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幼少期編
14 妖精王と私の罪
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『ではサラか、妾達は退屈しておっての。なにか面白いな話とかないか?』
「え、面白いことですか?そうですね、闇の妖精王様はなにがお好きですか?」
『それ、言いにくかろう。妾はお前が気に入った、ルスピニーと呼ぶのを許してやろう。様付けはなしだ』
すると木の妖精王も乗っかるように言う。
『じゃあ私のことはプロンって読んでね、サラちゃん』
「ルスピニーさんとプロンさんですか?」
二人?は満足したように頷く。
『お前の生活、なんでもいい話してみよ』
私は悩んだ末、ここ数日の話をすることにした。
思いの外評判は良く、二人は興味津々で話を聞いていた。
『なるほど、最近の子は面白いわねぇ。そうだわぁ!君に私の加護をあげるわ、そうしたら私生活が自由に覗けるようになるもの』
え!?
『それはいい、妾もこやつに加護をやろうではないか』
ちょっと、勝手に話が進んでいくんだけど、良いのかこれ。
というか私生活が覗ける?
「か、加護って…?」
『ほう、加護を知らんのか。加護ってんなぁお気に入りの証じゃい。妖精王の加護なんて神の加護くらい珍しいもんじゃぞ、感謝せい』
は?
私はよく理解できずに呆けて見せた。
『ソォー、それは説明が足りないと思いますよ』
エアゥはクスクスと笑いながら丁寧に付けたしを行ってくれる。
『では、僕から補足説明を少し。一般的に加護と呼ばれるものは生まれたときに神々から授かるものとされています。それ以外では力は弱いですが、他の生き物からも得ることが可能です。加護は種族によって異なり、我々妖精の加護は魔法に関しての加護が多いです。中でも王と呼ばれるものの加護はずば抜けており、我々の加護はそれに当てはまります』
「えっと、加護についてはわかったのですが、私はそもそも妖精という種族に聞き覚えがありません」
すると面々は驚いたように目を開く。
『その年で、妖精のことを知らないとな?奇怪なことよの、人間とは小さなころから妖精のことを聞かされるのではなかったのか?』
そう聞かれると、私は困ってしまう。
なぜなら私はここに来たばかりで何も知らないのだから。
「………よくわからないんです。どうも小さい頃の記憶が曖昧になっていまして………。実は私、もともとはここの住人じゃなかったんです」
私は相手がどうとらえてくれてもいいように含みのある言い方をとった。
妖精王達は納得したように顔を見合わせる。
『なるほどな、人間の子供にしては随分とにつかわないしゃべり方の小娘だと思ったが、迷い人か』
「迷い人?」
それはどういうものなのだろうか?
するとルスピニーは楽しそうな声で返答してくれた。
『迷い人はな、こことは違う場所…つまり異世界から来た空間の旅人のことよ。妾達は長生きじゃが、迷い人は珍しくての、滅多に会えん代物じゃ。サラ、お前中身は成人してるだろぅ?』
うぅ、バレてる…。
「…迷い人って、ーーー不味いですか?」
『特には。でも隠していた方がいいと思うわ。あなたの家族にとっては本当の娘じゃなくなったんだから、都合が悪いでしょう?』
―――本当の娘じゃない…。
確かにそうなのだ、私は彼らを騙していることになる。
このことに関してはわからないことが多すぎる。
一番は本当のサラはどこに行ってしまったのか、だ。
最悪の場合、すでに手遅れだと思う。
私が私になるのに、もしサラが死んでしまったのなら、私は人を殺したことになるのだ。
人を殺したことがないわけではないので、折り合いがついている方ではあるが、それでも何も罪のない小さい子供を殺してしまったのでは生きるのに気が引ける。
かといって死ぬのは余計にダメなんだ、解決しようのないものがある。
『…辛いか?』
「―――辛いですよ、逃げられないから」
逃げられない、死んでしまった人も、その周囲も。
今も前も、私はその当事者だ。
私の手はもう真っ赤に染まっている。
「でも、生きなきゃいけない。罪は償わなければならない。でも、罪の償い方なんて私は知らない。だったら」
法があって罪の償い方があればよかったのだろうが、生憎、殺人の罪に適する法は王族のみとなっている。
『見つければいい、か。…いいだろう、汝の答えは決まっているようだ。ならば我らは汝に手を貸そう、我らの懐かしき旧友の子』
ルリミアの合図で妖精王達は一斉に光を放ち始める。
そしてその光のすべてが私に集まり、あまりのまぶしさに思わず目を固く結んだ。
一瞬の出来事で瞬きの間にその光は消え、目の前にいた妖精王達はすでにおらず、森の入り口に戻っていた。
―――転移魔法!?
