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幼少期編
25 貴族のお友だちってめんどくさい
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机の上には山盛りのお菓子たちが綺麗に並べられて、明らかに着色されているケーキがあった。
その周りには子供たちがたくさんいたはずが、私たちが向かっていくとすっと引いてどこかにいってしまう。
子供にも対応される身分社会ってどうなの……。
疲れる気しかしない。
それよりも私には目の前のケーキが気になった。
「お兄様、あれはケーキですか?」
「うん?そうだよ、ケーキ。そういえばサラは食べたことなかったね。俺はあんまり好きじゃないけど……食べてみるかい?」
わーい。
目の前のケーキは青々しく、食べ物としてはどうかと思う色をしているが、異世界初めてのケーキだ、食べないわけにはいかない。
お兄様は一口ほどの大きさでケーキを切って私に手渡す。
「ありがとう、お兄様」
受け渡された私は喜々としてフォークでケーキを食べた。
「………」
なんだこれは………。
口の中のはただ甘さだけが広がり、胃に殴りかかるよう。
頭が悲鳴をあげて頭痛がしてきた。
これは見た目通り……いや、見た目以上に不味い。
「あんまり、美味しくないだろう?」
あんまりどころか全然美味しくないです、お兄様。
私はあまりの不味さのあまりに絶句した。
「ふふふ……」
私は笑って誤魔化す。
ーーーちょっとこれはもう一度食事問題を検討してみなければなるまい、そう心に決めたサラだった。
「ちょっと失礼します」
動けない私に……いや、お兄様に男の子から声がかかった。
「はじめまして、エドモンド侯爵家長男、エド・アール・エドモンドです。……そのケーキ、美味しいですか?」
「いいえ、全然」
私はキッパリとそう言った、これを作った料理人には忍びないけどね。
「やっぱり、美味しくないんだね」
兄はぼそりと呟くが表面上、その表情を見せない。
「でも、甘味ですから。珍しいことには変わりませんので」
「なるほどね」
「申し遅れました。お兄様」
お前が先に言え、と兄を催促する。
「ああ、ニコラス公爵家、タファ・デューク・ニコラスだ」
「同じく、サラ・デューク・ニコラスですわ。今日のようなよき日にエドモンド様にお会いできましたこと、大変嬉しく思います」
「ご丁寧にどうも、よろしければお友だちになってくださいませんか?」
エドモンドが手を出す。
これは女性にやる所謂手の甲への口づけというやつだ。
私は内心狼狽えたが公爵令嬢として隙は見せられないので、お母様からのスパルタ教育を生かし、なんとか表情を変えずに仮面を被っている。
多分、お兄様のこの不機嫌そうな表情を見て、取り入るなら私からの方がいいと考えたんだろうが……。
それは一向に構わないのだけれども、心臓に悪いからやめてほしい。
しかし、このままの訳にはいかない。
挨拶を断るなんて失礼なことなのだ、ましてや相手はエドモンド侯爵令息。
三侯爵のうちの一つであるその家は影響力が強い。
いくら公爵家ともいえども侮れない相手だ。
粗相をしてはいけない。
私はカカシ、私はカカシ……。
そう念じながら手を置こうとしたら。
「駄目だ」
冷たい瞳のまま……いや、さっきよりさらに凍えるような、殺気すら感じる瞳でエドモンドを睨み付けている。
その声はまだ変声前の子供の声なはずなのに、やけに低く聞こえる。
お、お兄様が怒ってるっ?!
天変地異だ、そう思った。
だってお兄様の普段と比べるとあり得ない光景だから。
「子供の挨拶だからといって、こんなことをされれば困る。俺の妹に触るな」
お兄様は私の手を引いてーーーから私を隠すようにして前にたった。
「お、お兄様?」
「……行くぞ」
ーーーはポカーンとして手を出したまま動かない。
あまりの失礼な兄の態度に私は後から込み上げてくるものがあった。
「……お兄様、離してくださいませ」
どこかに連れていこうとする手を笑顔で振りほどき、エドモンドの前に出る。
お兄様は私の行動が理解出来なかったらしく少し固まった。
「申し訳ありませんわ、エドモンド様。兄に代わって謝罪いたします。どうか許してやってくださませ」
ドレスの裾を掴み、優雅に礼をしてバカ兄の手を握ってお母様のところへと歩く。
うん、視線が痛い。
通りかかるたびに驚きの視線が私たちに刺さる。
お母様は案の定一部始終を見ていてお怒りの様子だったので、早々に兄を差し出して私は逃走した。
その周りには子供たちがたくさんいたはずが、私たちが向かっていくとすっと引いてどこかにいってしまう。
子供にも対応される身分社会ってどうなの……。
疲れる気しかしない。
それよりも私には目の前のケーキが気になった。
「お兄様、あれはケーキですか?」
「うん?そうだよ、ケーキ。そういえばサラは食べたことなかったね。俺はあんまり好きじゃないけど……食べてみるかい?」
わーい。
目の前のケーキは青々しく、食べ物としてはどうかと思う色をしているが、異世界初めてのケーキだ、食べないわけにはいかない。
お兄様は一口ほどの大きさでケーキを切って私に手渡す。
「ありがとう、お兄様」
受け渡された私は喜々としてフォークでケーキを食べた。
「………」
なんだこれは………。
口の中のはただ甘さだけが広がり、胃に殴りかかるよう。
頭が悲鳴をあげて頭痛がしてきた。
これは見た目通り……いや、見た目以上に不味い。
「あんまり、美味しくないだろう?」
あんまりどころか全然美味しくないです、お兄様。
私はあまりの不味さのあまりに絶句した。
「ふふふ……」
私は笑って誤魔化す。
ーーーちょっとこれはもう一度食事問題を検討してみなければなるまい、そう心に決めたサラだった。
「ちょっと失礼します」
動けない私に……いや、お兄様に男の子から声がかかった。
「はじめまして、エドモンド侯爵家長男、エド・アール・エドモンドです。……そのケーキ、美味しいですか?」
「いいえ、全然」
私はキッパリとそう言った、これを作った料理人には忍びないけどね。
「やっぱり、美味しくないんだね」
兄はぼそりと呟くが表面上、その表情を見せない。
「でも、甘味ですから。珍しいことには変わりませんので」
「なるほどね」
「申し遅れました。お兄様」
お前が先に言え、と兄を催促する。
「ああ、ニコラス公爵家、タファ・デューク・ニコラスだ」
「同じく、サラ・デューク・ニコラスですわ。今日のようなよき日にエドモンド様にお会いできましたこと、大変嬉しく思います」
「ご丁寧にどうも、よろしければお友だちになってくださいませんか?」
エドモンドが手を出す。
これは女性にやる所謂手の甲への口づけというやつだ。
私は内心狼狽えたが公爵令嬢として隙は見せられないので、お母様からのスパルタ教育を生かし、なんとか表情を変えずに仮面を被っている。
多分、お兄様のこの不機嫌そうな表情を見て、取り入るなら私からの方がいいと考えたんだろうが……。
それは一向に構わないのだけれども、心臓に悪いからやめてほしい。
しかし、このままの訳にはいかない。
挨拶を断るなんて失礼なことなのだ、ましてや相手はエドモンド侯爵令息。
三侯爵のうちの一つであるその家は影響力が強い。
いくら公爵家ともいえども侮れない相手だ。
粗相をしてはいけない。
私はカカシ、私はカカシ……。
そう念じながら手を置こうとしたら。
「駄目だ」
冷たい瞳のまま……いや、さっきよりさらに凍えるような、殺気すら感じる瞳でエドモンドを睨み付けている。
その声はまだ変声前の子供の声なはずなのに、やけに低く聞こえる。
お、お兄様が怒ってるっ?!
天変地異だ、そう思った。
だってお兄様の普段と比べるとあり得ない光景だから。
「子供の挨拶だからといって、こんなことをされれば困る。俺の妹に触るな」
お兄様は私の手を引いてーーーから私を隠すようにして前にたった。
「お、お兄様?」
「……行くぞ」
ーーーはポカーンとして手を出したまま動かない。
あまりの失礼な兄の態度に私は後から込み上げてくるものがあった。
「……お兄様、離してくださいませ」
どこかに連れていこうとする手を笑顔で振りほどき、エドモンドの前に出る。
お兄様は私の行動が理解出来なかったらしく少し固まった。
「申し訳ありませんわ、エドモンド様。兄に代わって謝罪いたします。どうか許してやってくださませ」
ドレスの裾を掴み、優雅に礼をしてバカ兄の手を握ってお母様のところへと歩く。
うん、視線が痛い。
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