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少女編
門
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あれから、村の人たちに感謝された私は、お礼にと手にいっぱいの野菜やら肉やらを貰った。
本当はお金をと言われたのだが、私のただのお節介だし、必要ないよなと断った結果がこれだ。
村人たちは是非にと言って譲らなかったので、じゃあご厚意に甘えてともらい受けた。
これでしばらくは食料に困らないのでお金よりも非常にありがたい。
村を出てしばらく歩き、見えなくなってしまった頃に、走るために、食料たちをアイテムボックスへと送った。
アイテムボックスである異空間は時間の概念がないらしく、ものの状態が止まるため冷蔵庫代わりには丁度いい、というか冷蔵庫より性能がいい。
存在感がないため、ふとした瞬間に忘れそうになるが、便利だ。
村から走り始めて大体六時間ほど。
休憩を交えつつゆったりと走ったため百五十キロしか進んでいなかった。
もうすっかり昼時も過ぎてしまったが、ここで昼食にすることに。
私はわりかし大きな木の下に荷物を取り出して置き、料理の準備を始めた。
なにげに、自分一人だけで料理を作るのは初めてである。
メニューは簡単に野菜スープと焼き魚。
魚は通りがけに川をたまたま見つけたので数匹捕獲して、アイテムボックスに保管してある。
スープはコンソメなんてないし、塩味。
焼き魚も塩味だが、おいしかった。
今まで数十人ぶん作っていたので、一人ぶんはなかなか難しく、作りすぎてしまったため、残りのスープは保管して、夕食にすることに。
食べ終わった私は少し休憩してからまた走り始めた。
今日は近くにある村や町には入らないで、野宿をすると決めていた。
なんだか、サバイバルみたいでワクワクするじゃないか、前からいちどだやってみたかったのだ。
しかし、キュリアスのところの生活がサバイバルに近かったので、たいして変わらなく、安眠。
なにか期待していたものと違うと思ったものの、すぐに切り替えてまた走る。
そうこうして、三日後。
私はようやく王都の目の前までやって来た。
街を囲う大きな壁と、入口近くに列をなす馬車や通行人が目に留まる。
門は大きいのに草一つ生えておらず、手が行き届いている。
一つの石が小さいのに、その佇まいはどっしりとしていてカッコいい。
通行人たちのほとんどは、冒険者や商人だ。
冒険者は依頼に、商人は取引や行商にでも行っていたのだろうか。
おそらく、関所での入場確認を行っているのだろう。
困ったことに私は通行許可書なようなものを持ってはいない。
「どうしようか……。まぁ、なるようになるかな。案外通れるかもしれないし」
そうして、列の最後尾へと並び、時が来るのを大人しく待った。
かなり時間がかかり、関所にたどり着いた頃には夕方となりかけていた。
私は門がしまるギリギリの最後の通行者だったようで、後ろには誰もいない。
門にたたずむ鎧の騎士たちは持っている槍でバッテン印を作って、簡単には通さないと言っているようだ。
実際は身長的な問題でその合間を難なく通れそうなんだけどね。
門番たちはどうやら私が一人でいることに戸惑っているらしい。
ーーーそいういえば、十歳なんだわ私。
「………ええっと、君は両親と一緒じゃないのかな?」
あの村の若者と同じ対応だ。
ちょっと飽きてきたな。
「はい、いませんので。私一人です。門を通してもらえますか?」
「そ、そうか。一人か………」
あせあせとしているが、扱いに困るのだろうなぁ。
しょうがないので、私から話を切り出していく。
「初めて王都へと来たのですが、もしかして通行許可書みたいなものが必要ですか?」
「ーーーああ、身分証明書を提示してくれ」
身分証明書………、心当たりはない。
もしかしたら、国民である証明書的なもので全員が持っているものなのだろうか………。
「すみませんが、心当たりがありません。他に方法はないですか?」
「ーーーもしかして、村から出たばかりとかか?」
ーーーうーん。
「似たようなものですね」
嘘は言ってないよ。
正確には村みたいにこの世界の常識がわからない場所出身なだけだし。
門番の片方が「そうか」と言って門の方へと走っていった。
あの装備は重くないのだろうか。
なぜ身体強化魔法を使わないのだろうか。
そういう疑問がチラッと頭の端に窺った。
戻ってきた門番の手には占い師が使うような水晶が乗っていた。
「では、今から身分証明書を作ろう。手をここに」
私は指示された通りに右手を水晶の上に置いた。
ーーー占いでもするのかなぁ。
手を置いたもののしばらくたっても水晶に変化は起こらない。
「よっし、大丈夫だな。すまないな、時間をとらせちまって。ほい、これをやろう」
そう言ってくれたのはナンバーの入った金属のようなカード。
その複雑な数字入りのカードはマイナンバーを思いだ出せるものがあった。
「それが、仮の身分証明書だ。今はそれで入れてやるが、壁の内に入ったら正式なのを作れよ。正式な身分証明書は協会で作れる。今日はもう遅いから明日にでも行けよ」
