38 / 165
幼少期編
8 兄と魔法
しおりを挟む
アデルと別れて次は魔法だ、ということで私たちは2棟の奥にある小屋というより、家くらいの大きさの家具の少ない場所でお茶を楽しんでいた。
ソファーはフカフカだし、チェニーの入れるダージリンはおいしいしで至福のひと時だ。
どうもちょっと熱くなりすぎたみたいで、のどがカラカラだったところだ。
乾きった喉に柔らかい味がじわりと染みる。
ストレートだと少し渋めな味だが、日本のお茶と思い出すような味で私はいつもあえてストレートで飲んでいる。
入れてもらうたびに「ストレートで」と言わないと、砂糖やらミルクやらを入れたがるので少し面倒だが。
ちなみに兄はミルクを目茶苦茶入れる、それも一対一の割合でだ。
思わず「紅茶の味するの?」と聞きたくなるくらい白い。
チェニーは私がダージリンをストレートで飲むたびに訝しげな眼をするし………いや、どう考えたってお兄様の方が異質だよね?
まあ、好みは人それぞれなので何も言いはしないが。
私はまた一口コクリとすると、扉が開き、慌てたように人が入ってくる。
「いや~すみません、タファさん。遅れちゃいました。」
「構わない、いつもと同じ時刻だ」
それっていつも遅刻してるんだね。
そんな遅刻常習犯はぼや―としてそうな顔のかっこいいというよりかわいいなおじさんだった。
歳は…50くらいじゃなかろうか、深緑色の髪からちらほらと白髪が見える。
丸くて大きく重そうなのはこの世界では初めて見た眼鏡だ。
実に黒縁がキュートである。
「おやおや、この子がタファさんの妹さんかな?噂通り、かわいらしい方だね」
そして天然タラシのようだ、(私の中で)点数が高い。
私は褒めても何も出ませんよーというつもりでにっこりとほほ笑み、大人の余裕というやつを見せつけてやる。
「お初にお目にかかります、サラ・デューク・ニコラスです。いつもお兄様がお世話になっています。今日はよろしくお願いいたします」
「ご親切にどうも、小さなレディー。私はエイブル、エイブル・エール・マクシビリア。タファさんの魔法教師をしております、宮廷魔法使いです。以後お見知りおきを」
エール………伯爵か。
マクシビリアと言えばここからはだいぶ遠く辺境伯が治める東側の地方なはず、宮廷魔法使いならば第一後継者ではないのだろう。
「あら、マクシビリアと言えば農業が盛んな地域ですね。特に果実がおいしいのだとか」
「おやおやおや、聡明ですね。そうですね、今の時期ならあまなつや苺が収穫されいるのですよ。実家からたくさん送られてきますし、今度お土産に持ってまいりますね」
丁寧な対応…、この人は私のことを子供だと見くびらないようだ。
「まぁ本当ですか?楽しみにしておりますわ」
手を口にそっと添えてうふふとお母様の真似をする………ちょっと子供っぽくなかったかもしれない。
まぁそんなに隠す気も無いので構いはしないが。
忘れそうになるが、今の私は幼児なのだった。
しかし、さすがは貴族、ピクリとも眉を動かさない。
「ちょっとエイブル先生、サラにプレゼントですって?―ー―聞き捨てなりませんよ」
プレゼントとかじゃないから、社交辞令だから。
「おやおや、これは失敬。なぁに、ちょっと私の地域の名産品に興味があるようだったので」
「サァラ、にいにが買ってあげるからね?家族以外からプレゼントとか許せないから」
だから、社交辞令だって。
というか許せないって私が?それとも相手が?どっちもお断りだ。
エイブルはお兄様に睨みつけられながらもにこやかな表情は崩さない。
どうやら日常茶飯事のようだ、まったく。
「――うちのお兄様がすみません」
「構わないよ、君のことになるといつもだしね。にしても、君は落ち着いていて、礼儀正しいね。お母さん譲りなのかな?」
遺伝というより、歳の功です、なんて言えないので「そうでしょうか」とごまかし笑い。
本当はエイブルと私は同じような年齢なのだ、会話もやりやすくて弾む。
その後もしばらくどうでもいいような他愛のない話をしていると、すっかりハブられたお兄様が「もう、授業を始めよう」と拗ねて二人とも苦笑して会話は終了したのだった。
ソファーはフカフカだし、チェニーの入れるダージリンはおいしいしで至福のひと時だ。
どうもちょっと熱くなりすぎたみたいで、のどがカラカラだったところだ。
乾きった喉に柔らかい味がじわりと染みる。
ストレートだと少し渋めな味だが、日本のお茶と思い出すような味で私はいつもあえてストレートで飲んでいる。
入れてもらうたびに「ストレートで」と言わないと、砂糖やらミルクやらを入れたがるので少し面倒だが。
ちなみに兄はミルクを目茶苦茶入れる、それも一対一の割合でだ。
思わず「紅茶の味するの?」と聞きたくなるくらい白い。
チェニーは私がダージリンをストレートで飲むたびに訝しげな眼をするし………いや、どう考えたってお兄様の方が異質だよね?
