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レベルシステム
3 能力
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俺らは頷き合うこともなく、ダラダラと壁際に移動した。
別に俺らがどかなくたってこいつ等が通るスペースはあるんだが、動かないことで難癖つけられると面倒だから従ったわけだ。
「話し掛けられて返事をしないだけじゃなくて、どうぞの一言も言えないとはね。一体誰のおかげで生活探索者の君らがここまで来れてるのか、よーく考えてもらいたいものだよ」
5人の先頭に立つ長髪の茶髪がいつもの如く喚きだしたが無視を決め込む。
いや、カズが右手でどうぞどうぞと無言で先に進めと促していた。
「はん! 本当に礼儀のなってない奴らだな! もういいっ! ヒグティさん、行きましょう!」
何が気に入らないのかよく分からないけど、茶髪が怒鳴り散らしながら俺らがどいた場所を通り過ぎて行く。
茶髪の仲間のうち3人はそれぞれ片手を立てて口パクで「すまん」と謝りながら茶髪に付いて行った。
俺は気にしてないと首を横に振り、グッチは肩をすくめて見せた。
茶髪たちがいなくなってから最初に口を開いたのはグッチだった。
「ごめんねー、あいつら《危機感知》に引っ掛からなかったよ」
笑いながらそう言うグッチに釣られて俺も笑ってしまう。魔物扱いか。
でも、カズは一切笑わずに立ち上がり、それから「そろそろ帰ってボイボイにでも飲みに行かね? っしょ」と言って、ようやっと苦虫をかみ潰したような顔で笑った。
地上へ戻る途中で4回魔物と遭遇したけど難なく倒し、怪我もなく小魔石を6個増やせた。
ウエストポーチから懐中時計を取り出して確認するとまだ3時だった。外は明るくて、ダンジョン内の薄暗さに慣れた目には少し眩しく感じる。
グッチが帰還報告をしてくれている間に、俺とカズはいつも通り、ダンジョンの出口付近にある窓口に行って、ダンジョンで集めた小魔石40個を4万円に換金した。
この前までなら、10万円分の魔石だったんだけどな。
ランクが上がると買取額が下がるのはやっぱりきつい。
錆びたナイフは研ぎ直せば使えることと、ダンジョン産(魔物のドロップ品)と言うことで5千円で買い取ってもらえた。
俺らがダンジョンに入るのは、これらの売却による収入が目的だ。
今日は茶髪に遭遇したせいで予定が狂ってしまったわけだ。本当はレベルをもう一つ上げるまで潜ってるはずだったんだけど……
「悪かったしょ……あんなののせいで早戻りになっちゃって。今日のボイボイは奢るしょ」
顔に出てたか?
まあ、ようやっとレベル10の壁を超えて、ランクアップして10階層までの権利を手に入れたところだからな。無理して深い階層に行こうとは思わないけど、可能な限り長時間潜りたいとは思っていた。
というか、そのことは3人で相談済みで、そうする予定だったはずだ。
まあ、カズのテンションが下がるのも分かるから、今日奢ってもらったら水に流そう。
グッチと合流して、反省会を兼ねたストレス発散、カズのガス抜きに行くとしますか。
「あー、頭痛いしょ……」
翌朝、ローテンションのカズがボヤきつつ時間ギリギリになって待ち合わせ場所にやって来た。
明らかに二日酔いの様子だ。
昨日は結局、あんな早い時間から飲み屋に入ったのに夜遅くまで飲んでしまったんだからこうなるのは当たり前の話だ。
グッチと俺はあまり酒が強くないから無理はしない。最初の2杯だけハイボールを飲んで、あとは烏龍茶やメロンソーダで通したからな。
カズにも「ほどほどにしときなよ」ってグッチが何度も言ってたんだけど……。
グッチは笑顔のままでカズをこき下ろし、「帰ってベッドで明日の朝まで寝てろ」と言い残して帰ってしまった。
3人の決め事として、誰かに大きな怪我や体調不良がある時はダンジョンに入らない、というのがある。
魔法を使うカズが二日酔いで頭が痛い状態と言うのは明らかに体調不良と呼べるだろう。
「迎え酒だけはするなよ?」と言いながらカズの肩を叩いて、俺も帰ることにした。
とは言え一日は始まったばかりだ。
部屋に戻るには早すぎるし、どの店もまだ開いてない。
仕方ないので図書館の近くにある公園で時間を潰すことにした。
公園にはワークアウトに使えるアスレチックがあるので体を動かしておきたかったからだ。
レベルシステムで得られる能力は、まだ低レベルの俺にはあまり実感はないのだが、かなり身体能力に影響するものらしい。
レベルが上がる度に任意の能力度を1点上げることができる。
グッチは『敏捷度』に極振りしたとしても、オリンピック選手には敵わないだろうと言っていたけど、この間飲み屋で聞いた噂話では、元々はそこそこ足が遅かった人が、敏捷度に極振りしたことで100メートルを10秒くらいで走れるようになったってことらしい。
もし本当の話なら夢があるよな。
俺は理由はあまりないけど……いや違うな。死にたくないから、だな。まあ、そんな情けない理由で『体力度』に多目に振っている。
まあ、今のところ、そんなにその恩恵を感じていない。強いて言えば持久力が少し上がったように感じるくらいか。二桁くらいまで伸ばせば何かが大きく変わって感じるのかね。
まあ、そんなことを考えながら、図書館が始まるまで、3時間ほど休み休み筋トレを続けたのであった。
別に俺らがどかなくたってこいつ等が通るスペースはあるんだが、動かないことで難癖つけられると面倒だから従ったわけだ。
「話し掛けられて返事をしないだけじゃなくて、どうぞの一言も言えないとはね。一体誰のおかげで生活探索者の君らがここまで来れてるのか、よーく考えてもらいたいものだよ」
5人の先頭に立つ長髪の茶髪がいつもの如く喚きだしたが無視を決め込む。
いや、カズが右手でどうぞどうぞと無言で先に進めと促していた。
「はん! 本当に礼儀のなってない奴らだな! もういいっ! ヒグティさん、行きましょう!」
何が気に入らないのかよく分からないけど、茶髪が怒鳴り散らしながら俺らがどいた場所を通り過ぎて行く。
茶髪の仲間のうち3人はそれぞれ片手を立てて口パクで「すまん」と謝りながら茶髪に付いて行った。
俺は気にしてないと首を横に振り、グッチは肩をすくめて見せた。
茶髪たちがいなくなってから最初に口を開いたのはグッチだった。
「ごめんねー、あいつら《危機感知》に引っ掛からなかったよ」
笑いながらそう言うグッチに釣られて俺も笑ってしまう。魔物扱いか。
でも、カズは一切笑わずに立ち上がり、それから「そろそろ帰ってボイボイにでも飲みに行かね? っしょ」と言って、ようやっと苦虫をかみ潰したような顔で笑った。
地上へ戻る途中で4回魔物と遭遇したけど難なく倒し、怪我もなく小魔石を6個増やせた。
ウエストポーチから懐中時計を取り出して確認するとまだ3時だった。外は明るくて、ダンジョン内の薄暗さに慣れた目には少し眩しく感じる。
グッチが帰還報告をしてくれている間に、俺とカズはいつも通り、ダンジョンの出口付近にある窓口に行って、ダンジョンで集めた小魔石40個を4万円に換金した。
この前までなら、10万円分の魔石だったんだけどな。
ランクが上がると買取額が下がるのはやっぱりきつい。
錆びたナイフは研ぎ直せば使えることと、ダンジョン産(魔物のドロップ品)と言うことで5千円で買い取ってもらえた。
俺らがダンジョンに入るのは、これらの売却による収入が目的だ。
今日は茶髪に遭遇したせいで予定が狂ってしまったわけだ。本当はレベルをもう一つ上げるまで潜ってるはずだったんだけど……
「悪かったしょ……あんなののせいで早戻りになっちゃって。今日のボイボイは奢るしょ」
顔に出てたか?
まあ、ようやっとレベル10の壁を超えて、ランクアップして10階層までの権利を手に入れたところだからな。無理して深い階層に行こうとは思わないけど、可能な限り長時間潜りたいとは思っていた。
というか、そのことは3人で相談済みで、そうする予定だったはずだ。
まあ、カズのテンションが下がるのも分かるから、今日奢ってもらったら水に流そう。
グッチと合流して、反省会を兼ねたストレス発散、カズのガス抜きに行くとしますか。
「あー、頭痛いしょ……」
翌朝、ローテンションのカズがボヤきつつ時間ギリギリになって待ち合わせ場所にやって来た。
明らかに二日酔いの様子だ。
昨日は結局、あんな早い時間から飲み屋に入ったのに夜遅くまで飲んでしまったんだからこうなるのは当たり前の話だ。
グッチと俺はあまり酒が強くないから無理はしない。最初の2杯だけハイボールを飲んで、あとは烏龍茶やメロンソーダで通したからな。
カズにも「ほどほどにしときなよ」ってグッチが何度も言ってたんだけど……。
グッチは笑顔のままでカズをこき下ろし、「帰ってベッドで明日の朝まで寝てろ」と言い残して帰ってしまった。
3人の決め事として、誰かに大きな怪我や体調不良がある時はダンジョンに入らない、というのがある。
魔法を使うカズが二日酔いで頭が痛い状態と言うのは明らかに体調不良と呼べるだろう。
「迎え酒だけはするなよ?」と言いながらカズの肩を叩いて、俺も帰ることにした。
とは言え一日は始まったばかりだ。
部屋に戻るには早すぎるし、どの店もまだ開いてない。
仕方ないので図書館の近くにある公園で時間を潰すことにした。
公園にはワークアウトに使えるアスレチックがあるので体を動かしておきたかったからだ。
レベルシステムで得られる能力は、まだ低レベルの俺にはあまり実感はないのだが、かなり身体能力に影響するものらしい。
レベルが上がる度に任意の能力度を1点上げることができる。
グッチは『敏捷度』に極振りしたとしても、オリンピック選手には敵わないだろうと言っていたけど、この間飲み屋で聞いた噂話では、元々はそこそこ足が遅かった人が、敏捷度に極振りしたことで100メートルを10秒くらいで走れるようになったってことらしい。
もし本当の話なら夢があるよな。
俺は理由はあまりないけど……いや違うな。死にたくないから、だな。まあ、そんな情けない理由で『体力度』に多目に振っている。
まあ、今のところ、そんなにその恩恵を感じていない。強いて言えば持久力が少し上がったように感じるくらいか。二桁くらいまで伸ばせば何かが大きく変わって感じるのかね。
まあ、そんなことを考えながら、図書館が始まるまで、3時間ほど休み休み筋トレを続けたのであった。
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