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依頼
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「わしはミツキ。レベル二八の侍じゃ」
キミが何者かも知らないのに、仲間も何もあったもんじゃないだろう。そう言ったらすぐに回答がきてしまった。
いや、聞きたくなかったから聞いてなかったんだけどね。迂闊な事を言ってしまったばかりに、聞きたくなかった情報が手に入ってしまった。
「ほお……侍がこの街に来てるとは。目的を聞いてもいいかね?」
「……魔鉱石、それか魔晶石を手に入れたいのじゃ」
「予算は?」
「それほど用意はできんかった。じゃから、わし自ら集めようかと思うての」
「なるほどな。それでソルトくんか」
「ん? いや、たまたま迷宮内でいい動きをする者を見つけての。それがソルトだったというだけのことじゃ。他意はないぞ」
なんでそれで僕の名前知ってんのさ。
「流石は侍という事か。他には何人入ってきてる?」
「わし一人じゃよ」
「そうか。ヤヨイ殿は来てないのか。もしヤヨイ殿に会うことがあれば、サウススフィアのアージェスがよろしくと言っていたと伝えてくれ」
「ほお。ヤヨイを知っておるのか。分かったのじゃ。戻ったら伝えよう」
ギルマスはミツキの返事ににっこりと笑って頷き、それから僕の方に顔を向けた。
「ソルトくん。ギルドから君にお願いがあるんだが聞いてもらえるかな」
「できれば聞きたくないです」
「ははっ、まあそう言わずに。実は迷宮巨大赤虎の尻尾を落とした君に、次は迷宮火吹きワニの首を落として欲しくてね」
「え?」
「喰い付いたね? やはり探索者だな。実はね、ワニの方が倒しやすいと言われてるんだが、特殊ドロップを狙う場合はワニの方が難しいんだよ」
「なんで僕に?」
「ハイレアの長剣を手に入れただろう? 尻尾を落とした君がそれを使ったら行けるんじゃないかと思ってね。それにサナムからも色々と君の話を聞いててね。会って話してみて、行けそうならお願いしようと思ってたんだよ」
「サナムさんが?」
「ああ、サナムとは前にパーティーを組んでてね。今でも交流があるんだよ。まあ、あいつはほとんど迷宮の中で番をしてるから、なかなか会えないんだけどね」
サナムさんがギルマスとパーティーを組んでた。強い人だと思ってたけど、やっぱり凄い人だったんだな。
それに、番ってなんなんだろう。
「それと、もう一つお願いがあるんだ。このミツキ殿とパーティーを組んでレイドに挑んで欲しい」
「はい?」
「アージェスよ、わしは魔鉱石か魔晶石がひつよ」
「ワニのハイレアを持ってきてくれたら、魔晶石を譲ろう」
「ほお。そう言う事なら是非もないのじゃ。なに、ソルトとは既に迷宮を共にした仲じゃしの。はっはっはっ」
「いや、僕は」
「レイドだから、誰と組んでても問題はないだろう? ただ、レイドモンスターが湧くまでの間は北西エリア辺りを案内してやって欲しい。もちろん、報酬はだすから。な?」
ギルドは探索者に常に中立なんじゃなかったっけ。
このマスター、どう見ても、このミツキって人の為に動いてるよなぁ。
「じゃあ、君達の方から何もなければ、話は以上だ。いい報告と素材を待ってるよ」
ワニの事や、報酬の事など、いくつか細かい話をして、僕らは解散する事になった。
帰り際に、ゴードンさんが「今日は勘違いで嫌な思いをさせてすまなかった」と、改めて謝ってくれたので、すっきりした気分でギルマスの部屋を出ることができた。
僕はなんて単純な男なんだろう。
すっきりしつつも、いくつかの依頼を受けざるを得ない状況にされてる事を思い出して、大人な彼らの掌の上でうまく転がされたんだろうな、とか、捻くれた考え方もしてしまうけど。
だって……
「さてソルトよ。これからどうするのかの?」
この人のこと、ギルドに押し付けようと思ったのに、結局僕が面倒見る事になってるんだもんな。
はぁ。
まず僕は、ミツキに街を案内した。
ああ、そうそう。ミツキは女性で間違ってないことが判明した。聞かなければ何も言わないけど、聞けば大抵の事には答えてくれるようだ。
ただ、「ミツキは女だよね?」と聞いたら、頬をひくつかせながら「わしが男に見えるのか?」と、ちょっと怒ってる感じだったから、質問の仕方には気をつけた方がいいのかも知れないけど。
いくつか話していたら、彼女が宿なしだということが分かったので、僕とは違う宿を取らせた。
それからいくつかの店を周り、長期の探索用に携帯食を買わさせた。
それから、ギルド直営のちょっと大きめの酒場に入って、食事を摂りながらこれからのことを話した。
まずはお互いの力量を知りたいから、訓練場で模擬戦がしたいこと。
ワニについての情報収集がしたいこと。
「レベル二八の侍だと言ったじゃろ」
「いや、そもそも侍ってなんだか知らないんだよ」
「なんと……嘆かわしい。……一応聞くが、お主、忍者は知っておるか?」
「忍者は聞いたことがあるよ。イースタールの暗殺者だったっけ?」
ミツキがガックリと項垂れ、額がテーブルに当たってゴンッと音が鳴った。
「またもやか。あやつら、影に生き闇に死すなどと言いながら、どこでもその存在をよう知られておる……にも関わらず、何故に侍は知られておらぬのだ」
