「『パッセン・ティブルス』」と唱え、術を完成させると空間に穴が開き、向こう側見えるようになる。そのゲートに足を入れるというところで双子が口を開く。
『……封印の巫女、ゆうなはちゃんといい子に育ったよ。ばくたちの役目もこれでおわりなの』
最後にかけられた言葉は結菜の耳に届くことなく、闇へと消えていった。
ゲートの行く先は古風に整えられた町の裏路地だった。全ての建物が木造で、街灯や道路も特別な造りをしている。私は特別な雰囲気の場所に楽しくなる反面、漂う魔力や念に警戒心を強めた。
どこもかしこも結界まみれ、封印されているものが一ヶ所に集まりすぎている。それに悪いものも多い。今も地面からはぽこぽこと見慣れぬ強い力を持った生命体たちが出てきてはこちらの様子を伺っていた。
「こ、こんにちは………?」
あまりに沢山の視線に見つめられ、思わず挨拶をしてしまうと突然ぐわっと牙を剥き出し、襲いかかってきた。
「ギシャーーーーッ!!!」
「のわぁぁぁぁぁあ!!!」
私は目玉しかない丸い球体が集団で襲いかかってくるという恐怖に、人目も気にせず走り抜けた。人混みにぶつかっても謝る暇もないほど早足で町中を抜けると、人の少ない開けた場所に出ることができた。
「シューーー……」
相も変わらず丸いなにかが追ってきているが、先程よりも数が増えているのは気のせいだと思いたい。
「おやおや、雑魚相手に随分苦戦しているな」
「……弘明」
突然現れた陰陽師弘明が星印を結び黒い奴らを拘束し、浄化していく。呪文を言い終え、手に持つお払い棒を一振りすると一斉に浄化された。土地が暖かな気配を取り戻す。私はぼんやりとそのようすを眺めてふうと息をつく弘明に向き直った。
「いいんですか、あの子達は貴方の味方でしょう?」
私の言葉に弘明はきょとんとした後、ニヤリと嗤う。
「なんだ、気づいていたのか。開口一番に言えば良いのに、野暮ったいな」
辺りに黒い靄がかかり、ピリピリと電流が走っている。いつの間にか人間は誰一人と居なくなっていた。じめじめとした魔力が辺りに満ちている。
「悪趣味なのはどちらですか。私の可愛い弟を拐うなんて、立派な幼児誘拐犯ですよ、安倍弘明」
言いたい放題捲し立てると私は亜空間から杖を取り出した。詠唱と共に杖の先に光が集まっていく。光の弾は弘明に向かって飛び、爆発した。
「『インパルーサ』」
私の十八番魔法爆撃インパルーサが弘明に炸裂するが、煙が消えてもその肉体には傷一つも見当たらなかった。光の反射で弘明を覆う薄い円形の膜がきらりと光る。臀部には長い毛の生えた尾が生え、先程より随分と禍々しくなったように感じる。
「生憎だが人間の作った法など関係はない。私は安倍の小僧ではなく、葛の葉なのだから」
「葛の葉?それはあなたの名前ですか?」
「そうだ。私は葛の葉。安倍一族にとりつき数百年、失われた妖力も漸くここまで戻ってきたのだ。お前を喰らえば更なる力を得ることも出来ようぞ、はっはっはっ!」
葛の葉の高笑いに空気が重く震える。高まった妖力が刃となり、顔を庇った私の腕に切り込みを与え、鮮血が流れ落ちる。私は痛み顔を歪ませて、手で傷口を押さえ込んだ。
「『インパルーーー』」
「おや、いいのかい?私を攻撃すれば小僧がどうなるやもしれんぞ」
「!!」
卑怯な手を使う………そう思ってもどうにもならないのは承知していたが、どうにも思わずにはいられなかった。
「それではどうすればいいのです?」
「なーに、簡単なことよ。お前を私に喰わせてくれればよい」
「………」
葛の葉はふふふと嗤う。その表情からはとても返してくれそうには見えない。私はぎりりと固く葛の葉に見えないように拳を握りしめた。
「………わかりまーーー」
「駄目だっ!!!」
渋々了承しようとした私にまったの一言がかかる。先ほどまでの妖気は薄れ、葛の葉……いや、弘明の表情が伺えた。
「頷いてはならない!!こいつの言うことは全くの嘘だ、本当はお前ともども弟も喰らおうとしている!!」
「っ、小生意気きなガキが。大人しくしていれば良いものをっ!!!」
どうやら弘明は完全に呑み込まれているわけではないらしい。ならば、私にも勝機はある。
「弘明さん、そのまま葛の葉を捕まえていてくれますか?出来れば十数秒位」