あの一瞬でこれができるとは妖精王とは相当魔法に造詣が深いらしい。
驚きのあまりポカーンと森の奥を見ていると、兄と警備隊の兵士が数名ガシャガシャと騒音を立ててやってきた。
どうやら私の迷子で捜索隊が編成されたらしい。
「おーいい!!!サァラァーーー!!!」
特にうるさいのはお兄様だ、喧しすぎて興ざめしてしまう。
「は~い」
「サァラァッッっ!!!」
「うわわっと」
音速並みのスピードで走ってきては飛び込んでくるので、危険を感じた私はお兄様を避けた。
ドサッと勢いよくすっこんだお兄様の後姿はものすごくダサい…いや、痛そうだ。
それでもすぐに起き上がり、改めて私に抱き着いてくる。
先ほどの痛みのせいか、私のせいかお兄様の目は涙ぐんでいた。
「サァラ、無事だったんだね。本当によかったよ!」
その言葉に私はチクリとした痛みと、じんわりと胸に響くような喜びを覚える。
「…うん、にいに、ごめんなさい。探してくれてありがとう」
―――本当にごめんね、ありがとう。
告げられない謝罪と感謝を心の中でつぶやいたのだった。
「え、面白いことですか?そうですね、闇の妖精王様はなにがお好きですか?」
『それ、言いにくかろう。妾はお前が気に入った、ルスピニーと呼ぶのを許してやろう。様付けはなしだ』
すると木の妖精王も乗っかるように言う。
『じゃあ私のことはプロンって読んでね、サラちゃん』
「ルスピニーさんとプロンさんですか?」
二人?は満足したように頷く。
『お前の生活、なんでもいい話してみよ』
私は悩んだ末、ここ数日の話をすることにした。
思いの外評判は良く、二人は興味津々で話を聞いていた。
『なるほど、最近の子は面白いわねぇ。そうだわぁ!君に私の加護をあげるわ、そうしたら私生活が自由に覗けるようになるもの』
え!?
『それはいい、妾もこやつに加護をやろうではないか』
ちょっと、勝手に話が進んでいくんだけど、良いのかこれ。
というか私生活が覗ける?
「か、加護って…?」
『ほう、加護を知らんのか。加護ってんなぁお気に入りの証じゃい。妖精王の加護なんて神の加護くらい珍しいもんじゃぞ、感謝せい』
は?
私はよく理解できずに呆けて見せた。
『ソォー、それは説明が足りないと思いますよ』
エアゥはクスクスと笑いながら丁寧に付けたしを行ってくれる。
『では、僕から補足説明を少し。一般的に加護と呼ばれるものは生まれたときに神々から授かるものとされています。それ以外では力は弱いですが、他の生き物からも得ることが可能です。加護は種族によって異なり、我々妖精の加護は魔法に関しての加護が多いです。中でも王と呼ばれるものの加護はずば抜けており、我々の加護はそれに当てはまります』
「えっと、加護についてはわかったのですが、私はそもそも妖精という種族に聞き覚えがありません」
すると面々は驚いたように目を開く。
『その年で、妖精のことを知らないとな?奇怪なことよの、人間とは小さなころから妖精のことを聞かされるのではなかったのか?』
そう聞かれると、私は困ってしまう。
なぜなら私はここに来たばかりで何も知らないのだから。
「………よくわからないんです。どうも小さい頃の記憶が曖昧になっていまして………。実は私、もともとはここの住人じゃなかったんです」
私は相手がどうとらえてくれてもいいように含みのある言い方をとった。
妖精王達は納得したように顔を見合わせる。
『なるほどな、人間の子供にしては随分とにつかわないしゃべり方の小娘だと思ったが、迷い人か』
「迷い人?」
それはどういうものなのだろうか?
