プレーヤープレイヤー

もずく

文字の大きさ
100 / 118

迷宮の声

しおりを挟む
 ギルドホールの二階。
 ギルドマスターの部屋にはクランメンバー全員は入り切らない為、僕らのクランからは代表して僕、カイン、ミレニア、ザイアンの四人が報告に来ていた。
 ギルド側はギルドマスターのアージェス、サブマスターのタラント、パイ、ジョカールの計四人が着席している。

 カインが五階層のレイドモンスター、火竜ファイアドレイクを討伐した事、六階層へ降りる螺旋通路を見つけた事を伝えると、ギルマスはテーブルを叩くように手を付いて、慌てたように「六階層に降りたのか!?」と質問をしてきた。
 その勢いに気圧されながらも、カインがなんとか「行ってない」と答え、ギルマスが目で、僕らにも確認してきたので、僕もミレニアもザイアンも頷いてそれに答えた。
 ほっとしたのか、どさっ、とソファーに深く座ったギルマスは「すまない。取り乱した」と言って、いつの間にか額に噴き出していた汗を手で拭った。

 火竜レイドモンスターを討伐したのは六日前である事と、六階層への螺旋通路には足を踏み入れていない事を改めて伝えると、ギルマスはすぐにジョカールに頼み事をして、彼女は即座に部屋から出ていった。



「かつて、我々が五階層へ足を踏み入れた際、五階層から「迷宮の声」が聞こえてきてね」

 ジョカールが部屋から出ていくと、ギルマスが唐突に語りだした。
「迷宮の声」は僕が聞きたかった話だ。

「声……いや、頭に響いたのは魔物のうめき声や咆哮だったんだけどね。でもね、何故か何を言ってるのかが分かったんだよ。「第一の扉は開かれた」ってね」

 僕が聞いたのとほとんど同じだ。
 まるで匂いまでしてきそうなほど近くにいるような、そんな距離感で複数の獣や魔物のおぞましい鳴き声が頭の中に響いたんだ。

「第二の扉は開かれた」
「迷宮の三魔将が一つ、魔獣王が生まれた」
「迷宮がこの世界のすべてを飲み込む」

 僕が……いや、僕達が聞いたのはこの三つの言葉だ。これが暫くの間、頭の中に繰り返し響き続けたんだよね。何人かは錯乱状態になってしまったし、何か不味いことが起こったと感じた僕は《再生機プレーヤー》を使って時間を巻き戻して、もう一回火竜ファイアドレイクを倒し直したんだ。

 その時の声は「第二の扉」と言っていた。
 だから、その前に「第一の扉」があったんじゃないかと思ったんだよね。
 まさか、こんなにあっさりと「第一の扉」に関する話を聞けるとは思ってなかったんだけど。

「それと重なるように「迷宮の三魔将が一つ、魔竜王が生まれた」と言う言葉、そして、「迷宮がこの世界のすべてを飲み込む」と言う言葉が頭の中で鳴り続けたんだ」

 カイン、ミレニア、ザイアンは訝しげな顔付きでギルマスを見ている。まあ、唐突にそんな話をされても「この人は何を言ってるんだ」と言う感じだろうね。
 僕もなるべく顔に出さないようにしていた。きょとんとした顔をして、すっとぼけてるわけだ。
 たぶん、ギルマスはこちらの反応を見て、僕らが六階層に足を踏み入れてないかどうかを確認してるんだろうから。
 六階層に進んでも「迷宮の声」とやらが聞こえなかった可能性もあるはずだとは思うんだけどね。でも、ギルマスの雰囲気から想像すると、「行ったなら聞いたはずだ」という感じがするから、何かしら確信があるんだろう。

 僕らの反応を見て、どうやら、僕らが六階層には入っていないだろうと判断してくれたのか、ギルマスからの話はそこで止まってしまった。
 そうなると消化不良になるのは僕達の方だ。
 全員で「今の話はいったい何だったんだ」「魔竜王とはなんなんだ」「そんな話は聞いた事がないぞ」などなど、とギルマスやサブマス達を質問攻めにしたんだけど、もう少しだけ待ってくれと、待ったをかけられてしまったのだった。



 結局、もやもやしたまま待つこと約半日。
 ギルド内にあるいくつかの部屋に隔離された僕らは、たぶん、最高級の食事をあてがわれながらも、不満な思いで過ごした。
 ようやっとサブマスのパイから声をかけられた時には、カイン、ラナ、ケイシャと、ミレニア、レッティが正に「今にもキレそうな」雰囲気オーラを発していた。
 しかし、呼ばれて連れて行かれた先でカイン達の怒りは霧散することになった。
 そこには迷宮街をとりまとめる大御所達が一堂に会していたからだ。
 まあ、そんなのはお構いなしに怒鳴り散らしたミレニアとレッティは、この場にいるお歴々の方々よりも大物ってことなんだろうな。

「そ、それでは、只今より、魔将率いる魔物の大発生に備え、サウススフィア防衛の為の緊急対策会議を始める!」
 ミレニアとレッティからの一通りの罵声を浴びた側のうちの一人が、彼女達の言葉が切れて静まり返ってからようやっと宣言を行った。
 ちなみに、今宣言をしたのはサウススフィアの街の副長だ。
 今、ここには街長、商工会会長、副会長、神殿長、神官長、探索者上位パーティーのリーダー達が集まっている。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした

セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。 牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。 裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。

『伯爵令嬢 爆死する』

三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。 その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。 カクヨムでも公開しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

道化たちの末路

希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と愛人母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...