侍も忍者と同じくイースタールの方のクラスなのかな。
そのあと、ヤケになって少し酒を飲んだミツキに、僕は侍とはなんたるか、をクドクドと説明されたのだった。
キミが何者かも知らないのに、仲間も何もあったもんじゃないだろう。そう言ったらすぐに回答がきてしまった。
いや、聞きたくなかったから聞いてなかったんだけどね。迂闊な事を言ってしまったばかりに、聞きたくなかった情報が手に入ってしまった。
「ほお……侍がこの街に来てるとは。目的を聞いてもいいかね?」
「……魔鉱石、それか魔晶石を手に入れたいのじゃ」
「予算は?」
「それほど用意はできんかった。じゃから、わし自ら集めようかと思うての」
「なるほどな。それでソルトくんか」
「ん? いや、たまたま迷宮内でいい動きをする者を見つけての。それがソルトだったというだけのことじゃ。他意はないぞ」
なんでそれで僕の名前知ってんのさ。
「流石は侍という事か。他には何人入ってきてる?」
「わし一人じゃよ」
「そうか。ヤヨイ殿は来てないのか。もしヤヨイ殿に会うことがあれば、サウススフィアのアージェスがよろしくと言っていたと伝えてくれ」
「ほお。ヤヨイを知っておるのか。分かったのじゃ。戻ったら伝えよう」
ギルマスはミツキの返事ににっこりと笑って頷き、それから僕の方に顔を向けた。
「ソルトくん。ギルドから君にお願いがあるんだが聞いてもらえるかな」
「できれば聞きたくないです」
「ははっ、まあそう言わずに。実は迷宮巨大赤虎の尻尾を落とした君に、次は迷宮火吹きワニの首を落として欲しくてね」
「え?」
「喰い付いたね? やはり探索者だな。実はね、ワニの方が倒しやすいと言われてるんだが、特殊ドロップを狙う場合はワニの方が難しいんだよ」
「なんで僕に?」
「ハイレアの長剣を手に入れただろう? 尻尾を落とした君がそれを使ったら行けるんじゃないかと思ってね。それにサナムからも色々と君の話を聞いててね。会って話してみて、行けそうならお願いしようと思ってたんだよ」
「サナムさんが?」
「ああ、サナムとは前にパーティーを組んでてね。今でも交流があるんだよ。まあ、あいつはほとんど迷宮の中で番をしてるから、なかなか会えないんだけどね」
サナムさんがギルマスとパーティーを組んでた。強い人だと思ってたけど、やっぱり凄い人だったんだな。
それに、番ってなんなんだろう。
「それと、もう一つお願いがあるんだ。このミツキ殿とパーティーを組んでレイドに挑んで欲しい」
「はい?」
「アージェスよ、わしは魔鉱石か魔晶石がひつよ」
「ワニのハイレアを持ってきてくれたら、魔晶石を譲ろう」
「ほお。そう言う事なら是非もないのじゃ。なに、ソルトとは既に迷宮を共にした仲じゃしの。はっはっはっ」
「いや、僕は」
「レイドだから、誰と組んでても問題はないだろう? ただ、レイドモンスターが湧くまでの間は北西エリア辺りを案内してやって欲しい。もちろん、報酬はだすから。な?」
ギルドは探索者に常に中立なんじゃなかったっけ。
このマスター、どう見ても、このミツキって人の為に動いてるよなぁ。
「じゃあ、君達の方から何もなければ、話は以上だ。いい報告と素材を待ってるよ」
ワニの事や、報酬の事など、いくつか細かい話をして、僕らは解散する事になった。
帰り際に、ゴードンさんが「今日は勘違いで嫌な思いをさせてすまなかった」と、改めて謝ってくれたので、すっきりした気分でギルマスの部屋を出ることができた。
僕はなんて単純な男なんだろう。
すっきりしつつも、いくつかの依頼を受けざるを得ない状況にされてる事を思い出して、大人な彼らの掌の上でうまく転がされたんだろうな、とか、捻くれた考え方もしてしまうけど。
だって……
「さてソルトよ。これからどうするのかの?」
この人のこと、ギルドに押し付けようと思ったのに、結局僕が面倒見る事になってるんだもんな。
はぁ。
まず僕は、ミツキに街を案内した。
ああ、そうそう。ミツキは女性で間違ってないことが判明した。聞かなければ何も言わないけど、聞けば大抵の事には答えてくれるようだ。
ただ、「ミツキは女だよね?」と聞いたら、頬をひくつかせながら「わしが男に見えるのか?」と、ちょっと怒ってる感じだったから、質問の仕方には気をつけた方がいいのかも知れないけど。
いくつか話していたら、彼女が宿なしだということが分かったので、僕とは違う宿を取らせた。
それからいくつかの店を周り、長期の探索用に携帯食を買わさせた。
それから、ギルド直営のちょっと大きめの酒場に入って、食事を摂りながらこれからのことを話した。
まずはお互いの力量を知りたいから、訓練場で模擬戦がしたいこと。
ワニについての情報収集がしたいこと。
「レベル二八の侍だと言ったじゃろ」
「いや、そもそも侍ってなんだか知らないんだよ」
「なんと……嘆かわしい。……一応聞くが、お主、忍者は知っておるか?」
「忍者は聞いたことがあるよ。イースタールの暗殺者だったっけ?」
ミツキがガックリと項垂れ、額がテーブルに当たってゴンッと音が鳴った。
「またもやか。あやつら、影に生き闇に死すなどと言いながら、どこでもその存在をよう知られておる……にも関わらず、何故に侍は知られておらぬのだ」
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