のほほん真勇者録 アルファポリス版

ごーぐる

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幼少期

魔王復活?

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村を出て一週間もせずに街に付いた一行はいきなりギルドには向かわず、一日休息をとることにした。
「やった、お買い物行く!アイリーン、ユリカ、一緒に行く!」
「えっ、私もですか?」
「うん。」
いやそれはちょっと行きたくな…、ごほん。
「なにか必要なものとかあるんですか?」
「いや、特にないわよ?特に何もなくても見てるだけでも楽しいじゃない。」
それはあんまり納得できないけれど、どうせまだ生活に必要なものとかそろってないしと思って言われるがままに買い物についていくことになった。
それはそれは楽しそうにどこに行くか話し合いを始めた女性陣に対して、いつもは何かしら言ってくる男性陣がやけに静かだったので気になってうかがってみると、なにか深刻そうに話し合っていた。
これは話しかけない方が賢明…と思ってそのまま声をかけずにアイリーンたちと宿を出て買い物へと向かった。
その後は、リズが買い食いをしすぎてアイリーンに怒られたり、アイリーンの着せ替え人形にされたり、本屋によってリズに魔法の本を買ってもらったりした。
今日の買い物はこの前の買い物と違ってわいわいできてとっても楽しかった。
宿に戻るころには晩御飯時になっていてご飯をみんなで食べた後すぐに部屋に戻って本を読んだ。
そこには採取クエストの時に戦った?デュラハンも載っていてとても面白かった。
「また行きたいなぁ…。」
私は本を閉じてぎゅうっと抱きしめた。

「なぁ、それ本当なのか?」
俺とタローはアイリーンたちが買い物に行ったのを見計らって話し合いを始めた。
「あぁ、俺もそう思う。」
なんせこれから話し合うことは絶対にユリカの耳に入れてはならないものだから。
「魔王って…。まだ倒されたばかりだろ?復活するのは早くて100年後だって…。」
「ああ……。なんだがな、まぁまだ噂の段階だ。確信があるわけじゃなくてな。王家に仕える古くからの占い師の家がそう予言してるらしい、しかもみんなだ。それでも勘違いかもしれないと、他の占い師にも占わせたらしいがみんな口々に『魔王が復活した』というらしくてな。」
タローは頭を掻く。
「それで、いよいよ怪しくなってきたから俺たちに依頼ってわけか…。sクラスの冒険者たちは?」
ジェドはしかめっ面になる。
「それが皆いないらしい。ドラゴンが出たり、魔物絡みの災害が相次いでて対処に追われてると。」
「まじかぁ…。Aランク冒険者がパーティー組んでるの俺たちだけだからなあ。でもどうするよ?前ならまだしも今はユリカがいるだろ、あいつはどうするんだ?まだ噂とはいえ、もし本当に魔王が復活したとしていたら……。」
俺は手紙をタローに差し出してにやりと笑う。
「それなら考えがある、実行は3日後だ。」
手紙を受けとったタローはその笑みに嫌な予感を感じながらも中身を取り出し読んだ。
そして予感的中とばかりに苦渋面になり、ユリカに同情を隠し切れなかった。

みんなで買い物に行った日から3日後。
私たちはその間たくさんのクエストを消化していった。
それはもう忙しく、慣れていない私はへとへとになってしまった。
おかげでたまっていたクエストはすべて終わり、私は疲れ切った体を少しでも安ませたくて机にぐでーんと伏した。
「お疲れ様、どう?このクエストラッシュは?」
「つ、疲れた…。後、自分の体力のなさを思い知らされました。アイリーンさんたち体力お化けですか……。」
その声にメンバーはくすくすと笑う。
「まぁ、慣れだよね、慣れ。ユリカはまだ若いし、鍛えとけば自然と体力も一緒についてくるよ。」
ぐぬう、まだ幼い自分の肉体が憎たらしい……。
ああ、早く大人になりたいなー。
久々にそう思った精神年齢18歳のユリカであった。
「この後なんだが、ユリカに話がある。」
と切り出したのはオレンジジュースを飲むジェド。
ちなみに、砂糖なしの100パーセント果汁だ。
「実は後一つクエストが残ってるんだが、あいにくお前は連れてけなくてな。」
「内容を聞いても?」
「駄目だ。」
酷いとは思うが、ユリカはまだ6歳(肉体的に)。
知らない方が良いことなんて沢山ある。
まあ要するにそのクエストは難しいもので、ユリカが行っても足手まといになるのだろう。
彼らはそれを直接言ってきたので驚いた。
普通は等回しに言うものだから。
それだけ私は彼らから信頼を得ているのだろう、そう思っとかないと泣きそうだ。
私は顔を竦めた。
「わかった、大人しく待ってる。」
渋ったところで連れてけないものは連れてけないのだ、ここで彼らを困らせてもただ迷惑なだけ。
子供の私ならば、絶対文句を言ったが中身の私は既に高校を卒業している。
ほとんど大人なのだ、私にだってその意地くらい持ち合わせている。
アイリーンは私の頭を撫でて抱き寄せた。
「ありがどう、ジェドはああいうけど本当は言いたいんだよ?でも危ないから、ユリカちゃんを危険な目に会わせたくないの。ごめんね。」
リズは目がうるうるとしている、おい、悲しいのは私だぞこら。
「大丈夫、解ってます。それよりも絶対に無事で帰ってきてくださいね?」
私はがっちりホールドされて動けなかったので、首だけを動かして上目使いで言った。
すると、もっと強く抱き締められて「ユリカ、いい子すぎ!!!」とリズが叫びながら駆け寄ってきてなでなで攻撃をしてくる。
くっ、苦しい…。
なんだろう、こういうのを愛が重いって言うのかな…。
「それでね?たぶん、かなり時間がかかると思うんだよ。場所もかなり遠くてさ。その間ユリカ修行したいだろ?」
私はうんうんと頷きたかったが、がっちりホールドで動けなくて何も出来なかった。
でもちゃんと返答は伝わったようで、タローは呆れながらもそのまま話を進める。
「俺たちの知り合いっていうかジェドとリズの師匠なんだけど、その人に頼んで俺たちが帰ってくるまで稽古付けてもらえるようにしたから。---行く?とはいってももう拒否権ないだろうけど。」
なんと、師匠の師匠か。
まあ、ジェドの剣は明らかに一人で手に入れられるようなものじゃないから、居るだろうなとは思っていたけども。
ユリカはやっとの思いでアイリーンたちから解放されそさくさとジェドたちの元へ駆け寄る。
「どんな方なんですか?」
そしたらタローは返答に困ったようでうーんと唸っている。
うん、なんだ?そんな返答に困る人なのか?
そんなタローを見かねてジェドが助け船を出す。
「その、なんだ…。とてもユニークな人でな?言い表せないものがあるんだよ、うん。」
せっかくの助け船だが、なんにも伝わってこない悲しさがあった。
まあ、いいか。
直接会えば分かることだし。
もう可哀想なので突っ込まないことにして話を変えることにした。
「で、今からその人の所に向かうんですか?」
ジェドたちは急に話が変わったのに戸惑いつつもちょっとほっとしたようだった。
「あぁ、それなら…。」
あっちから勝手に来るだろと、言いかけたところでギルドの扉が壊れそうなほど大きな音をたてて一人の女性がやって来る。
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