「ありがとうございます」
私は親切な門番のおじさんにお礼を言って駆け足で門をくぐった。
本当はお金をと言われたのだが、私のただのお節介だし、必要ないよなと断った結果がこれだ。
村人たちは是非にと言って譲らなかったので、じゃあご厚意に甘えてともらい受けた。
これでしばらくは食料に困らないのでお金よりも非常にありがたい。
村を出てしばらく歩き、見えなくなってしまった頃に、走るために、食料たちをアイテムボックスへと送った。
アイテムボックスである異空間は時間の概念がないらしく、ものの状態が止まるため冷蔵庫代わりには丁度いい、というか冷蔵庫より性能がいい。
存在感がないため、ふとした瞬間に忘れそうになるが、便利だ。
村から走り始めて大体六時間ほど。
休憩を交えつつゆったりと走ったため百五十キロしか進んでいなかった。
もうすっかり昼時も過ぎてしまったが、ここで昼食にすることに。
私はわりかし大きな木の下に荷物を取り出して置き、料理の準備を始めた。
なにげに、自分一人だけで料理を作るのは初めてである。
メニューは簡単に野菜スープと焼き魚。
魚は通りがけに川をたまたま見つけたので数匹捕獲して、アイテムボックスに保管してある。
スープはコンソメなんてないし、塩味。
焼き魚も塩味だが、おいしかった。
今まで数十人ぶん作っていたので、一人ぶんはなかなか難しく、作りすぎてしまったため、残りのスープは保管して、夕食にすることに。
食べ終わった私は少し休憩してからまた走り始めた。
今日は近くにある村や町には入らないで、野宿をすると決めていた。
なんだか、サバイバルみたいでワクワクするじゃないか、前からいちどだやってみたかったのだ。
しかし、キュリアスのところの生活がサバイバルに近かったので、たいして変わらなく、安眠。
なにか期待していたものと違うと思ったものの、すぐに切り替えてまた走る。
そうこうして、三日後。
私はようやく王都の目の前までやって来た。
街を囲う大きな壁と、入口近くに列をなす馬車や通行人が目に留まる。
門は大きいのに草一つ生えておらず、手が行き届いている。
一つの石が小さいのに、その佇まいはどっしりとしていてカッコいい。
通行人たちのほとんどは、冒険者や商人だ。
冒険者は依頼に、商人は取引や行商にでも行っていたのだろうか。
おそらく、関所での入場確認を行っているのだろう。
困ったことに私は通行許可書なようなものを持ってはいない。
「どうしようか……。まぁ、なるようになるかな。案外通れるかもしれないし」
そうして、列の最後尾へと並び、時が来るのを大人しく待った。
かなり時間がかかり、関所にたどり着いた頃には夕方となりかけていた。
私は門がしまるギリギリの最後の通行者だったようで、後ろには誰もいない。
門にたたずむ鎧の騎士たちは持っている槍でバッテン印を作って、簡単には通さないと言っているようだ。
実際は身長的な問題でその合間を難なく通れそうなんだけどね。
門番たちはどうやら私が一人でいることに戸惑っているらしい。
ーーーそいういえば、十歳なんだわ私。
「………ええっと、君は両親と一緒じゃないのかな?」
あの村の若者と同じ対応だ。
ちょっと飽きてきたな。
「はい、いませんので。私一人です。門を通してもらえますか?」
「そ、そうか。一人か………」
あせあせとしているが、扱いに困るのだろうなぁ。
しょうがないので、私から話を切り出していく。
「初めて王都へと来たのですが、もしかして通行許可書みたいなものが必要ですか?」
「ーーーああ、身分証明書を提示してくれ」
身分証明書………、心当たりはない。
もしかしたら、国民である証明書的なもので全員が持っているものなのだろうか………。
「すみませんが、心当たりがありません。他に方法はないですか?」
「ーーーもしかして、村から出たばかりとかか?」
ーーーうーん。
「似たようなものですね」
嘘は言ってないよ。
正確には村みたいにこの世界の常識がわからない場所出身なだけだし。
門番の片方が「そうか」と言って門の方へと走っていった。
あの装備は重くないのだろうか。
なぜ身体強化魔法を使わないのだろうか。
そういう疑問がチラッと頭の端に窺った。
戻ってきた門番の手には占い師が使うような水晶が乗っていた。
「では、今から身分証明書を作ろう。手をここに」
私は指示された通りに右手を水晶の上に置いた。
ーーー占いでもするのかなぁ。
手を置いたもののしばらくたっても水晶に変化は起こらない。
「よっし、大丈夫だな。すまないな、時間をとらせちまって。ほい、これをやろう」
そう言ってくれたのはナンバーの入った金属のようなカード。
その複雑な数字入りのカードはマイナンバーを思いだ出せるものがあった。
「それが、仮の身分証明書だ。今はそれで入れてやるが、壁の内に入ったら正式なのを作れよ。正式な身分証明書は協会で作れる。今日はもう遅いから明日にでも行けよ」
「ありがとうございます」
私は親切な門番のおじさんにお礼を言って駆け足で門をくぐった。
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