その悪役令嬢、今日から世界を救う勇者になる

ごーぐる

文字の大きさ
39 / 165
幼少期編

9 私と魔法

しおりを挟む
兄の子供のようでかわいい(って、子供か)の一言から始まった魔法の授業は、正直退屈なものだった。
この世界の魔法も前世での世界の魔法も原理は同じなようで、ましてや十歳児に向けた授業内容、しかも遅れた魔法で詠唱やら媒介やら無駄なものが多い。
ここよりも進んだ世界で魔法の頂点である『賢者』だった私にとってはぬるま湯のような授業だった。
―――魔法に関しては教わることは少ないもしくはなさそうだ。
ましてや子供に対して教える魔法なんて初級をかじった程度。
自分で鍛えるほうが効率もいいだろう。
それ以外にも私は気になる点があった。
それは、神を信仰する聖職と魔法は関係が深いというものだ。
なんでも、神様を信じれば信じるほどに魔法が強くなるらしい。
んな馬鹿な。
かといって勝手の違う異世界では本当にそうなのかもしれないと思うところもある。
しかし、神様なんて現代人として人間の科学に埋もれていた私にとって信じがたいものなのだ。
魔法とは知れば知るほど嫌でも現実で証明がされるもの、その最前線な私はいかんせんリアリストだ。
『人間こそが神である』という考え方の持ち主な私には無理。
やはり、自分で努力して才能を伸ばすことこそが至高だと思う。
ここではそんな考え方ではないらしく二人ともとても真面目な顔で授業をしている。
私は黙って授業を聞いているのが嫌になってきたので、机の上に積まれている本を一冊取って読み始めた。
聖書関係の本らしく神話や一種の図鑑のようなものだ。
ええっと、これによると。
この国を守る最高神、つまり創造せし神はヴェル・ディオ・ハーネストというらしい。
その他にも豊穣の神、水の神、商業の神、火の神などなど様々な神様がいるらしいが、基本的に信仰されるのは創造神とのこと。
信仰しないなら他の神要らねえじゃんと思うが、どうやらそれぞれの地域によって信仰度合いが違うらしい。
ちなみにこの国ではこの五聖教という宗教しかないらしく、私の中で不安が募る。
魔法の力と大きくかかわっているため、権力も相当なものだろう。
一ヶ所に溜まった権力というものは危険性が非常に高い。
ましてや、相手は宗教だ。
政教分離原則とかあればいいけれども、こんな時代だと期待はできない。
ため息をつきたくなるような状況に一種の苛立ちのようなものを感じた。
ーーー政治はいつの時代でも問題があるものだな。
政治にはもう一切かかわりたくないが、魔法を使う以上避けては通れない道でもあるだろう。
その時にいかにして極力関わらないでいられるかだな。
そんな感じで本とにらめっこをしている私にエイブルは話しかけてきた。
「文字、読めるのですか?」
一種のなんのことを言われたのか分からなかった私だったが、すぐにそれは違うのだと思い出した。
しかし、返事を返す前に私はお兄様に先を越されてしまった。
「そうなんだよ!しかも読みだけじゃなくて書くのまで出来るんだ、僕の妹天才ぃぃぃ!」
ちょっと、いや、大幅に言い過ぎな気がするがそれでエイブルは納得したようだった。
「へー凄いね、書くのまで。ねぇ、お嬢さん?」
馬鹿にされている気もしなくないが、こいつは天然なのか計算なのかが表情が剰りかわらないのでよくわからない。
そしてわたしは「ああ、そうですか」しか言えないのだ。
お兄様はまだ盛大に盛って私のことを語っているが、面倒なので無視だ。
お兄様はすっかり自分の世界に入りきっている。
それよりも有意義な話をしたい、それはあちらも同じのようだった。
「今日の授業はどうでしたでしょうか?」
あー、どう言うかな…。
「そうですね、魔法はとても興味深いと思いました。」
ありきたりの模範解答、問題はないはずだ。
「そうですか、それはなによりです。教師冥利につきますよ」
あちらも模範解答で済ませたようだ、適当が一番だよね。
そう言ったエイブルだったが、なぜがか表情が暗い。
そして何かしら言いたげな目線で私を見てくる。
なんだ、なんなんだ、言いたいことがあるなら言ってくれ。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!

ぽんちゃん
恋愛
 ――仕事で疲れて会えない。  十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。  記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。  そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...