78 / 118
ブレイカーズ
しおりを挟む
「マサキとヨルグは様子見で回避優先、トーヤだけ魔物の防御力確認で攻撃、クリームは《祝福》の準備、ソルトは僕の指示で《水弾》ね」
「了解」
「おう」
「……(こくりと頷く)」
「はい、分かりましたわ」
「はい」
通路の奥の空洞までは少し距離があって、《魔物鑑定》を持ってるマルメルでも魔物の情報が確認できないようだった。
勇者パーティー・ブレイカーズとしては、かなり控えめな作戦のような気もするけど、この慎重さが彼らを上位パーティーにのし上げたんだろうな。
空洞に最初に足を踏み入れたのはヨルグだ。
「おおう新顔だ! トゲトゲだんご虫だぜ!」
「刺さったら痛そうだね」
空洞に入るとヨルグは左に、マサキは右に移動する。そしてそれぞれが魔物の気を引く為に声と音をだした。
少し遅れてトーヤが中に入り、両腕を下に垂らすようにして大剣を右下に構えた。
聖女様とマルメルと僕は空洞の入口で待機だ。僕は背後の通路から他の魔物が来ない事を意識しつつ、空洞内で始まった戦いを見ていた。
「迷宮棘丸虫……ふーん」
そう言ってマルメルはにやりと笑った。
「このだんご虫には火が有効なようだ。それから棘には毒がある。《解毒》があるからと言って油断しないように」
「分かった!」
「ならさっさと焼いちまってくれ」
「ああ、君に言われずともやるさ」
ヨルグの返事にマルメルが小さく返事をして呪文を唱え始める。これは今は使われていない古い魔法の言葉なんだと言っていた。
五匹いる一メートル以上もある大きなだんご虫の内の四匹の上に、赤く光る小さな魔法陣が浮かび上がる。
魔法陣がセットされていないだんご虫にはトーヤが斬り掛かる。普通のよりも大きくて長い大剣は、まるで虹のようにトーヤを中心に綺麗な半円を描き、だんご虫を真っぷたつに両断した。
それとほぼ同時にマルメルの呪文が発動して、魔法陣から猛烈な勢いの火炎が真下に向かって噴き出された。だんご虫は逃げようと丸まって転がったんだけど、すぐに動かなくなった。
「熱っ、熱いって!」
「流石だね、マルメル」
ヨルグは魔法の炎の余波で熱がり、大盾でしっかり防御したマサキは涼し気な顔でマルメルを称えた。
さすが勇者だなぁ。確かに憧れるし、自分が女だったら好きになってしまうかも知れない。爽やかでかっこよすぎる。
その時、僕の《危険感知》が頭の中で大きな警報を打ち鳴らした。
「下!」
「下だ!」
僕とヨルグの声が合わさって空洞内に響いた。
僕は咄嗟に聖女様とマルメルを突き飛ばし、下から飛び出してきた尖った何かに太ももを貫かれた。
《頑丈》になってるはずの僕の体も、鎧も着けずにいれば流石に簡単に貫かれてしまうのか。慢心していた。青銀のボディスーツに換装してたら弾けたかも知れないのに。
そして、良くない事に、地面を見ると更に何本かの何かが飛び出して来るのが見えてしまった。僕は今、自らそこに向かって飛び込んで行ってる最中だ。
「換装」
言葉を口にしたものの、いつものような装備の変化が始まらない。バチっとした違和感を、太い何かが刺さった場所に感じただけだ。もしかすると……
「ぐぁっ!」
後ろからも何かが来ていたようで、新たに発生した左足の痛みに変な声が出てしまった。
ピンチの時に使うのはやりたくなかったんだけど、このままだと死んでしまう事になりかねない。倒れたままこっちを向いて悲壮な顔をしてるマルメルと目があってしまった。マサキとヨルグの叫び声も聞こえている。
知り合ってちょっとしか経ってない僕をこんなに心配してくれる人達を、心配させっぱなしっていうのは良くない、よね。
僕は初めて《再生機》を戦闘中に使ったのだった。
ーーーー
最初にいた魔物は迷宮棘丸虫。マルメルが言ってたように、毒を持ってて危険な魔物だけど、火に弱いという明確な弱点があるから、対処法を知ってれば比較的簡単な相手だね。
問題の地面から生えてきた奴は大樹妖霊と言う奴みたいだ。通常は姿を現さないレアな魔物らしい。木の系統だから火に弱いみたいだから、たぶん、地面に向けて噴射された火炎が熱くて、攻撃されたと思って反撃してきたっぽい。
と言うか、通常は姿を現さないって。
迷宮に発生した魔物っていうのは、迷宮の外から来た者に対して全面的に攻撃的なものじゃないのか?
