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今日から、消祓官
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『ただい鳩線は古柱駅~零歴駅間におきまして、付近で発生している怪異の影響により、上下線とも運転を見合わせております。再開の見込みは立っておりません』
駅内でアナウンスが繰り返される。
『ただいま、小鳩線は古柱駅~零歴駅間におきまして、付近で発生している怪異の
アナウンスが不意に、ブツリと途切れた。
少しガサついた音声が流れる。
『怪異警報が発令されました。建物内にいる人はその場から動かないでください。建物の外にいる人は建物の中に入ってください』
建物と外を区切るように、窓にドアに通行口に、実体のない黒いシャッターが音も無く降りる。
良く晴れた真昼にも関わらず、光を通さないシャッターの中は真夜中のように暗く、中の様子は一切窺えない。
しかし、外にいた人々は慣れたようにシャッターを通り抜け建物内に入る。
シャッターの中へ入り、駅に避難した人々を白い照明が照らした。
鳩の群れが飛んできてシャッターを通り、駅の骨組みの上に止まった。
一匹の鼠が高槻美里の足元を走り去る。
その時、美里の端末が着信を知らせた。
「はい、高槻です」
応答する美里に、軽快な浅井の声が届く。
「美里ちゃん、今どこ?」
「千羽駅のホームです。丁度今、シャッターが降りました」
「あー、そっかー」
「緊急事態ですか」
美里は真っ黒なシャッターの向こうを眺める。
外からシャッターの中が見えないように、中からはシャッターの外は見えない。
それでも美里は、外にいる『何か』の感覚を探った。
「まあね」
浅井は軽く笑った。
「でも消祓官だけで祓えるよ、君達の出る幕じゃない」
ハッキリそう言うと、声色を明るくした。
「でも君がそこで待ちぼうけを食らうのも、時間の無駄だろう?」
「近場に調査してほしい怪異があるんだ」
声が恍惚の色を帯びる。
「300年ものの、良い怪異だよ」
「今からですか?」
「うん、資料と護衛をそっちに送ったから。よろしく!」
そう言うと、すぐに通信が切れる。
美里は息を吐いて端末をしまうと、ホームの階段を一段一段降りて行った。
自動運転の対怪異車両に乗り込むと、先客がニコリと無邪気に笑った。
シャッターの下りた真っ暗な車内で、少しの憂いの無い笑顔を白い照明が照らした。
「こんにちは。『久遠直』と申します!」
「今日から、『しょうふつかん』だそうです」
その言葉に美里が絶句する。
「今日から、ですか」
聞こえた言葉が信じられずに、明るい笑顔に訊ねる。
「はい」
直は真っ直ぐに頷き
「『しょうふつかん』って何ですか?」
と真っ直ぐに美里を見た。
直は完全に固まった美里を不思議そうに見ると、
「あっ」
と声を上げて、分厚く膨らんだ茶封筒を取り出した。
「『これを渡せ』と言われました!」
「えっ、はい」
取り敢えず茶封筒を受け取った美里は、その中から3つほどの分厚いファイルを取り出す。
青いファイルの表紙に貼られた白紙のメモ書きに、美里が静かに目を通すと、直の瞳を見た。
直は不思議そうに、でも嬉しそうに笑う。
「どうかしました?」
美里が覚悟を決めるようにフーと息を吐くと、メモ書きを剥がした。するとメモ書きが音も無く消える。
「状況は分かりました」
美里は座席に乗せていたトランクとリュックを、座席の下に降ろすと
「私は解明官の高槻美里です」
と言いながら車内の端末を操作し、車を出発させた。
「怪異を解明することが私の職務です」
駅内でアナウンスが繰り返される。
『ただいま、小鳩線は古柱駅~零歴駅間におきまして、付近で発生している怪異の
アナウンスが不意に、ブツリと途切れた。
少しガサついた音声が流れる。
『怪異警報が発令されました。建物内にいる人はその場から動かないでください。建物の外にいる人は建物の中に入ってください』
建物と外を区切るように、窓にドアに通行口に、実体のない黒いシャッターが音も無く降りる。
良く晴れた真昼にも関わらず、光を通さないシャッターの中は真夜中のように暗く、中の様子は一切窺えない。
しかし、外にいた人々は慣れたようにシャッターを通り抜け建物内に入る。
シャッターの中へ入り、駅に避難した人々を白い照明が照らした。
鳩の群れが飛んできてシャッターを通り、駅の骨組みの上に止まった。
一匹の鼠が高槻美里の足元を走り去る。
その時、美里の端末が着信を知らせた。
「はい、高槻です」
応答する美里に、軽快な浅井の声が届く。
「美里ちゃん、今どこ?」
「千羽駅のホームです。丁度今、シャッターが降りました」
「あー、そっかー」
「緊急事態ですか」
美里は真っ黒なシャッターの向こうを眺める。
外からシャッターの中が見えないように、中からはシャッターの外は見えない。
それでも美里は、外にいる『何か』の感覚を探った。
「まあね」
浅井は軽く笑った。
「でも消祓官だけで祓えるよ、君達の出る幕じゃない」
ハッキリそう言うと、声色を明るくした。
「でも君がそこで待ちぼうけを食らうのも、時間の無駄だろう?」
「近場に調査してほしい怪異があるんだ」
声が恍惚の色を帯びる。
「300年ものの、良い怪異だよ」
「今からですか?」
「うん、資料と護衛をそっちに送ったから。よろしく!」
そう言うと、すぐに通信が切れる。
美里は息を吐いて端末をしまうと、ホームの階段を一段一段降りて行った。
自動運転の対怪異車両に乗り込むと、先客がニコリと無邪気に笑った。
シャッターの下りた真っ暗な車内で、少しの憂いの無い笑顔を白い照明が照らした。
「こんにちは。『久遠直』と申します!」
「今日から、『しょうふつかん』だそうです」
その言葉に美里が絶句する。
「今日から、ですか」
聞こえた言葉が信じられずに、明るい笑顔に訊ねる。
「はい」
直は真っ直ぐに頷き
「『しょうふつかん』って何ですか?」
と真っ直ぐに美里を見た。
直は完全に固まった美里を不思議そうに見ると、
「あっ」
と声を上げて、分厚く膨らんだ茶封筒を取り出した。
「『これを渡せ』と言われました!」
「えっ、はい」
取り敢えず茶封筒を受け取った美里は、その中から3つほどの分厚いファイルを取り出す。
青いファイルの表紙に貼られた白紙のメモ書きに、美里が静かに目を通すと、直の瞳を見た。
直は不思議そうに、でも嬉しそうに笑う。
「どうかしました?」
美里が覚悟を決めるようにフーと息を吐くと、メモ書きを剥がした。するとメモ書きが音も無く消える。
「状況は分かりました」
美里は座席に乗せていたトランクとリュックを、座席の下に降ろすと
「私は解明官の高槻美里です」
と言いながら車内の端末を操作し、車を出発させた。
「怪異を解明することが私の職務です」
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