まあ、好みは人それぞれなので何も言いはしないが。
私はまた一口コクリとすると、扉が開き、慌てたように人が入ってくる。
「いや~すみません、タファさん。遅れちゃいました。」
「構わない、いつもと同じ時刻だ」
それっていつも遅刻してるんだね。
そんな遅刻常習犯はぼや―としてそうな顔のかっこいいというよりかわいいなおじさんだった。
歳は…50くらいじゃなかろうか、深緑色の髪からちらほらと白髪が見える。
丸くて大きく重そうなのはこの世界では初めて見た眼鏡だ。
実に黒縁がキュートである。
「おやおや、この子がタファさんの妹さんかな?噂通り、かわいらしい方だね」
そして天然タラシのようだ、(私の中で)点数が高い。
私は褒めても何も出ませんよーというつもりでにっこりとほほ笑み、大人の余裕というやつを見せつけてやる。
「お初にお目にかかります、サラ・デューク・ニコラスです。いつもお兄様がお世話になっています。今日はよろしくお願いいたします」
「ご親切にどうも、小さなレディー。私はエイブル、エイブル・エール・マクシビリア。タファさんの魔法教師をしております、宮廷魔法使いです。以後お見知りおきを」
エール………伯爵か。
マクシビリアと言えばここからはだいぶ遠く辺境伯が治める東側の地方なはず、宮廷魔法使いならば第一後継者ではないのだろう。
「あら、マクシビリアと言えば農業が盛んな地域ですね。特に果実がおいしいのだとか」
「おやおやおや、聡明ですね。そうですね、今の時期ならあまなつや苺が収穫されいるのですよ。実家からたくさん送られてきますし、今度お土産に持ってまいりますね」
丁寧な対応…、この人は私のことを子供だと見くびらないようだ。
「まぁ本当ですか?楽しみにしておりますわ」
手を口にそっと添えてうふふとお母様の真似をする………ちょっと子供っぽくなかったかもしれない。
まぁそんなに隠す気も無いので構いはしないが。
忘れそうになるが、今の私は幼児なのだった。
しかし、さすがは貴族、ピクリとも眉を動かさない。
「ちょっとエイブル先生、サラにプレゼントですって?―ー―聞き捨てなりませんよ」
プレゼントとかじゃないから、社交辞令だから。
「おやおや、これは失敬。なぁに、ちょっと私の地域の名産品に興味があるようだったので」
「サァラ、にいにが買ってあげるからね?家族以外からプレゼントとか許せないから」
だから、社交辞令だって。
というか許せないって私が?それとも相手が?どっちもお断りだ。
エイブルはお兄様に睨みつけられながらもにこやかな表情は崩さない。
どうやら日常茶飯事のようだ、まったく。
「――うちのお兄様がすみません」
「構わないよ、君のことになるといつもだしね。にしても、君は落ち着いていて、礼儀正しいね。お母さん譲りなのかな?」
遺伝というより、歳の功です、なんて言えないので「そうでしょうか」とごまかし笑い。
本当はエイブルと私は同じような年齢なのだ、会話もやりやすくて弾む。
その後もしばらくどうでもいいような他愛のない話をしていると、すっかりハブられたお兄様が「もう、授業を始めよう」と拗ねて二人とも苦笑して会話は終了したのだった。
0
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
幼馴染の許嫁は、男勝りな彼女にご執心らしい
和泉鷹央
恋愛
王国でも指折りの名家の跡取り息子にして、高名な剣士がコンスタンスの幼馴染であり許嫁。
そんな彼は数代前に没落した実家にはなかなか戻らず、地元では遊び人として名高くてコンスタンスを困らせていた。
「クレイ様はまたお戻りにならないのですか……」
「ごめんなさいね、コンスタンス。クレイが結婚の時期を遅くさせてしまって」
「いいえおば様。でも、クレイ様……他に好きな方がおられるようですが?」
「えっ……!?」
「どうやら、色町で有名な踊り子と恋をしているようなんです」
しかし、彼はそんな噂はあり得ないと叫び、相手の男勝りな踊り子も否定する。
でも、コンスタンスは見てしまった。
朝方、二人が仲睦まじくホテルから出てくる姿を……
他の投稿サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる