その悪役令嬢、今日から世界を救う勇者になる

ごーぐる

文字の大きさ
43 / 165
幼少期編

13 妖精

しおりを挟む
『ほう、人間の小娘か』
声をかけられて見上げてみれば先程まで居なかった女性が一人いた。
「うわぁ…」
黒髪、黒目の見目麗しいその女性はとても面白がったような顔で私を覗きこんでいる。
その存在感たるや、金よりも輝く、圧倒されるような美しさだ。
誰もが惚けるこの状況で問題があるとするならばこの距離感だろうか。
私の目の前には絹のような服しかない。
つまり、私と女性の足がくっつくほど近くにあるということだ。
近い、近すぎる…。
もうゼロ距離といっても過言ではないような距離だ。
「あの、なぜ私はここに連れてこられたのでしょうか?」
『いや、おぬしを連れてきたのは妾じゃないぞ』
『私よ、私。私がリバートの従者に頼んで運ばせたの』
私は声の持ち主を見るために顔を大きく傾けた。
すると目の前の女性くらい美しい女性と男性が六人いた。
皆、優雅に椅子に座りお茶を楽しんでいる様子だ。
視線だけがこちらを向いている。
『また勝手なことをして、会議中だろ。慎めよ、プロン。ていうか俺の従者を勝手に使うな!』
『だってぇ、おちびちゃん達が聞こえる子、見つけたって面白そうに騒いでたんだものぉ』
えぇっと、要するに私は面白半分でここに連れ去られたんですね、はい。
なんじゃこの状況は。
すると今度は白金の髪の王子様のような男性が話しかけてくる。
『すまんな人間の小娘。我らは妖精王、妖精の王だ』
いや、まんまじゃん。
というか…。
「よう…せい?」
やけにファンタジーな言葉だ。
『おお、本当に声が聞こえてるんだな。久しぶりじゃないか?』
『そうだねぇ、久しぶりだよねぇ。ほらほら君、こっちにおいで?』
私は私を拐った緑の女性の隣に座る。
いつのまにやら椅子もカップも一つずつ増えていた。
意味が分からないが、どうしたらいいものかもよくわからないので素直に言うことを聞くことにした。
机の上にはお菓子やら軽食やら美味しそうなものが置いてあるが手が出せない。
うう、お腹すいた。
「えっと、その妖精の王様が私なんかになにようでしょうか?」
『お前は随分と歳ににつかわない話し方をするな。まぁその分意志疎通も楽だから構いはしないが』
ぐさっっと弱点を刺された気がした、しょうがないでしょ、中身と外見の年齢が合ってないんだから。
『おぬしは妾達が見えるか?』
私は返事をするかわりにこくりとうなずいた。
『そうか、ますます面白いな』
『まあしょうがないな。自己紹介からしよう。俺は風の妖精王リバート。情報を伝えるのが俺の役目』
リバートは先程から緑色の女性に怒っている長身な男性だ。
『ふふふ、じゃあ次は私ね。私は森の妖精王プロン。森を守るのが仕事よ』
『じゃあ、次はわしだ。わしは地の妖精王ソォー。安らぎが我が性分』
ソォーは見た目が少女なのにしゃべり方がおじいさん臭い。
でも声のトーンが高いのでそれはそれで可愛い。
『じゃあわたくしも自己紹介よ。私は火の妖精王フェル、よろしくね』
フェルは美しいもあるがカッコいいというのもある。
燃え盛るような赤髪がさらさらと風に流れて炎のようだ。
『はい、僕も自己紹介。水の妖精王、エアゥだよ。以後お見知りおきを』
『じゃ、妾もな。妾は闇の妖精王ルスピニーじゃ。よろしゅうのぉ』
ルスピニーはなにとは言わないがこの中で一番大きい果実を持っている。
夜の女王こそ彼女にふさわしいだろう。
『では最後に我が。我は妖精王筆頭、光の妖精王ルリミア。さあ汝の名はなんぞ?』
「私はニコラス公爵長女サラ・デューク・ニコラスです。よろしくお願い致します、妖精王様方」
なが~い自己紹介大会が終わってやっと本題に入れそうだ。
私は緊張で高ぶった心臓をふぅっと落ち着かせて人間の侯爵令嬢としてしっかりと前を見据えた。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!

ぽんちゃん
恋愛
 ――仕事で疲れて会えない。  十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。  記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。  そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

処理中です...