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『レベルアップしました。強化する能力を選択してください』
機械的な声が脳内に響いた。
ただ、まだ敵が残ってるから確認は後で、だ。
振り下ろしたウォーハンマーのヘッドは地面に付けたまま、柄をくぐるようにして柄を自分の右肩に乗せて「よっせ」とハンマーを担ぐ。
そしてまだ仲間と対峙しているゴブリンに向かって走りだす。
「行くぞ! 巻き添えをくらうなよ!?」
ゴブリンの手前約二.五メートルの位置で左足でブレーキを掛ける。そしてその反動を利用して肩に担いだハンマーを振り上げる。
「どっ……せいっ!」
振り下ろしたハンマーはゴブリンの左肩に直撃し、勢いを止めることなくゴブリンの半身を削り取りながら地面にぶつかり、ドスンッという音を空洞に響かせる。
その一撃でゴブリンは絶命した。
さっと周りを見回し、今のが最後の敵だったことを確認できると、「ふぅ」と息が自然と出てきた。それから俺は地面に尻餅をつくようにして座った。
「レボーアーップ!」
「おつかれー」
一緒に戦っていた仲間が近づいてくる。
「やっぱり4階層はまだ早かったんじゃないか?」
俺がそう言うと、カズは肩をすくめながら首を振る。
「いやいやいやいやぁ? 適正レベル帯の一個先を行かなきゃなかなかレボー上がんないしょ?」
「そーそー。それに今ので1つ上がったでしょー? そろそろ4階層も僕らの適正レベル帯だよ。たぶん」
カズに続いてグッチも軽口を叩く。
まあ確かに、今の話を聞く限り、今の戦いで俺を含め、3人全員がレベルアップしたようだ。3人合計でレベル36ならそろそろ4階層は適正レベル帯なのかね。
「まぁ、ここまで来ておいて今更の話か。んで、なんか出た?」
「残念ながら小魔石4個と錆びたナイフだけだったよ。宝箱でも出てくんないと僕の価値が半減だよねー」
ちょっと低目の背丈を気にするお年頃なグッチはスカウト担当だ。
ゲームによっては盗賊とか斥候とか呼ばれることもあるクラスに該当する役割で、グッチがこれまでに覚えたスキルは、《忍び足》《遠見》《聞き耳》《エコー》《危機感知》《解錠》《罠探知》《罠解除》などだ。
浅い階層でも、《危機感知》と《罠探知》《罠解除》には何度も助けられた。
戦闘ではほとんど前に出ないが、ダンジョンを攻略するパーティーメンバーとして必要な奴だ。
「ま、とりあえずオネーチャン達とビアーでチアーズできる分だけ稼げれば文句はないしょ。レボーアップし続けてればいつかは金持ちになれんだし」
で、こっちのノッポはカズ。
軽口ばかり叩いているけど実は頭脳派のマジックキャスターだ。
いわゆる魔法使いってやつなんだけど、カズは見た目のチャラさに反して覚えてる魔法は渋い。
《ロケーション》《エコー》《マジックシールド》《ストレングス》《ヒール》《キュアポイズン》《マジックミサイル》の7種類の魔法を覚えてくれてるんだけど、直接的な攻撃魔法は《マジックミサイル》だけだ。
だけど、だからと言って使えないわけじゃない。と言うか、パーティーを組むならこの多彩な魔法構成は有能と言える、と思っている。
本人にそれを言うと調子に乗るから言わないけど。
「グッチ」
「あー、うん。今ちょうど確認してたけど、危険な雰囲気はないかなー。カズっちは?」
「そだに。《エコー》にも反応がないからこの部屋でパワーアップしちゃってオケオケ」
「了解。じゃあ、ここでそれぞれレベルアップしておこうか」
「「りょ」」
俺ら探索者には、自分自身の情報を参照できる権能がある。権能とは言ってもそんな物々しいものじゃなくて、ゲームで言うところのステータス画面みたいなものだ。
名前、種族、性別、年齢というゲームを知らない人でも理解しやすい情報は勿論のこと、体調などの状態や、生命力、精神力、筋力などの肉体的な能力を数値化したもの、それからどんなことができるか、どんな特殊な技能を持ってるか、なんかを参照するのとができる。
そして、これぞまさしくRPG! 的な部分なんだけど、レベルアップ時の能力の上昇処理と、魔法や技能などの取得を行うのもこの権能だ。
コイル
人族・オス・22年
正常
レベル12(能力点0・技能点6)
生命力20
精神力20
筋力度2
敏捷度2
器用度2
体力度6+1
感応度2
知覚度2
《鎚鉾3》
《鎚鉾派生・衝撃》
《鎚鉾派生・軽量化》
悩んだ挙げ句、結局体力度を増やした。
今のところ、敵の動きが速すぎてウォーハンマーが当たらないってこともないし、カズとグッチがいれば他の技能が必要になることもないし。
「俺は体力度を上げといたけど何か取っておいた方がいいスキルとかある?」
「今のとこ足りてるしまだいんじゃね?」
「僕もそう思う。ハンマースキルがもう一個上がったらどーなるのかは気になるけど」
まあ、それは俺も気になるところだ。
衝撃も軽量化も技能点を使わないで取得できてしまった派生スキルだ。
衝撃はハンマーが何かに強く当たったときにランダムに発動される。発動すれば高さが二メートルくらいある大きな岩を砕くくらい強力だけど、発動率が劇的に低いからあまり頼りにならない。
軽量化は常時発動型で、ハンマーの重さを半分くらいに感じさせてくれるものらしい。このスキルが発動してからは探索も戦闘も本当に楽になった。
派生スキルのことを考えるなら、《鎚鉾》を4に上げるのはアリなんだけど……
「でもまー、技能点4点はキツいよねー。派生なしかも知れないし」
「だねぇ」
そう、スキルレベルを上げても、派生スキルが必ず付いてくるってわけじゃないのが辛いところだ。
とかくこの世界は生きにくい。
考えなしにスキルを取っていって、ダンジョン探索者として詰み状態になる可能性を考えると、安易な判断を下すのは難しいところだ。
「あ、俺、前から言ってたけど《ロイターボード》取ったからよろしくに」
「あー、いーなーそれ……よし、じゃあ僕は《大跳躍》にしようかな」
「おい、お前ら……「よし、とったよー」
「はああああぁぁぁ……」
自由にサクサクとスキルを取ってしまう仲間を見て、俺は盛大に溜息を吐いたのだった。
機械的な声が脳内に響いた。
ただ、まだ敵が残ってるから確認は後で、だ。
振り下ろしたウォーハンマーのヘッドは地面に付けたまま、柄をくぐるようにして柄を自分の右肩に乗せて「よっせ」とハンマーを担ぐ。
そしてまだ仲間と対峙しているゴブリンに向かって走りだす。
「行くぞ! 巻き添えをくらうなよ!?」
ゴブリンの手前約二.五メートルの位置で左足でブレーキを掛ける。そしてその反動を利用して肩に担いだハンマーを振り上げる。
「どっ……せいっ!」
振り下ろしたハンマーはゴブリンの左肩に直撃し、勢いを止めることなくゴブリンの半身を削り取りながら地面にぶつかり、ドスンッという音を空洞に響かせる。
その一撃でゴブリンは絶命した。
さっと周りを見回し、今のが最後の敵だったことを確認できると、「ふぅ」と息が自然と出てきた。それから俺は地面に尻餅をつくようにして座った。
「レボーアーップ!」
「おつかれー」
一緒に戦っていた仲間が近づいてくる。
「やっぱり4階層はまだ早かったんじゃないか?」
俺がそう言うと、カズは肩をすくめながら首を振る。
「いやいやいやいやぁ? 適正レベル帯の一個先を行かなきゃなかなかレボー上がんないしょ?」
「そーそー。それに今ので1つ上がったでしょー? そろそろ4階層も僕らの適正レベル帯だよ。たぶん」
カズに続いてグッチも軽口を叩く。
まあ確かに、今の話を聞く限り、今の戦いで俺を含め、3人全員がレベルアップしたようだ。3人合計でレベル36ならそろそろ4階層は適正レベル帯なのかね。
「まぁ、ここまで来ておいて今更の話か。んで、なんか出た?」
「残念ながら小魔石4個と錆びたナイフだけだったよ。宝箱でも出てくんないと僕の価値が半減だよねー」
ちょっと低目の背丈を気にするお年頃なグッチはスカウト担当だ。
ゲームによっては盗賊とか斥候とか呼ばれることもあるクラスに該当する役割で、グッチがこれまでに覚えたスキルは、《忍び足》《遠見》《聞き耳》《エコー》《危機感知》《解錠》《罠探知》《罠解除》などだ。
浅い階層でも、《危機感知》と《罠探知》《罠解除》には何度も助けられた。
戦闘ではほとんど前に出ないが、ダンジョンを攻略するパーティーメンバーとして必要な奴だ。
「ま、とりあえずオネーチャン達とビアーでチアーズできる分だけ稼げれば文句はないしょ。レボーアップし続けてればいつかは金持ちになれんだし」
で、こっちのノッポはカズ。
軽口ばかり叩いているけど実は頭脳派のマジックキャスターだ。
いわゆる魔法使いってやつなんだけど、カズは見た目のチャラさに反して覚えてる魔法は渋い。
《ロケーション》《エコー》《マジックシールド》《ストレングス》《ヒール》《キュアポイズン》《マジックミサイル》の7種類の魔法を覚えてくれてるんだけど、直接的な攻撃魔法は《マジックミサイル》だけだ。
だけど、だからと言って使えないわけじゃない。と言うか、パーティーを組むならこの多彩な魔法構成は有能と言える、と思っている。
本人にそれを言うと調子に乗るから言わないけど。
「グッチ」
「あー、うん。今ちょうど確認してたけど、危険な雰囲気はないかなー。カズっちは?」
「そだに。《エコー》にも反応がないからこの部屋でパワーアップしちゃってオケオケ」
「了解。じゃあ、ここでそれぞれレベルアップしておこうか」
「「りょ」」
俺ら探索者には、自分自身の情報を参照できる権能がある。権能とは言ってもそんな物々しいものじゃなくて、ゲームで言うところのステータス画面みたいなものだ。
名前、種族、性別、年齢というゲームを知らない人でも理解しやすい情報は勿論のこと、体調などの状態や、生命力、精神力、筋力などの肉体的な能力を数値化したもの、それからどんなことができるか、どんな特殊な技能を持ってるか、なんかを参照するのとができる。
そして、これぞまさしくRPG! 的な部分なんだけど、レベルアップ時の能力の上昇処理と、魔法や技能などの取得を行うのもこの権能だ。
コイル
人族・オス・22年
正常
レベル12(能力点0・技能点6)
生命力20
精神力20
筋力度2
敏捷度2
器用度2
体力度6+1
感応度2
知覚度2
《鎚鉾3》
《鎚鉾派生・衝撃》
《鎚鉾派生・軽量化》
悩んだ挙げ句、結局体力度を増やした。
今のところ、敵の動きが速すぎてウォーハンマーが当たらないってこともないし、カズとグッチがいれば他の技能が必要になることもないし。
「俺は体力度を上げといたけど何か取っておいた方がいいスキルとかある?」
「今のとこ足りてるしまだいんじゃね?」
「僕もそう思う。ハンマースキルがもう一個上がったらどーなるのかは気になるけど」
まあ、それは俺も気になるところだ。
衝撃も軽量化も技能点を使わないで取得できてしまった派生スキルだ。
衝撃はハンマーが何かに強く当たったときにランダムに発動される。発動すれば高さが二メートルくらいある大きな岩を砕くくらい強力だけど、発動率が劇的に低いからあまり頼りにならない。
軽量化は常時発動型で、ハンマーの重さを半分くらいに感じさせてくれるものらしい。このスキルが発動してからは探索も戦闘も本当に楽になった。
派生スキルのことを考えるなら、《鎚鉾》を4に上げるのはアリなんだけど……
「でもまー、技能点4点はキツいよねー。派生なしかも知れないし」
「だねぇ」
そう、スキルレベルを上げても、派生スキルが必ず付いてくるってわけじゃないのが辛いところだ。
とかくこの世界は生きにくい。
考えなしにスキルを取っていって、ダンジョン探索者として詰み状態になる可能性を考えると、安易な判断を下すのは難しいところだ。
「あ、俺、前から言ってたけど《ロイターボード》取ったからよろしくに」
「あー、いーなーそれ……よし、じゃあ僕は《大跳躍》にしようかな」
「おい、お前ら……「よし、とったよー」
「はああああぁぁぁ……」
自由にサクサクとスキルを取ってしまう仲間を見て、俺は盛大に溜息を吐いたのだった。
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