プレーヤープレイヤー

もずく

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迷子

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 しっかりと休息を取り、体を軽くほぐしてから、一応、水筒に減った分の水を補給する。
 ここにある水場は噴水形式だ。水瓶を肩に担いだ女の人の像がプールの真ん中にあり、その水瓶から水が溢れ出ているという物だ。
 ここの水は何度も飲んでるから安心して汲むことができる。
 そもそも、サウススフィアの街の水源だって迷宮内の水場なので、ここの水を飲む事に不安はない。
 ただ、迷宮内の水場の何箇所かからは、毒入の水が出ている。そういった所は、基本的に立て札なり何なりで飲めない事が分かるようになってるので、よっぽど水に飢えてない限りは飲むことはないはずだ。

 キーンは、前のパーティーでは、あまり迷宮内の事を教えてもらってなかったらしい。
 本人としても、その頃は「早く強くなる」事が一番重要だったので、こういった細かい話には興味がなかったらしいんだけど。
 まあ、どこで何が起きるか分からないのが迷宮だから、生き延びる為の最低限の知識は身に付けておいた方がいいんじゃないかな、とは思うよ。と、伝えておいた。

 で、実際に迷子を拾う事になったのだった。

「あのっ、助けてください……って、あなたは能無しの……あっ、ごめんなさい」

 それは街に戻る道の途中の事だった。
 通路の端に体育座りをしていた人影が、僕らを見つけてダッシュしてきて、助けを求めてきたのだ。かなり失礼な一言と共に。

 自覚してるし、自分で言う分には構わないけど、他人に言われたらカチンとくる事ってないかな?
 僕にとっては「能無しスキルなし」の一言が正にそれだったようだ。
    だから、僕はこの人を無視する事にした。

「あのっ! けほっけほっけほっ……」
「おーい、無視してっていいのか?」

 街まではあと一時間くらいで帰れるから、付いて来たければ勝手に付いてくればいい。
 でも、そんな言葉は僕の口からは出てこなかった。
 僕はキーンに向けて「行こう」とだけ告げて、今までと同じペースで歩き続けた。

 彼女とはしばらく前に会って話したことがある。ギルドが定期的に開いている新人レクリエーションという名のパーティー斡旋会で、だ。
 確か、ナディとか言う名前だったと思う。
 僕じゃなくて、他のパーティーを選んだ事については何とも思わない。
 新人だからこそ、数の揃ったパーティーに入りたかったことだろうし、今にして思えば、女の子がソロ男と一緒にパーティーを組もうと思うわけがなかったんだ。
 ただ、他のパーティーから聞いたんだろうけど、能無し呼ばわりは頭にきた。
 せめて、スキルなし、と言われるのなら飲み込む事もできるんだけど。だって、スキルを持ってないのは事実だから。

「あの、さっきはすみませんでした」

 何度か途中で謝られたけど、今後も関わらなさそうな人だし、僕は特に返事をしなかった。
 ただ、僕らがゴブリン三匹と戦闘になった時に、勝手に戦闘に参加して来たのだけは許せなかった。

「いいかげんにしてください。よそのパーティーの戦闘に手を出すのはルール違反です。そんな事も知らないで迷宮に入ってるんですか?」

 なるべく怒鳴りたくなかったから、なんかかなり冷たい感じになってしまったけど、僕の言ってる事に間違いはない。

「あっ、すみません、あのっ、さっきのを許してもらいたくて、その少しでも手伝おうかと思って」
「迷惑です。やめてください」
「おい、ソルト、言い過ぎだぞ」
「キーンはその人の肩を持つんだ? パーティーを組んでる仲間が能無しと呼ばれて、更に、探索者間のルール違反を犯すような人の……残念だよ。僕らはまだパーティーになれてなかったみたいだね」

 自分が子供っぽいことを言ってるのは分かってる。
 正しい事を言うのが正しいとは限らないって事も分かってる。
 キーンがどっちの味方とかじゃなくて、困ってる人を助けたいだけなんだろうな、って事も分かってる。
 分かってるんだよ。

 でもさ、そうじゃないだろ。
 迷宮の中では、自分の次にパーティーが一番大事じゃないと駄目だろ。
 そうじゃなきゃ、いざって時にお互いを信じ合えないじゃないか。
 それでなくても、僕は仲間だと思ってた人から既に裏切られてるんだから。
 パーティーのメンバーに、どんな時でもずっと依存する気はないよ。
 でも、迷宮の中ではパーティー内の結束は絶対に必要なんだよ。

 ……僕が今、パーティー内の結束を壊そうとしてるのか。
 僕が駄目な奴なのか。
 駄目だ、よく分からない。

 キーンとナディが何か言ってるみたいだけど、よく聞こえない。
 ああ、僕が駄目なのかもしれないな。
 僕は能無しだし。

 僕はふらふらと出口に向かって歩き出した。

 肩を掴まれたので、それは振りほどいた。

 途中、何匹か魔物が出たけど、なんとなく戦っていたようだ。
 ソロの経験がこんな所で生きるとはね。

 門を抜けて街に入っても、彼らが言ってる言葉は僕の耳には入ってこなかった。
 何を言ってるのかよく分からなかったけど、面倒くさかったので、バックパックに入れてあった今回の収穫を地面に出して、キミらにあげるよ、と言って宿に戻った。
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