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迷宮の声
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ギルドホールの二階。
ギルドマスターの部屋にはクランメンバー全員は入り切らない為、僕らのクランからは代表して僕、カイン、ミレニア、ザイアンの四人が報告に来ていた。
ギルド側はギルドマスターのアージェス、サブマスターのタラント、パイ、ジョカールの計四人が着席している。
カインが五階層のレイドモンスター、火竜を討伐した事、六階層へ降りる螺旋通路を見つけた事を伝えると、ギルマスはテーブルを叩くように手を付いて、慌てたように「六階層に降りたのか!?」と質問をしてきた。
その勢いに気圧されながらも、カインがなんとか「行ってない」と答え、ギルマスが目で、僕らにも確認してきたので、僕もミレニアもザイアンも頷いてそれに答えた。
ほっとしたのか、どさっ、とソファーに深く座ったギルマスは「すまない。取り乱した」と言って、いつの間にか額に噴き出していた汗を手で拭った。
火竜を討伐したのは六日前である事と、六階層への螺旋通路には足を踏み入れていない事を改めて伝えると、ギルマスはすぐにジョカールに頼み事をして、彼女は即座に部屋から出ていった。
「かつて、我々が五階層へ足を踏み入れた際、五階層から「迷宮の声」が聞こえてきてね」
ジョカールが部屋から出ていくと、ギルマスが唐突に語りだした。
「迷宮の声」は僕が聞きたかった話だ。
「声……いや、頭に響いたのは魔物のうめき声や咆哮だったんだけどね。でもね、何故か何を言ってるのかが分かったんだよ。「第一の扉は開かれた」ってね」
僕が聞いたのとほとんど同じだ。
まるで匂いまでしてきそうなほど近くにいるような、そんな距離感で複数の獣や魔物のおぞましい鳴き声が頭の中に響いたんだ。
「第二の扉は開かれた」
「迷宮の三魔将が一つ、魔獣王が生まれた」
「迷宮がこの世界のすべてを飲み込む」
僕が……いや、僕達が聞いたのはこの三つの言葉だ。これが暫くの間、頭の中に繰り返し響き続けたんだよね。何人かは錯乱状態になってしまったし、何か不味いことが起こったと感じた僕は《再生機》を使って時間を巻き戻して、もう一回火竜を倒し直したんだ。
その時の声は「第二の扉」と言っていた。
だから、その前に「第一の扉」があったんじゃないかと思ったんだよね。
まさか、こんなにあっさりと「第一の扉」に関する話を聞けるとは思ってなかったんだけど。
「それと重なるように「迷宮の三魔将が一つ、魔竜王が生まれた」と言う言葉、そして、「迷宮がこの世界のすべてを飲み込む」と言う言葉が頭の中で鳴り続けたんだ」
カイン、ミレニア、ザイアンは訝しげな顔付きでギルマスを見ている。まあ、唐突にそんな話をされても「この人は何を言ってるんだ」と言う感じだろうね。
僕もなるべく顔に出さないようにしていた。きょとんとした顔をして、すっとぼけてるわけだ。
たぶん、ギルマスはこちらの反応を見て、僕らが六階層に足を踏み入れてないかどうかを確認してるんだろうから。
六階層に進んでも「迷宮の声」とやらが聞こえなかった可能性もあるはずだとは思うんだけどね。でも、ギルマスの雰囲気から想像すると、「行ったなら聞いたはずだ」という感じがするから、何かしら確信があるんだろう。
僕らの反応を見て、どうやら、僕らが六階層には入っていないだろうと判断してくれたのか、ギルマスからの話はそこで止まってしまった。
そうなると消化不良になるのは僕達の方だ。
全員で「今の話はいったい何だったんだ」「魔竜王とはなんなんだ」「そんな話は聞いた事がないぞ」などなど、とギルマスやサブマス達を質問攻めにしたんだけど、もう少しだけ待ってくれと、待ったをかけられてしまったのだった。
結局、もやもやしたまま待つこと約半日。
ギルド内にあるいくつかの部屋に隔離された僕らは、たぶん、最高級の食事をあてがわれながらも、不満な思いで過ごした。
ようやっとサブマスのパイから声をかけられた時には、カイン、ラナ、ケイシャと、ミレニア、レッティが正に「今にもキレそうな」雰囲気を発していた。
しかし、呼ばれて連れて行かれた先でカイン達の怒りは霧散することになった。
そこには迷宮街をとりまとめる大御所達が一堂に会していたからだ。
まあ、そんなのはお構いなしに怒鳴り散らしたミレニアとレッティは、この場にいるお歴々の方々よりも大物ってことなんだろうな。
「そ、それでは、只今より、魔将率いる魔物の大発生に備え、サウススフィア防衛の為の緊急対策会議を始める!」
ミレニアとレッティからの一通りの罵声を浴びた側のうちの一人が、彼女達の言葉が切れて静まり返ってからようやっと宣言を行った。
ちなみに、今宣言をしたのはサウススフィアの街の副長だ。
今、ここには街長、商工会会長、副会長、神殿長、神官長、探索者上位パーティーのリーダー達が集まっている。
ギルドマスターの部屋にはクランメンバー全員は入り切らない為、僕らのクランからは代表して僕、カイン、ミレニア、ザイアンの四人が報告に来ていた。
ギルド側はギルドマスターのアージェス、サブマスターのタラント、パイ、ジョカールの計四人が着席している。
カインが五階層のレイドモンスター、火竜を討伐した事、六階層へ降りる螺旋通路を見つけた事を伝えると、ギルマスはテーブルを叩くように手を付いて、慌てたように「六階層に降りたのか!?」と質問をしてきた。
その勢いに気圧されながらも、カインがなんとか「行ってない」と答え、ギルマスが目で、僕らにも確認してきたので、僕もミレニアもザイアンも頷いてそれに答えた。
ほっとしたのか、どさっ、とソファーに深く座ったギルマスは「すまない。取り乱した」と言って、いつの間にか額に噴き出していた汗を手で拭った。
火竜を討伐したのは六日前である事と、六階層への螺旋通路には足を踏み入れていない事を改めて伝えると、ギルマスはすぐにジョカールに頼み事をして、彼女は即座に部屋から出ていった。
「かつて、我々が五階層へ足を踏み入れた際、五階層から「迷宮の声」が聞こえてきてね」
ジョカールが部屋から出ていくと、ギルマスが唐突に語りだした。
「迷宮の声」は僕が聞きたかった話だ。
「声……いや、頭に響いたのは魔物のうめき声や咆哮だったんだけどね。でもね、何故か何を言ってるのかが分かったんだよ。「第一の扉は開かれた」ってね」
僕が聞いたのとほとんど同じだ。
まるで匂いまでしてきそうなほど近くにいるような、そんな距離感で複数の獣や魔物のおぞましい鳴き声が頭の中に響いたんだ。
「第二の扉は開かれた」
「迷宮の三魔将が一つ、魔獣王が生まれた」
「迷宮がこの世界のすべてを飲み込む」
僕が……いや、僕達が聞いたのはこの三つの言葉だ。これが暫くの間、頭の中に繰り返し響き続けたんだよね。何人かは錯乱状態になってしまったし、何か不味いことが起こったと感じた僕は《再生機》を使って時間を巻き戻して、もう一回火竜を倒し直したんだ。
その時の声は「第二の扉」と言っていた。
だから、その前に「第一の扉」があったんじゃないかと思ったんだよね。
まさか、こんなにあっさりと「第一の扉」に関する話を聞けるとは思ってなかったんだけど。
「それと重なるように「迷宮の三魔将が一つ、魔竜王が生まれた」と言う言葉、そして、「迷宮がこの世界のすべてを飲み込む」と言う言葉が頭の中で鳴り続けたんだ」
カイン、ミレニア、ザイアンは訝しげな顔付きでギルマスを見ている。まあ、唐突にそんな話をされても「この人は何を言ってるんだ」と言う感じだろうね。
僕もなるべく顔に出さないようにしていた。きょとんとした顔をして、すっとぼけてるわけだ。
たぶん、ギルマスはこちらの反応を見て、僕らが六階層に足を踏み入れてないかどうかを確認してるんだろうから。
六階層に進んでも「迷宮の声」とやらが聞こえなかった可能性もあるはずだとは思うんだけどね。でも、ギルマスの雰囲気から想像すると、「行ったなら聞いたはずだ」という感じがするから、何かしら確信があるんだろう。
僕らの反応を見て、どうやら、僕らが六階層には入っていないだろうと判断してくれたのか、ギルマスからの話はそこで止まってしまった。
そうなると消化不良になるのは僕達の方だ。
全員で「今の話はいったい何だったんだ」「魔竜王とはなんなんだ」「そんな話は聞いた事がないぞ」などなど、とギルマスやサブマス達を質問攻めにしたんだけど、もう少しだけ待ってくれと、待ったをかけられてしまったのだった。
結局、もやもやしたまま待つこと約半日。
ギルド内にあるいくつかの部屋に隔離された僕らは、たぶん、最高級の食事をあてがわれながらも、不満な思いで過ごした。
ようやっとサブマスのパイから声をかけられた時には、カイン、ラナ、ケイシャと、ミレニア、レッティが正に「今にもキレそうな」雰囲気を発していた。
しかし、呼ばれて連れて行かれた先でカイン達の怒りは霧散することになった。
そこには迷宮街をとりまとめる大御所達が一堂に会していたからだ。
まあ、そんなのはお構いなしに怒鳴り散らしたミレニアとレッティは、この場にいるお歴々の方々よりも大物ってことなんだろうな。
「そ、それでは、只今より、魔将率いる魔物の大発生に備え、サウススフィア防衛の為の緊急対策会議を始める!」
ミレニアとレッティからの一通りの罵声を浴びた側のうちの一人が、彼女達の言葉が切れて静まり返ってからようやっと宣言を行った。
ちなみに、今宣言をしたのはサウススフィアの街の副長だ。
今、ここには街長、商工会会長、副会長、神殿長、神官長、探索者上位パーティーのリーダー達が集まっている。
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