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付与術師
2 始まらない付与魔術
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ビジネスホテルのシングルルームくらいのサイズしかない俺の部屋に、何故か5人もの人数が詰め込まれている。
5人とはもちろん俺も込みの人数だ。
暑い。
安静にしてくださいね、なんて言われてベッドに寝かされて、ヌーコはベッドに腰掛けている。
あとからやって来た3人はわーきゃー騒いだ挙げ句、ジャンケンで勝ったアッキーがヌーコと並んでベッドに座り、負けたシュゴリンは立ったままで、無言で勝手に俺の椅子に座って机に肘を乗せてるのがマヨイだ。
いや、おかしいだろ。
百歩譲って精神力回復促進のお香はいいよ。ありがたいよ。
でもなんで、今日、ダンジョンで会ったばかりの女の子たちが俺の部屋でわーきゃーしてるんだよ。
わけが分からない。
でも、お香のおかげか分からないけど、精神力はもう5点まで回復している。
かなり頭がクリアになってきたと思う。
よし。
「えーとな? なんでみんなして俺の部屋部屋にいるんだ?」
「お礼のため?」
「心配だから?」
「飯に行くんだろう?」
「ヌーコとマヨイだけじゃずるいから?」
いや、なんでみんなして疑問系なんだよ。
「と言うかさ。なんで俺の部屋、知ってたのさ?」
「「えっ?」」
マヨイとヌーコの二人が声を上げた。マヨイに至ってはショックの表情でフリーズしてしまっている。
それに引き替え、シュゴリンとアッキーはニコニコと言うかニヤニヤしてるんだけど、なんなんだこの子たちは。わけの分からないことが多過ぎる。
「いえ……はい。なんとなくそうなんだろうな、とは思ってましたよ。気がついてないんだろうなぁ、って。でも、私が隣の部屋に入った所を見てもその質問をしちゃいますか」
小さな声で、私、そんなに存在感ないですかね、と言ってるのが聞こえてしまった。
うん、まあ、存在感が薄いのはスカウトにとってはプラスなんじゃないかな、と心の中で応援しておいた。
「あたしは……何度かあんたと話したことがあるんだけど……」
フリーズしてたマヨイが亡霊のように気力の抜けた越えでそう言ってきた。
ヌーコの言い分はなんとなく分かる。
ただ、本当にお隣さんが彼女だったことを知らなかったし、今まで話したこともないんだから勘弁してほしい。落ち込まれると俺が悪いんじゃないか、って思ってしまうから。
でも、マヨイについては本当に分からない。
俺はこんな子と話したことなんかないし、挨拶した記憶もないぞ?
俺が忘れてるのか、それとも彼女たちの捏造なのか判断が難しい。
俺が悩んでいると、マヨイはいきなり頭の後ろで一纏めにしてある髪を解き、両方の耳の上のちょっと後ろよりで髪を結びだした。
「あっ……」
この子にはゴミ捨ての日に、ゴミ捨て場に行く道で何度か会ってるな。
結構ゴミを溜め込む子らしくて、顔を合わすたんびに大量のゴミを出すんだよな。ゴミ捨て場までは結構距離があるからアパルトマンにあるリヤカーで運ぶんだけど、俺が引くリヤカーに着いてきて、話しながら往復したりしたな……
「ええ? えええ?」
「やっと分かったかよ」
「いや、気付く分けないだろ? キャラが全然違ゔりゃ」
話してる途中でマヨイに口を押さえられて言い切れなかったけど、俺が知ってるツインテールの女の子は、もっと可愛らしい話し方だったからな。
同一人物だとは思わないよ。
「あんたがあたしを髪型でだけしか認識してなかったってことがよおーく分かったよ」
「いや、話し方っ」
またもや口を押さえつけられた。
アイアンクローならぬ、マウスクロー、いや、ほっぺクローか。ほっぺって英語でなんて言うんだったかな。まあ、どおでもいいことか。
マヨイは俺に顔を近づけてきて、それはみんなには云わないで、と俺の耳元で小さく、俺の知ってる声と雰囲気で囁いてきた。
とりあえず何度か頷いて離れてもらう。
ヌーコを見ると既に復活していて、で、マヨイのことは内緒で、とでも言うように立てた人差し指を口に当てていた。
そっか、さすがに同じで建物で暮らしてたら知ってるよな。
「ずるい」
「うん、ずるいよねー」
そう言ってシュゴリンとアッキーが頷き合う。
「「私もここに引っ越すから!」」
なんの為にだよ.…。
結局、予定より1時間くらい遅れたけど、無事にみんなでレストランに着くことができた。
5人で食事をすることができてよかった。
でもね、まさかマヨイとヌーコが話してた「不思議と気になる感じの人」、というのがコイルさんだったとは。
スタートから出遅れてる感じだけど私だって……。
とにかく、まずは何とかしてパーティーを組んでもらわなくちゃ。
と思ってたんだけど……パーティーを組む話は断られちゃったんだよね。
前に組んでたパーティーを解散したばかりで、今はまだ新しいパーティーに参加する気になれない、って。
それでも諦めきれない私たちは、と言うかアッキーが酔ったフリして可愛こぶりっ子全開ーの、密着度高めーので猛プッシュし続けたら、「離れて」「離れない」の繰り返しに根負けしてくれて、「たまになら」って言質をゲットしたのよ!
ゲットした、んだけど……アッキーずるい。
絶対に酔ってなかったのに、酔ったフリしてコイルさんに抱きついたりして!
誰がどう見たって私が1番出遅れてるじゃない。
私が自分で分析しても私が断トツでペケよっ。
悔しい。
そして、酔ったフリもできない自分がキライ。
甘えることもできなくて、みんなみたいにコイルって呼ぶこともできなくて。
なんでみんなは普通に呼び捨てにできるんだろう。
歳上なのに。
命の恩人なのに。
ホント、みんな、ずるい。
自分以外のみんなが騒がしく過ごす食事の時間を、シュゴリンは一人で黙々と食べ続けたのだった。
5人とはもちろん俺も込みの人数だ。
暑い。
安静にしてくださいね、なんて言われてベッドに寝かされて、ヌーコはベッドに腰掛けている。
あとからやって来た3人はわーきゃー騒いだ挙げ句、ジャンケンで勝ったアッキーがヌーコと並んでベッドに座り、負けたシュゴリンは立ったままで、無言で勝手に俺の椅子に座って机に肘を乗せてるのがマヨイだ。
いや、おかしいだろ。
百歩譲って精神力回復促進のお香はいいよ。ありがたいよ。
でもなんで、今日、ダンジョンで会ったばかりの女の子たちが俺の部屋でわーきゃーしてるんだよ。
わけが分からない。
でも、お香のおかげか分からないけど、精神力はもう5点まで回復している。
かなり頭がクリアになってきたと思う。
よし。
「えーとな? なんでみんなして俺の部屋部屋にいるんだ?」
「お礼のため?」
「心配だから?」
「飯に行くんだろう?」
「ヌーコとマヨイだけじゃずるいから?」
いや、なんでみんなして疑問系なんだよ。
「と言うかさ。なんで俺の部屋、知ってたのさ?」
「「えっ?」」
マヨイとヌーコの二人が声を上げた。マヨイに至ってはショックの表情でフリーズしてしまっている。
それに引き替え、シュゴリンとアッキーはニコニコと言うかニヤニヤしてるんだけど、なんなんだこの子たちは。わけの分からないことが多過ぎる。
「いえ……はい。なんとなくそうなんだろうな、とは思ってましたよ。気がついてないんだろうなぁ、って。でも、私が隣の部屋に入った所を見てもその質問をしちゃいますか」
小さな声で、私、そんなに存在感ないですかね、と言ってるのが聞こえてしまった。
うん、まあ、存在感が薄いのはスカウトにとってはプラスなんじゃないかな、と心の中で応援しておいた。
「あたしは……何度かあんたと話したことがあるんだけど……」
フリーズしてたマヨイが亡霊のように気力の抜けた越えでそう言ってきた。
ヌーコの言い分はなんとなく分かる。
ただ、本当にお隣さんが彼女だったことを知らなかったし、今まで話したこともないんだから勘弁してほしい。落ち込まれると俺が悪いんじゃないか、って思ってしまうから。
でも、マヨイについては本当に分からない。
俺はこんな子と話したことなんかないし、挨拶した記憶もないぞ?
俺が忘れてるのか、それとも彼女たちの捏造なのか判断が難しい。
俺が悩んでいると、マヨイはいきなり頭の後ろで一纏めにしてある髪を解き、両方の耳の上のちょっと後ろよりで髪を結びだした。
「あっ……」
この子にはゴミ捨ての日に、ゴミ捨て場に行く道で何度か会ってるな。
結構ゴミを溜め込む子らしくて、顔を合わすたんびに大量のゴミを出すんだよな。ゴミ捨て場までは結構距離があるからアパルトマンにあるリヤカーで運ぶんだけど、俺が引くリヤカーに着いてきて、話しながら往復したりしたな……
「ええ? えええ?」
「やっと分かったかよ」
「いや、気付く分けないだろ? キャラが全然違ゔりゃ」
話してる途中でマヨイに口を押さえられて言い切れなかったけど、俺が知ってるツインテールの女の子は、もっと可愛らしい話し方だったからな。
同一人物だとは思わないよ。
「あんたがあたしを髪型でだけしか認識してなかったってことがよおーく分かったよ」
「いや、話し方っ」
またもや口を押さえつけられた。
アイアンクローならぬ、マウスクロー、いや、ほっぺクローか。ほっぺって英語でなんて言うんだったかな。まあ、どおでもいいことか。
マヨイは俺に顔を近づけてきて、それはみんなには云わないで、と俺の耳元で小さく、俺の知ってる声と雰囲気で囁いてきた。
とりあえず何度か頷いて離れてもらう。
ヌーコを見ると既に復活していて、で、マヨイのことは内緒で、とでも言うように立てた人差し指を口に当てていた。
そっか、さすがに同じで建物で暮らしてたら知ってるよな。
「ずるい」
「うん、ずるいよねー」
そう言ってシュゴリンとアッキーが頷き合う。
「「私もここに引っ越すから!」」
なんの為にだよ.…。
結局、予定より1時間くらい遅れたけど、無事にみんなでレストランに着くことができた。
5人で食事をすることができてよかった。
でもね、まさかマヨイとヌーコが話してた「不思議と気になる感じの人」、というのがコイルさんだったとは。
スタートから出遅れてる感じだけど私だって……。
とにかく、まずは何とかしてパーティーを組んでもらわなくちゃ。
と思ってたんだけど……パーティーを組む話は断られちゃったんだよね。
前に組んでたパーティーを解散したばかりで、今はまだ新しいパーティーに参加する気になれない、って。
それでも諦めきれない私たちは、と言うかアッキーが酔ったフリして可愛こぶりっ子全開ーの、密着度高めーので猛プッシュし続けたら、「離れて」「離れない」の繰り返しに根負けしてくれて、「たまになら」って言質をゲットしたのよ!
ゲットした、んだけど……アッキーずるい。
絶対に酔ってなかったのに、酔ったフリしてコイルさんに抱きついたりして!
誰がどう見たって私が1番出遅れてるじゃない。
私が自分で分析しても私が断トツでペケよっ。
悔しい。
そして、酔ったフリもできない自分がキライ。
甘えることもできなくて、みんなみたいにコイルって呼ぶこともできなくて。
なんでみんなは普通に呼び捨てにできるんだろう。
歳上なのに。
命の恩人なのに。
ホント、みんな、ずるい。
自分以外のみんなが騒がしく過ごす食事の時間を、シュゴリンは一人で黙々と食べ続けたのだった。
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