74 / 86
10章 碧眼の追憶
10_④
しおりを挟む
(レマ、あなただって、ひとりじゃなかったのに!)
強く思ったとき、ライカは地面に立っている感覚を取り戻した。今は、クーンシルッピの森の中で、レマ達の過去を見ていたのだ。
『……淋しかったんだね、レマ……』
再び像を結んだキートが呟いた。セイルもトンクもレマの玉石を見つめていた。玉石に宿る四人の記憶を合わせて過去を投影することで、キート達にもレマの気持ちが感じ取れたのだ。
逆も然りで、語りかけるように腕輪の玉石が光った。セイルが微笑んで、レマの言葉を代弁する。
『ライカ。レマは、この旅の中で目覚めたようです。玉石が貴女の手に渡る前は、誰に寄り添うこともなく、宝石として保管されていたから』
淋しい一人旅、楽しい二人旅。信じた人に傷付けられた苦しみと、村で過ごして癒された日々。そしてトラメ達との出会い。揺れ動くライカの心が、玉石の奥に押し込められていたレマの心を引き出した。
『貴女が守りたいと強く思った仲間を、レマも守りたいと思ったのです……貴方達と旅して、自分にも仲間がいると知った。災禍が終わった世界に、希望を見ることが出来ました』
『はは、あたし達と同じようなこと、思ったんだ。なんか安心した』
気持ちよく笑いながら、キートは少し感傷に浸った。やっと心が通じ合えたのは、共に旅した数百年後。もしも当時、もっと分かり合えていたらと考えてしまう。それを見抜いて、トンクが横目でキートを刺す。
『似合わないな、繊細な顔しちゃって。俺達はあれこれ考えるより、ライカ達を応援することだ。心だけじゃ、力になってやれないけどさ』
皮肉っぽく言われて、キートもセイルも表情を引き締めた。反対に、ライカ達には笑顔が広がる。一際、無邪気な笑みで、トラメがきっぱり言う。
「応援してくれると、頑張れるもんだぞ!」
『……そうだな』
単純な言葉は、条件なしで元気をくれる。トンクの方が励まされた。
その時、かすかに振動を感じてそれぞれが身構えた。『いよいよか』とこぼすトンクの声が聞こえて、魔物となったレマの封印が、間もなく解けるのだと悟る。数日のうちに、沈めた島が浮上するそうだ。
「それじゃ、それに合わせて上陸、だね」
台座に置いてあった腕輪をはめて、ライカは右手を前に伸ばした。どういう意味か理解して、その上にヴァルが手を重ねる。次々にみんなが続き、輪になったところでキート達を見た。顔を見合わせてから、キート、セイル、トンクもライカ達の輪に向かって右手を伸ばした。
「ぜったい、みんなで帰ってこよう!」
「おー!」
みんなの意思を固めるのは、ごく簡単な掛け声だった。
レマとの戦いは避けられないだろうし、無事に帰れる保証はない。でもみんなの目標は、災禍を終わらせた先にあるのだ。
森の洞窟を出るライカ達の背中は、この前よりたくましく見えた。
強く思ったとき、ライカは地面に立っている感覚を取り戻した。今は、クーンシルッピの森の中で、レマ達の過去を見ていたのだ。
『……淋しかったんだね、レマ……』
再び像を結んだキートが呟いた。セイルもトンクもレマの玉石を見つめていた。玉石に宿る四人の記憶を合わせて過去を投影することで、キート達にもレマの気持ちが感じ取れたのだ。
逆も然りで、語りかけるように腕輪の玉石が光った。セイルが微笑んで、レマの言葉を代弁する。
『ライカ。レマは、この旅の中で目覚めたようです。玉石が貴女の手に渡る前は、誰に寄り添うこともなく、宝石として保管されていたから』
淋しい一人旅、楽しい二人旅。信じた人に傷付けられた苦しみと、村で過ごして癒された日々。そしてトラメ達との出会い。揺れ動くライカの心が、玉石の奥に押し込められていたレマの心を引き出した。
『貴女が守りたいと強く思った仲間を、レマも守りたいと思ったのです……貴方達と旅して、自分にも仲間がいると知った。災禍が終わった世界に、希望を見ることが出来ました』
『はは、あたし達と同じようなこと、思ったんだ。なんか安心した』
気持ちよく笑いながら、キートは少し感傷に浸った。やっと心が通じ合えたのは、共に旅した数百年後。もしも当時、もっと分かり合えていたらと考えてしまう。それを見抜いて、トンクが横目でキートを刺す。
『似合わないな、繊細な顔しちゃって。俺達はあれこれ考えるより、ライカ達を応援することだ。心だけじゃ、力になってやれないけどさ』
皮肉っぽく言われて、キートもセイルも表情を引き締めた。反対に、ライカ達には笑顔が広がる。一際、無邪気な笑みで、トラメがきっぱり言う。
「応援してくれると、頑張れるもんだぞ!」
『……そうだな』
単純な言葉は、条件なしで元気をくれる。トンクの方が励まされた。
その時、かすかに振動を感じてそれぞれが身構えた。『いよいよか』とこぼすトンクの声が聞こえて、魔物となったレマの封印が、間もなく解けるのだと悟る。数日のうちに、沈めた島が浮上するそうだ。
「それじゃ、それに合わせて上陸、だね」
台座に置いてあった腕輪をはめて、ライカは右手を前に伸ばした。どういう意味か理解して、その上にヴァルが手を重ねる。次々にみんなが続き、輪になったところでキート達を見た。顔を見合わせてから、キート、セイル、トンクもライカ達の輪に向かって右手を伸ばした。
「ぜったい、みんなで帰ってこよう!」
「おー!」
みんなの意思を固めるのは、ごく簡単な掛け声だった。
レマとの戦いは避けられないだろうし、無事に帰れる保証はない。でもみんなの目標は、災禍を終わらせた先にあるのだ。
森の洞窟を出るライカ達の背中は、この前よりたくましく見えた。
0
あなたにおすすめの小説
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる