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ソロ
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街に戻るまでの間、何も全員で移動することもないはずなんだけど、僕は半ば強制的にサブマス、ヴァイオレットレイン、重戦者隊と一緒に歩かされていた。
魔物が出る度に競争を強いられ、手を抜くと文句を言われる。
だって、これだけのメンバーと一緒にいたら、僕なんかが何もやらなくたって苦戦する相手なんていないんだから。
ちなみに、スマッシャーズは二階層のレイドモンスターが出る空洞でお留守番をしている。
これはサブマスからの指示で、作戦を守らずに戦いに参加できなかったカインへの罰なんだそうだ。
彼のパーティーメンバーには可哀想な仕打ちになってしまったけど、それは連帯責任なんだとか。まあ、三日後くらいにはギルドから人が出される予定らしいので、そんなに重い罰じゃないんだけどね。
そう言えば、帰りはレイドモンスターが出ないように封印してた人も一緒だ。「久々に街に帰れる」と喜んでいた。
この人の《魔法陣》というスキルもどこかで試してみたいけど、封印解除の所しか観てないんだよね。魔法陣を描く所をいつか見せてもらえたらいいんだけど、そんな機会はなさそうな気もする。
「我々の隊に是非入られよ」
「いや、あたしんとこに来いよ」
重戦者隊とヴァイオレットレインからパーティー移籍のお誘いを受けたけど、僕はラングルのパーティーに入ってるから無理だと伝えた。
どちらも特色のあるパーティー構成が売りなのに、僕なんかが入ったら方針がぶれてしまうだろうに。
そして、一日半で街に帰り着いた。その間、何度も何度もレッティが背中に乗ってきて、しまいには「魔物が出てくるまでおんぶ」とか、訳の分からないことをさせられて疲れた。
いや、「私も」と言ってきたイリヤさんをおんぶしたのは役得だったけど……いや、駄目だ駄目だ、こんなこと考えたら駄目だ。僕にはミツキが……
「え?」
街に戻った翌日、ギルドの食堂に行った僕は、ラングルから突然の宣告を受けることになった。
「悪いな。みんなと話し合った結果なんだ。今日、今を以ってソルトにはパーティーから抜けてもらうことにした」
「理由は?」
「……」
「僕は理由もなしに追放されるんだ?」
「……すまない」
「そう。分かったよ。みんなと話し合った結果か。随分と嫌われてたみたいで残念だよ。じゃあ」
僕はその場にいた全員に目を向けたけど、誰一人として何も言わなかった。
ニーシムも、スルフも、フォレストも、そしてミントも。
また僕の知らない所で何かの力が働いてるのか、それとも単に本当に嫌われただけなのかは分からないけど、パーティーのリーダーにはメンバーを辞めさせる権限があるから、もし僕がごねた所で覆らない。
だから、理由が何であれ、僕の追放は確定事項なわけだ。とは言っても何が理由なのかはちょっと気になるんだけど。
もしかしたら、二階層のレイド戦の報酬で分配が無かった事を怒っているのかも知れないし、僕だけが上位探索者パーティーに呼ばれたのが気に入らなかったのかも知れないし、それ以外にも理由があるのかも知れない。
まあ、ラングルのパーティーにいたら三階層に行けるのはもう少し先のことになりそうな気もするし、この追放はちょうど良かったのかも知れない。……もしかして、そこまで見越してて、僕の為に追放した、とかなのかな。なんて、それは考えすぎか。
まあ、なんにしても、このままここで食事をする気にはなれないなぁ。
とりあえず、本当に追放済みかどうかだけ確認して、あとの事はギルドを出てから考えよう。
「はい。そうですね、ソルトさんは現在、その~、ソロってことになりますね」
カウンターの人が、僕の登録状況を確認した後、少し言いにくそうにそう教えてくれた。
「分かりました。確認ありがとう」
お礼を言ってカウンターを離れる。
うーん。それじゃあファットキャットバイトに行ってみるかな。
「おはござらっしゃっせい、あ、ソルトじゃないか」
「おはようございます」
僕は店の奥にある二人がけの席に、店の入り口に背中を向けるようにして座った。
「モーニング、目玉焼きとトーストをお願いします」
