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幼少期編
8 兄と魔法
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アデルと別れて次は魔法だ、ということで私たちは2棟の奥にある小屋というより、家くらいの大きさの家具の少ない場所でお茶を楽しんでいた。
ソファーはフカフカだし、チェニーの入れるダージリンはおいしいしで至福のひと時だ。
どうもちょっと熱くなりすぎたみたいで、のどがカラカラだったところだ。
乾きった喉に柔らかい味がじわりと染みる。
ストレートだと少し渋めな味だが、日本のお茶と思い出すような味で私はいつもあえてストレートで飲んでいる。
入れてもらうたびに「ストレートで」と言わないと、砂糖やらミルクやらを入れたがるので少し面倒だが。
ちなみに兄はミルクを目茶苦茶入れる、それも一対一の割合でだ。
思わず「紅茶の味するの?」と聞きたくなるくらい白い。
チェニーは私がダージリンをストレートで飲むたびに訝しげな眼をするし………いや、どう考えたってお兄様の方が異質だよね?
まあ、好みは人それぞれなので何も言いはしないが。
私はまた一口コクリとすると、扉が開き、慌てたように人が入ってくる。
「いや~すみません、タファさん。遅れちゃいました。」
「構わない、いつもと同じ時刻だ」
それっていつも遅刻してるんだね。
そんな遅刻常習犯はぼや―としてそうな顔のかっこいいというよりかわいいなおじさんだった。
歳は…50くらいじゃなかろうか、深緑色の髪からちらほらと白髪が見える。
丸くて大きく重そうなのはこの世界では初めて見た眼鏡だ。
実に黒縁がキュートである。
「おやおや、この子がタファさんの妹さんかな?噂通り、かわいらしい方だね」
そして天然タラシのようだ、(私の中で)点数が高い。
私は褒めても何も出ませんよーというつもりでにっこりとほほ笑み、大人の余裕というやつを見せつけてやる。
「お初にお目にかかります、サラ・デューク・ニコラスです。いつもお兄様がお世話になっています。今日はよろしくお願いいたします」
「ご親切にどうも、小さなレディー。私はエイブル、エイブル・エール・マクシビリア。タファさんの魔法教師をしております、宮廷魔法使いです。以後お見知りおきを」
エール………伯爵か。
マクシビリアと言えばここからはだいぶ遠く辺境伯が治める東側の地方なはず、宮廷魔法使いならば第一後継者ではないのだろう。
「あら、マクシビリアと言えば農業が盛んな地域ですね。特に果実がおいしいのだとか」
「おやおやおや、聡明ですね。そうですね、今の時期ならあまなつや苺が収穫されいるのですよ。実家からたくさん送られてきますし、今度お土産に持ってまいりますね」
丁寧な対応…、この人は私のことを子供だと見くびらないようだ。
「まぁ本当ですか?楽しみにしておりますわ」
手を口にそっと添えてうふふとお母様の真似をする………ちょっと子供っぽくなかったかもしれない。
まぁそんなに隠す気も無いので構いはしないが。
忘れそうになるが、今の私は幼児なのだった。
しかし、さすがは貴族、ピクリとも眉を動かさない。
「ちょっとエイブル先生、サラにプレゼントですって?―ー―聞き捨てなりませんよ」
プレゼントとかじゃないから、社交辞令だから。
「おやおや、これは失敬。なぁに、ちょっと私の地域の名産品に興味があるようだったので」
「サァラ、にいにが買ってあげるからね?家族以外からプレゼントとか許せないから」
だから、社交辞令だって。
というか許せないって私が?それとも相手が?どっちもお断りだ。
エイブルはお兄様に睨みつけられながらもにこやかな表情は崩さない。
どうやら日常茶飯事のようだ、まったく。
「――うちのお兄様がすみません」
「構わないよ、君のことになるといつもだしね。にしても、君は落ち着いていて、礼儀正しいね。お母さん譲りなのかな?」
遺伝というより、歳の功です、なんて言えないので「そうでしょうか」とごまかし笑い。
本当はエイブルと私は同じような年齢なのだ、会話もやりやすくて弾む。
その後もしばらくどうでもいいような他愛のない話をしていると、すっかりハブられたお兄様が「もう、授業を始めよう」と拗ねて二人とも苦笑して会話は終了したのだった。
ソファーはフカフカだし、チェニーの入れるダージリンはおいしいしで至福のひと時だ。
どうもちょっと熱くなりすぎたみたいで、のどがカラカラだったところだ。
乾きった喉に柔らかい味がじわりと染みる。
ストレートだと少し渋めな味だが、日本のお茶と思い出すような味で私はいつもあえてストレートで飲んでいる。
入れてもらうたびに「ストレートで」と言わないと、砂糖やらミルクやらを入れたがるので少し面倒だが。
ちなみに兄はミルクを目茶苦茶入れる、それも一対一の割合でだ。
思わず「紅茶の味するの?」と聞きたくなるくらい白い。
チェニーは私がダージリンをストレートで飲むたびに訝しげな眼をするし………いや、どう考えたってお兄様の方が異質だよね?
まあ、好みは人それぞれなので何も言いはしないが。
私はまた一口コクリとすると、扉が開き、慌てたように人が入ってくる。
「いや~すみません、タファさん。遅れちゃいました。」
「構わない、いつもと同じ時刻だ」
それっていつも遅刻してるんだね。
そんな遅刻常習犯はぼや―としてそうな顔のかっこいいというよりかわいいなおじさんだった。
歳は…50くらいじゃなかろうか、深緑色の髪からちらほらと白髪が見える。
丸くて大きく重そうなのはこの世界では初めて見た眼鏡だ。
実に黒縁がキュートである。
「おやおや、この子がタファさんの妹さんかな?噂通り、かわいらしい方だね」
そして天然タラシのようだ、(私の中で)点数が高い。
私は褒めても何も出ませんよーというつもりでにっこりとほほ笑み、大人の余裕というやつを見せつけてやる。
「お初にお目にかかります、サラ・デューク・ニコラスです。いつもお兄様がお世話になっています。今日はよろしくお願いいたします」
「ご親切にどうも、小さなレディー。私はエイブル、エイブル・エール・マクシビリア。タファさんの魔法教師をしております、宮廷魔法使いです。以後お見知りおきを」
エール………伯爵か。
マクシビリアと言えばここからはだいぶ遠く辺境伯が治める東側の地方なはず、宮廷魔法使いならば第一後継者ではないのだろう。
「あら、マクシビリアと言えば農業が盛んな地域ですね。特に果実がおいしいのだとか」
「おやおやおや、聡明ですね。そうですね、今の時期ならあまなつや苺が収穫されいるのですよ。実家からたくさん送られてきますし、今度お土産に持ってまいりますね」
丁寧な対応…、この人は私のことを子供だと見くびらないようだ。
「まぁ本当ですか?楽しみにしておりますわ」
手を口にそっと添えてうふふとお母様の真似をする………ちょっと子供っぽくなかったかもしれない。
まぁそんなに隠す気も無いので構いはしないが。
忘れそうになるが、今の私は幼児なのだった。
しかし、さすがは貴族、ピクリとも眉を動かさない。
「ちょっとエイブル先生、サラにプレゼントですって?―ー―聞き捨てなりませんよ」
プレゼントとかじゃないから、社交辞令だから。
「おやおや、これは失敬。なぁに、ちょっと私の地域の名産品に興味があるようだったので」
「サァラ、にいにが買ってあげるからね?家族以外からプレゼントとか許せないから」
だから、社交辞令だって。
というか許せないって私が?それとも相手が?どっちもお断りだ。
エイブルはお兄様に睨みつけられながらもにこやかな表情は崩さない。
どうやら日常茶飯事のようだ、まったく。
「――うちのお兄様がすみません」
「構わないよ、君のことになるといつもだしね。にしても、君は落ち着いていて、礼儀正しいね。お母さん譲りなのかな?」
遺伝というより、歳の功です、なんて言えないので「そうでしょうか」とごまかし笑い。
本当はエイブルと私は同じような年齢なのだ、会話もやりやすくて弾む。
その後もしばらくどうでもいいような他愛のない話をしていると、すっかりハブられたお兄様が「もう、授業を始めよう」と拗ねて二人とも苦笑して会話は終了したのだった。
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