そんなの、なんの為に魔物として生まれてきたんだよ、って話だ。
いや、今はそんな事はどうでもいいか。問題はもう一度戦ったとしても、マルメルの作戦と魔法だとアルラウネが攻撃してくるだろう、って言うことだ。
対策としてできそうなのは、僕が事前に青銀のボディスーツに換装しておく、っていうことくらいかな。
聖女様とマルメルを突き飛ばすんじゃなくて、二人を抱えてダッシュしてマサキの所まで一気に移動する。
狙いが僕に移れば今度こそ避けて避けて避けまくってやるし、マルメル狙いならマサキに《聖光結界》を使ってもらえばいい。
よし。
せっかくなので、トーヤの《超断魔剣》とマルメルの《魔法陣》魔法を勉強させてもらってから、僕は《再生機》を終了した。
「了解」
「おう」
「……(こくりと頷く)」
「はい、分かりましたわ」
「はい」
通路の奥の空洞までは少し距離があって、《魔物鑑定》を持ってるマルメルでも魔物の情報が確認できないようだった。
勇者パーティー・ブレイカーズとしては、かなり控えめな作戦のような気もするけど、この慎重さが彼らを上位パーティーにのし上げたんだろうな。
空洞に最初に足を踏み入れたのはヨルグだ。
「おおう新顔だ! トゲトゲだんご虫だぜ!」
「刺さったら痛そうだね」
空洞に入るとヨルグは左に、マサキは右に移動する。そしてそれぞれが魔物の気を引く為に声と音をだした。
少し遅れてトーヤが中に入り、両腕を下に垂らすようにして大剣を右下に構えた。
聖女様とマルメルと僕は空洞の入口で待機だ。僕は背後の通路から他の魔物が来ない事を意識しつつ、空洞内で始まった戦いを見ていた。
「迷宮棘丸虫……ふーん」
そう言ってマルメルはにやりと笑った。
「このだんご虫には火が有効なようだ。それから棘には毒がある。《解毒》があるからと言って油断しないように」
「分かった!」
「ならさっさと焼いちまってくれ」
「ああ、君に言われずともやるさ」
ヨルグの返事にマルメルが小さく返事をして呪文を唱え始める。これは今は使われていない古い魔法の言葉なんだと言っていた。
五匹いる一メートル以上もある大きなだんご虫の内の四匹の上に、赤く光る小さな魔法陣が浮かび上がる。
魔法陣がセットされていないだんご虫にはトーヤが斬り掛かる。普通のよりも大きくて長い大剣は、まるで虹のようにトーヤを中心に綺麗な半円を描き、だんご虫を真っぷたつに両断した。
それとほぼ同時にマルメルの呪文が発動して、魔法陣から猛烈な勢いの火炎が真下に向かって噴き出された。だんご虫は逃げようと丸まって転がったんだけど、すぐに動かなくなった。
「熱っ、熱いって!」
「流石だね、マルメル」
ヨルグは魔法の炎の余波で熱がり、大盾でしっかり防御したマサキは涼し気な顔でマルメルを称えた。
さすが勇者だなぁ。確かに憧れるし、自分が女だったら好きになってしまうかも知れない。爽やかでかっこよすぎる。
その時、僕の《危険感知》が頭の中で大きな警報を打ち鳴らした。
「下!」
「下だ!」
僕とヨルグの声が合わさって空洞内に響いた。
僕は咄嗟に聖女様とマルメルを突き飛ばし、下から飛び出してきた尖った何かに太ももを貫かれた。
《頑丈》になってるはずの僕の体も、鎧も着けずにいれば流石に簡単に貫かれてしまうのか。慢心していた。青銀のボディスーツに換装してたら弾けたかも知れないのに。
そして、良くない事に、地面を見ると更に何本かの何かが飛び出して来るのが見えてしまった。僕は今、自らそこに向かって飛び込んで行ってる最中だ。
「換装」
言葉を口にしたものの、いつものような装備の変化が始まらない。バチっとした違和感を、太い何かが刺さった場所に感じただけだ。もしかすると……
「ぐぁっ!」
後ろからも何かが来ていたようで、新たに発生した左足の痛みに変な声が出てしまった。
ピンチの時に使うのはやりたくなかったんだけど、このままだと死んでしまう事になりかねない。倒れたままこっちを向いて悲壮な顔をしてるマルメルと目があってしまった。マサキとヨルグの叫び声も聞こえている。
知り合ってちょっとしか経ってない僕をこんなに心配してくれる人達を、心配させっぱなしっていうのは良くない、よね。
僕は初めて《再生機》を戦闘中に使ったのだった。
ーーーー
最初にいた魔物は迷宮棘丸虫。マルメルが言ってたように、毒を持ってて危険な魔物だけど、火に弱いという明確な弱点があるから、対処法を知ってれば比較的簡単な相手だね。
問題の地面から生えてきた奴は大樹妖霊と言う奴みたいだ。通常は姿を現さないレアな魔物らしい。木の系統だから火に弱いみたいだから、たぶん、地面に向けて噴射された火炎が熱くて、攻撃されたと思って反撃してきたっぽい。
と言うか、通常は姿を現さないって。
迷宮に発生した魔物っていうのは、迷宮の外から来た者に対して全面的に攻撃的なものじゃないのか?
そんなの、なんの為に魔物として生まれてきたんだよ、って話だ。
いや、今はそんな事はどうでもいいか。問題はもう一度戦ったとしても、マルメルの作戦と魔法だとアルラウネが攻撃してくるだろう、って言うことだ。
対策としてできそうなのは、僕が事前に青銀のボディスーツに換装しておく、っていうことくらいかな。
聖女様とマルメルを突き飛ばすんじゃなくて、二人を抱えてダッシュしてマサキの所まで一気に移動する。
狙いが僕に移れば今度こそ避けて避けて避けまくってやるし、マルメル狙いならマサキに《聖光結界》を使ってもらえばいい。
よし。
せっかくなので、トーヤの《超断魔剣》とマルメルの《魔法陣》魔法を勉強させてもらってから、僕は《再生機》を終了した。
0
あなたにおすすめの小説
二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした
セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。
牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。
裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
道化たちの末路
希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と愛人母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる