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7章 青の町
7_⑤
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「添花に、抜け落ちた記憶があること。紅龍は知っているな?」
「……はい」
眉根を寄せ、目線を横に逸らしてから、紅龍はうなずいた。あぐらをかいた膝に置く手を握りしめる。
「当時から可能性はあった。だが、まさか本当に、こんなことになるとは」
医者の独り言に近い呟きが何を指しているのか理解し、身を乗り出す。
「落蕾のことと、何か関係が?」
言葉の勢いとは逆に、声の大きさは弱くなる。添花に聞こえてはまずいと思った。
その添花はというと、布団の中でうずくまったままだ。辛うじて意識はあるが、自分の身に何が起きているのかという疑問で頭が重い。反対に、真冬のような寒さに震える体は妙に軽い。それは、気を抜くと霧散して自分が消えてしまう、といった感覚で、背を丸め布団の端を握り、少しも動けない。居間からは医者と紅龍の声がするが、言葉としては耳に入らず、深刻な様子だけが伝わってきた。
(今度こそ、本当に死ぬかも)
森で倒れたときと同じく、不安と恐怖が満ちていく。内からの刃が、添花の心を苦しめる。自分を守ろうとする人の本能ゆえに、彼女は眠りに落ちていった。
襖を細く開き、医者は規則的に上下する添花の肩を見つめた。
「眠ったか……今は大丈夫のようだが、あまり時間はないぞ」
(俺は、話すべきなんだろうな。その時のことを)
居間に座ったまま、紅龍は険しい顔をしている。医者は彼の肩を軽く叩いた。
「お前の代わりは誰にもできない。……何かあったら、また呼びなさい」
「……はい」
紅龍が掠れた返事をするのと、医者が草履を履くのは同時だった。
寝室の添花は居間に背を向けている。紅龍は顔が見える方に行き、幼馴染みが眠って、息をしていることを確かめた。寝顔は穏やかとは言えず、ずっと握っていたせいで布団の端は皺くちゃだ。拳を半開きにした右手をそっと握ると、添花の指先に少し力が入る。
「添花……」
名前に花の字があっても、普段は儚さなど感じさせないのに、今はいつ消えてしまってもおかしくないような気がした。目覚めたら、そんな添花の傷に触れる話をするのだ。気が滅入り、紅龍は長い瞬きをした。
(でも思い出さなきゃ、こうしてまた倒れるんだろ? もう、ずっと前に始まってたんだ)
外はずいぶん天気がよく、満天の星空が緊迫した空気を醸している。紅龍は幾度か名前を呟き、夜明けまで冷たい手を温めていた。
翌朝、添花が見たのは覚えのある天井だった。自分の青白い顔を見下ろしてはいないし、胸いっぱいに空気を吸える。ゆっくりと体を起こし、両の掌を眺めた。
(生きてる。寒気も……熱も、もうない。悪い夢でも見てたの?)
よく見ると、左の掌にうっすら爪の跡が残っている。やはり昨晩の苦しみは本物で、今の具合の方が嘘のようだ。右手がほんのり温かい気がするのは、紅龍が居てくれたからだと思った。何となく、声が耳に残っている。添花の具合が落ち着いたのを見計らってどこかに行ったのか、今は姿がない。
旅の荷物は枕元にあった。持ち歩いていた少ない衣服の中から楽に着られるものを選び、ひとまず着替える。
「添花、起きられたの? よかった!」
着衣を整えて、櫛を取り出した時、映が家に上がってきた。紅龍に様子を聞いて、見に来たのだという。
「ごめんなさい、驚かせちゃって。私も何がなんだか」
立ち上がって映と向き合う添花の動作は自然で、ふらつくこともない。
「今は、大丈夫なの?」
「うん。でも、先生の所に行ってみようかな」
「それがいいわ。まぁだ、顔色が白い感じがするもの」
顔を覗き込むようにする優しい瞳、靴越しに踏む玄関の三和土の感触、ひとつひとつが懐かしい。映と別れて町外れの道場に歩いていく途中も、幾人か知り人に会い、故郷を噛み締めた。
道場と病院は併設で、町を成す池の北岸にある。民家より頻繁に葺き替えを行うため、瓦の青がより鮮やかだ。久しぶりに見ると、ずっしりと大きな建物に相応の威厳を感じる。
「添花……添花じゃないのか?」
声に振り向くと、師範のひとりがいた。
「翔雲師範。……お久しぶりです」
ちょうど添花が準師範の資格を得た頃、師範になった門下生だった。行方を眩ませる形で故郷を離れていた添花は、なんとなく気まずい。
「ほんと、久しいなあ! 何年ぶりだ? みんな、心配したんだぞ」
思いがけず笑顔で迎えられて、拍子抜けする。みんなとは、紅龍一家の他に道場の面々、大師範もだろうか。故郷に居場所を失う不安は幾らか薄れ、返す言葉がすんなりと出てくる。
「ええと、そろそろ二年経ちますか。今から稽古ですよね。けっこう顔ぶれ、変わりました?」
「そうだな……あ、ちょうどいいから顔を出せよ。大師範に挨拶しに行くんだろ」
「はい、でもその前に先生の所へ。昨日は、ちょっと具合が悪くて」
「珍しいな、大丈夫か? まあ、無理がなければでいいからさ」
「わかりました、なるべく行きます」
微笑んで答える添花を見て、翔雲はなんとなく違和感を覚える。以前の彼女と雰囲気が違うのだ。この二年、どんな旅をしてきたのか知らないから、表情に昔の面影を探し出し、こっそり納得した。
(こりゃ、本当に具合悪いんだな。そういえば、あの子は強がりだった。そこは昔から変わってないなあ)
ところが、医者が言うには悪いところはないらしいのだ。一通りの診察を終え、余命宣告でも何でも来い、と思っていた添花は拍子抜けする。
「かなり疲れが溜まっていたのではないかな」
「そうかもしれませんけど。何でもないは嘘でしょう」
嘘ではないが、と髭を撫で、医者は言い足す。
「しばらく前から、何度か体調を崩していると言ったね。だから、何か問題があるんだろう……今は、診た限り体はいたって健康だ。ゆっくりと故郷の空気でも吸って、のんびりするのがいいのかもね」
「はあ……」
どこか誤魔化されているような気がした。病の手がかりを探す問答の間、一度も医者は添花と目を合わせなかった。その表情には覚えがある。
(いつだっけ。先生、その顔は見た事があるよ)
心配と反対に体調も良くなってきていたので、添花は稽古場に顔を出す。先に大師範の部屋へ挨拶に行ったのだが、いなかったのだ。稽古場に出ているのだろうと、広い畳敷きの部屋を見回す。添花が大師範を見つけるより早く、大師範が添花を見つけた。
「おう、戻ったか、添花準師範! 紅龍と入れ違いになったな」
二年も留守にしていたことを気にする様子はなく、添花は安心した。ただ、準師範と呼ばれた彼女を見て、意外そうな顔をした門下生がいるのが気になる。
体術や剣術は男女の力の差が出やすいため、女性は出世しにくい。青藍龍には気功があるから、剣術の赤暁龍よりは活躍できるが、それでも添花ほどの実力を持つ者は珍しい。昔から、女性というだけで弱そうに見られるのが、彼女は嫌いだ。気にしたら負けだと思ったので、視線は無視して進む。大師範の前に正座すると、折り目正しく頭を下げた。
「長く姿を眩ませて、申し訳ありませんでした」
「構わんよ。私に、お前を責める資格はない。それより、お前を知らぬ門下生もいるから、紹介しておこう」
自嘲で皺の寄る目尻をすぐに伸ばし、大師範は手を叩いて門下生を集める。自分の横に添花を立たせ、にやりと笑う。
「この者が、噂の準師範、添花だ」
大師範からの紹介に、門下生がざわめいた。
「……何ですか、噂って?」
添花は首を傾げた。人の居ぬ間に何を吹き込んだのか。どうやら、他の町や地区から入門した者の中には女性の準師範の存在を信じない者がいて、添花を知る皆の話が噂として蔓延っていたらしい。
「大師範、尾ひれなんて付けてないでしょうね? そんなに暴れた覚え、ないですよ」
「ははは、尾ひれは後から勝手に付くものだ。皆、本当のことしか言ってはおらん」
大師範が「なあ?」と同意を求めると、何人もの門下生や師範がそっぽを向いた。添花の実力に懐疑的な門下生は、それで口を尖らせてしまった。
「何が不満か知らんが、紅龍に負け無しなのは本当だぞ。今のお前らじゃ敵いっこない」
翔雲が放った一言で場が収まる。先に道場へ挨拶に来た紅龍は、元気のいい門下生と軽く手合わせをしていったという。しばらく青藍龍を離れていたが、力が落ちるどころか伸びていたそうだ。例の門下生は軒並み負けた。
(そっか。今の紅と手合わせしたら、私もわからないね)
大師範が稽古の再開を指示して、稽古場が普段の風景に戻る。汗臭い空気の中、添花は気を引きしめた。
「お前な、手合わせって言われたら乗る気だったろう。……病み上がりなんだ、無理するなよ」
さすが、幼い頃からの添花を知る翔雲はお見通しだ。稽古を離れれば砕けた会話のできる相手なので、悪戯っぽい言葉で気負いを隠す。
「先生が問題ないって言ったから、つい」
こんなやりとりが懐かしいのか、大師範の表情は穏やかだった。
「負けず嫌いは相変わらずか。まあ、準師範という立場もある。力が落ちていないかは、今後しっかり見ていくとしよう」
(何だろう。大師範、妙に私に甘いんじゃない? 本来は教える立場なの、放棄してたっていうのに)
寛大な態度を訝しむと、大師範は微妙に表情を曇らせる。稽古をつける彼らと別れて道場を出ても、その理由は思い当たらなかった。
「……はい」
眉根を寄せ、目線を横に逸らしてから、紅龍はうなずいた。あぐらをかいた膝に置く手を握りしめる。
「当時から可能性はあった。だが、まさか本当に、こんなことになるとは」
医者の独り言に近い呟きが何を指しているのか理解し、身を乗り出す。
「落蕾のことと、何か関係が?」
言葉の勢いとは逆に、声の大きさは弱くなる。添花に聞こえてはまずいと思った。
その添花はというと、布団の中でうずくまったままだ。辛うじて意識はあるが、自分の身に何が起きているのかという疑問で頭が重い。反対に、真冬のような寒さに震える体は妙に軽い。それは、気を抜くと霧散して自分が消えてしまう、といった感覚で、背を丸め布団の端を握り、少しも動けない。居間からは医者と紅龍の声がするが、言葉としては耳に入らず、深刻な様子だけが伝わってきた。
(今度こそ、本当に死ぬかも)
森で倒れたときと同じく、不安と恐怖が満ちていく。内からの刃が、添花の心を苦しめる。自分を守ろうとする人の本能ゆえに、彼女は眠りに落ちていった。
襖を細く開き、医者は規則的に上下する添花の肩を見つめた。
「眠ったか……今は大丈夫のようだが、あまり時間はないぞ」
(俺は、話すべきなんだろうな。その時のことを)
居間に座ったまま、紅龍は険しい顔をしている。医者は彼の肩を軽く叩いた。
「お前の代わりは誰にもできない。……何かあったら、また呼びなさい」
「……はい」
紅龍が掠れた返事をするのと、医者が草履を履くのは同時だった。
寝室の添花は居間に背を向けている。紅龍は顔が見える方に行き、幼馴染みが眠って、息をしていることを確かめた。寝顔は穏やかとは言えず、ずっと握っていたせいで布団の端は皺くちゃだ。拳を半開きにした右手をそっと握ると、添花の指先に少し力が入る。
「添花……」
名前に花の字があっても、普段は儚さなど感じさせないのに、今はいつ消えてしまってもおかしくないような気がした。目覚めたら、そんな添花の傷に触れる話をするのだ。気が滅入り、紅龍は長い瞬きをした。
(でも思い出さなきゃ、こうしてまた倒れるんだろ? もう、ずっと前に始まってたんだ)
外はずいぶん天気がよく、満天の星空が緊迫した空気を醸している。紅龍は幾度か名前を呟き、夜明けまで冷たい手を温めていた。
翌朝、添花が見たのは覚えのある天井だった。自分の青白い顔を見下ろしてはいないし、胸いっぱいに空気を吸える。ゆっくりと体を起こし、両の掌を眺めた。
(生きてる。寒気も……熱も、もうない。悪い夢でも見てたの?)