弘明が「ああ」と頼もしく返事をしてくれたので、杖を高々と掲げ、躊躇なく式を組み込んでいく。葛の葉の周囲に塔のように魔方陣が立ち並び、それを支え繋げるように光の線がはしった。
「や、止めろ!やめろやめろやめろやめろやめろーーーっ!!!」
「『ヘイゲッジ・ストゥエーリアム・アン・ファイゲッズ・エスト・アスティーリアーム』!!!」
ぱちんと光が弾けると、弘明の肉体から女狐が引き剥がされる。人としての形を保ちながらも、その肌は毛に覆われ、おそらく艶やかだったのであろう白い毛並みは力に充てられて縮れてしまっている。
「あああああぁぁぁ!!!力がっ、どんどん小僧に戻っていってしまうっ!!!人間の小娘風情がっ、小賢しいまねをっっ………!!!」
ぎぃぎぃと甲高いが枯れている耳障りな声で叫ぶ葛の葉を余所に、私は魂が抜け倒れた弘明に駆け寄った。そしてすぐさま結界を張る。
「ーーーおい、俺のことは良い。守りの結界くらいならば自分で張れる。………お前の弟は俺の屋敷にいる。屋敷には式神がいるから安心して戦うといい」
葛の葉が離れたばかりで体調が安定しないだろう弘明は虚勢を張る。その意地にただ「ありがとう」と言って私は笑った。
季節外れの葛の乗った風がひゅぅと吹く。葛の葉は先程の様子とうって変わって、静かにそれを眺めていた。その表情はとても穏やかとは言えない。
「ぁ………、あぁ………」
嗄れてしまった声で微かに呟く。迎えが来てしまった、と。それを聞き取った私はなんのことだと思っていると突然、地面に黒い穴が開いた。葛の葉はそれに無理やり吸い込まれるように落ちていく。
「葛の葉っ!!!」
私は思わず葛の葉の手を掴んでいた。力強く握ったせいで葛の葉の鋭い爪が手のひらに食い込み、血が流れる。
「結菜、やめろ!それは冥界からの迎えだ。そいつは地獄で裁かれるんだよ」
やけに落ち着いている弘明に「どうして?」と振り向きもせず問いかける。
「妖怪にもルールはある。魂を喰らう行為は御法度なんだよ」
葛の葉は白狐の怪だった。ある日、罠に引っ掛かった葛の葉は狩人たちに追いかけられ、そこをたまたま通りかかった人間の男に助けられる。人間の男は怪我をおっていまい、助けられて恩を感じていた葛の葉は人間に化け、葛と名乗り男を介抱する。そして二人は恋に落ちていくのである。妖怪と人間が契るのは禁忌だったが、葛の葉と男は山奥でひっそりと暮らし、やがて男の子にも恵まれたが、ついに男に葛の葉の本当の姿を見られてしまい、泣く泣く離ればなれになった。
弘明が語り終わると私は顔をしかめた。
「よくまあこの状況でそんな長々と語ってくれましたね!」
「まあ、待て。まだなぜ葛の葉が人間の魂を喰らったのかという続きが………」
「そんなのどうでもいいんですよっ!!!それよりこの状況、どうにかしてくださいよっ!!!」
私は怒鳴るように叫んだ。魔法を使って身体を強化しても冥土のお出迎えだとかいう連中の力の方が強くて、私も胸の辺りまで落ちかけていた。
「………もう離せ、小娘。お前も落ちるぞ?」
葛の葉の諦めたような口調がねっとりと頭に残る。私は血が上ったまま、その残滓を振り払らうように言った。
「嫌です!因縁だか魂を喰っただかなんだか知りませんが、それは私には関係ありませんしっ!第一、生を諦めるだなんて温いことで償われる罪も嫌だしっ!関係ないところで償われてもなんにも解決しないんですよっ!!!」
訳もわからず、怒りのまま思ったことを全て葛の葉にぶちまけた。叫んだせいか力が入り、更に爪が食い込む。手のひらから流れ出た血は、とうとう葛の葉の顔にぴしゃりとかかった。葛の葉の病的に白い顔に赤い線がはいる。
「なぜだ……、なぜ助ける……?人間は愚かだ、私のようなものを助けなくてもなにも変わりはしない」
葛の葉の涙は頬を伝って無限に続く穴で行く宛もなく落ちていく。それでも葛の葉の瞳からは耐えることなく涙が続いていた。弘明ははっとしたように恐る恐る葛の葉を握る私の手を掴む。そして私を見て頷いた。
「変わりますよ。少なくとも私は貴女がいなくなれば明日が寂しくなりますから」
「そうだな。少なくとも俺は今までの苦悩をぶつける相手がいなくなって途方に暮れてしまう」
葛の葉の止まらない涙は遂にピシャリと音を絶てて弾けた。
音と共に世界が揺れる。いや、止まったのだろうか。風は吹き止み、力は抜け、血は逆流し、傷口は塞がった。突然の出来事に唖然としている中、光と共に半裸の厳つい男が現れる。燃え盛るような髪に着物を着崩した、炎を思わせる男は宙に浮いたままゆっくりと口を開いた。
「その者を助けたいのか?」
威厳のある重い声に私は不思議とこれが神であると思った。
「助けます」
「そうか。では何を対価にする?」
「対価ですか?」
「そうだ。この者の失態を拭うにはお前が対価を支払わなければいけない」
「………では、私の持てる力を全部あげます」
「ほぉ、いいのか?それはおまえだけの特別なものだろう?」
「いいですよ。もとよりこちらでは過ぎたものですし。あ、でも葛の葉さんと、話せなくなるのかな……?まあ、なんとかなると信じて、オッケーです!」
「はっはっはっ、元気だな。良いだろう、そなたの願いを受け入れよう」
私の意識はそこでプツリと切れてしまった。
澄みわたる空、陽気に晴れる太陽。そして……
「ゆきだぁぁぁ~!!!」
祐司は窓に顔をくっ付けて嬉しそうにはしゃぐ。今年初めての雪だ。今日も弟が可愛い。
「結構積もったね。これは雪合戦をしなければ」
そこへ朝食を持った父が現れる。
「おっ、いいな雪合戦。パパは強いぞ~!」
「その勝負、承けてたつよパパ」
「ぼくはゆきだるまつくぅの!」
「よーし。じゃあこれ食べたら皆で足跡を付けに行こうか!」
父の掛け声に祐司は急いで席へついた。私も自分の椅子に座ろうかというところで足元へふわりと白い毛並みが通りかかる。
「アキ!おはよう、昨日はよく眠れた?」
夏のある日からペットとして家で飼われている狐、アキはなにを隠そう葛の葉である。あの日以来、怪の声や姿が見えなくなった私に葛の葉はずっと側にいてくれるのだ。
「アキもおそとでゆきあそびしよう!ゆうじ、おっきいゆきだうまつくるね!」
私の膝に乗ったアキに祐司が頭を撫でると嬉しそうに尻尾を振った。
「ああ、楽しみにしていよう」
「………え?」
「む?どうした結菜」
驚き固まる私に更なる追い討ちをかけるように、ツインテールの双子が姿を現す。
「ゆうな、どうした?」
「ゆうな、もしかして見えてる?」
「えええぇぇぇぇっ!!!」
今世はまだまだ騒がしく過ごすことになりそうだと思う冬の始まりだった。
夜。雪が降る中、訪れた寺の屋根には一人の女が酒を楽しんでいた。
「やっと来たのね、葛の葉。待ちくたびれてもう始めちゃったわよ」
女はくるくると酒瓶を回す。顔が火照っているところを見ると、既にだいぶ飲んだらしい。
「悪いな、封印の巫女。余りの寒さに布団から動きたくなくなったんだ」
女の隣に座り込み、渡された酒をこくりと飲む。その度の強さに思わず眉を潜めた。
「強いな………、いいのか?ずっと禁酒してたのに」
「いいのよ、だってこんな祝いの日なんですもの。それにもう我慢しなくてもよくなったしね」
乳を飲む子もいなくなり二年。こんな日くらいは良いのかもしれないと思った。
「それにしても、いきなり封印を解いて、まあそこまではいつも通りだったが。あの子の子孫にとりつかせた挙げ句、娘に会って仲を深めて息子を拐えなんて言った日はお前がとうとう気でも狂ったのかと思ったよ」
ちびりと辛口な酒を飲む。本当に全てがいきなりだった。
「まあ、失礼ね。でも会って良かったでしょ?結菜に」
「………まあな。結菜はあいつと同じで紛い物の私に優しくしてくれた人間だ。息子でさえ化け物と私を罵ったのにな。それにしても結菜の力が戻っていたが、消えたんじゃなかったのか?」
「うーん、それがね。閻魔様が結菜のこと気に入っちゃったみたいで、その場にあったぶんだけしか持っていかなかったみたいなのよね………」
「………はっ?」
危うく酒を手から滑らせるところだった。それくらい衝撃的なことを封印の巫女はさらりと言ってみせる。
「なんか、可愛いから今回はちゃらにしちゃうって言ってたけど………。やっぱり私の娘と息子は世界一可愛いのよね」
うんうんとしきりに頷く巫女に葛の葉は溜め息をつくことしか出来なかった。
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