プレーヤープレイヤー

もずく

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剥奪

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「遠慮しておきます」
「まあそう言うな」
 そう言って後ろから僕の両脇の下に手を入れて持ち上げる大男。
 僕はギルドホールにいる探索者達から奇異の目で見られながら、カウンターの奥にある扉の向こう側に連行されたのだった。



「ソルト君、久しぶりだね」
「どうもご無沙汰しています」
 僕はむくれて棒読みで返事をした。
「はは、ご機嫌斜めだね」
 そりゃ、みんなが見てる前で、猫かなんかみたいに高い高いされて連れて来られたらね。
「なんの御用でしょうか」
「ゴードン、君はソルト君に何をしたんだ?」
「いや、私はここに案内しただけですよ。な?」
「あれは案内って言わないですよ。誘拐だ」
「ゴードン?」
「あー、いや。逃げようとするもので、つい」
「まったく君は……」
 そう言ってこめかみの所を揉みほぐすギルマス。
「申し訳ないね。ちょっと君に確認しておきたい事があっただけなんだ。何か依頼があるとかじゃないから安心してほしい」
 まあ、ここに連れて来られた以上話は聞きますよ。それにギルマスは悪くないし。
「はい。なんでしょうか」
「うん。ソルト君、君はどうやらホテル・カザミネに泊まってきたようだね」
「それがなにか……と言うか、なんでそれを知ってるんですか?」
「だって君、三百万もギルド払いしてるじゃないか」
 あ。
 そう言えば、手持ちがなかったから探索者ギルドの信用払いをしたんだっけ。
 ダルダロイを利用する探索者はもの凄く多いから、ギルドはサウススフィアとダルダロイの街に対して、ギルドバンクの残高内なら買い物できる仕組みを作ってるんだよね。
 とは言っても、個人がお金を使ったのをギルマスがいちいち気にかける必要があるのか?
「いや、そうかも知れないですけど、なんか気持ち悪いです。もう全額下ろしてギルド払いとかするのやめようかな……」
「いやいやいや、待って。ちょっと待って。他の人には漏れないようになってるからね。今回だけ、今回だけ見逃してくれないかな」
「今回だけって言って、今後もギルド払いする度に「あ、こいつどこどこ行ってるな」とかバレるんでしょう?」
「そりゃ、ギルドからお店にお金を払わないといけないからね。どうしたって一部の人間には分かってしまうんだけど……いや、そういう話じゃないんだ。聞きたいことって言うのはね、そのホテルのオーナーのカザミネに会ったかどうか、なんだ」
「会ってないですね」
 有耶無耶にされたのは分かってるけど、話が進まないから普通に答えることにした。
「そうか。ならいいんだ」
「え、それだけですか?」
「うん。時間を取らせてしまって悪かったね」
「いやホントですよ……そうですか。これだけの為に僕はあんな恥ずかしい目に合わされたんですか」
「すまん」
「いや、サブマス、すまんじゃないですよ。ギルドはどんな探索者に対しても中立なんじゃなかったですか? なんで僕は何度もギルマスに呼ばれなくちゃいけないんですか? ギルマスもですよ。もうこういう呼び出しとかは止めてください」
「いや、君ほどの人材をほっておくわけにはいかないんだよ。分かって欲しい」
「僕が能無しスキルなしの時も、ザッツバーグ達に仲間を殺された時もギルドは何もしてくれなかったのに、スキルを手に入れたら何かをさせようとする。すみませんが到底受け入れられない話です。昔と同じように、もう僕に直接干渉しないでください」
「なら、迷宮に入る権利を剥奪させてもらうことになるかな~」
「へぇ、ギルマスもそういう悪い顔するんですね。メールスフィアの探索者ギルドが探索者の為の組織と言うのは嘘だってことがよく分かりました」
「分かってくれたのなら」
「探索者ギルドはギルマス達上層部の人達が私物化してるってことがよーく分かったので、もう辞めます。じゃあ失礼しますね」
「はっ? 違うよ。待って、待ちなさい!」
「待てっ!」
 僕は《幻歩》でサブマスの突撃を躱して、扉を開けると《瞬歩》と《筋力強化》を使って全力でギルドホールに移動した。
 開いてるカウンターでお金を全額下ろす依頼をする。
 少ししてサブマスがやって来たので「なんですか?」と尋ねると、「こっちに来い」と肩を掴まれた。

「何もしてないのに、何故、僕はこんな乱暴をされるんですか?」
「いいから来い!」
 ひっぱられるけど、僕は動かない。サブマスも《怪力》を使ってるんだろうけど、僕は《怪力》と《剛力》を使ってるからね。
 でも、着ている服までが強くなるわけじゃない。掴まれた所からビリッと服が破けてしまった。
「もう一度聞きます。何故こんな事をされないといけないんですか? ここにいるみんなにも承認になって欲しいです。僕はギルドに預けてあるお金を下ろしたいだけなのに、ギルドのサブマスターにそれを止められてます。服が破けるほどの力で」

「なんだなんだ」
「またギルドの不正か?」
「この間もサブマスが不正に絡んでたよな」
「ゴードンさん、ソルトが何やったっていうんですか。離してあげてください」
「おいおい、ゴードンもかよ。このギルド大丈夫なのか?」

 一気に周りがざわめき出し、たぶん、ミントの声だと思うけど、サブマスと僕の名前を出した事で、少し離れていた所にいた人達も集まってきたようだ。

「ソルトどうしたんだ?」
「わ、服破けてるよ~」
「サブマス、何をしてるんですか?」
 ミレニア達もギルドで食事をしていたようで、野次馬と言うか、僕を手助けしに来てくれたようだ。

「いや、ギルマスから「迷宮に入る権利を剥奪」されてしまったんですよ。だからお金を下ろそうと思ったんですけどね。サブマスに捕まってギルドマスターの部屋に連れて行かれそうになってるところです」
「違う」
「何が違うんですか?」
「全部が違う」
「そんな返事じゃ話にならないですよ。ギルマスは僕に「迷宮に入る権利を剥奪させてもらうことになる」って言いましたよね? どなたか、《天秤》を持ってる方を呼んできてもらえませんか?」
「馬鹿なことを言うな。いいからこっちに来い!」
「だからなんの為にですか?」
「いいから来い!」

「おいゴードン、あんたの返事はソルトの確認の回答になってないように聞こえるんだがね。レッティ、職員と一緒にアージェスを呼んできてくれ」
「は~い」
「いや、呼ばれるまでもないよ」
 ざわつくギルドホールに、ギルドマスター・アージェスがなんとなくかっこよく登場したことで、当たりは一瞬で静まり返ったのだった。
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