よく見ると、左の掌にうっすら爪の跡が残っている。やはり昨晩の苦しみは本物で、今の具合の方が嘘のようだ。右手がほんのり温かい気がするのは、紅龍が居てくれたからだと思った。何となく、声が耳に残っている。添花の具合が落ち着いたのを見計らってどこかに行ったのか、今は姿がない。
旅の荷物は枕元にあった。持ち歩いていた少ない衣服の中から楽に着られるものを選び、ひとまず着替える。
「添花、起きられたの? よかった!」
着衣を整えて、櫛を取り出した時、映が家に上がってきた。紅龍に様子を聞いて、見に来たのだという。
「ごめんなさい、驚かせちゃって。私も何がなんだか」
立ち上がって映と向き合う添花の動作は自然で、ふらつくこともない。
「今は、大丈夫なの?」
「うん。でも、先生の所に行ってみようかな」
「それがいいわ。まぁだ、顔色が白い感じがするもの」
顔を覗き込むようにする優しい瞳、靴越しに踏む玄関の三和土の感触、ひとつひとつが懐かしい。映と別れて町外れの道場に歩いていく途中も、幾人か知り人に会い、故郷を噛み締めた。
道場と病院は併設で、町を成す池の北岸にある。民家より頻繁に葺き替えを行うため、瓦の青がより鮮やかだ。久しぶりに見ると、ずっしりと大きな建物に相応の威厳を感じる。
「添花……添花じゃないのか?」
声に振り向くと、師範のひとりがいた。
「翔雲師範。……お久しぶりです」
ちょうど添花が準師範の資格を得た頃、師範になった門下生だった。行方を眩ませる形で故郷を離れていた添花は、なんとなく気まずい。
「ほんと、久しいなあ! 何年ぶりだ? みんな、心配したんだぞ」
思いがけず笑顔で迎えられて、拍子抜けする。みんなとは、紅龍一家の他に道場の面々、大師範もだろうか。故郷に居場所を失う不安は幾らか薄れ、返す言葉がすんなりと出てくる。
「ええと、そろそろ二年経ちますか。今から稽古ですよね。けっこう顔ぶれ、変わりました?」
「そうだな……あ、ちょうどいいから顔を出せよ。大師範に挨拶しに行くんだろ」
「はい、でもその前に先生の所へ。昨日は、ちょっと具合が悪くて」
「珍しいな、大丈夫か? まあ、無理がなければでいいからさ」
「わかりました、なるべく行きます」
微笑んで答える添花を見て、翔雲はなんとなく違和感を覚える。以前の彼女と雰囲気が違うのだ。この二年、どんな旅をしてきたのか知らないから、表情に昔の面影を探し出し、こっそり納得した。
(こりゃ、本当に具合悪いんだな。そういえば、あの子は強がりだった。そこは昔から変わってないなあ)
ところが、医者が言うには悪いところはないらしいのだ。一通りの診察を終え、余命宣告でも何でも来い、と思っていた添花は拍子抜けする。
「かなり疲れが溜まっていたのではないかな」
「そうかもしれませんけど。何でもないは嘘でしょう」
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(いつだっけ。先生、その顔は見た事があるよ)
心配と反対に体調も良くなってきていたので、添花は稽古場に顔を出す。先に大師範の部屋へ挨拶に行ったのだが、いなかったのだ。稽古場に出ているのだろうと、広い畳敷きの部屋を見回す。添花が大師範を見つけるより早く、大師範が添花を見つけた。
「おう、戻ったか、添花準師範! 紅龍と入れ違いになったな」
二年も留守にしていたことを気にする様子はなく、添花は安心した。ただ、準師範と呼ばれた彼女を見て、意外そうな顔をした門下生がいるのが気になる。
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「この者が、噂の準師範、添花だ」
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「……何ですか、噂って?」
添花は首を傾げた。人の居ぬ間に何を吹き込んだのか。どうやら、他の町や地区から入門した者の中には女性の準師範の存在を信じない者がいて、添花を知る皆の話が噂として蔓延っていたらしい。
「大師範、尾ひれなんて付けてないでしょうね? そんなに暴れた覚え、ないですよ」
「ははは、尾ひれは後から勝手に付くものだ。皆、本当のことしか言ってはおらん」
大師範が「なあ?」と同意を求めると、何人もの門下生や師範がそっぽを向いた。添花の実力に懐疑的な門下生は、それで口を尖らせてしまった。
「何が不満か知らんが、紅龍に負け無しなのは本当だぞ。今のお前らじゃ敵いっこない」
翔雲が放った一言で場が収まる。先に道場へ挨拶に来た紅龍は、元気のいい門下生と軽く手合わせをしていったという。しばらく青藍龍を離れていたが、力が落ちるどころか伸びていたそうだ。例の門下生は軒並み負けた。
(そっか。今の紅と手合わせしたら、私もわからないね)
大師範が稽古の再開を指示して、稽古場が普段の風景に戻る。汗臭い空気の中、添花は気を引きしめた。
「お前な、手合わせって言われたら乗る気だったろう。……病み上がりなんだ、無理するなよ」
さすが、幼い頃からの添花を知る翔雲はお見通しだ。稽古を離れれば砕けた会話のできる相手なので、悪戯っぽい言葉で気負いを隠す。
「先生が問題ないって言ったから、つい」
こんなやりとりが懐かしいのか、大師範の表情は穏やかだった。
「負けず嫌いは相変わらずか。まあ、準師範という立場もある。力が落ちていないかは、今後しっかり見ていくとしよう」
(何だろう。大師範、妙に私に甘いんじゃない? 本来は教える立場なの、放棄してたっていうのに)
寛大な態度を訝しむと、大師範は微妙に表情を曇らせる。稽古をつける彼らと別れて道場を出ても、その理由は思い当たらなかった。
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