のほほん真勇者録 アルファポリス版

ごーぐる

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少女編

G

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お婆さんとの昼食はほがらかとしたものでとても楽しかった。
相変わらず、日本を感じさせない料理だったが、不思議とおばあちゃんの味がした。

「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末様でした」

お婆さんは机の上に残った、木のお皿を片付けようとキッチンに運び込んだ。
「あ、手伝いますよ!お皿洗いですよね?」

ここでは食べ終わったお皿は布で拭いて綺麗にするのが一般的だ。
それもいいのだが、私的には衛生面が気になるろいうか、水洗いしたい気持ちが強い。

『ウィンド』
まずは風魔法で食器を丁寧に持ち上げる。

『ウォーターボール』
そして、水魔法で洗浄。

『ドライ』
風と火の混合魔法で乾かし、『ウィンド』で運んで終了。

「よし、お婆さん終わりました」
「おお、そうかいそうかい。なんかよくわからなかったけど凄いねぇ。ありがとさん」

その時、ダーンダーンとうるさい足音で、せっかく整備されている道を壊す輩が現れた。

「きゃぁぁぁっーーー!!!」
「ま、魔物だぁっ!!!」
「誰か、兵士たちを呼んで!」

「ん?魔物が現れたって?こりゃいかんなぁ、逃げないといけない。どっこいしょっと」
お婆さんは座っていた椅子代わりの樽から重い腰を上げて亀の歩みでのそのそと歩き始めた。

「ああ、お婆さん。大丈夫ですからここにいてくださいね」
「ん?そうかねぇ。じゃあここにいるとするかね」

私は壁にかけていた愛剣を腰に刺してドアへと向かった。

「ありゃ、何処か行くんかい?」
「ちょっと、虫退治にでも」

お婆さんのお見送りを受け取って外へ出た私は家に結界を張った。

ドシドシと動きながら暴れているのは黒いテカっている本来ならばカサカサと動くやつ。
紛れもなくあれはゴ○ブリ………いや、Gだ。
Gは道に装飾されている木やら花壇やら家を壊しまくっている。

「よーし、そこで暴れてるでっかい害虫。五月蝿いから眠っちゃえ」
『フリージング』

Gの周辺だけ温度を零度に固定。
Gは活動を停止してしまった。

しかし、改めて見てみるとデカイ。
高さが家まで届いてしまっている。
でも、動かなければなんということはなく、ただのカカシなので剣でスパンと切って終了だ。

「お婆さーん!終わりましたよ」
お婆さんは紅茶を美味しそうに飲んでいた。

「ありゃ、そうかいそうかい。おつかさん」

お婆さんは懐から布袋を取り出した。
「はい、少ないけど報酬だよ」

手に乗せられたのは小銅貨五枚、日本円にして約五百円だ。
ちなみに「白と黒の旅寝所」の一日の宿泊料は、朝食込みで銅貨一枚、千円だ。
ここらへんなら三百円、小銅貨三枚でまあまあなご飯が食べられるので、お手伝い程度のこの依頼には割に合っている。

「すまないねぇ、いろいろとしてもらっちゃったのにこんなもんしかあげられなくて」
「いえいえ、書いていた通りの報酬です。むしろ私が前いたところに比べたらちょっと多いくらいですよ」

ライト村では少年少女のお手伝い料だ、当然だがここは街なので物価もいい。

「ありがとうございました」
「ああ、こちらこそ助かったよ」

ギルドに依頼完了の報告をしに行く途中、私は先程のGの周りで「なんじゃこりゃあぁあぁぁっ!!!!」と叫んでいる兵士たちを目撃した。

うん、ちょっと切断面がグロかったかもしれない。
特によくわからない汁や筋肉らしきなにかがしゅわしゅわと溶けているのも見るに耐えない。

本当は倒した私があれをどうにかしないといけないのだろうが、なるべく触りたくないし、見たくない。
私は現実から目をそらした。
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