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幼少期編

10 私は魔法が使えない?

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しばらくの沈黙後エイブルは私の懇願が伝わったようで重々しく口を開いた。
「………サラさんは魔法が使えないかもしれないです」
―――は?
いや、バリバリ使ってますけど。
もちろん人のいないところでだが。
「―――一体どんな根拠で?」
嘘つくんじゃねーよとばかりに機嫌を悪くした私は声のトーンが落ち、不機嫌を装う。
「…落ち着いて聞いてくてませんか?」
私は別に落ち着いていない訳ではないのですぐに肩の力を抜いた。
スムーズにことを進めるために、多少の演技は必要だ。
「根拠はあります、こんな夢を壊すようなことを言うのはあれなんですが…」
「構いません、教えてください。なぜ私が魔法を使えないと?」
「―――実は、魔法は感じ取ることができるのですが、宮廷魔法使いともなれば微量の魔力でも感知が可能なのです」
………あ、だんだん読めてきた。
これはどう言い訳しようかなと私は思考を巡らせていた。
「それで………君の魔力が…」
「ゼロだと言いたいのですね」
エイブルは困ったように顔を下に向ける。
「―――そう、ですね」
「………それは違います」
「へっ?」
「えっと、私生まれつき魔力が高いみたいでそれで危ないからちゃんと制御できるようになるまでこれで魔法を封じているんです」
魔力が高いというはあながち間違いじゃない。
現に目の前にいるエイブルの魔力量は十五万だ。
私はたまたま首にぶら下げていたお気に入りのクローバーに細かい細工が美しいネックレスを取り出した。
「はぁ、魔封じですか?」
「これを外したら…、ほら」
「………っ!確かにこれはすごい魔力です。この年でそれとは…、圧倒されますね」
おや、一万ぽっちで圧倒とは嬉しいものだ。
私は順調順調と軽快にネックレスを戻し、それと同時に魔力も引っ込める。
「―――なるほどですねぇ。過保護な公爵様ならやりかねないだろう」
「…いえ、これは私の独断です。私が物心ついた頃、魔力がいきなり高くなって…。怖かったんです。それで自分で自分を縛りました…」
「サラさん…」
ウソ泣き…までは心苦しすぎるので、軽く顔を伏せた。
「………わかりました、サラさん。魔法の訓練をしましょう」
―――っへぇ?
話が思わぬところに進んでしまったのに混乱した私はばっと顔を上げた。
「…いえ、あの、危険ですし…」
やばい、言い訳が思いつかない。
「私は宮廷魔法使いですよ、全然大丈夫です」
やばいぞ…。
「お兄様の先生なのに…」
「それは一緒に授業を受ければいいですよね?」
うっ…、それが嫌なんだよ。
「…いえ、私今誰にも迷惑が掛からないように自分で魔法の訓練してますし」
「一人でしているのですか!?」
あう、しまった。
「―――やはり、一緒に魔法の訓練をしましょう。公爵様には私から立ち会いますから」
いりませんっ!!!って言いたい。
私は心の中で涙目になっていた。
エイブルは決意を決めたように拳に力を入れ立ち上がった。
それと同時に正午を知らせる4の鐘が鳴る。
「おや、もうこんな時間なのですね。では、サラさん明日から頑張りましょうね」
もはや私は何も言えなかった。
嘘をついたのは私で、非があるのも私、自業自得というやつだ。
兄は相変わらず一人語りをしている、誰か止めてくれ。
私は明日から始まる無意味な時間にできることを考えてしょんぼりと項垂れたのだった。
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