「あいよー」
店には何組かのお客さんがいて、前よりも少し繁盛してるようだ。僕としては静かな方が好きなんだけど、お店としては活気があっていいことなんだろうな。
少しすると「ほい、お待たせ」と言って、ケチャップライスの上に目玉焼きが乗ってるお皿と、ポテサラとトーストとコーヒーがテーブルに置かれ、僕の前の席にグーメシュさんが座った。
「おお、いつもありがとうございます。いただきます」
「おお、食ってくれ。ところで最近はますます調子が良いみたいで何よりだよ」
「ん? ふぁんれふか?」
「二階層のレイドモンスターをやったらしいじゃないか。公園広場でニュースが流れてたぞ」
「それは僕が一人でやったわけじゃないですよ。上位探索者パーティーが三組も居たんですから」
「もちろん知ってるさ。でもまあ謙遜するなよ。凄えでかい魔人像にもダメージ与えたんだろ? ヴァイオレットのミレニアとレッティ、スマッシャーズのカイン、ギルドのサブマスター、それと縁の下の力持ちの重戦者隊の活躍の話ももちろん聞いてるさ。ただ、そこにソルトの名前も聞こえてくるからなんか嬉しくてな。あいつの件で迷惑掛けたから気になってたんだよ」
「グーメシュさんは悪くないですよ……今、その話を聞くまで僕もすっかり忘れてましたし」
「そうか?」
「はい。またここに来て食べられるようになったんだから、もう元通りですよ」
「くぅー、お前さん、やっぱりいい奴だなあ。お、お客さんがまた来たから行くわ。ゆっくり食ってってくれ」
「はい」
キーンと……ナディだったけか。
本当にすっかり忘れた訳じゃないけど、もう気にしても仕方がないことなんだよね。
ミント達とパーティーを解散して、誰も能無しの僕とはパーティーを組んでくれなかった状況は、僕自身が思ってたよりも精神的にキツかったんだろうな。
だから、僕に声を掛けてくれたキーンに寄り掛かってしまってたんだと思う。
だから、彼が僕を理解してくれてると勘違いしてたんだと思う。
だから、裏切られたと思いこんで、彼を拒絶してしまった。
その後の彼の言動から、彼にも悪い所はあると思う。だけど、僕の心の弱さにも原因があったんだよね。
コーヒーを飲みながら、そう言えば今回の追放にはあまり精神的ダメージを受けてないな、とか、呑気にそんな事を考えていた。
魔物が出る度に競争を強いられ、手を抜くと文句を言われる。
だって、これだけのメンバーと一緒にいたら、僕なんかが何もやらなくたって苦戦する相手なんていないんだから。
ちなみに、スマッシャーズは二階層のレイドモンスターが出る空洞でお留守番をしている。
これはサブマスからの指示で、作戦を守らずに戦いに参加できなかったカインへの罰なんだそうだ。
彼のパーティーメンバーには可哀想な仕打ちになってしまったけど、それは連帯責任なんだとか。まあ、三日後くらいにはギルドから人が出される予定らしいので、そんなに重い罰じゃないんだけどね。
そう言えば、帰りはレイドモンスターが出ないように封印してた人も一緒だ。「久々に街に帰れる」と喜んでいた。
この人の《魔法陣》というスキルもどこかで試してみたいけど、封印解除の所しか観てないんだよね。魔法陣を描く所をいつか見せてもらえたらいいんだけど、そんな機会はなさそうな気もする。
「我々の隊に是非入られよ」
「いや、あたしんとこに来いよ」
重戦者隊とヴァイオレットレインからパーティー移籍のお誘いを受けたけど、僕はラングルのパーティーに入ってるから無理だと伝えた。
どちらも特色のあるパーティー構成が売りなのに、僕なんかが入ったら方針がぶれてしまうだろうに。
そして、一日半で街に帰り着いた。その間、何度も何度もレッティが背中に乗ってきて、しまいには「魔物が出てくるまでおんぶ」とか、訳の分からないことをさせられて疲れた。
いや、「私も」と言ってきたイリヤさんをおんぶしたのは役得だったけど……いや、駄目だ駄目だ、こんなこと考えたら駄目だ。僕にはミツキが……
「え?」
街に戻った翌日、ギルドの食堂に行った僕は、ラングルから突然の宣告を受けることになった。
「悪いな。みんなと話し合った結果なんだ。今日、今を以ってソルトにはパーティーから抜けてもらうことにした」
「理由は?」
「……」
「僕は理由もなしに追放されるんだ?」
「……すまない」
「そう。分かったよ。みんなと話し合った結果か。随分と嫌われてたみたいで残念だよ。じゃあ」
僕はその場にいた全員に目を向けたけど、誰一人として何も言わなかった。
ニーシムも、スルフも、フォレストも、そしてミントも。
また僕の知らない所で何かの力が働いてるのか、それとも単に本当に嫌われただけなのかは分からないけど、パーティーのリーダーにはメンバーを辞めさせる権限があるから、もし僕がごねた所で覆らない。
だから、理由が何であれ、僕の追放は確定事項なわけだ。とは言っても何が理由なのかはちょっと気になるんだけど。
もしかしたら、二階層のレイド戦の報酬で分配が無かった事を怒っているのかも知れないし、僕だけが上位探索者パーティーに呼ばれたのが気に入らなかったのかも知れないし、それ以外にも理由があるのかも知れない。
まあ、ラングルのパーティーにいたら三階層に行けるのはもう少し先のことになりそうな気もするし、この追放はちょうど良かったのかも知れない。……もしかして、そこまで見越してて、僕の為に追放した、とかなのかな。なんて、それは考えすぎか。
まあ、なんにしても、このままここで食事をする気にはなれないなぁ。
とりあえず、本当に追放済みかどうかだけ確認して、あとの事はギルドを出てから考えよう。
「はい。そうですね、ソルトさんは現在、その~、ソロってことになりますね」
カウンターの人が、僕の登録状況を確認した後、少し言いにくそうにそう教えてくれた。
「分かりました。確認ありがとう」
お礼を言ってカウンターを離れる。
うーん。それじゃあファットキャットバイトに行ってみるかな。
「おはござらっしゃっせい、あ、ソルトじゃないか」
「おはようございます」
僕は店の奥にある二人がけの席に、店の入り口に背中を向けるようにして座った。
「モーニング、目玉焼きとトーストをお願いします」
「あいよー」
店には何組かのお客さんがいて、前よりも少し繁盛してるようだ。僕としては静かな方が好きなんだけど、お店としては活気があっていいことなんだろうな。
少しすると「ほい、お待たせ」と言って、ケチャップライスの上に目玉焼きが乗ってるお皿と、ポテサラとトーストとコーヒーがテーブルに置かれ、僕の前の席にグーメシュさんが座った。
「おお、いつもありがとうございます。いただきます」
「おお、食ってくれ。ところで最近はますます調子が良いみたいで何よりだよ」
「ん? ふぁんれふか?」
「二階層のレイドモンスターをやったらしいじゃないか。公園広場でニュースが流れてたぞ」
「それは僕が一人でやったわけじゃないですよ。上位探索者パーティーが三組も居たんですから」
「もちろん知ってるさ。でもまあ謙遜するなよ。凄えでかい魔人像にもダメージ与えたんだろ? ヴァイオレットのミレニアとレッティ、スマッシャーズのカイン、ギルドのサブマスター、それと縁の下の力持ちの重戦者隊の活躍の話ももちろん聞いてるさ。ただ、そこにソルトの名前も聞こえてくるからなんか嬉しくてな。あいつの件で迷惑掛けたから気になってたんだよ」
「グーメシュさんは悪くないですよ……今、その話を聞くまで僕もすっかり忘れてましたし」
「そうか?」
「はい。またここに来て食べられるようになったんだから、もう元通りですよ」
「くぅー、お前さん、やっぱりいい奴だなあ。お、お客さんがまた来たから行くわ。ゆっくり食ってってくれ」
「はい」
キーンと……ナディだったけか。
本当にすっかり忘れた訳じゃないけど、もう気にしても仕方がないことなんだよね。
ミント達とパーティーを解散して、誰も能無しの僕とはパーティーを組んでくれなかった状況は、僕自身が思ってたよりも精神的にキツかったんだろうな。
だから、僕に声を掛けてくれたキーンに寄り掛かってしまってたんだと思う。
だから、彼が僕を理解してくれてると勘違いしてたんだと思う。
だから、裏切られたと思いこんで、彼を拒絶してしまった。
その後の彼の言動から、彼にも悪い所はあると思う。だけど、僕の心の弱さにも原因があったんだよね。
コーヒーを飲みながら、そう言えば今回の追放にはあまり精神的ダメージを受けてないな、とか、呑気にそんな事を考えていた。
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