するとルスピニーは楽しそうな声で返答してくれた。
『迷い人はな、こことは違う場所…つまり異世界から来た空間の旅人のことよ。妾達は長生きじゃが、迷い人は珍しくての、滅多に会えん代物じゃ。サラ、お前中身は成人してるだろぅ?』
うぅ、バレてる…。
「…迷い人って、ーーー不味いですか?」
『特には。でも隠していた方がいいと思うわ。あなたの家族にとっては本当の娘じゃなくなったんだから、都合が悪いでしょう?』
―――本当の娘じゃない…。
確かにそうなのだ、私は彼らを騙していることになる。
このことに関してはわからないことが多すぎる。
一番は本当のサラはどこに行ってしまったのか、だ。
最悪の場合、すでに手遅れだと思う。
私が私になるのに、もしサラが死んでしまったのなら、私は人を殺したことになるのだ。
人を殺したことがないわけではないので、折り合いがついている方ではあるが、それでも何も罪のない小さい子供を殺してしまったのでは生きるのに気が引ける。
かといって死ぬのは余計にダメなんだ、解決しようのないものがある。
『…辛いか?』
「―――辛いですよ、逃げられないから」
逃げられない、死んでしまった人も、その周囲も。
今も前も、私はその当事者だ。
私の手はもう真っ赤に染まっている。
「でも、生きなきゃいけない。罪は償わなければならない。でも、罪の償い方なんて私は知らない。だったら」
法があって罪の償い方があればよかったのだろうが、生憎、殺人の罪に適する法は王族のみとなっている。
『見つければいい、か。…いいだろう、汝の答えは決まっているようだ。ならば我らは汝に手を貸そう、我らの懐かしき旧友の子』
ルリミアの合図で妖精王達は一斉に光を放ち始める。
そしてその光のすべてが私に集まり、あまりのまぶしさに思わず目を固く結んだ。
一瞬の出来事で瞬きの間にその光は消え、目の前にいた妖精王達はすでにおらず、森の入り口に戻っていた。
―――転移魔法!?
あの一瞬でこれができるとは妖精王とは相当魔法に造詣が深いらしい。
驚きのあまりポカーンと森の奥を見ていると、兄と警備隊の兵士が数名ガシャガシャと騒音を立ててやってきた。
どうやら私の迷子で捜索隊が編成されたらしい。
「おーいい!!!サァラァーーー!!!」
特にうるさいのはお兄様だ、喧しすぎて興ざめしてしまう。
「は~い」
「サァラァッッっ!!!」
「うわわっと」
音速並みのスピードで走ってきては飛び込んでくるので、危険を感じた私はお兄様を避けた。
ドサッと勢いよくすっこんだお兄様の後姿はものすごくダサい…いや、痛そうだ。
それでもすぐに起き上がり、改めて私に抱き着いてくる。
先ほどの痛みのせいか、私のせいかお兄様の目は涙ぐんでいた。
「サァラ、無事だったんだね。本当によかったよ!」
その言葉に私はチクリとした痛みと、じんわりと胸に響くような喜びを覚える。
「…うん、にいに、ごめんなさい。探してくれてありがとう」
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告げられない謝罪と感謝を心の中でつぶやいたのだった。
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